2026/01/15

「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」

宝塚歌劇雪組大劇場公演「ボー・ブランメル~美しすぎた男~」「Prayer~祈り~」 12月2日 13:00

友の会で当選した席は旧料金最後のSS席でした。

「ボー・ブランメル」の大雑把な印象は、『もったいぶった見せかけの、
実体は限りなく俗物の物語』でした。
ボー・ブランメルという人物もそうだし、物語の運び方も。
生田作品にしばしば感じるモヤモヤの正体はこれかなと思いました。

冒頭の異様な舞台化粧と衣装のコロスと少年時代のブランメルと父の場面は、彼の人生の基盤となった王侯貴族社会へのルサンチマンの具現かなと思いましたが、そこから物語が膨らむわけではありませんでした。
昔の恋人ハリエットとよりを戻す場面を見ながら、王侯貴族たちの価値観を転倒させるような彼の美学も恋愛そのものには発揮されないのだなと思いました。
ボー・ブランメル自身、別に高尚なことを言っているわけではなくて、スノッブたちの価値観の中で頂点に立った人なので、感じた印象でまちがいないのかもしれません。
またも生田先生の思わせぶりにいらぬ期待を抱いてしまった自分自身に嫌気がさすといいますか、いい加減で惑わされるのをやめたいです涙。

劇中でブランメルが、自分の顔じゃなくて服装に目が留まったなら正解だ的なことを言っていましたが、朝美絢氏ですよ? 顔に目がいかないわけがないじゃないのと思ってしまいました。
瀬央ゆりあさん演じるプリンス・オブ・ウェールズが人が好い印象で、彼を失望させるのは胸が痛いなぁと思ったり。
演じる人への先入観が障りとなってストーリーに没入できていなかったのかもしれません。

夢白あやさん演じるヒロインのハリエットが鏡の前に立つ姿が息をのむほど美しかったのが記憶に残っています。
デボンシャー公爵夫人役の華純沙耶さんの所作やセリフ回し表情すべてが素敵で目が離せませんでした。(デボンシャー公爵夫人が皇太子の愛人だったというのは生田先生の創作ですよね?)

「Prayer」は大好きなタイプのショーでした。
冒頭からどの場面も好きでしたが、アフリカの場面の縣千さん、そして華純沙耶の身体表現に目が釘付けになりました。
日本の場面の衣装も素敵だなぁと印象に残っています。
そして圧巻だったのはやはり「オギヨンチャ」の掛け声の船の場です。雪組の皆さんの活き活きとした表情に活力をもらったような気がします。ピンクの衣装の天女役の妃華ゆきのさんにも笑顔にしていただきました(見ているだけで多幸感がありました笑)

東京公演は見に行けないのですが千秋楽ライブビューイングを見ようと思っています。
「ボー・ブランメル」をフラットな気持ちで見て(先入観を外して)、ショー「Prayer」をもう一度堪能したいです。
そして宙組配属のときから好きだった夢白あやさんのサヨナラショーを目に焼き付けたいと思います。

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2025/12/14

「SPY×FAMILY」

ミュージカル「SPY×FAMILY」(博多座) 11月30日 12:30

博多座の千秋楽を観劇しました。
原作は家族がアニメを見ていたのでおおよそ知っているかんじなのですが、子役の可愛らしさを全面に出したプロモーションにかなり抵抗があったこともあり、2023年の公演は見ていませんでした。
今回は宝塚退団後の和希そらさんを見たくて観劇を決めました。

アニメよりも大人っぽい真面目な仕上がりになっている印象を受けました。脚本演出のG2さんの良心を感じました笑。
原作はいろんな見方ができると思いますが、こういう読み解きも良いなと思いました。(ヒューマニズム強め)
森崎ウィンさん演じるロイド・フォージャーも和希そらさん演じるヨルも月野未羚さん演じるアーニャも、原作とはひとあじ違ってはいるのだけどそれも、これはこれでいいなと思いました。
森崎さんのロイドは冷徹感のなかにも甘さが強めで素敵でした。ヨルへの接し方もかなりスマート。独白ツッコミが面白かったです。
和希さんヨルは世間知らずのとぼけたとんちんかんなかんじに戦闘でのカッコ良さもあり掴みどころのない雰囲気に思わず笑いました。(ユーリとの場面は中の人ぜったいノリノリだと思いました)
月野未羚さんアーニャはセリフの間が最高で本当に心が読めているみたいでした。
瀧澤翼さんの思いっきり振り切ったユーリも面白かったです。
鈴木壮麻さんのヘンダーソン先生はヴィジュアルから何から完璧。
朝夏まなとさんのシルヴィアはフルメタル・レディの異名を持つクールさにどことなく漂うチャーミングさが加味されていて思わずふふっと笑ってしまいました。タグの付いたままのコートで踊るナンバーが大好きでした。
アンサンブルの方々もレベル高くて音楽的にもとても好きな作品でした。
(森崎さんと和希さんのハモりがなんともおしゃれに感じられて好きでした)

観劇したのは博多座千秋楽でしたが日曜日ということもあってか、お子様連れご家族連れが多かったです。上演前や幕間のロビーで聞こえてくる会話も観劇がはじめてらしき内容だったり。皆さんに良い観劇体験ができていると良いなと思いました。

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「マタ・ハリ」

ミュージカル「マタ・ハリ」(博多座) 11月2日 17:00


マタ・ハリ役の愛希れいかさんの千秋楽の公演を見ました。
女性スパイの代名詞「マタ・ハリ」の名前こそ知ってはいたものの、詳しいことは知らなかったので初演の頃から興味がありましたが未見でした。今回は博多座公演があるということ愛希れいかさんがマタ・ハリ役を演じるということで観劇を決めました。
3役がWキャストでしたが、マタ・ハリ/愛希れいかさん、ラドゥー/廣瀬友祐さん、アルマン/加藤和樹さんの回を観劇しました。

思っていた以上にしっかりとした筋立てで、想像以上にロマンティックでした(愛希さんと加藤さんの持ち味?)。
とても上質な舞台で満足感が高かったです。
マタ・ハリのダンスシーンは胸が震えました。
愛希さん、加藤さん、廣瀬さんともにミュージカルの舞台で活躍する姿を見始めて10年ほどになりますが、その頃に想像していた以上に素敵な大人の役者になっていたんだなぁと感じました。

これからもこの作品のような上質で大人のロマンを感じられる舞台をたくさん見られるといいなぁと思いました。

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2025/12/11

俺のために

11月18日と23日にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇花組公演「DEAN」を見てきました。
主演の極美慎さんにとっては花組生として初の出演作品であり、初の東上主演作品でもありました。23日はドラマシティ公演の千秋楽でした。

感想を書こうとするも、自分の中で折り合いがつかず手が止まってしまうということを繰り返していました。
まず自分のなかのジェームズ・ディーンへの固定観念と目の前の舞台を擦り合わせることに苦戦しました。容姿も含めてあまりに映画のディーンの印象が強烈に残っていたことにいまさらながら気づきました。何十年も昔に抱いた印象がアップデートもされないまま自分の中に残っていたことに。

ジェームズ・ディーンの実像について考えてみたこともなく、若い頃は称賛の対象という世間の評価を疑いもなく受け入れていた私にとって、目の前の舞台で演じられるディーンという若者像をどう受け取るべきかで戸惑いました。
決して意外なわけではなくて、若い時の自分だったらさすがディーンだと思ったかもしれないけれど、いまの私には彼の有害性が目についてしまいそのことに戸惑ったのかなと思います。

自分を高く見積もり、脆弱な自尊心を守るためには降板もバックレもする、端から信頼関係を築けない。異性に好まれる自覚はあるのであの手この手で自分のペースに巻き込み思い通りにしようとするも、相手に意思があると思っていないので自分に反する意思をつたえられると絶望する。
力の勾配の上にいるときはやりたい放題、下のときは悲愴な面持ちで抗う態度をとりながらも言いなりで、そこに付け込まれてしまう。
大丈夫? 容姿はとても良いけどでも・・。
そんな印象の1幕でした。
2幕でやっと人との信頼関係が築けてきたかなぁと思った矢先のエンド。
最後まで撮影中の野卑な態度を誇示はしても俳優として演技のプランニングなどの描写はなかったので生い立ちに苦悩がある青年が素材として巧く使われただけに思えました。(監督にトラウマを突かれて激高する姿が真に迫っていると映ったとして、それは映画として高評価であっても俳優の評価としては本人は満足できるものなのかな、などと)

「エデンの東」の移動遊園地の場面を再現するディーン役の極美慎さんとピア・アンジェリ役の美羽愛さんの主演ペアはとても宝塚的な夢夢しさでときめきました。こんごも見てみたいコンビでした。
2幕のニコラス・レイ(一之瀬航季さん)とのやりとりは他者と信頼関係を築きはじめたディーンが見えてほっとしました。
エリザベス・テイラー(三空凜花さん)と彼女の子育てやピアとのことについて話すディーンも好きでした。
18日に見た段階ではがんばっているなぁという印象だったベン役の希波らいとさんが千秋楽では頼もしく成長していて目を瞠りました。
クセのあるPR会社の社長役で、役作りに苦戦したのだろうなと思いますが、23日の千秋楽ではなんかいい感じにディーンとのきずなが見えるなぁと思いました。
長身同士の並びも映えて、思わず極美さんと希波さんで「銀河英雄伝説」のラインハルトとキルヒアイスを見てみたいなぁと思いました。

自動車事故の場面のあとのヴィラ・カプリの場面では、一瞬これは『ディーンを演じた俳優』が登場したのかと思いました。フィッツジェラルドを描いた「THE LAST PARTY」のように。
亡くなった人もディーンのもとから去っていった人も、彼の周りに一堂に会するまぼろしのパーティ。彼らに親しみを込めて話しかけるディーン。
これは誰が望んだ夢なのかな。
24歳で彼は急逝したけれどもっと長く生きていたらどんな俳優になっていたのだろうと思いました。
幼少期に受け取れなかったものを、大人になり与える側となった彼が心の中の寂しい子どもの彼に渡せていたらいいのになと思います。

ヴィラ・カプリの場面がおわるとすぐにはじまったフィナーレで、舞台に1人タキシードで佇むディーンが、テーブルの上のバラ1輪を手に取る場面がとても素敵でした。
これはジェームズ・ディーンが好きだったという「星の王子さま」のオマージュかな。(極美さんも「星の王子さま」が愛読書だとカーテンコールで挨拶されていました)
私にはあのバラは壊れやすかったディーンの自尊心ではなかったかと思えます。
そしてもう彼は大丈夫なんだ。あのフィナーレはそんな意味だったのではないかな。
花男の面目躍如たる(だと私が勝手に思っている)タキシードの男役群舞のセンターにいる極美さんが嬉しかったです。
そしていかにも花組の娘役と思わせる美羽愛さんとのデュエットダンスも夢のようでした。
本編は消化できないままではありましたがフィナーレで多幸感いっぱいになって劇場を後にした公演でした。

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2025/10/27

これでもわりと幸せなんで

9月30日と10月5日に宝塚大劇場にて宙組公演「PRINCE OF LEGEND」「BAYSIDE STAR」を見てきました。
(のろのろ感想を書いている間に10月21日の公演も見てきました)
宙組10代目トップスター桜木みなとさんの大劇場お披露目公演でした。

「PRINCE OF LEGEND」は、なんて贅沢なんだろうと思いました。
パフォーマーのスキルはもちろん、衣装や音楽や大道具小道具、照明etc.宝塚歌劇のリソースを湯水の如く使い、手加減せずに取り組んでいるから成立している作品だと思いました。このクオリティだからこそ面白く見られるのだと思います。

桜木さんが演じるのは財閥の御曹司の朱雀奏という役ですが、このキャラを受け容れられるのは桜木さんの演技力があってこそだと思います。
桜木さんが笑える愛されキャラに演じているからありえない設定に対しても心でツッコミを入れつつ楽しく見られましたが、ちょっと冷静になると果音(春乃さくらさん)は本当にこの人でいいのか?と(前日に見たばかりの「ダンサ・セレナータ」のイサアク的に)思いました。
ピュアすぎて資産もあっという間に溶かしそうだけど。なにより母親の洗脳から解けないままではこの先いろいろと齟齬が出そう。などと。
奏だけではないのですが、瞬発的な笑いと勢いで押し切っているなと思いました。

ヒロインの成瀬果音も、みじめに見えてしまったら見ていられないと思う役なのですが、春乃さんもその加減が巧いと思いました。
果音としての春乃さんの演技が好きだったから私は最後まで興味をもって投げ出さずに見ることができたのかもと思います。

主人公のライバル京極尊人役の水美舞斗さん、学園の理事長実相寺光彦役の愛すみれさん、ヒロインの隣人の美容師嵯峨沢ハル役の叶ゆうりさん。
3人とも組替え後初の宙組大劇場公演出演ですが、前から宙組にいたみたいに馴染んでいて意外でした。
個性的で強烈な役をさらにそれぞれが誇張して演じているので演者個人の背景を考える余地がなかったからかもしれません。全員そうなんですけど彼らも役に徹していて凄いです。

主にショーでなのですが、花組育ちの蘭寿とむさんや朝夏まなとさん、芹香斗亜さんも、組替え当初は「うわぁぁ花組だぁ」と思える眩しい『何か』にときめいた記憶があるのですが、今回の公演ではお芝居ショーともに、水美さんは自身の身体能力や明るい個性を活かした場面でセンターにいることが多くてそういう『何か』を感じている余地がなかった気がします。
ショーの黒燕尾でも同期の桜木さんへのまなざしなど、あたたかさに満ちた雰囲気が際立っていて、むしろ花育ちらしさは封印しているのかしらと思ったりもしました。

愛さんと叶さんはお芝居に雪組育ちらしい『何か』をかなり感じました。(それが何かと考察しだすと書ききれなくなるのでやめておきます)
ここ最近雪組を見る機会が少なかったので、愛さんも叶さんもこんなに頼もしい方たちなんだと新発見した気持ちになりました。これからの宙組になくてはならないメンバーになりそうだなと確信しました。
愛さんは宙組で見てもやはり大きいなという第一印象でした(娘役さんとして)。そのことも手伝ってか実相寺というフリーなキャラクターに説得力があるのが凄い。同期の桜木さん演じる奏の腰が引けるくらいの圧に笑いました。(桜木さんに代わって?実相寺の愛さんを拝みたい気持ちでした。ありがたやです)
叶さんはショーの黒燕尾のときの肘やフェイスラインのあたりに懐かしい宙組を感じました(作品でいうと「ネオ・ボヤージュ」あたり???)。
私は和央さん的な『何か』かなと思ったのですが、友人に話すと大和さんじゃない?と言われてそんな気もするような・・。これから徐々に解明していきたいと思います。

鷹翔千空さん演じる生徒会長綾小路葵は、作品中でも一二を争う奇人だと思いましたが、さすが鷹翔さん、というべきか?違和感なく奇人でした。(もしかして鷹翔さんが演じるから奇人なのかな???)
風変りな役だからこそ鷹翔さんの体幹の凄さを感じられたのかなと思いますし、歌ではシャウトまで聴けてよかったです。

癖が強い役が多くてそれぞれ衣装も学生役ということで制服姿が多い中(生徒会長なのに和装の綾小路さんはなんなんだろう??)、スーツ姿の英語教師役の風色日向さんは、その登場からしてピッカーンと光って目を惹きました。やはり男役のスーツは最高。
と思いきや、この人もまたやっぱり変な人でした。フィアンセの山野桜子さん(山吹ひばりさん)もあんなに素敵なのにやっぱりちょっとアレレ?

風変りな感覚の登場人物がひしめく中で、いちばん普通の学生っぽくていちばん普通の感覚なのは、亜音有星さん演じるヒロイン果音の後輩、天堂光輝かなと思いました。
とつぜん果音を挟んで京極兄弟の弟、京極竜(泉堂成さん)と3人で手をつないで『森のくまさん』を歌いだしたときはえっ?と思いましたけども。
じつをいうと作中でいちばん笑った大好きなシーンでした。
10月21日に観劇したときは亜音さんが体調不良で休演で、代役を聖吐亜さんが務めていました。
聖さんの光輝は弟感マシマシ。『未来を担う原石集団』感強めで5人のチームが粒ぞろいでまとまっている雰囲気がよかったのですが、『森のくまさん』は亜音さんの光輝がクセになっていたので、また亜音さんで見たいなぁと思っています。(千秋楽は復活されているみたいなのでたのしみです)

「PRINCE OF LEGEND」は登場人物の心理を考察するような作品ではありませんでしたが、宙組の未来を担うメンバーが活躍しているのを見ることができるのがよかったです。
京極竜役の泉堂成さん、奏の幼馴染で側近の久遠誠一郎役の大路りせさんの成長が見られたのが嬉しかったですし、おなじく奏の側近の鏑木元役の奈央麗斗さんがこんなにセリフを言っているのを見るのもはじめてな気がして新鮮で頼もしかったです。
新公学年の皆さんが頑張っている姿を見るのは心が弾みますし、新公を卒業した学年の皆さんはこんなにできる人ばかりなんだなぁと感じたのも嬉しかったです。

今回の大劇場公演から組替えしてきた娘役さん、二葉ゆゆさんは美容師ハルの常連客役として前髪をさわってセリフを言うだけでもうかわいいー♡と気分があがりましたし、生徒会の広報担当ミカエル初台役のきよら羽龍さんは噂に違わずなんでもできる娘役さんだなぁと感心しました。
小日向理々花(天彩峰里さん)率いる玄武高専王子研究部のガールズたちの場面が大好きで(なかでも湖々さくらさん演じる副部長の花巻こよみ氏にVIPをあげたいくらい目が離せませんでした)、チームプリンセスが名乗りをあげる場面も毎回わくわくして見ていました。
素敵な娘役さんたちも大渋滞してました。

男役も娘役も皆が輝く作品で楽しく見られて時にはこういう作品もいいなと思いました。
物申すことがあるとしたら、笑いや遊びが度を超すことがないように、ゾーニングしてこそ愉しめる遊びを白日の下に晒すような癖はほどほどでお願いしたいなぁということかな。宝塚歌劇が選ばれるのには、安心して守られるべき子どもたちと一緒に見ることができるからという理由もあると思いますので。
この作品をじゅうぶんに愉しんだら、次はこの贅沢なメンバーで人間ドラマも見てみたいなと思います。

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2025/10/12

手と手を取りあい未来へ

9月29日に梅田芸術劇場メインホールにて、宝塚歌劇星組全国ツアー公演「ダンサ・セレナータ」「Tiara Azul -Destino-II」を見てきました。
星組新トップスター暁千星さんと新トップ娘役の詩ちづるさんのトップお披露目プレ公演でした。

「ダンサ・セレナータ」は、正塚作品は別箱向きなのだなとあらためて実感する作品でした。好みの作品ではないと思っていたのですが、惹き込まれて見ていました。
初演よりも登場人物の関係性や時局などがわかりやすくなっていた気がします。

暁さん演じるイサアクと瑠風輝さん演じるホアキンの場面がとても印象的でした。
ずっと宙組が好きで見ているので、宙組育ちの男役さんが他組に混じった時に一際感じる独特の佇まいにときめくことが多々あるのですが、瑠風さんにもそれを大いに感じてときめきました。
具体的にどこが宙組育ちと感じるのか言い表すことは難しいのですが、長身に映える着こなしとか立ち姿はもちろん、目線の高さも特徴かなぁと思います。
瑠風さんと相対する暁さんも長身でしたので、いっそうその目線の高さが感じられたのかもしれません。
暁さんのイサアクに負けていない目をしたホアキンだったと思います。

正塚作品に登場する男性のなかにはモラハラやマンスプ臭が鼻につく人物がいて、イサアクもそのタイプだなぁと思ったのですが、暁さんが演じると嫌じゃないかもと思いました。
上からの命令口調が嫌だなと思ったりもするのですが、どこか隠せないやさしさが滲み出る人物だったので見ていて救われたのだと思います。
こういう態度になるのにはきっと訳があるにちがいないと思わせるものがありました。(じっさいにシビアな過去のある人だとわかって納得できました)
相手役のモニカを演じた詩ちづるさんがイサアクに対して委縮せずしっかり対峙していたのもよかったと思います。イサアクとモニカのバランス次第では見ていてつらかったかもしれません。
私にはとても良い塩梅の2人に感じられました。

植民地の独立運動に携わる者、秘密警察、それぞれに思惑を抱く軍人たち、革命前夜の混沌のなかで懸命に日常を生きるクラブダンサーたち。演者のひとりひとりがつくり出す時代性が物語に説得力を与えていたと思います。
その重苦しい雰囲気漂う中で張り詰めた気を抜いてくれるクラブの支配人フェルナンド(凛城きらさん)、イサアクの同僚ルイス(大希颯さん)、モニカの友人リタ(乙華菜乃さん)がいかにも正塚作品らしくて、またその役目をしっかりと担っていていいなぁと思いました。
イサアク役の暁さんとの絶妙なかけあいが面白いルイスを見ていて「ホテル・ステラマリス」のガイ・プレスコットを大希さんで見てみたいなぁなどと思いました。あの空気を読まないナチュラルボーンで風変りな人物を笑。
乙華さんはこのところ私の中で急上昇中の娘役さんなので活躍が嬉しかったです。正塚芝居独特の笑いの間をしっかりと表現されていてブラボー!と思いました。

星組で正塚作品を見るのは久しぶりでしたが、丁寧な芝居づくりと情熱、そしてダンサブルなショーシーンがとてもいまの星組に合っているなぁと思いました。

「Tiara Azul -Destino-II」は、大劇場で礼真琴さんと舞空瞳さんの主演コンビで上演された「Tiara Azul -Destino-」が大好きでしたので、新トップコンビ暁千星さんと詩ちづるさんでの続編がどうなるのか楽しみにしていましたが、これまたお2人にピッタリの楽しいショーで大好きになりました。

大劇場公演で2番手だった暁さんが演じたイグナシオ(作中でふられっぱなしでした笑)が、1年後のカルナバルシーズンに自分を見つめなおす旅から戻って来たという設定が面白いなと思いました。
物語のはじまりで礼さんが失恋の傷心を歌っていた曲を歌詞を替えて、こんどは娘役の詩さんが歌っているのも面白くて、これから暁さんのイグナシオと詩さんのクララがどういうラストを迎えるのか興味津々で見ていました。

星組新トップコンビは「すごく宝塚」だなぁという印象でした。身長差とバックハグにときめきました。
詩さんのちょっぴり勝気そうなクララをまるごと包み込む暁さんの包容力が少女漫画のようでした。
イグナシオとクララのふたりだけの夜明けのダンス、そしてフィナーレのデュエットダンス、それぞれ大劇場とはちがうストーリーになっていて、これから新トップコンビとして歩んでいく2人への愛がたっぷりで素敵でした。
タイトルにもなっているティアラは、今回はダンスのはじまりに暁さんが詩さんにつけてあげていて、ティアラをつけて踊るのも可愛いなと。「見上げてごらん夜の星を」の曲で幸せそうに踊る2人におもわずうるっとしてしまいました。

大劇場公演とおなじくショーの中盤は全力カルナバルでとにもかくにも踊りまくり。全国ツアー公演ということで客席降りもあったりしてさらに盛り上がりました。
私個人としては「こんなに激しく情熱的に踊っている瑠風さんをはじめて見たかも?!」と新鮮でした。
星組にとっても瑠風さん個人にとっても良い組替えになったんじゃないかなと思います。

お芝居でもショーでも踊りまくりの公演なのでこれで全国を回るのはなかなかに過酷だなと思いますが、どうか星組の皆さんが元気に千秋楽まで完走できますように。
私は1公演だけですが広島公演を見に行くことができるので、初日間もない梅田芸術劇場公演からの進化を楽しみにしています。

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2025/09/08

哀しみで女は殺せない

8月22日に梅田芸術劇場メインホールにてミュージカル「コレット」を見てきました。

地元の友人から誘っていただき公式HPを確認したところ、明日海りおさんが主演で花乃まりあさんのお名前も。これはぜひ見に来たいと思い、1遠征で雪組宝塚バウホール公演「ステップ・バイ・ミー」と合わせて見られるといいなぁと計画を立てました。
観劇が決まったあとで改めてキャスト陣を見直すと七海ひろきさんのお名前もあるではないですか。宝塚退団後の七海さんの舞台姿を見るのは2021年のエリザベート・ガラコンサート以来です。明日海トート、花乃シシィを見たくてコロナ収束前でしたが東急シアターオーブまで見に行った時のことを思い出しました。(幕が上がって舞台上に大月さゆさんの姿もみつけてさらにテンションがあがりました。89期が3人。エリザ・ガラコンにもマダム・ヴォルフで出演されてたなぁ)

・・と、ほぼキャスト目当てで見に行ったのですが、これがとても面白くて引き込まれる舞台でした。
オリジナル・ミュージカルというと真っ先に「スワンキング」が頭に浮かびちょっと心配もありました。女性キャラの描かれ方に共感できなかったのと音楽が真面目すぎるなぁと思った記憶があって。
「コレット」はその真逆で、明日海さん演じる主人公コレットはもちろん、ミッシー(七海ひろきさん)、メグ(花乃まりあさん)、シド(前田美波里さん)、ジョルジー(大月さゆさん)、シャルロット(可知寛子さん)、ボレール(コイタ奈央美さん)、イザベル(伊宮理恵さん)と登場する女性キャラが揃いも揃って個性的でイキイキとしているのがとても面白くて引き込まれて見てしまいました。
音楽もとてもおしゃれで気持ちが盛り上がりました。コレットが夢中で物語を書き付けるときのナンバーは明日海さんの魅力が眩しかったです。二度目の夫アンリ(吉野圭吾さん)の愛人イザベルのぶっとんだナンバーも印象的でした笑。どのナンバーも自然に心に入って来た気がします。
見終わってから「スワンキング」が「コレット」とおなじG2さんの脚本・演出で、音楽もおなじく荻野清子さんだったと知り不思議な気がしました。
「スワンキング」は頭では理解できても惹き込まれることがなかったのは、たとえ時代の先端をゆく気鋭の芸術家たちであっても19世紀の男性優位が当然の考え方に根付いたかれらの言動と、パターナリズムの下で無力化された女性の姿ばかり見せつけられたからかなぁと思ったりします。
一方「コレット」に登場する女性たちは、やはり20世紀初頭の男性優位の社会を生きてはいるのですが、女性1人で生きていけないのなら誰と生きるのかどう生きるのか、それぞれに自分で考え選んで生きているように見えました。

田舎育ちの世間知らず、夢見がちでありながらも行動力だけはある危なっかしい少女だったコレットが、パリでやり手の文筆家(ゴーストライターたちに自分の名前で小説を書かせている)ウィリー(今井朋彦さん)と結婚し、彼との生活や彼の仕事ぶりから人生や文学の学びを得ていき、自分を夢中にさせるものに打ち込み、タブーをものともせずに自分がやりたいと思う生き方を邁進していく姿はとても清々しく快かったです。明日海さんは物語に惹き込む力が凄いなぁと思いました。
夫に対抗するために夫の愛人シャルロット(可知さん)に教えを請う場面もとても魅力的でした。シャルロットもさいしょは面食らった様子だったのがだんだんコレットに惹き込まれ面白がってレクチャーしていくのが面白かったです。(こういうシスターフッドとても好きです)
アメリカ人のジョルジー(大月さん)とも彼女の誘惑のままに関係を持って悪びれないところ。けっきょくジョルジーはウィリーとも関係があり彼の思惑で動いていたというとってもベルエポック的なエピソードですが、爛れた感じになっていないのは演出の意図と明日海さんの持ち味なのかな。

男装の麗人ベルブーフ侯爵夫人で愛称ミッシー役の七海ひろきさんは声が宝塚時代とちがっていてちょっと驚きました。男役の声というより高めの若い男性の声に近いような。声優としても活動されているんだったなぁと退団後のキャリアに思いを馳せました。
男装姿も宝塚時代と変わらずスマートでカッコ良くて、まさに長身の元男役だった七海さんにぴったりのキャスティングだなぁと思いました。
ナポレオン3世の姪として公爵家に生まれ侯爵を夫としながら同性愛者として、さらに当時の社会規範では同性愛以上にタブーとされた男装を貫き好奇の目に晒されながらも堂々と自分の生き方を選択しているミッシー。
『ぬくぬくとした自由なんてどこにもありはしない/自由と孤独をひきかえに切り開いて歩く棘の道 』とコレットに歌いかける言葉が重かったです。コレットに多大な影響を与えた人だなぁと思いました。
生きる糧を得るために労働する必要のない人だからできることもあるのかと思いました。

コレットがウィリーのもとを飛び出したあと、コレットにとって代わろうとウィリーのパートナーとなったメグ(花乃さん)。
そもそもウィリーってそんなに魅力のある男性なのかなと思ってしまうのは生きている時代が私と彼女たちとではちがうからかな。社会的地位や立派な身なり、自信にあふれた言動は、パートナー選びが生きる手段である当時の女性から見たら魅力的なのかもしれないなぁ。
なによりメグはコレットがウィリー名義で書いた小説の主人公クローディーヌになりたい人なんだろうなぁと思いました。「クローディーヌ」はコレットが自分を投影した小説なので、つまりコレットになりたいのだろうなぁ。ウィリーをパートナーとしたのもそういうことかな。
自分がコレットに代わって彼女が居た場所に座り、さらにコレットよりも上位に見せようと悪戦苦闘。あの手この手でコレットを陥れようとする様はまるでアニメの敵役のようでコミカルで面白くチャーミングにも見えました。花乃さんが宝塚の宙組時代に演じた賞金稼ぎの役なども思い出して懐かしい気持ちにもなりました。(七海さんが主演の1人だった作品でした)(花乃さんははっちゃけると面白可愛いんですよね)
コレットを陥れる作戦自体はぜんぜん上手くいっていないのに、ウィリーもなんだか楽しそうだなと思いました。いい悪役コンビみたいでした。(ロケット団みたい笑)

コレットにとってのシャルロット、ジョルジー、そしてミッシーと、フィジカルな関係があるかどうかは抜きにして、彼女たちは新しい時代を生きる女性としてコレットが階段を上っていく先に仰ぎ見た道標のような同性なのだろうと思います。
メグにとってはコレットがそれにあたるのかもしれないと思いました。
でもコレットが臆することなく彼女たちの懐に正面から飛び込んでいき何某かを学びとるのに対して、メグはコレットに嫌がらせをすることでしかアプローチできないのだなぁ。憧れる気持ちを拗らせているように思いました。
19世紀から20世紀へと時代は移り行き、都市で生きる人々を取り巻く環境や意識が大きく変容していくなか、新しい時代の雛型としての女性像もない。それを探し続け先鋒を歩き続けた1人がコレットなのだろうなと思います。
それでいて尖り過ぎてもいない自然体でチャーミングなのは田舎で母親シド(前田美波里さん)の愛情をしっかりと受けて育ったからかななどと思いました。旧時代の女性でありながら娘を古い型に押し込めようとせず、コレットが舞台やレポタージュに追われて小説を書けないでいる時代でもずっと小説を書き続けるよう助言する姿を見ていると、娘の本質を知る母としてその人生の実りを願うと同時に、彼女にとってもコレットは希望なのかなぁと思ったりもしました。母としても、もしかして1人の女性としても。

20歳で14歳年上の文筆家ウィリーと結婚、彼のもとから飛び立ち、時代の社会規範から外れた女性たちに学んだのちは、年下の男性たちから愛されるようになるコレット。社会的に認められ、経済的基盤もできてギブすることができるようになると自ずとそうなってしまうのかな?
ミュージックホールのダンサー時代のファンであるエリオに、語り部で終盤に正体がわかるベルトラン。ともに大東立樹さんが演じていました。
親子ほど年上で自分に正直すぎる掴みどころのない女性に憧れ恋愛関係になるってどういう感覚でどういう気持ちなんだろうなと思いました。

いまから100年前、世の中の価値観が大きく変わる時代を生きたコレットの生き様が主演の明日海りおさんと脚本演出のG2さん音楽の荻野清子さんらの手によって鮮やかに興味深く描き出された作品でした。
大人の感覚のミュージカルという点も新鮮でした。
2025年のいま見られてとてもよかったなと思います。

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2025/08/31

チアーユーアップ!

8月21日に宝塚バウホールにて雪組公演「ステップ・バイ・ミー」を見てきました。
演出家菅谷元氏のデビュー作であり、雪組の注目の若手男役、華世京さんの初主演作でした。

華世京さんのことは入団当初から注目されている男役さんと認識していましたが、コロナ禍以降数えるほどしか雪組を見る機会がなかったため、なかなか舞台上の姿を認識できないでいました。それでも偶々見たCSの番組で物怖じしない明るい雰囲気に惹かれるものがありました。
その華世さんの初バウがいよいよ上演されると知り、これはぜひ見てみたいと思って観劇を決意(決意したからといって簡単に見られるわけではもちろんないですが運よくチケットを手にできました)。
ちょうど星組のあれやこれやや家族のことなどでてんやわんやしていて、前情報も頭に入れることなく観劇したのですが、とても引き込まれる舞台で見に来てよかったと心から思いました。
もとより雪組は上級生はもちろん、下級生もお芝居が巧いなぁと観劇のたびに思うのですが、今回さらにその印象が深まりました。

作品のタイプとしては、激動の時代を生きた人びとをドラマティックに描くという類いではなく、自身の課題や苦しみを抱えて日常を生きている人びとに起きた出来事を通じて、彼らがそれらをどう捉えてどんなふうに向き合っていくか。登場人物たちの心や人生を感じて私自身も背中を押されるような、日々のなにかを肯定的に受け取る糧にできるかもという作品だったと思います。
それだけに「見せる」ことが難しい作品だったと思うのですが、集中して見ることができたのは華世さんや演じた雪組生の力量と魅力によるところが大きいと思いました。
構成の配分も冴えていて、チアダンス、ハロウィーン、プロムなどキャッチ―なシーンの入れ込みが絶妙でまるでショーを見ているような感じで楽しかったです。
10年前の主人公の大学入学からその年のプロム(卒業ダンスパーティ)直前までの学生時代のシーンが展開していたのにそれがそのまま映画のワンシーンとして10年後の今につながる演出も面白いなぁと思いました。
入れ子になっているストーリーに戸惑うことなく見られたのは、演出の巧さと主演の華世さんをはじめとする演者の力量によるものだなぁと思いました。

主人公ユージーンを演じる華世さんは小顔でとてもスタイルがよく、常に目を惹く華やかさのある舞台姿で、はやくから注目されてきたのも肯けました(はっきり申しましてとてもタイプの等身バランスでした)。そのうえでお芝居もダンスも見る人を引き込む力があるバランス型の演者さんだなぁと思いました。
倦んだような厭世気味な現在の青年俳優の姿、恋にも青春にも怖いものなしのまっすぐな10年前の学生の姿(一方で家族の問題も抱えながら)を一瞬で演じ分ける華世さん。
10年前のユージーンの想い人リリーと今の映画の相手役エイミーを演じ分ける星沢ありささんも凄いなと思いました。リリーのときはちゃんとユージーンより年上に見えるんですよ。(華世さん演じるユージーンも彼女より下級生に見える!)と思っていたら連続したシーンなのにある一瞬でユージーンとは面識の浅いエイミーに見えちゃう。
華世さん研6、星沢さん研4? 嘘でしょう?という感じでした。

華純沙那さんが演じていたチアのキャプテンのジェシカが素敵でこちらも目が離せませんでした。強気にずんずん周りの人をチアしていく感じなんだけど弱みもあって(ベンのことが好き)。彼女のおかげで一歩前に踏み出せた人がたくさんいそうなのに(ユージーンもリリーも)自分のことになると奥手?みたいなそんなところも愛おしい人でした。
華純さんはそんなジェシカを本当に素敵に演じていていいなぁと思いました。チアダンスも最高でしたし(チア全員良かったです)、プロムで踊る時もちゃんとジェシカだし。ジェシカ大好きでした。
(華純さん気になって調べたら106期娘役さんなんだなぁ。最近好きになる娘役さんが106期ばかりで・・咲き香る時期なのかなぁ娘役さんの研6って)
エイミーの友人のサラ(愛陽みちさん)とアリソン(白綺華さん)もチアのメンバーも雪組は下級生まで娘役さんが芝居上手なんだなぁと思いました。

諏訪さきさんが演じたベンも良かったなぁと思います。存在(生き様)にメッセージがあって、諏訪さんがそれをちゃんと担ってたなぁと思います。
ユージーンの兄フレッド(眞ノ宮るいさん)もただの嫌われ役で終わらず内面の屈折や成長が見えるのが良いなぁと思いましたし、製薬会社勤務のジャック(咲城けいさん)も突き進んでいた道から降りる勇気があるの良いなぁと思いました。
ご都合主義に思わせない芝居や展開が心地よかったです。
大団円にまとめるのにけっこう端折っちゃったなと思うところもありましたし、やっぱり持つべきものは太い実家だなぁなんて思ったりもしましたが、実家が太い人にしかわからない苦悩もあるよねーと納得もしてしまうのは、演じる人たちがしっかりと埋めているものがあるからだなぁと思いました。専科の英真なおきさんに組長の奏乃はるとさん、真那春人さん、杏野このみさん、桜路薫さんと頼りになる上級生が担っているものも大きく、芝居に没入できた所以かなぁと思います。

若手の演者さんたちの未来に向かって身を正すまっすぐさや清々しさを浴びることができて、なおかつ新公学年の生徒さん主演作としてはかなりレベルの高い舞台を見ることができ、悦びと満足感いっぱいの観劇体験でした。
なにもわからない状態でほぼ直感で観劇を決めたのでしたが、アタリだったなとその時の自分を称賛したい気分です。
(こうなってくると雪組の下級生も応援したくなるな~と思いはじめていて、またまた自分で自分の首を絞めてしまった感もありますが・・遠征控えようと思っているのに・・)

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2025/08/25

軒端の梅よ春を忘るな

8月7日博多座にて、歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」「大喜利所作事 舞競花刀剣男士」を見てきました。
「刀剣乱舞」はミュージカルもストレートプレイも見たことがなく、ついていけるかな?と不安もありましたが、松也さんや獅童さんが出演されるので見てみようと思いました。

開演前には緞帳にどのような世界観の舞台であるかが文章にて映し出されていて観劇の助けになりました。また演者の方(舞台を見て「時間遡行軍」の方々と知る)が開演前の客席通路を扮装姿で練り歩き刀を構えて見せてくれたりとはじまる前から気持ちも盛り上がりました。
舞台の冒頭には名乗り?の場面もあり、キャラ立ちもはっきりしていたので登場人物がわからなくなることもなく、ストーリーも有名な鎌倉幕府3代将軍源実朝の暗殺に絡んだものなので、置いて行かれるということもなく愉しむことができました。

尾上松也さんが刀剣男士の年長者?の三日月宗近役と敵役の羅刹微塵の2役であること、河合雪之丞さんが小烏丸と北条政子、尾上左近さんが加州清光と実朝の御台倩子姫のそれぞれ2役なのもわかりましたが、陸奥守吉行役の中村歌昇さんが実朝を、同田貫正国役の中村鷹之資さんが公暁を演じていることは幕間に一緒にお茶をした方に教えていだたくまで気づきませんでした。
土佐訛りで粗野な雰囲気の陸奥守と公家好みで内向的な実朝を演じている方がまさか同一人物とは思いもよらず。
それを知ってからは、歌昇さん(陸奥守)につっけんどんな加州清光と歌昇さん(実朝)の身を案じる可憐な倩子姫のどちらも尾上左近さんが演じていることにときめきました。
クライマックスで舞台に雪積もる鶴岡八幡宮の大石段が登場した時は胸踊りました。大階段を見ると気分が盛り上がるのは宝塚ファンのさがでしょうか。

刀剣乱舞という新作歌舞伎を見て思ったのは、歌舞伎の所作の理解しやすさ、セリフの聞き取りやすさです。
初めて見る世界観をとてもわかりやすく見せてくれて置いていかれることがなかったのは歌舞伎が持っている力、決まり事や所作、セリフ回しのわかりやすさゆえのような気がします。

本編の「東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)」の幕が降りると案内人の武彦さんと押彦さんのコンビが登場して、芝居の結末について(公郷と思しき修行僧について)とこれから始まる所作事について軽快に漫才のようなかけあいで説明されたのがとてもツボにはまりました。説明が終わるとスッと真顔になり所作事の後見に回られたのも素敵。

刀剣男士の演者が役のままで舞い踊る「大喜利所作事 舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」も見応えがありました。
髭切と膝丸が「三番叟」を踏む。揃いの浴衣に袖を通し、お国にちなんだ民謡を踊る―—同田貫正国のご当地熊本の民謡「おてもやん」のときにひときわ手拍子が大きかったのは九州ゆえかなと思ったり。
河合雪之丞さんの小烏丸の玉蟲、松也さんの三日月宗近の那須与一の物語の舞踊は二重に美味しい演目でした。
中村獅童さんの鬼丸国綱による白頭の獅子が2頭の赤頭を引き連れて激しく毛振りをする場面はこれぞ歌舞伎だなぁと、そして凄くロックだなぁと思いました。
新作狂言のあとに所作事(しかも役に扮しての)がフィナーレのようにあったことでいっそう世界観が身近に感じられて面白く愉しむことができました。
つぎは刀剣男士が歌舞伎役者に扮しなくてはならないなんらかの理由付けで刀剣男士による「義経千本桜」などを見てみたいななどと思いました。

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2025/07/27

つかの間のやすらぎ

7月20日に宝塚大劇場にて「悪魔城ドラキュラ」「愛, Love Revue!」を見てきました。
千秋楽にして初見でした。

「悪魔城ドラキュラ」は人気ゲームの宝塚歌劇化ということでしたが、プレイしたことがないゲームでしたし、正直なところ初見ではどのように愉しめばよいのかいまいちわからないまま終わってしまいました。

ビジュアルは最高でした。タカラジェンヌと宝塚スタッフのコスチューム&メイクの作り込みは想像の遥か上を突き抜けていくなぁと。
装飾過多なゴシック調のコスチュームが映えるタカラジェンヌの等身ときたら。
二次元から起こしたデコラティブなコスチュームを三次元の空気や重力をも味方につけて華麗に翻して踊る、立ち回る、舞台センターの主人公アルカード(永久輝せあさん)やリヒター(聖乃あすかさん)はもちろん、舞台後方の高みから厳然と見下ろすドラキュラさま(輝月ゆうまさん)も舞台端でポージングしているサキュバス(侑輝大弥さん)やマグヌス(希波らいとさん)はじめ、誰もが3Dのどこからみても隙なく美しい。これこそが宝塚だなぁと惚れ惚れしました。
そしてそれに加えてマリア役の星空美咲さんの歌声も。
近年のタカラジェンヌの実力レベルの向上には驚くばかりです。

世界観もドラマティックで宝塚に合っていて、演じている人たちもそれぞれのキャラクターとしての行動原理を理解してその思いを胸に舞台でその生を生きているのも伝わりました。
が、如何せんストーリーの構成が甘いというのかエピソードが弱いというのか、ゲームの1シーンやセリフの再現度は高いのだろうけれども人物の行動やそこにある葛藤がプロットをなぞっただけになっていて勿体ないなぁと思いました。
舞台セットもバウ公演のようで大劇場公演に期待するダイナミズムが希薄で、ほぼ演者頼りの印象でした。
宝塚歌劇、宝塚大劇場というリソースが活かしきれていないのが勿体なく思えて歯痒く感じました。
原作ゲームのファンで宝塚歌劇を初めてご覧になる方々に対して「宝塚、こんなもんじゃないっす」と弁明したくなるような、ただの宝塚ファンでしかないくせに謎の焦燥感が湧いてしまって、本当だったらもっと作品に没入していただろうものができなかったのかもしれません。私自身の煩悩ゆえの敗北かな。
そんな煩悩をひととおり通過して2度目からが愉しかったのだろうなと思いますが、1回しか観劇を予定していなくて残念です。
(東京公演の千秋楽ライブは楽しく鑑賞できるかな)

「愛, Love Revue!」は岡田敬二先生のロマンチック・レビューの23作目ということで、プロローグの宝塚の名曲「I LOVE REVUE」からはじまって、「初恋」「ラモーナ幻想」「愛の誘惑」「熱愛のボレロ」など時代を超えた懐かしい場面の連続で、その古めかしさをいまの生徒さんの感覚でパフォーマンスされるのが逆に新鮮に感じられました。
「愛の誘惑」の楽園の蛇さんの聖乃あすかさんの妖しい美しさに撃ち抜かれ、「熱愛のボレロ」の永久輝さんの三白眼に魅入られました。ラモーナの星空さんの歌声に安堵を感じるのも新鮮でした。

この3か月間主に星組「阿修羅城の瞳」に浸っていたこともあって、あらためて宝塚歌劇の振り幅の大きさを噛みしめています。
そしてどんなジャンルであってもビジュアル(演者自身も舞台美術も)が抜きんでていること、それこそが宝塚歌劇の真骨頂だなぁとも思います。
その中でも花組のビジュアルはハイレベルだと思いました。
この美しい花組に星組から極美慎さんが異動してくるんだなぁ。さらに目が幸せな組になっちゃうなぁと思うとこれからの花組公演も見逃せません。高齢の家族のこともあり遠征を減らす方向で考えているのだけどなぁ。困りました。(願わくはその如月の望月の頃)

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2025/07/23

糸の芯まで真赤に染まる

7月2日と17日に東京宝塚劇場にて「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」を見てきました。これで私の「阿修羅城の瞳」生観劇は最後になるだろうと思います。

最高のエンターテインメントでした。
どこまでゆくのかどこまで極めるのか礼真琴!と。セリフ回しも間合いも殺陣も歌も、見得を切るときのつま先から頭のてっぺんまでも、どこをとっても胸がすく爽快感。満足と納得のリフレイン。このレベルのタカラジェンヌに私はもう二度と出遭えないかもしれないなどと思うなど。奇跡を見ているような心地がしました。

星組生の集中力も凄まじいなと思いました。どこにも隙がない。
宝塚大劇場公演からいちばん変化を感じたのが邪空(極美慎さん)でした。出門(礼真琴さん)への執着が尋常ではない大きさで彼の内側で渦を巻いているのが感じられました。
銀橋でのソロナンバーはオケとも相俟ってとってもロックテイスト増し増しでよかったです。
おなじく宝塚大劇場公演で存在意義がいまいち薄いと感じた毘沙門(天飛華音さん)と大黒(稀惺かずとさん)の存在感が見違えるほどに増していたのにも驚きました。2人ともセリフのタイミングがすごく良くてコミカルな表現(アドリブ)も場面に添っていて楽しかったし、鬼に身体を乗っ取られているときの打って変わった表情、立ち姿も目を惹きました。

宝塚大劇場公演の初見でつばき役の暁千星さんに感じた躊躇のようなものも東京公演ではまったく消えていて、愛嬌と妖艶さと凄味がその身から溢れ出る暁さんゆえの紛う方なきつばきが存在していました。
礼さんの出門からつばきへの愛、つばきから出門への愛が宝塚大劇場公演で見た時よりもいっそう深まっていて、この愛があるからこそのこのドラマなんだと納得しかありませんでした。

「阿修羅城の瞳」を見てつくづく思うのは、星組の娘役の層の厚さでした。
前作までは星組のザ・プリンセスな舞空瞳さんがいて、彼女に心奪われていたこともあって気づいていなかった自分の迂闊さにデコピンしたい気持ち。星組には素晴らしい娘役さんがこんなにいたのだなと思い知った心地でした。
詩ちづるさん演ずる桜姫は宝塚大劇場よりもさらにパワーアップしていてもう見ていて楽しくて仕方がありませんでした。
17日は賀茂白丞(朝水りょうさん)南雀(蒼舞咲歩さん)が揃って「さしすせそ」「たちつてと」を「しゃししゅしぇしょ」「ちゃちちゅちぇちょ」に拗音化して話すのが可笑しくて(古語の発音っぽくもあり)、それがまさかの江戸っ子の桜姫や出門にも移ったりもして笑ってしまいました。

少女役の茉莉那ふみさんの巧さには目を瞠りました。芝居も歌も、出門に斬られる勢いで弧を描いて駒のように回転し倒れるところは吸い込まれるように見惚れていました。
笑死役の瑠璃花夏さんも逢魔が時に手鞠を抱えて佇む姿、無垢な声音で禍々しい童歌を歌うところ、無垢な声色が俄かに魔を帯びるところ、どれをとっても独特の雰囲気を纏っていて思わず見入ってしまいました。

この公演を最後に専科に異動となる美惨役の小桜ほのかさん、この公演で退団する阿餓羅役の白妙なつさん、吽餓羅役の紫りらさんの巧さ、娘役としては珍しく武器をもって戦う場面も見事に演じて頼もしくも感じるにつけ彼女たちが星組からいなくなるのは痛手だなぁと思います。
でも新人公演で鳳花るりなさん、瞳きらりさん、詩花すずさんがこの難しい3役をしっかりと勤めていたのを見て、星娘の気概、技術はしっかり受け継がれているのだなぁという感慨も覚えました。
そんな彼女たちが本公演では鬼や桜姫の侍女たちの中にいて、あの巧さでもいまの星組ではそうなるのだなぁという層の厚さを痛感しました。新人公演で桜姫役だった乙華菜乃さんもおなじくです。

ショー「エスペラント!」はやはり選曲が好きだなぁと思いました。
「ニカの夢」~「チュニジアの夜」~「The Shadow of Your Smile」のナンバーと男役のカッコ良さがたまらなく好きでした。
黒燕尾の男役と夜会服の娘役の「Stardust」~「Smile」もハッピーで大好物でした。
スタンダードナンバーをクールに歌い踊る近年のタカラジェンヌに惚れ惚れしています。
今回もハイレベルのパフォーマンスを軽々とこなす星組生に圧倒されていたらあっという間に終わってしまうショーでした。

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2025/07/08

甘くて弱くて美しい

7月1日に東急シアターオーブにて宝塚歌劇宙組公演「ZORRO」を見てきました。
宙組新トップスター桜木みなとさんのプレお披露目公演でした。
観劇していちばん印象に残ったことは、こんなにトップスターに遠慮がない宙組生をはじめて見た!でした。

宙組のトップスターといえば1998年組発足時の初代トップスター姿月あさとさんからはじまって先代の芹香斗亜さんまで全員が、『すでに他組で活躍していたスターが異動した宙組でトップに就任した』パターンでした。
桜木さんが10代目にして初の宙組配属宙組育ちのトップスターな訳ですが、ともに新人公演のお稽古をしてきた、あるいは番手スターとなるまでの成長の過程を身近で見てきた人がトップスターに就任すると組子はこんなかんじになるのかぁと思いました。

さて「ZORRO THE MUSICAL」についてですが、宙組生によるフラメンコのパフォーマンスが素晴らしい作品でしたが、物語にはいまいち入り込めませんでした。
声でわかりそうなものなのに察しの悪いヒロインだな。マスクのオンオフでの二面性を表現しているのだろうけど、一方は情けない腰巾着、もう片方はマスクで顔がわからないじゃ主人公にときめかないなぁ。などなど。
なぜそうなるの?という疑問が解決されないままに物語がすすむので釈然とせず、登場人物の感情にリアリティを感じることができませんでした。
いちばんリアリティを感じたのは、父親に見捨てられた敵役のラモン(瑠風輝さん)の心情だったかなぁ。

主役のディエゴに関しては、ロマの仲間と行動を共にしその人生観に触れて息苦しさから解放されたように見えるのに、恋人にはロマのイネスは選ばないんだなぁ。疑いもなく自分とおなじ支配階級の娘ルイサを選ぶんだなぁ。とそういうところもわだかまりを感じて推せない主人公でした。腰巾着をしている姿も必要以上にカッコ悪いのもあって。
そんなディエゴをかばって命を落とすイネスへのやるせなさばかりが募りました。心弱っている人をほうっておけない、ついついケアする立場にまわってしまうイネスに胸が痛くなったりしながらも登場人物のなかでいちばん好きでした。
自分をかばってイネスが亡くなったばかりなのに即ルイサと結ばれる展開もディエゴに惹かれなかった理由かもしれません。

好きだったところは、泉堂成さんのホアキンが登場するたびにいつも謎にかっこよかったこと。少年ディエゴの美星帆那さんと少年ラモンの梨恋あやめさんが可愛かったこと。幕開きの小春乃さよさんと嵐之真さんの歌。物乞いのときの不思議な歌(前回大劇場公演でお顔を覚えた風翔夕さんも歌ってた!)。フラメンコとジプシー・キングスを大勢で歌い踊るところ。1人ひとりが輝いていたところ。です。

パフォーマンスには満足で次回の大劇場公演が楽しみだなぁと思いました。
願わくは登場人物たち、そして演じている人たちにときめきが感じられる作品でありますようにと思います。

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2025/07/07

おびんちゃん

6月24日に六月博多座大歌舞伎(昼の部)を見てきました。

5月は星組観劇に関西まで数往復、地元ですが月組全国ツアー公演にも通うので、七之助さんは気になるけれど6月の観劇はお休みしようと決めて博多座会への申し込みはしていませんでした。
・・が、6月に入ってついついオンラインチケットを覗いてしまい、仕事がない日に1階特Bのとても見やすい席が空いているのを発見して思わずポチり。当初の決意はどこへやらで博多座へ行ってまいりました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」「お祭り」「福叶神恋噺」ともに心にじんわりと効いてくる演目で見に来てよかったなと思いました。

「双蝶々曲輪日記 引窓」ではお幸とお早を演じられた中村梅花さんと中村鶴松さんの所作に見入っていました。どの所作にも意味が見て取れてしかも自然で凄いなぁと。
嫁のお早が「笑止」と笑うのを、姑のお幸が廓言葉を使ってはおかしいとたしなめる時の言い方がちっとも嫌味がなくて愛情深く聞こえるのもすごいなぁと思いました。
劇中お早は二度ほど「笑止」と笑ってその都度お幸は窘めるのだけど、そのやりとりが微笑ましくて素敵でした。
きっとこの日だけではなくて、お早とお幸は日々こんなやりとりをしているのだろうなぁと。うっかり出てしまうお早の廓言葉もお幸に気をゆるしてのことだろうなぁとも思いました。
色里の出身であることを絶対に表に出すまいというような強情ではなくて、朗らかに日々の仕事に勤しみ無邪気に笑うお早と、だめなことはきちんとたしなめながらお早のことを受け入れているお幸の関係が見ていて涼やかでした。
互いにリスペクトがあり思いやりと素直な心で居心地の良い家庭を営む2人の女性。
そんな幸せな情景を見ていたところに来訪者が。

訪れたのは5つで里子に出したお幸の息子でいまは濡髪という四股名で相撲取りとなっている長五郎(福之助さん)。
家父長制を生きるお幸の人生がそこにはありました。

いまより寿命が短く夫婦が1人の相手と生涯を連れ添うことはなかなか難しい時代。
出産後に病いに臥し子を遺して亡くなる女性も多く、そうして連れ合いを亡くした男性は家政の切り盛り、子の養育、自分も含めた家族のケアのために後妻を娶るのが義務のようなものだったかと。
継子や継母はめづらしいことではなかったでしょう。

お幸と先妻の子である与兵衛(橋之助さん)もまさにそういう関係で、お幸の愛情をうけて与兵衛は育ったのだろうなぁと思いました。
しかしお幸は後妻に入る前に5つまで育てた実の子を里子に出したと語っていました。連れ合いを亡くした女性が1人で子どもを育てる選択肢はほぼなかったのでしょう。
里子に出した手前、里親に遠慮して会いに行くこともできず、ようやく母子が会えたのは長五郎が成人して里親も亡くなった後、所用で出かけた大坂で偶然に。うれしさはいかばかりだっただろうと思うけれど、話をしただけで別れて戻って来たと。

その長五郎が自分を訪ねてきた。人を殺めて追われる身となって。お幸の気持ちを思うとせつなかったです。
長五郎を召し捕る役目を仰せつかったのが継子の与兵衛。代々郷代官を勤めてきた家に生まれて、本日ようやく晴れて郷代官に取り立てられたばかり。その初仕事が長五郎の召し捕りという。

お幸を思って夫を止めたいお早。
すべてを察してお幸のために初手柄を捨てて長五郎を逃がそうとする与兵衛。
与兵衛の気持ちに心打たれて自ら縄に掛かろうとする長五郎。
実の子と継子への思いに揺れるお幸。

実の子の長五郎に婚家と継子への義理を説かれて、よう言うてくれたと覚悟を決めて実子を縄に掛けようとするお幸。
母の情よりも婚家への義理を重んじなくてはいけない人生なのだなぁと思いました。
このお幸の気持ち、いまの世の若い人たちにもつたわるかしらと思いながら。
歌舞伎だからこそ味わえる世界観に浸れて良かったです。

「お祭り」は、ほろ酔い気分の鳶のお頭(勘九郎さん)が陽気にいなせに祭りに集う人びとと絡んでいく舞踊でした。
勘九郎さんや鶴松さんたちの身体能力にひたすら目を瞠りました。凄すぎる。あのバランスでどうしてあんなこと・・などと。
ひょっとこのお面で男っぽく踊っていた勘九郎さんが、おかめのお面をかぶったとたんに柔和な女性の所作で踊りだしたのに驚きました。
楽しく見ながら歌舞伎すごいなぁと思いました。

「福叶神恋噺」でも貧乏神のおびんちゃん役の七之助さんの所作に見入っていました。女方の所作ってなぜにこんなに美しくて魅了されるのだろうと思いながら。筋力かな。姉さん被りではたきをかけるだけでも素敵。流れるような所作の一連とスピード感も。ちょっとかっこいい。
掃除も洗濯も縫い物もどの所作もいつまでも見ていたいし、時折流れるご近所の三味線の音に合わせて思わず踊ってしまうところも可愛いし。おびんちゃん大好きだぁと心で何回も叫んでいました。
長屋のおかみさんたちに可愛がられるおびんちゃんの場面も好きだったなぁ。長屋の大家さんもだけどみんなとっても人が好い。
それに甘えっぱなしの辰五郎は感心しませんが。

おびんちゃんも貧乏神だけど本心は人をしあわせにしたくてしょうがないんだなと思いました。貧乏神には向かないよね、おびんちゃん。
そんなおびんちゃんを心配する貧乏神仲間?のすかんぴん(勘九郎さん)や貧乏神元締めのからっけつ(猿弥さん)もやさしいな。
富くじを当てちゃうなんてやっぱりおびんちゃんはそんじょそこらの貧乏神とはちょっとちがうな。(富くじは辰五郎のものだけど、おびんちゃんに憑かれたから当たったのではないかな)
福の神になったからには辰五郎など捨てておしまいなさいと思いました。
(辰五郎の改心がいまいち疑わしく思える私なのでした)
おびんちゃんと長屋のみんなが朗らかに笑って暮らせますように。

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2025/06/07

紅鬼物語

劇団☆新感線いのうえ歌舞伎「紅鬼物語」 5月26日 12:00

ちょうど宝塚大劇場で星組の「阿修羅城の瞳」が上演されている時期になるので、1遠征で両公演が見られたらいいなぁという軽い気持ちでVAC会員先行のチケットを申し込みました。(その後「阿修羅城の瞳」のあまりのチケ難に蒼褪めることになりましたが、無事両方を見ることができました)

1泊で2つの舞台を見る計画でしたが、新幹線やホテルを予約したり友人と待ち合わせの計画を立てるたびにskyシアターで上演のところを梅田芸術劇場とまちがえそうになり危なかったです。
skyシアターはJR大阪駅直結のJPタワー内にあり、新幹線利用の私には好アクセスで、客席も高低差があり後方席が見やすい劇場でした。

「紅鬼物語」は観劇前に公式サイトのあらすじを読み、設定がユルそうだけど大丈夫かな?と少々心配もしたのですが、たしかに1幕はずっとこのかんじだとつらいかもと思いましたが、2幕で紅子役の柚香光さんが「本来の姿」で動きはじめてから俄然引き込まれていきました。やっぱり柚香さんは大きくスタンスをとったときの身のこなしが鮮やかで美しいなぁと思いました。そしてやはり感情豊かなお芝居で魅了する人だなぁとも。いつか「朧の森に棲む鬼」のツナのような武人の役を見てみたいなぁと思いました。

新感線らしいところといえば、私はきつねさんが大好きでした。あまりに好きすぎて観劇後の友人とのLINEではきつねさんのことしか書いていませんでした。あとでキャスト表を見たところ、役名は「毛の男(右近健一さん)」となっていました。そういえばさいしょはきつねさんじゃなかったですよね。2人で1人になってからも好きだったなぁ。

そして劇団☆新感線といえば激しい殺陣ですが。鬼の栃ノ木役を演じた早乙女友貴さんの立ち廻りは胸がすくようで見惚れました。
26日は花組の生徒さんが多数観劇されていたようで、カーテンコールで柚香さんが控えめな「花組ポーズ」をされて客席が沸いたのですが、共演者の皆さんが何?何?となってて・・笑。以降はカーテンコールの幕が開くたびにお1人ずつ即席の花組ポーズをされてカンパニーの楽しい雰囲気が客席にもつたわりました。早乙女さんの花組ポーズがキレッキレできまっていたのが印象的でした。
最後には柚香さんが本気の花組ポーズで〆てくださり最高の思い出になりました。

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2025/06/06

われても末に

5月27日に念願の宝塚歌劇星組大劇場公演「阿修羅城の瞳」2回目を見ることができました。

1回目で原作との擦り合わせもしていましたし、新人公演も見ることができたので2回目の観劇は戸惑うことなく物語に入っていけました。
宝塚版「阿修羅城の瞳」を心から愉しめて最高の観劇体験でした。

5月6日にはじめて見たときは、新感線版ではセリフで語られていた部分が視覚化されていることに戸惑っていたように思います。

私は小説の映像化(舞台化)作品を見て戸惑ってしまうことがよくあります。ビジュアル化されたことで「あったもの」がなくなっていることに対して呆然としてしまうかんじです。
ビジュアル化されることでなくなるものってナニかというと・・行間とか概念とかとても私的なイマジナリーななにか? そんなもの自分が勝手に受け取って勝手に愉しんでいただけやんってかんじですが。勝手にあると思っていたものがない?ない?と探しあぐねているうちに終わってしまった・・みたいな感覚かな。
さいしょから原作小説と映画・舞台は別モノとして見るスキルを持てばよい話なのですが。なるべくそうしようと心がけてはいます。難しいですけど。

しかし「阿修羅城の瞳」はもともと舞台だったものなのでうっかりしていたといいますか。
あれ?あれ?ここで摂取していたものが・・?あれ?となってしまったんだと思います。

いま思うに、宝塚歌劇って視覚化に全力なんだなぁと。
一方で新感線(中島かずきさん&いのうえひでのりさん)は宝塚ほど視覚化に重きを置いていないのだなと思います。
個々のキャラクターの魅力、多面性、身体能力を存分に堪能できる演出。
生身の人間がどこまでやれるか。情報自体の視覚化よりもどれだけ観客をあっと言わせることができるか。そこに重きを置いた演出だったなと思います。
脚本としてはセリフの応酬、ひとつのセリフに詰まった情報量(声や目線、表情、言葉に幾重にも意味をもたせていたり、そこから派生するものが引き出しいっぱいに入っている・・など)を浴びて自分なりに摂取しながら展開していく物語を愉しむスタイルなのだなぁと。とても見ている最中に全部は受け取りきれないのだけど、あとからじんわり来る面白さもある。
私にとっては小説を読むのにちかいものがあったなぁと思います。いま思えばですけど。情景や背景、心情などはすべてセリフから読み取るかんじで。

その新感線らしさを存分に楽んだ「阿修羅城の瞳」だったからこそ、宝塚化された際に戸惑ったのだろうと思います。
想像であったものが徹底的に視覚化、具現化されていることに。
(ごちゃ混ぜを愉しんだ引き出しがきれいに整理されていることにも)
出演者の人数と舞台機構を駆使して過去も現在も瞬時に視覚化され、心情は詠唱となり舞踏のような振り付けとなって目の前で展開されていく。
新感線版を記憶にとどめたままだった私はそこに追いついていけなかったのかなと思います。
二度目の観劇でそれこそが宝塚歌劇の魅力だったことに気づきました。
それが好きで宝塚を見ている自分に無自覚だったことにも。

ここにきて、劇団☆新感線と宝塚歌劇のちがいを知ったかんじです。
宝塚歌劇の「阿修羅城の瞳」もとても面白かったです。
そのうえで新感線版は「業だなぁ」と思っていましたが、宝塚版は「愛だなぁ」と思いました。たいへんベタですが。

隠れ家で悪夢に逃げ惑い絶叫するつばき(暁千星さん)にかける出門(礼真琴さん)の声に含まれる愛情の深さにふるえました。

暁さんのつばきは、5月6日に見たときよりもさらに色っぽくなっていました。
中村座での出門との出会いの場面、渡り巫女たちと合流する場面など赤い麻の葉文様の着物姿、初見では見慣れないせいかほんのちょっと違和感があったのですが、27日はまったく違和感などなくてほんとうに粋で気風の良さが感じられる姐さんの風情で素敵だぁと心ときめきました。しかもほどよく色っぽいくていかにも訳アリ。これは惚れる・・。
さまざまな見地から5月初旬より出門とつばきの愛が深まっている気がしました。
宝塚版を「愛だなぁ」と思った所以です。

邪空(極美慎さん)はスケールが大きくなった印象でした。「俺を見ろ」の圧が凄かったです。
出門のいない鬼御門で副長として5年のあいだ、出門への妄執に取りつかれて生き、ついには魂を鬼に渡し自らが鬼に転生することも少しも厭わないまでになっていた邪空を知ったうえで、幕開きで出門と鬼を狩っている彼を見るとせつなさで胸が痛みました。こんなにも楽しげにいきいきと出門とともに刀を振るっていたのにと。
この執着も愛だなぁと思いました。

桜姫(詩ちづるさん)もパワーアップしていてますます大好きでした。
彼女の前向きすぎる行動もまた愛のなせる業ですよね。

愛の権化のような礼さんの出門とますます美しくなった暁さんのつばき。
東京公演ではどう進化していくのか楽しみです。

ショー「エスペラント!」も楽しかったです。
バレエの場面、極彩色のラテン、黒燕尾とイブニングドレス&オペラグローブの場面がとくに好きなのは初見と変わらずでした。

礼さんの黒燕尾のソロダンスの場面は案外長かったんだなぁと思いました。初見でもっと見たいと思ったので短かった印象だったのですが。
ただここから盛り上がるのかなと思ったところで終わってしまうので、もっと見たいと思うのは同じでした。

お芝居のほうでいろんなものをたくさん摂取したあとだったので、ショーも盛りだくさんだとつらかったかもしれず、よいバランスなのかもと思います。

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2025/06/01

夢かうつつか寝てかさめてか

5月22日23日に福岡サンパレスにて宝塚歌劇月組全国ツアー公演「花の業平」「PHOENIX RISING」を見てきました。

「花の業平」はずっと再演してほしいと思っていた作品でした。
潤花ちゃんの藤原高子を見たいなぁと切望していたのですが退団されてしまったので叶わず。それから1年以上の月日が流れて月組全国ツアー公演で上演されるとの発表に絶対に見に行きたいと勇んでチケットを申し込んで観劇日を心待ちにしていました。

主人公の在原業平役は一昨年宝塚大劇場で上演された「応天の門」でも業平を演じてお似合いだった鳳月杏さん。藤原基経役も同じく「応天の門」で同役を演じて好評だった風間柚乃さん。そしてヒロイン藤原高子役も「応天の門」で同役を演じた天紫珠李さん。
これだけでも関心と期待が膨らみます。

3公演観劇しましたが、見れば見るほど鳳月さんは業平がお似合い。
公達たちの噂で業平の女性遍歴エピソードをイマジナリーに舞踊にしている場面の鳳月さんが格別に好きでした。女性からの秋波を邪険にはできずに次々に浮名を流してしまうかんじ。たとえ色好みと口さがない人びとに笑われようと女性を悪者にしない主義が垣間見えるのが、だからこそ彼は女性に好かれるのだなぁと。そんなふうに見える鳳月さんは天性の業平だなぁと思いました。

初演は映像で見ていて、稔幸さん演じる業平に正義があり、香寿たつきさん演じる基経は悪、善の業平が悪の基経に苦しめられているといった印象をもっていました。お2人の持ち味もあると思いますが、私自身が物語を単純に見ていたのだろうといまは思います。自由恋愛こそ正義で政略結婚は悪、といったように。そのほかのいろいろも。
今回の月組版を見て業平を突き動かしているのはそれが正しいかどうかではなく、目の前の女性がしあわせそうであるかどうかなんだなぁと。結果正しくないとされる行いもするし、自業自得に陥ったりもする。現世を生きて、自分の身のうちから湧き出づるもの、悦びや悲しみに嘘がない人なのだなぁと思いました。

風間さんの基経も単純に悪い人とは見えなくて、権力を手にしなければ生きていけないところに身を置いている人なのだなぁと思って見ていました。まさにこれは「応天の門」を見ていた影響だと思います。
義嗣子として義父良房(英かおとさん)との関係には、藤原良相(柊木絢斗さん)と息子の常行(彩海せらさん)とのあいだに感じられたような気の置けない父と息子の関係とは異なる緊張感が感じられました。
業平が自分の情に正直に行動し、関わる相手にも情け深く接して、女性たちにはもちろん、仲間たちにも危険を冒しても力になってやりたいと思われるほど愛されるのに対して、理を優先して情けを抑制し、時に人を陥れるかわりに己の些細な瑕や落ち度を理由にいつだれに蹴落とされるかわからない人生を生きている基経の緊張感と孤独を感じました。

高子役の天紫珠李さんは初見では表情や声からの情報量が少なくてなにか物足りなく感じてしまったのですが、二度三度と見ているうちに内面から湧き出でる感情の迸りを感じられるようになってきて大好きな高子になりました。
自負の心が強くて外に向かって張り手をつくような瞬発力の高かった初演の星奈さんの高子(星奈さん高子の「わたくしの舞が下手だとおっしゃるの?!」が大好きでして・・)とはちがって、いちど受け止めてから反論するプライドは高いけれどもちょっと内向的なところがある高子だなぁと思いました。

市で商いの統領をしている梅若役の礼華はるさんは長身で総髪の立ち姿に存在感がありました(登場のたびに柚希礼音さんが浮かんでしまったのは自分でも不思議でした。なぜかなぁ)。
水干だか狩衣だかを気崩したアレンジもおしゃれで、セリフの掛け合いも粋な人だなぁと思いました。
花の宴の桜木の歌で盛り上がる場面で業平と歌い継ぎながら入れ替わる場面は毎回胸が逸りました。基経たちに顔を見られても涼しい表情を崩さないところなどこれは業平のために並ならぬ覚悟で臨んだのだなぁと思いました。

内裏に女官として潜入している女賊のあけび(彩みちるさん)と梅若との関係は、今回の月組版ならではですよね。
梅若の家には橘逸勢の書が掛けられていたとの業平の言葉や、あけびによると彼女が昔仕えていた貴族の御曹司だったとかなので、承和の変で排斥された橘氏のお血筋なのでしょうか。
そんな彼の過去を知るあけびの梅若への愛惜を含んだ思いがせつなくてキュンとしました。

彩さんのあけびは、権謀術数渦巻く宮中にあって登場するたびに客席を笑わせて物語のよいアクセントになっているなぁと思いました。初見では石茸丸(大楠てらさん)を彼女の弟だとは気づいていなくて、みちるちゃん大楠さんにひどいわーと思いました笑。
姉に言いたい放題言われて、でもちゃんと言いつけ通りに検非違使を巻く石茸丸は出来る子!と思いました。
とても仕事できる姉弟で。この先もしっかりと生きていけそうで安心のキャラでした。

藤原常行役の彩海せらさんはお美しいなぁと。心映えも眩しくて父親からも友人からも愛されているお花のような人だなぁと思いました。
和物のお化粧やふとした表情に月城かなとさんの名残を感じ、そんなせつなくてうれしい感情を呼び起こされるのも宝塚の良さだなぁと思いました。
彩海さんのこれからに注目していきたいなぁとあたらめて思いました。

伊勢の斎宮の恬子内親王(花妃舞音さん)と業平の逢瀬の場面は、初演ではえ、どういうこと?と、稔さんの業平にはそんなことはしてほしくないと思った気がするのですが、鳳月さんの業平にはそうだよねーそうするよねー業平はと思って見ていました。
花妃さんの恬子さまも、この恬子さまじゃしょうがないよねーと思ってしまう風情だったのもあるかと思います。初見のあとで気づいたのですが、花妃さんは「応天の門」で多美子だった人ですね。(多美子好きだったんです)
入内する高子との対面の場面は、初演ほどの緊張感はなかったかな。月組版はどちらかというとおなじ人を愛する2人のシスターフッドを強めに感じ、それはそれで好きでした。

春景(一輝翔琉さん)と若葉(乃々れいあさん)は微笑ましい一対でした。
一輝さんは初舞台の「Délicieux」で注目しこれからが楽しみだったので退団はとても残念です。(初舞台の「Délicieux」も「PHOENIX RISING」も野口先生のショーなんだなぁと・・)
伊勢からの帰り道にはこの公演で退団される一輝さんのためのセリフもあり寂しくもご卒業後の人生に幸あれかしと願いました。

「花の業平」を生で見たいという長年の希望が叶って本当に良かったです。全国ツアー版に向けての大野先生の書き直し部分も好きでした。
長年の願いが叶い満足したところで、やはりこの豪華絢爛な世界を回り舞台で見てみたいなぁという新たな欲が生まれてしまいました。
この願いが叶う日が来ますように・・!

「PHOENIX RISING」は楽しいショーでした。(大劇場では見ていないのでこの全国ツアーバージョンが初見でした)
作演出の野口先生はなんとしてもアモラルを入れずにはいられないのだなと思いながら見ていましたが、それもいい塩梅に収まっていてよかったです。
「SHANGHAI GIGOLO」の場面のSHANGHAI BIRD(相星旬さんと飛翔れいやさん)がとてつもなく刺さったのできっと思うつぼにハマってます笑。
ぞわっと鳥肌が立つ歌詞も相変わらずだなぁと。私は苦手ではあるものの、そこは好き嫌いの範疇かな。

デュエットダンス「永遠の月(月亮代表我的心)」が鳳月さんと天紫さんの雰囲気にとても合っていて素敵なシーンだなぁと思いました。彩海さんのカゲソロにもうっとりでした。
天紫さんが長い手足で伸びやかに踊る姿がすっとして品がよくてシルフィードのようでした。同じくすらりとした鳳月さんとのバランスが抜群でほかにないコンビだなぁと思いました。鳳月さんの色気を天紫さんがよい塩梅に中和しているような気もしました。(あり得ないですが鳳月さん♂と鳳月さん♀がコンビを組んだとしたらとんでもないアダルトな色気のトルネイドになってしまう気がするんです・・それはそれで見てみたい気もするのですが・・)

お芝居もショーも大満足で、やっぱり宝塚はいいなぁ。心洗われるなぁと思った2日間でした。
ここしばらく月組を観劇する機会がなかったのですが素敵な生徒さんを多数みつけたので大劇場に見に行きたいなぁと思いました。
(SHANGHAI BIRDの相星旬さんと飛翔れいやさん、客席降りで段差があったのにわざわざ覗き込んで微笑んでくれた花妃舞音さんもすごく気になっていてGUYS&DOLLSの新公が楽しみになりました←配信を心待ちにしています)

しあわせな時間が過ぎたいまは次の全国ツアーはどの組が地元に来てくれるのかなぁと早くも楽しみです。
(地方在住のため遠征回数を抑えたく全組見るのは控えようと思うのに・・全国ツアーがあるばかりにこうしてまた沼に足をとられてしまうのでした・・笑泣)

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2025/05/19

阿修羅城でお待ちしております

お誘いいただき5月15日に宝塚大劇場にて星組新人公演「阿修羅城の瞳」を見てきました。
かつてないほどのチケット難事情ゆえに初日が明けても手元にはチケットが1枚もなく、本公演を観劇することなく新人公演を見ることになるかもと思っていたのですが、運よくチケトレで連休最終日のチケットが手に入り、辛うじて新公が初見という事態は免れることができました。
毎度のことながら初見は原作との擦り合わせやさまざまな情報処理で忙しくて物語に身を委ねて楽しむというよりは、なるほど!そういうことか!(原作を)こうしたのか!という驚きと納得と解釈など心より頭で楽しんだかんじでした。
一度そういう見方をしていたおかげで新公は登場人物を中心に観劇することができました。(本公演もそんなふうに観劇したいのですが現時点でチケットがどこにもありません)

新公当日は朝の新幹線に乗りお昼頃に宝塚着。
友人が13時公演を見ている間に数年ぶりの宝塚の殿堂へ。受付で友の会カードを提示しようとしたらアプリのクーポンを求められて、時代が変わっていることに驚いてみたり。
時間がたっぷりあるのでじっくりと見学していたら、13時公演をご観劇ではありませんか?と親切にお声をかけていただいたり。
久々で一つ一つが新鮮で楽しかったです。
それからリニューアルしたカフェテリア「フルール」へ。こちらもあれこれ物珍しく礼真琴さんの愛称をもじった公演デザート「黒ごまこっつ餡」とドリンクバーでブルーキュラソーシロップとカルピスソーダを合わせて「AZUL風♡」とひとり悦に入りながら空色のドリンクにしてみました。
13時公演の終演を待ち友人たちと合流して腹拵えを済ませて、いざ新公へ。

終演後の感想は凄いものを見せていただいたなーでした。
皆さんお上手でこれ新人公演?となんども思いました。本公演の半額のチケット代が申し訳ない気持ちさえしました。

病葉出門役の稀惺かずとさんは口跡明瞭で早口の江戸言葉がかっこいい。せりふが聞き取りやすくて惚れ惚れ。ずっと聞いていたいと思うような声質と口跡で役者として素晴らしい宝物をお持ちだなぁと思いました。
闇のつばき役の詩ちづるさん、さいしょのうちは渡り巫女の中に入ってしまうと埋もれちゃうなぁと思ったりもしましたが、阿修羅に転生してからの気迫が凄くて見入ってしまいました。銀橋での歌唱が素晴らしかったです。

安倍邪空役の大希颯さんもせりふ回しがお上手で語られる出門への執着や動機が自然と納得がいくかんじ。恵まれた体型ゆえでもありますがすべてが大きいと感じさせる邪空でした。銀橋で歌い上げたナンバーは声量もあって声帯に天然のエフェクトをかけているのかと思う声でロックだぁと思いました。
美惨役の鳳花るりなさん、本公演を観てこの美惨という役は小桜ほのかさんだからできる役じゃないのかなぁと思ったほど娘役を超えた役作りだったのですが、鳳花さん見事にやりきったなぁと思いました。はっきりとした目鼻立ちにヴィランメイクが映えてとても迫力がありました。
阿餓羅と吽餓羅を演じた瞳きらりさん、詩花すずさんもお上手で新公じゃないみたいと思いました。

彩紋ねおさんの鶴屋南北は憎めないかんじが好きでした。戯作者として佳い本を書きたい欲が強すぎて思考がイッてるけど一座の皆からはそれなりに愛されてるんだなと思って見ていました。
青風希央さんの俵蔵さんはきっといそうな一座の綺麗な女方でした。たしかに大きいけど。過剰にコミカルに演じていないところは好感を持ちました。

凰陽さや華さんの安倍晴明も明るい人柄で、あの桜姫のお父さんであることがすごく納得でした。娘とタッグを組むところも楽しそうだなと思いました。死んでいないことを突っ込むしぐさとかも面白かったです。桜姫役の乙華菜乃さんとは同期なのかな。
乙華菜乃さんの桜姫は驚き&大好きでした。さいしょの登場で出門にねちっとウィンクをしたところから、あれ?と思いましたが、登場のたびに笑いをさらって目が離せなくなりました。あえて本役の詩さんとはちがうアプローチをしているようなかなり振り切った桜姫で、間のよさ舞台度胸のよさで笑いをとっていくのが天晴れで思わず拍手をしていました。途中からは登場のたびに来た来たーとなり、しだいに来るぞ来るぞーと登場を待ちかねるようになっていました笑。
今回でしっかり認識できたのでこれからの乙華さんにも注目していきたいなと思いました。

賀茂白丞と賀茂南雀役の朝稀さいらさんと桃李拍さんは、本役の朝水りょうさんと蒼舞咲歩さんが笑いをさそっていた公家っぽいおっとりとした話し方にさらに声の高低で個性をつけていて面白かったです。
(声が高い方が朝稀さんで低い方が桃李さんで合っているかな)
桜姫とその一味?は登場のたびに心うかれました。
安倍毘沙門と安倍大黒はともにイケメンで眼福でした。
毘沙門の樹澄せいやさんは「記憶~」の新公の井坂さんですね。
大黒役はこのイケメンは誰だろう?とずっと思っていて後で確認したのですが、馳琉輝さんなんですね。初舞台ロケットで気になっていた人だぁ~と思いました。これから注目していきたいです。

渡り巫女は本公演よりもアイドルっぽい印象で既視感があるなぁと思ったのですが、「記憶にございません!」の田原坂46でした笑。新公らしくてよかったと思います。
鬼御門三界衆はとても元気はつらつで新公らしくて好きだなぁと思いました。
グループ芝居に良い意味で新公らしいフレッシュさや一緒に作り上げている雰囲気が感じられたところも良い新公だったなぁという印象になっています。

久々に新公を見たのですが(コロナ禍以降で初かなぁ)、そうできる作品だというのもあると思うのですが、本公演とはちがう自分たちの舞台を作り上げた印象が強い新人公演だったなと思います。
星組新人公演のメンバーの底力と意識の高さを感じることができた素晴らしい公演でした。
これを見ることができたことに感謝です。記憶に残る素晴らしい体験でした。

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2025/05/12

近頃都に流行るもの

5月6日に宝塚大劇場にて星組公演「阿修羅城の瞳」「エスペラント!」を見てきました。

超絶人気のトップスター礼真琴さんの退団公演であり、また劇団☆新感線の人気作品「阿修羅城の瞳」の宝塚歌劇化ということも重なって、演目発表当時からチケット入手困難な公演となることはわかっていました。
わかってはいましたが、実際想像以上にとんでもないチケ難公演で、取次ぎも抽選もことごとく落選し初日が明けても1枚もチケットが確保できていない状態でした。そんななかGW中にチケトレでどうにか1枚入手できたので、GW最終日の人混みをかき分けて新幹線で日帰り観劇してきました。
座った席はほどよく見やすい列の1階センターで、もうこれっきり生で見ることは適わないかもしれないと思い、悔いが残らないようにと気を張って礼さんの姿を追いました。

「阿修羅城の瞳」は、3時間の新感線版を1時間半にまとめているので、なるほどここを端折るのかーそうだよねーここは削るよねーと納得しつつも、私はその端折られた部分が好きだったんだなーと思いました。
あえてお間抜けなカッコ悪いところを見せて油断させておいてのカッコ良さとか、劇団☆新感線の登場人物あるあるの振り幅を愉しんでいたんだなーと。
星組版はストーリー上重要ではなさそうな部分(お遊び的なところや芝居の元ネタを知っていると面白いところなど)を削って綺麗に収められているのだけど物足りなくもあったのは、その削った部分を私は愉しんで見ていたからかもしれないなと思いました。
とは言ってもその手のカッコ悪さとか笑いを私は宝塚に求めてはいないしなーとも思いました。

じっさいの出門とは真逆なのだけども「四谷怪談」の伊右衛門を見たくなるような、女性を口説かせたら凄そうと思える幸四郎(染五郎)さんの出門のこなれ感も新感線版の魅力でした。
が、礼さんにそれを求めるかというとそれも違って。じゃあ見たい礼さんって?などと自問したりも。

礼真琴さんの出門はひたすらカッコ良かったです。つばきに軽口を叩きながらも内に思いがあるところが見えたりもして。新感線版の純情(出門曰く純粋な欲望)とは異なる純情だなぁと。
初見だとどうしても記憶している新感線版との擦り合わせをしてしまって(これは私のさがゆえ)、礼さんならではの良さをしかと感じ取れなかった気がしてなりません(やはり1回では足りない! 2回目からなのです楽しくなってくるのは・・いつも・・)。

暁千星さんのつばきは、思っていた以上に色っぽくて驚きでした。
しなやかに踊って跳躍して拗ねている表情がとても可愛い・・と思っていた月組時代の印象から、拗らせた昏い役、本心を読ませないメタルフレームのメガネハンサムの役とだんだん大人っぽい役が似合ってきてドキドキしていましたが、まさかの女役でしかも色香を含んで礼さんにしな垂れたり、デュエットダンスのように大階段で礼さんと対峙してせめぎ合う役を演じることになるとは・・です。
新感線版の性的なものを感じさせるニュアンスは極力封印してギリギリ宝塚らしさを保っているところも難易度高いのではないかと思いました。

劇団☆新感線から男のロマンと幻想とノリを削いだらこうなるんだな。
というのとそこに如何にして演者が宝塚らしい潔さと美を加えるかが見ものの作品かなぁと思いました。
それを味わうのためには1回の観劇では全然足りないってことも切実に思いました。(というももの現時点でムラは0・東京公演の友の会3次で当選したチケット1枚しか確保できていない哀しみ・・)

新感線版でも好きだった桜姫ですが、詩ちづるさんの桜姫も可愛くてぶっ飛び方は新感線版には及びませんが、そこも宝塚にしてはかなりのぶっ飛び方で好きでした。
私が宝塚で見たいものを頑張っていたのが桜姫かなぁと思いました。(華やかで明るい照明をいっぱい浴びている感じ)
それから鬼が宝塚ならではのコンビネーションで見ものだなぁと思いました。(ぱっと見で誰だかわかったのは鳳花るりなさんだけだったのですが・・)

美稀千種さんの鶴屋南北、ひろ香祐さんの安倍晴明はエピソードや設定がほとんど削られてしまって、仕方がないとはいえ残念に思いました。(好きだったんですそこが・・)
いろいろ削られた結果、極美慎さん演じる邪空の動機や所業がぼやけてしまってスケールが小さくなったのも残念でした。宝塚では描きにくいところだったのでしょうけど、髪型と立ち廻り以外印象が薄くて。邪空のスケールが小さくなった分、毘沙門(天飛華音さん)と大黒(稀惺かずとさん)も割を食ってしまってもったいないなぁという印象でした。
雷王(碧海さりおさん)鳴王(夕陽真輝さん)震王(大希颯さん)の鬼御門三界衆はコミカルで可愛らしくてとても印象に残っています。

美惨、阿餓羅、吽餓羅を演じた小桜ほのかさん、白妙なつさん、紫りらさんは娘役としての高いスキルを備えた方々だけにもったいないというか惜しいというか。ビジュアルや衣装を宝塚化してはダメだったのかなぁと思ってしまいました。
鬼のビジュアルにしてもですが、やはり宝塚には見目好さを求めたくなります。
渡り巫女に華やかな場面をつくるとか、せっかく宝塚で見るのだから原作になくても絢爛豪華な場面はほしいなぁと。
そういうことにチケット代を払いたいなぁと思いました。

1回きりの観劇だったので深い部分まで味わうには至らず、自分勝手に摂取しようと思っていたものとの齟齬を解消しきれないままに終わっちゃったかなと思います。
もし2回めがあれば、ここからどう印象が変わったかを書き残してみたいなぁと。切に思っています。(新人公演は見られそうなのでそこで何か自分の中で見えるものが変わるかも?)

「エスペラント!」は好みのタイプのショーでした。
大勢で色とりどりのラテンっぽいダンスの場面、暁さん中心のバレエ的な場面、黒燕尾とドレス姿のボールルームダンスのような正統派なレビューの場面は音楽も好みで心が華やぎました。
海の場面はストーリーがあるんだろうなぁとは思いましたが、そこはあまり考えなくても華やかで楽しめました。
「阿修羅城~」で出ずっぱりだったせいか、退団公演のショーにしては礼さん出ずっぱりという印象がなかったのは意外だったなと思います。これまで見てきたショーがとにかく礼さんと相手役の舞空瞳さんが踊りまくっていた印象があるからでしょうか。
礼さんの黒燕尾のソロダンスの場面はもっと見ていたかったです。もっとと思っているうちに終わってしまうのがとても寂しかったです。
このショーもリピートすればするほど見どころがありそうで、1回じゃ足りないなぁと切に思いました。

お芝居ショーともに「もっと見たい!」というのがいちばんの感想で切実な願いかもしれません。

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2025/05/01

あじゃらかもくれん

4月15日に福岡市民ホールにてミュージカル「昭和元禄 落語心中」を見てきました。

福岡市民ホールは、福岡市民会館を継承するホールとして今年の3月28日に開館したばかり。「落語心中」はこの福岡市民ホールではじめて上演されたミュージカルとなるそうです。

原作のコミックは10年以上前に単行本の表紙の八雲に惹かれて1巻目を購入したのですが、2巻目は読んでいませんでした。
年配の噺家さんの「あたし」などのやわらかい江戸言葉が好きなので八雲はとてもタイプでしたが、落語をあまり知らないのでいまいち漫画に描かれている落語シーンにピンときていなかったのだと思います。

それから幾星霜・・古川雄大さんの芝居冒頭の老年の八雲は思い描いていた八雲そのもので、その彼が高座にあがっているシーンを見てやっとイメージが掴めたように思います。これを機に2巻以降も読んでみようかなと思いました。
和物の古川さんもTVドラマ以外では見たことがなかったので和服で舞台に立つ古川さんを新鮮に感じました。着流しの後ろ姿に見惚れながら、このキャスティングを考えた人は天才!!と思いました。
若造の見習いの頃から徐々に真打ちにあがってシニア世代まで雰囲気とともに心の有り様も変わっているのがわかりその心のうちを考えるのが面白かったです。
ルパンとはあきらかに違う昭和の雰囲気のインバネスコートの後ろ姿もよかったです。(インバネスじゃなくてトンビだったのかも)

みよ吉役の明日海さんは憑依系のお芝居がさすがだなぁと思いました。
アフタートークで明日海さん自身はみよ吉とはまったく違うというお話をされていたので、その話にうんうんと頷きながら、それでもみよ吉になりきってしまう明日海さんって凄いなぁと思いました。
芸者姿もドレス姿も美しくてそこも「やはり明日海りおさんだなぁ」とあらためて思いました。

助六役の山崎育三郎さんはイキイキのびのびと助六(初太郎)を生きているなぁという印象でした。四国で自堕落に生活しているところなど本当にこの助六という役(人物)が好きなのだろうなぁと思いました。
この舞台にかける意気込みの強さも助六をとおして感じられました。
どうやっても敵わないと思わせられるカリスマ性を助六が見せてこそ、八雲(菊比古)が彼にとらわれ続けることに納得がゆく大変な役だからこその演じ甲斐みたいなものを存分に味わい尽くしながら演じてらっしゃるのかなぁと思いました。
助六が深まれば八雲も深まらないと釣り合わない、そんな難しさと面白さがある作品だなと。
助六と八雲という個性がまったく正反対の男2人を、山崎さんと古川さんというまた個性の異なる2人の俳優が演じる面白さを堪能することができました。

観劇した日はアフタートークショーがあり、助六役の山崎育三郎さん、明日海りおさん、古川雄大さん、与太郎役の黒羽麻璃央さんの4人が登壇されて、育三郎さんが司会役でトークを回されていましたが、えっ大丈夫?なお話をされたりして麻璃央さんを除く3人で円陣を組んで作戦会議?っぽいことをされたり、天然でボケてしまう古川君にツッコミを入れられたりとても楽しいトークショーでした。
4人のうち3人がトート(経験者)で4人ともロミオ(経験者)というお話もされていて、凄いメンバーだなぁと思いました。
次回の「エリザベート」では明日海さんがシシィ、育三郎さんと古川君がトートだなぁと思いながら、そこに麻璃央さんもルキーニで加わったらいいなぁと思いました。

こんなぜいたくなキャストとスタッフで日本のひとつの芸能を題材にしたミュージカルが創られたことが素晴らしいことだなぁと思います。

CAST

山崎育三郎 初太郎 のちに 二代目有楽亭助六
明日海理央 みよ吉
古川雄大  菊比古 のちに 八代目有楽亭八雲

黒羽麻璃央 与太郎
水谷果穂  小夏
金井勇太  松田
中村梅雀  師匠(七代目有楽亭八雲)

阿部裕   江戸落語協会会長
村井成仁  銀治

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2025/04/23

しのぶることのよわりもぞする

4月8日9日、18日に東京宝塚劇場にて宙組公演「宝塚110年の恋のうた」「Razzle Dazzle」を見てきました。

1月終わりの宝塚大劇場以来2か月半ぶりの宙組観劇でした。8日と18日は1階席、9日の三井住友カード貸切公演は2階席から観劇しました。
1階席で観劇した日はお芝居最後の客席降りでお名前を覚えたての下級生と触れ合うことができて楽しかったです。(2ヶ月半でお名前がわかる生徒さんが増えました!)

「宝塚110年の恋のうた」を見て宙組生の和物化粧が大劇場公演より格段に美しくなったなぁと思いました。
2018年の日本物レヴュー「白鷺の城」の男役さんたちは白塗りというよりも日本物のお芝居に近いお化粧だったので、今回のようなしゃべ化粧の宙組男役さんたちを見るのが新鮮で。
さすがに星組花組で日本物レヴューの経験がある芹香斗亜さんは大劇場公演から格別の美しさでしたが、次期トップの桜木みなとさんのお化粧(とくに目元)が以前よりも目を瞠るほど綺麗になっていて嬉しかったです。

大劇場公演で芹香さんが歌った「恋の曼陀羅」「琴時雨」と七夕の場面の一連がとても心に沁みて(鷹翔千秋さん水音志保さんの「恋の笹舟」風色日向さん山吹ひばりさんの「星逢一夜」がとくに好きでした)、東京公演観劇を待ちきれずBlu-rayも購入しましたが、18日の観劇では亜音有星さんの「砌(龍の宮物語)」に心奪われてしまいました。歌い方がかわったかしらと思うほど歌もとても胸に響きましたし、シケから滴るような色気、赤い口紅も目尻のラインも魅惑的でうわっと思ってそれからずっと亜音さんから目が離せなくなっていました。(大劇場のときからこんなでしたっけ・・?!)

日本物のレヴューはことさらに激しい動きがあるわけではないのだけれど、それだけに演者から醸し出される一瞬のきらめきによって見える世界が変わることがあるのだなと身をもって経験した気がします。(長らく宙組ファンなため日本物レヴューをリピート観劇する経験そのものがすくなくて気づかないでいままで過ごしてしまったかも)
宙組は組の立ち上げ前の香港公演以来20年以上日本物のレヴューの上演がなかったので、今回のショーは組ファンの私にとっても貴重な経験でした。
お化粧も含めて宝塚の日本物レヴューの華やかさや艶はほかではなかなか見られないものだと思いますので、この先もずっとつづいてほしいなぁと思います。

遠征中の4月8日の観劇後に演出家の谷正純先生の訃報を知ることとなり、芹香さんたち93期は谷先生の日本物レヴュー「さくら」で初舞台を踏んだのだったなぁと、その初舞台公演の後もののお芝居はこれまたトップスターの安蘭けいさん演じる主人公が騙し騙されるハッピーエンドのミュージカルコメディだったなぁと思ったり。
奇しくも初舞台公演とおなじく日本物レヴューと後もののハッピーエンドのミュージカルコメディで卒業していく芹香さんを思ってしみじみとあはれを感じたりしました。
去りゆく人びとが残してゆくものがこれから先の宝塚でも引き継がれていきますようにと願いました。

そしてあらためて芹香さんの退団公演が「Razzle Dazzle」で良かったなぁと思いました。
いまでも思い出すと涙ぐんでしまいそうになる「金色の砂漠」のジャー。自分が与えられる幸福と自分では与えられない幸福の狭間で平穏と秩序と愛のために彼が選んだ未来。
宙組デビューの「天は赤い河のほとり」でいまめくエジプトの将軍ラムセスの「ふたり並んでミイラになるまで」に心臓を射抜かれたこと。
2作目の「異人たちのルネサンス」以降はちょっとネジを巻きすぎたような役が多かったなぁという印象ですがそれもよき思い出。
そんないろいろが思い出されてこれが見納めなんだなぁと切なくもなりつつ、このとぼけた感じのレイモンドが愛おしくて、映画を愛する仲間たちに触発されて自分の未来を自分で決めていく彼を心で応援しながら、彼を応援するエキストラの仲間や彼と関わる人びとを愛しく思いながら、その思いを卒業していく芹香さんといま一緒に舞台に立っている宙組生に重ねて彼女たちのここからの未来が明るいものでありますようにと願っていました。

2階席に座った日はオペラグラスでラズルダズルのお客たちを見ると、それぞれがクラブの客として背景を持って舞台で小芝居をしている姿に目が離せなくなりました。上手側テーブルのレイモンド(芹香さん)たちを見なければと思うのに、ついついあちらのテーブルこちらのテーブル、階段の上やバーカウンターで談笑している人たちを隅々まで見てしまって・・もう目が足りない!となってしまいました。
映画撮影のシーンでもそうなのですが、舞台の上のひとりひとりが役として活き活きと演じている姿がストーリーの内容とも重なってなんだかとても幸せな気持ちでした。

お芝居終わりの客席降りでは、満面の笑みで両手タッチしてくれた生徒さんが「110年の恋のうた」の歌うま神社でソロで歌っていた風翔夕さんだ!とわかり、そのお隣は奈央麗斗さんだ!とわかる自分が嬉しかったです。
じつはここ数年でお顔がわかる生徒さんがたくさん卒業してしまい、もともと顔覚えが悪い私は一時大半の生徒さんがわからなくなってしまっていたのですが、またすこしずつお顔がわかるようになってきたことが嬉しくて。
別の日は背後で踊っていた風羽咲季さんに対して手を出そうとするもタイミングを逸しておたおたしていたにもかかわらず笑顔で応じてくださり、そのあまりのチャーミングさに頭のなかにお花が盛大に飛びまくりました。

「宝塚110年の恋のうた」の神がき(歌うま神社)の日替わりナンバーもいまの宙組生を知る貴重な機会となりました。
8日と9日は風翔夕さんが「My Life Your Life」(JIN-仁-)を、18日は天彩峰里さんと志凪咲杜さんが「石を割って咲く桜」(壬生義士伝)を歌っていました。
風翔夕さんはこの場面ではじめて認識したのですが、前述のようにその後の「Razzle Dazzle」の客席降りの際に、さっき歌うま神社で歌っていた生徒さんだと気づきお名前と顔を覚えることができました。
志凪咲杜さんは「Le Grand Escalier」のデュエットダンスで研3にしてカゲソロを歌っていた生徒さんとしてお名前だけは知っていたのですが、姿を認識したのははじめてでした。
天彩峰里さんはその次の祇園の場面でセンターでチョンパで現れるのを知っていたので、歌うま神社に登場すること自体に驚きました。その日の祇園の場面は天彩さんはセンターではなく下手前方に立ちチョンパになったので、なるほどこうするのかーと思いました。
芹香さんトップ時代の作品はたくさんの宙組生にスポットが当たるようになっていた気がします。おかげでまたあらたに生徒さんたちを知ることができました。日本物の経験とともにこれも芹香さんが宙組のためにのこしてくれたものだと思っています。

タカラジェンヌは役を演じる前にタカラジェンヌという虚構を演じているわけですが、その虚構を生きている時間が幸せと思える時間でありますように。
もうじき宝塚を卒業する芹香さん、水音志保さん、葵祐稀さんにも、宙組生の全員にもそう願っています。
そして卒業される3人のこれからに幸多からんことを。

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