2018/02/18

その魂は滴るほどに美味だろう。

2月10日に久留米シティプラザ内ザ・グランドホールにてミュージカル「黒執事 - Tango on the Campania-」を見てきました。

古川雄大さん目当てに前々作から見続けて3本目。原作単行本も最新刊まで読了。と意外にはまっている自分に驚き(笑)。
まず初見の感想は、「めっちゃ児玉先生やん(笑)」「前作に比べ思っていたより殺風景?」「でも楽しい♪」でした。

演出が今作、児玉明子氏に代わったとは事前に知っていたのですが、こんなに児玉色になっているのがいとをかしでした。
パペットや布を使った演出も児玉先生らしいなと思いましたが、なによりも私が児玉作品に感じていた印象、ストレンジなものへの執着、定型のヒューマニズムとの親和性の稀薄さ、最終的な結論は自分で出す、といったものがそっくりこの「黒執事」の世界観と調和していることに瞠目でした。

それから観劇後に、今回の作品をずっとご覧になっている方から「拍手を入れるところがちゃんと在るでしょう」と言われたのですが、たしかに!と思いました。
メインキャラがソロを歌いきった時、キメを入れた時、ボケたりアドリブを入れた時、と拍手を入れやすくて、客席からキャラクターやキャストへの愛を表現できて楽しかったです。
ここはキャストの自由に任されている場面だなというのもわかりやすかったですし、総踊りの場で手拍子が出来たりするのも楽しかったです。
この辺りは宝塚的かな?

舞台が殺風景に感じたのはたぶん20名くらいのアンサンブルの方たちがビザールドールの扮装などでほぼ全員舞台に出る場面が多かったからではないかと思います。
場所を必要とするのでセットが開いて空間ができるから。
アンサンブルの動きで見せる場面が多かった印象。それがまた物凄い身体能力の人たちばかりでびっくりでした。
緻密ではないけれども、キャスト1人1人の力で魅せる演出になっているのだなと思いました。

脚本が粗いほど演出が雑なほどパフォーマーの魅力と技量でそれを埋めてかえって面白くなるというのは宝塚ではしばしば経験しますがそれに近いものがあるかな。
なによりもこのシリーズで私がいちばん見たいところである主人公2人の関係性の描かれ方や、そこに対する演者の熱量が半端でなかったので、すごく満足できました。

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2018/02/05

望もうと望むまいと。

1月28日と29日に日本青年館ホールにて宝塚歌劇宙組公演「不滅の棘」を見てきました。

見応えのある舞台に満足でした。
愛ちゃん(愛月ひかるさん)と宙組出演メンバーがこの作品をここまで高めてくるとは。

2週間前にシアタードラマシティで観劇した時に、愛ちゃんがそうとう歌を鍛えてこの作品に臨んだことが覗え、大千秋楽まで歌いこめばさらによくなるだろなと思っていましたが、その予想を遙かに超える進化を遂げていました。
歌声に味わいが出てきたなぁというのが率直な感想です。細かいですが、愛ちゃんの「リラック↑ス↑↑↑」の『ス』が好きです。
ドラマシティでここがいま一つと思っていた女装場面も格段に良くなっていて、その場面を最高に楽しめました。

舞台を楽しむにあたって役者の声の良し悪しは重要ですが、そこに課題がある愛ちゃんはこのままそれを克服できなければその先へ進むのは難しいのではないか、と思ってしまうことも正直ありました。
が、それに真正面から挑み応えてきた姿を目の当たりにして、もうこれは報われるところまでちゃんと見届けなければいられないと思いました。
そうなることを願わずにはいられません。


ヒロインの遥羽ららちゃんは歌い方がドラマシティの時よりも初演のふづき美世さんに似ている気がしました。
そして私はやっぱりららちゃん演じるフリーダ・ムハが魅力的で好きだなぁと思いました。
アグレッシブではきはきとものを言い、スタイルが良くてショートボブとボディラインを意識した衣装がとってもお似合いで。
幼くして両親を失い愛されている実感のないままに育って(魅力的な娘だから周りから愛されているんだけど)、つねに前のめりに何かを求めていないといられない女性のようでした。
そこに現れたエロールの自分へのまなざしに愛を感じちゃったんだなと思いました。どういう種類の愛しみかもわからずに。
だけどそれこそが彼女がもとめていたものなんだなぁとも思えます。

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2018/01/20

愛の痛み。

1月10日(水)にシアター・ドラマシティにて宝塚歌劇宙組公演「不滅の棘」を見てきました。
初演をCS放送で見てとても好きになった作品で、いつか生の舞台を見てみたいなぁと思っていたので、愛ちゃん(愛月ひかるさん)のエロールで再演が決まった時はとても嬉しくてすぐに遠征を決めました。

初演では、エロールの厭世的なニヒリズムと独特のナルシシズムに引き込まれた記憶があるのですが、今回の再演ではまったく印象の異なるエロールがそこにいました。
傷ついた魂を抱えて戸惑い愛の痛みに苦しむ愛エロールの姿がとても印象に残りました。

大物感、スター感というタカラジェンヌには有利な持ち味がありながらも課題もある愛ちゃんですが、課題の一つ、歌をそうとう鍛えてこの舞台に臨んだなぁという印象を受けました。声がよく伸びているなぁと思いました。
ドラマシティの楽まで、そして日本青年館の楽まで歌い続けたらさらによくなるだろなという期待が持てました。
欲を言えば表情豊かに裏声を使えるようになるといいなぁと思います。
初演のエロール春野寿美礼さんが印象に残る場面で裏声を駆使されていたので、その記憶が甦ってしまいつい比較してしまうのは否めないかな。春野さんのリラックス♪がいまでも脳裏に浮かんでくるほどなので。

春野寿美礼さんは音色の美しい楽器のような声をお持ちだったので声を聴くだけで場面や感情を理解できる気がして、正直歌詞の細かなところを私はよくわかっていなかったのですが、今回の再演ではこんな歌詞だったのか!という場面が幾つもあり、それが新鮮でした。
宙組版は芝居の感情を丁寧に表現しているのかな。細かいところで演出もちがっているかも?
圧倒されるよりもじわじわ入ってくる感じに心を揺さぶられました。
同じ作品なのに演じ手が変わることで受け取るものも変わるのが再演の面白さだなと思いました。

長身で抜群の等身に真っ白なスーツやテールコートにトップハット、17世紀風コスチュームのどれもが良く似合っていた愛ちゃん。いやもうさすがだなと(笑)。
キザる愛ちゃんのしぐさや表情に懐かしい人が重なり私は少々感無量。
白いファーコートにソフト帽は似合いすぎてとても堅気には見えないなと(笑)。きゃーというより息をのんでしまいます。
世界を股に掛ける著名なシンガーというにはお行儀が良すぎて崩れたところがなく、隙がない着こなしが美貌の若頭みたいだなと思いました。
とてもソリッドでステージで女装するキャラではない気がするんですよね。
あの場面は春野さんだから活きた気がするので、愛ちゃんには愛ちゃんの個性を活かした意表をつくステージシーンに変更しても面白かったんじゃないかなと思います。

愛エロールは女性の扱いに手慣れているけど自ら望んで女性と親密になっているようには見えなかったです。目的のために女性を利用しているような。女誑しの甘さより端正さが勝るなと思いました。
甘い蜜よりも火遊びを求める女性が集まってきそう。

花組版は有無を言わさず感性で納得させられるのが魅力でしたが、この筋道重視でやや重い芝居のかんじが宙組らしいなと思いました。凰稀さん時代朝夏さん時代の宙組を見てきた私には馴染み深いかんじがします。
そして男役のキザりや目線のやり方、舞台化粧やスーツの着こなしには大和さん時代大空さん時代の香りを感じました。
そんな宙組の血脈を宿す愛ちゃんに強い思い入れを抱いてしまう私はやはり宙組ファンなんだなぁとしみじみ思いました。

(次の大劇場公演「シトラスの風」で湖月わたるさんの位置=3番手ポジションに立つ愛ちゃんを想像してワクワクします)
(逆にそうならなかったらどれだけガッカリするでしょう。。。なんのための「シトラスの風」再演かってなると思います)
(頼みます。ほんとに(>人<。)

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2018/01/17

ひとりではさみしすぎる。

1月11日(木)に宝塚大劇場にて花組公演「ポーの一族」を見てきました。

シアタードラマシティで宙組公演「不滅の棘」を見た翌日でした。
同じ不老不死を描いていても置かれた立場がちがえばその意味もちがってくるのだなぁと思いました。

「不滅の棘」は一度は得たかけがえのないものを失った喪失の痛みが主人公のエロールを不信と孤独に陥らせ、癒えることのない愛の痛みが彼を苦しめていたように見えました。
この「ポーの一族」のエドガーはもう自分には手が届かなくなったものに飢えと憤りと絶望を抱いているように見えました。
肉体的に大人になって不老不死となったエロールと、永遠に未熟な少年のままでいるエドガーのちがいかなぁと思いました。

1回めは2階のセンターから見たのですが、冒頭の「ポーの一族」の大ナンバーに痺れました。
舞台の隅々にいたるまで華やかでダイナミックでこれぞ小池作品!と。
豪華な衣装を身にまとった美しい人びと。印象的なダンスのしぐさ。コーラスのフレーズ。
これから私が見ようとしているものこそまさに極上の美、永遠のいのちなのだと。
この作品を宝塚大劇場で見る意味を納得した瞬間でした。

舞台に息づく明日海りおさんのエドガー、柚香光さんのアラン、そして華優希さんのメリーベル。
ほんとうに少年少女にしか見えなくて。極上の美少年と美少女で。
手に入らないものをもとめて相手を傷つけずにいられないエドガーとアラン。
その血を流す心が見えるような苦しい2人の痛みへの共感。
そして見ているだけで幸福感に包まれるメリーベルの愛らしさと庇護の念を掻き立てられる脆弱さ。
この感じこそまさにかつて夢中になった「ポーの一族」だ・・・と思いました。

夢中になっていたのははるか昔のことで物語の細部はすっかり忘れてしまっているのに、メリーベルの「お兄ちゃま」で打ち震え、ほんとうにささいなセリフに、たとえばマーゴット(城妃美伶さん)の「やさしくしてあげてもいいわ」「かわいそうなお金持ちのみなしごになるんだもの」にあぁこれ、と思ったり。(覚えているものですねぇ)
クリフォード(鳳月杏さん)の言動に、そうそうこの人はこんな男だった!と思ったり。
エドガーが男爵(瀬戸かずやさん)に呼びかける「とうさま」に70年代の夢想家たちの自意識を思い出したり・・・。
彼らが生きて動いて言葉を話すことに感動し、かつてのあの時代の片鱗に触れ追憶し感慨無量でした。
こういう原作と宝塚歌劇のMixはいいものだとしみじみ思いました。

原作の記憶を呼び起こしてくれる役たちのなかでも、ことに仙名彩世さんのシーラが私はお気に入りとなりました。
「仮面のロマネスク」で彼女を見た時、なぜだかわからないけど花郁悠紀子さんの描く女性っぽいなぁと思ったのですが、その雰囲気が今回とてもシーラに合っている気がします。
そのもの腰や口調で大人の女性のやさしさや色香やにわかに醸す禍々しさを表現していて惚れました。
彼女がこの宝塚歌劇版「ポーの一族」に原作がもつ雰囲気―― 70年代の自意識に近づけてくれている気がしました。

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2017/12/17

アンタイトル。

11月19日宙組7代目トップスター朝夏まなとさんが宝塚を卒業しました。
同時に私にとって宙組を見る楽しみの1つであった伶美うららちゃんも宝塚を卒業しました。
私は地元の映画館でその最後の公演の千秋楽をライブビューイングで見ていました。

レトロな老舗映画館のスクリーンで見る上田久美子先生作演出の「神々の土地」はまるで名画のようでした。
映画館の廊下やレストルームに掛かっていた往年の映画女優さんたちのポートレートにも負けない伶美うららちゃんの「麗しのイレーネ」にうっとりして、無冠であってもその輝き美しさは宙組の永遠だったよと心の中で語りかけていました。
うららちゃんの未来に幸あれと思いつつ映画館を後にしました。

それから幾日か過ぎ、うららちゃんの今後の動向がネット等で届いてきました。
凰稀かなめさんも出演される「越路吹雪に捧ぐ~トリビュートコンサート」への出演。
かなめさん主演の朗読劇で共演もするそうな。
そしてかなめさんのLIVEイベントにゲスト出演。
私はいまになって彼女の在団中には感じなかった感情が溢れてきてモヤモヤしています。

うららちゃんがトップ娘役としてかなめさんの隣に立つ「目」はなかったのだろうか・・・。
卒業後に一緒にお仕事をする2人にそんなことを考えてしまう自分を止められません。
あの時ああでなかったら。エリザ20周年公演の構想がなかったらもしや。いやいやいやいや。
そうしたら花乃まりあちゃんが宙で就任する可能性もあったかも・・・いやいやいやいや。
そしたら実咲凜音さんや朝夏さんの活躍を否定することになってしまうからダメでしょ。。。
いやいやダメダメもやもやもやもや。

すべてはタイミング。
トップスター構想、演目予定、周年イベントetc.
娘役はいろんなことに左右される。
わかってはいることだけど。
もうしばらくモヤモヤしていようと思います。

伶美うららちゃんはその姿も好きですが、深い落ち着いた声が私はとても好きです。
豪華なコスチュームが活き、舞台が華やぐ麗人オーラは彼女の持つ稀なる魅力だと思います。

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2017/12/09

あの瞬きに導かれ。

12月2日と3日、福岡市民会館にて宝塚歌劇月組公演「鳳凰伝」と「CRYSTAL TAKARAZUKA」を見てきました。

「鳳凰伝」。楽しみで仕方ありませんでした。
まずバラクは誰?と思いましたよね。れいこちゃん(月城かなとさん)か、いいではないか、楽しみだなと思いましたよ(笑)。

脚本の部分で物を申したいところもあるのですが、それでもこの作品が好きだなとあらためて思いました。
主演のカラフ役の珠城りょうさんが歌う主題歌にしみじみと聞き入りました。
甲斐先生の曲はいいなぁ。盛り上がるなぁ。木村先生の歌詞もいいなぁ。木村先生なのになぁ。

カラフは実感を求めてさすらっている若者なんだなぁ。
かつての華々しい凱旋も彼には熱き血潮を滾らせるものではなかったのだなぁ。

初演の和央ようかさんのカラフは、圧倒的なビジュアルと比類なき実力のある男、なにもかもがこの世界と乖離している自己を感じずにはいられず、世界との齟齬を埋める何かに出逢うことを夢見ている男に見えていました。
どうしようもなく孤独に生まれついた人だなぁと。
そして、いずれ世界を手に入れる男だぁと。
ゼリムもタマルも心から彼を慕っているけれども、彼らでは彼の心を埋められない。
そんな彼が対等でいられる唯一の男が、バラク。
この人と対になるのはもうトゥーランドットしかないよねと思えるカラフでした。

その初演のイメージとはまったく異なる珠城さんのカラフを読み解くように見るのはとても面白かったです。
珠城さんのカラフは内面が若い印象をうけました。若くて清々しいカラフでした。
孤高ではない。世界を信じている人だなぁという印象を受けました。
国は滅ぼされてしまったけれど不幸ではない。
ただ恵まれていた過去に実感がないのだなぁと。
愛情深い父の存在、自分を心から慕うゼリムやタマルのような人びとが他にもきっとたくさんいて。
皆が自分によくしてくれて、皆を大事にも思っていて。だから感謝の言葉も素直に発せられて。
慈愛に満ちた世界に育ち、うたがいもなく幸福であったのだろうけれど、それゆえに心から渇望するものがない。
恵まれた環境を失ってもそれを惜しいとも思わないでいる青年、それが珠城カラフだなと思いました。

そんな彼の目に飛び込んで来た星。
初めてその熱い血潮を滾らせたもの。
手に入れること以外考えられない希望。
彼に「いま生きている自分」「いのち」を感じさせたもの。
それがトゥーランドットなのだなぁと思いました。

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2017/10/11

オルタナティブス。

9月12日の観劇に続いて、9月18日に宝塚大劇場宙組公演「神々の土地」と「クラシカル・ビジュー」を見てきました。

「神々の土地」は1週間のインターバルを置いてからの観劇で、自分なりに見どころや好きな箇所などを噛みしめて見ることができました。
それぞれの登場人物の目線から出来事や主人公たちを見るとどう見えるのかなと考えながら見るのが楽しかったです。

ドミトリーは悪く言えば、根回しもしないで独善的に物事をおしすすめた挙句に失敗した見込みの甘い男で、彼によって心をかき乱された女性2人は、最終的には彼ではなくて自分が置かれている立場を選び、非業の最期を迎え、皮肉にも彼だけが生き残るんだなぁ。
そんなドミトリーを主人公に物語を描く意味とはなんだったんだろうなと思います。

ドミトリーは観念的なことには饒舌になるのに、イリナとの核心的な部分になると寡黙になってしまう。
「お互い自分の信念に従って生きよう」と言うけれど具体的なことは言わない。
彼の信念ってなんだったのか、イリナの信念ってなんだったのか、3回見たけれど(その後ライブビューイングを入れると4回)私にはわからないままでした。

イリナを愛しているのに正面からは一度もアプローチせず、イリナの言わんとすることを先取りして独りよがりに自己完結して、誰の気持ちもはっきりと確かめもせずにオリガとの結婚を決めてしまう。
それでいてラスプーチン暗殺に至るくだりでは、まったくオリガのことを忘れ去っていますよね。
オリガのことはその程度ってことなんだなと。
「俺を信じろ」と言っておいて、信じたオリガの心を踏み躙っている。
オリガはイリナに負けたのではなく、ドミトリーの未熟さと身勝手さに負けたのですよね。

そんなドミトリーとともに生きる道よりも、自分の置かれた立場のまま運命を受け入れることを選んだ2人の女性。
こうして時間を置いて考えると、2人の女性の決断は至極納得がいく気がします。
軽々しく信念とか言う男性を信じちゃダメってことですよね。
劇場ではまぁ様の麗しい見た目と切なげな歌に騙されていました。

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2017/09/17

美しいものを見ることには価値がある。

9月12日に宝塚大劇場にて宙組公演「神々の土地」と「クラシカル・ビジュー」を見てきました。

「神々の土地」は上田久美子先生の大劇場作品でした。
ある時代のある場所で、生きて、愛して、永遠に訣かれた人びと。
その時そこにあったものに思いを馳せてしまう物語りでした。

主人公のドミトリーは宙組トップスター朝夏まなとがこれまでの経験と技量を注いで挑戦している役どころだなぁと思いました。
研16のトップさんをもってしてもこれは難役だなぁと。
主人公が感銘を受ける都度に鳴り物が入る訳ではないし、葛藤や陶酔をダンスで表現するのでもない。ひたすら芝居力が要求されるなぁと。
微妙な間の持たせ方一つで意味が伝わったり伝わらなかったりしそうだなと。
主人公ドミトリーはその曖昧なもののために彼自身が描いた未来からドロップアウトしてしまったように読めました。

開演アナウンスの挿入の仕方が通常とはちがうのも上田久美子先生のこだわりでしょうか。
冒頭の爆弾テロルでセルゲイ大公が倒れ次の場になる前の暗転中に開演アナウンスが挿入されていましたが、その朝夏さんの口調が妙に私のツボに入ってしまいました。
本来開演アナウンスにはお客様へのウェルカムな気持ちが込められているものですが、作品の世界観に合わせてかどこまでも陰鬱な空気を漂わせた口調で、冒頭から作りこんでいるなぁと。それが私のツボにハマってしまって笑ってしまいそうになるのを堪えるのが大変でした。
いやいや、こういう世界観にこれから入っていくのね、という心構えができました(笑)。

帝政ロシア末期の難しい時代背景、登場人物それぞれの立場の複雑さ、それぞれの価値観。
何世紀もかけてはまり込んだ迷宮の出口を探す人びとの立場や心情を読みながら見るのはとても面白かったです。
開演アナウンスに続く場の招待客のおしゃべりで作品に必要な設定情報はほとんど網羅されていたし、ジナイーダの冗談交じりの軽口「よけいなことをしてくれたものだわ」がただの軽口じゃあなかったんだということが後のちわかる展開だとか。
なんどもほぉぉ~ってなりました。

その立ち位置を読みつつ、彼らの発する言葉の意味を読みつつ、一つ一つのエピソードに居合わせた主人公がその時どう考え何を決したかを読みながら見るかんじでした。
そうして頭でも考えながら答え合わせをするように見ていると主人公たちの気持ちはだいたいわかったような気持にはなりましたが、見ているその時にカチッとはならないのが少々もどかしかったです。
読み物としてはとても面白いけれど舞台としてはどうなんだろう。こういうのもありなのかな。
というかんじです。
セリフの意味も微妙な間の意味も、幾とおりにも受け取れてその中から正解を探しながら見ていく感じで、いろんな解釈ができそうで。
そこは見た私が好きに考えていいのだろうか?

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2017/07/29

グリーンライト。

7月21日に博多座にてミュージカル「グレート・ギャツビー」を見てきました。

もっと少女趣味テイストでエモーショナルな作品を想像していたらちがっていました。
ここをピックアップするんだぁと思ったり。――アンダーグラウンドの描写に思いの外尺が割かれているなぁとか。
脚本演出の小池先生自身の男のロマンを投影したのかな?
ひたすらクールなギャツビーを描きたかったのかな。

ギャツビーが歌うナンバーはどれも難しくて見終わったらメロディも歌詞もあやふやで口ずさめるフレーズがありませんでした。
ストレートに心に届くナンバーがなかったなと思います。
歌えるキャスト向けの作品だなぁと思いましたが、さりとて井上芳雄さんにも合っていない印象も受けました。
もしかしたら井上さんは声の調子が悪い日だったのかも。あれっと思う箇所がありましたしガサガサしている印象だったので。
声質的にニック役の田代万里生さんのほうが合っていたかなと思います。
いずれにしても日本語に馴染みにくい印象でした。


井上芳雄さんのギャツビーは、軍隊に馴染みアンダーグラウンドで成功した、男の世界で成功し男の理論で生きている部分が印象づく人物になっていました。
脚本演出がそうなのだと思いますが、胡散臭さとか得体の知れなさがあまり感じられなくて、デリケートなところを掴まれる感じがしなかったなと思います。
哀しくなるような滑稽さとか困惑、イノセントなところが強調される瞬間を垣間見たかった気がします。
ピックアップされる場面からしても、そもそも小池先生が描きたかったギャツビーと私が見たいギャツビーが違ったってことかなと思います。

とてつもなく身の程知らずで有能な空想家で、その類まれな能力とはアンバランスな素朴さや迷惑なくらいな自信と小心さとかを私はギャツビーに見たかった気がします。
そんな彼が手に入れようとしたものは何なのか。

彼はデイジーが夢のような上流階級のお嬢さんだから恋をして、彼女に相応しい富を得たいま、彼女と結ばれることだけを考えている。
再会のシチュエーションにこだわったり。
デイジーという夢と一緒に夢の中に住まうことが彼の望みなのかな。―― そこにある幸福の本質とかはあまり考えていなくて。
彼女の立場とか気持ちとかは深く考えていなくて、彼女に嫌われたくないとは思って思慮深くはしているけど、自分と結ばれれば彼女は幸せになるはずということを疑いもなく信じている。
その夢の帰するところ―― を私は見たかったのだけど、夢の実現のために払った犠牲の部分を強調する脚本だったなぁと思います。

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2017/07/20

売れるものなら亭主でも。

7月10日博多座にて、「売らいでか!」を見てきました。

花登筐さんの脚本はよくできているなぁと思いますが、やはり背景や価値観が古くてうーんと思うところが多々ありました。
井上順さんがチャーミングだから見ていられたけれど山内杉雄はなかなか腹立たしい男性の典型だなぁと思います。
キャストの皆さんが達者で魅力的で、セリフの掛け合いが可笑しくて引き込まれて見ましたけど。

身勝手な亭主を売って胸がすくかな?
亭主を買った名家の奥様よりも成功して、お金の無心に来られて溜飲が下がるかな?
あんな旦那さんとまたよりを戻したいかな?
私ならないなぁと思いました。


舞台は昭和31年。まだテレビも普及していない時代。
娯楽は年に1度のお祭りと、噂話。そんな町。
女は夫や夫の親にものも言えない。
弟よりも兄が優遇され、名士は名士の顔を保つことがなによりも大切。
それがあたりまえの町。

山内杉雄(井上順)は現実から逃げている無責任な男の人。
「高嶺の花」である地元の名家の奥様に憧れているのでこの町を離れたくない。
妻と娘と母親との家族4人の生活を営むには給金が少ないけれど、いまの仕事は辞めたくはない。憧れの奥様とのつながりがなくなるから。
家計が苦しくて妻が窮状を訴えると逆上して怒鳴る。
母に甘やかされ妻に甘やかされ、5歳くらいの娘にまで甘やかされている人。
いるよね、こんなふうにありとあらゆる女性から甘やかされるタイプの男性・・。
井上順さんのなんだか憎めないチャーミングさはそれを納得させるなぁと思いました。

浜木綿子さん演じる山内なつ枝は無責任な夫に泣かされ、キツイおしゅうとめさんにイビられる女の人。
結婚6年目らしい。
身寄りのない香具師の娘だとかで、夫もその母親もどこにも行くところのない女だと見下しているんだなぁと思いました。
彼女自身はここで一生懸命に生きて行こうとぐっと我慢して、何年も前の夫のやさしかった記憶を大切に夫の愛情を信じて家計の助けにと組紐の内職に精を出している健気な女性で。
なんだかなぁって。こういうの見るとイライラしちゃうよねって夫婦のありさまです。

こんな町にずっと暮らして、これから先もこれよりほかに選択肢がないと思っている町の人びと。
そんな閉鎖的な町の空気に抗い上昇志向なのが、地元の名家が営む会社の支配人の弟の弘(小野寺丈)とその恋人のきく子(大和悠河)の2人。
2人の画策によって急展開を強いられる杉雄となつ枝夫婦の物語でした。

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2017/05/22

帰ろうよ。

5月11日と18日に博多座にて宝塚月組公演「長崎しぐれ坂」と「カルーセル輪舞曲」を見てきました。

「長崎しぐれ坂」上演が発表になった時点で、なぜこの演目なんだろうという思いが拭えませんでした。
年に一度のこの時期だけは地元で数週間、好きな時に宝塚を見に行けることを楽しみにしている身としては。
でも生で見たら気持ちは変わるんじゃないかと期待して1回目の観劇をしましたが、やはり気持ちは盛り上がりませんでした。

博多座には盆もセリもあるのに一切使わず、書き割りとカーテン前の芝居の繰り返し。
まるで大衆演劇を見ているようで宝塚を見た時に感じる高揚を感じることができませんでした。
脳内麻薬に支配されるあの感じを楽しみにしていたのに。

昔のバスガイドのような轟悠さんのセリフ回しがもともと苦手ではあるのですが、今回の伊佐次はとくにそのクセが強烈なのもダメでした。
こざっぱりとした江戸言葉が聞きたかったのに。
どすを利かせればいいというものではないと思うのです。

轟さんもトップの珠城さんももの凄く熱演されているのは伝わってくるので、そんなふうに思う自分が嫌になって客席にいるのがいたたまれなくなってきます。
なんでこんな思いをしながらここにいるのだろうと。

とはいえ1週間前よりも格段に芝居が上達している暁さんに感動したり、愛希さんの和物のお化粧もきれいになっているのに気づいて嬉しくなったり。
有限の日々の中で精いっぱいに努力し成長されていく生徒さんを見るのは宝塚を見る喜びであり愉しみであることをあらためて思いました。
私がもとめる宝塚は、瑞々しい夢を見せてくれる世界であることです。
技術は及ばないところがあっても輝くものを持っている宝石たちを演出や舞台効果で手厚くフォローし輝かせて見せてくれる世界が好きなのです。
もちろんその手厚いフォローに甘んじず惜しまず自分を発する姿がそこにあってこそですが。

私としてはもっと宝塚らしく華のある舞台を期待していたのでがっかりではあるのですが、こんなに地味なお芝居でも、客席が集中しているのは、轟さん珠城さんをはじめとする出演者の芝居力が高いからだと思います。
皆セリフがクリアで聴きやすいです。

「カルーセル輪舞曲」は大劇場で見たとき以上に楽しくて、このショーを見るため、そしてお芝居で成長していく生徒さんたちを見るためにリピートするか、それともショーだけの幕見をするか、愛を試されている気がしています。

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2017/04/25

誰も教えてくれない。

4月19日の夜、福岡市民会館にて柚希礼音さんのコンサート「REON JACK2」を見てきました。

チケットが取れたら見に行こうかなという軽い気持ちで柚希さんファンの知人にチケットをお願いしていたのですが、素晴らしいパフォーマンスの数々に魅入られてきました。

宝塚では他組のファンなので、星組だったちえちゃん(柚希さん)の舞台はこの十数年の間に年に1度見るか見ないかの頻度でしたが、その頻度だけに見るたびに目を見張る成長を見せられて凄いひとだなぁと思っていました。
宝塚退団後に初めて見た今回のパフォーマンスでも、共演するトップパフォーマーの皆さんと切磋琢磨してさらに自身を高めている姿に感動しました。

幕開きから数曲はダンサーズを従えた柚希さんヴォーカルのグルーヴなナンバーがつづき、普通にアーティストのコンサートみたいだなぁと思いましたが、客席がきちんと着席しているのが宝塚ファンらしくてお行儀がいいなぁと思いました。私はもうスタンディングのコンサートはしんどいなぁと思っているのでよかったです(笑)。

大貫勇輔さん、SHUNさん、ロペスさん、YOSHIEさんとのダンスパフォーマンスはさすがちえちゃん!凄い!の連続で、まさにこんなちえちゃんが見たかった!と思うパフォーマンスをつづけざまに見られて興奮しました。

大貫さんは梅芸「ロミオ&ジュリエット」で拝見したばかりでしたが、この公演ではより自由に高い跳躍を見せつけていらっしゃいました。跳躍して滞空中に向きを変えるという猫のような筋力にはただただ呆然としてしまいました。

つなぎ服のマニッシュな柚希さんと同じつなぎ服のSHUNさんと大貫さんが目まぐるしく相手を替えながらスピーディに踊る場面はひたすら呆気にとられるばかりでした。足さばきもリフトも凄すぎて。
ロペスさんと真紅のスリットドレスの柚希さんがペアで踊ったタンゴも圧巻でした。言葉が出ない。感動を拍手で表すしかありませんでした。

福岡だけの出演のストリートダンサーのYOSHIEさんのキレには私の緩い動体視力では動きを捉えきれなくて、こちらも呆気にとられるしかありませんでした。
そしてそのYOSHIEさんとペアで踊る柚希さん。世界一のストリートダンサーについていく彼女の気概、気力そして能力がブラーヴァでした。

どんなジャンルでもその道のトップパフォーマーに負けじとついていこうとするところ。
ありがちな、自身は元宝塚っぽくしてて、その道の素晴らしい方々のパフォーマンスに拍手~!ってスタンスじゃなく食らいついていくところがちえちゃんだなぁと思いました。
それでいて元宝塚らしいスッとした品の良いところは自分の持ち味にしているところが素敵で、だからこそ私のようなライトな宝塚ファンも楽しめるなぁと思いました。

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2017/03/30

うっとりします。

3月25日、福岡市民会館にて宝塚歌劇花組公演「仮面のロマネスク」とショー「Exciter!! 2017」を見てきました。

みりおちゃん(明日海りおさん)、頼もしいトップさんになったなぁと思いました。
すごく充実している感じが伝わってきました。

新トップ娘役の仙名彩世さんは明日海さんと並ぶと『絵柄』がちがう印象でした。
(仙名さんは花郁悠紀子さんが描く女性っぽいなぁと思いました)
ヒロイン芝居を封印してきた弊害なのかもしれないけれど、芝居が固い印象でした。
作品のヒロインとして心が閃く一瞬が見えるように、見せる芝居を期待したいです。

「仮面のロマネスク」はあらためて復古王政時代の描き方に惚れ惚れしました。
貴族たち、ブルジョワたち、庶民たち。自然に語られるそれぞれの立場からのセリフが時代を表現してて。
貴族階級の中にも異なる立ち位置がさりげなく描かれていて。
それが物語の主題ではないのだけど、確実に登場人物たちの心に影を落としているから物語が運ばれていくのだなぁとわかる。凄いなぁと思います。

そして、やはり柴田先生の作品は娘役を選ぶなぁと思いました。
なぜだかはわかりませんが、メルトゥイユは人間不信なところがありますよね。
だから人を試してしまう。
ヴァルモンの態度に本当は傷ついているし嫉妬もしているけれど、世間や男性を見下して自分はさも打算で生きているように見せかけることで自分の弱いところ、自分の本心を押し隠そうとする彼女独特の矜持がある。
そんな強がりが魅力的で愛しくて、宝塚にはまりたての頃にCS放送で見た初演のメルトゥイユに私は心を掴まれました。
そのちょっとした可愛らしさが今回のメルトゥイユには感じられなかったな。

ヴァルモンが感じているはずの彼女の仮面に隠された魅力を私も感じたかったなぁと思いました。
そこが感じられないとヴァルモンがただの美貌だけの浮気おとこに見えてしまうから。
ヴァルモンの動機になりうるメルトゥイユかどうかが大事だと思います。

また今回はどういうわけか零落した子爵家を持ち直したヴァルモンの影の苦労や仮面に隠したメルトゥイユへの愛が印象づかなくて、結果的に女誑しぶりだけが強調されてしまったような気がします。
メルトゥイユにもヴァルモンにも仮面に押し隠している真の部分がある。
それが仄見えた一瞬にはっとさせられるから、その仮面を今生の別れとなるかもしれないギリギリのところで外すラストシーンが感動的なのになぁ。
2人の「あなたがいたから」という繊細で久しい想いが優美なロマネスクになった瞬間のなんともいわれぬ感動を味わいたかったな。

と思ってしまうのも、“初演信者”ゆえかもしれません。(しかも映像の)
ハードルが高くなってしまってる自覚が大いにあります。
いろいろ言いながらも見たいんですよねcoldsweats01
見たくもない作品や出演者ならはなから見ないですもん(笑)

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2017/03/13

天使の歌が聞こえた。

3月1日と2日梅田芸術劇場メインホールにてミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を見てきました。

1回目の観劇では設定などに気をとられてしまうところもあったのですが、2回目の観劇では1幕バルコニーの場面から涙がとまらず自分でもびっくりしました。

古川雄大さんのロミオは見目麗しいオタクってかんじだなぁとさいしょは思って見ていました。
親友たちの話も上の空。
まだ見ぬ恋人を想って心そこにあらず。
家同士の憎悪や確執とも一歩も二歩も退いたところにいて。
「この地上のヒーローはここにいる俺たちさ♪」と煽っておいて現実をあんまり見ていない理想主義者だなぁって。
それでも仲間に好かれて夢を見せることができる魅力がある人なんだなぁ。

こんなに荒んだ街に育ちながらお坊ちゃまでいられるのはやっぱり過保護なママのおかげかしらとか。
モンタギューの若者たちはちょっとダサくて単純な不良ってかんじ。
大人たちの闇もそんなに深そうではない。
一族の若者たちの成長を見守っている大きくて強くてそれなりに弱みも見せちゃうパパとママに見えました。

それにひきかえキャピュレットの闇の深さは。
父も母も従兄も――。
こんな闇の中でよくもこんなに純粋な娘が育ったものだと思う生田絵梨花ちゃんのジュリエット。
乳母さんの愛情のおかげかなぁ。

キャピュレット家の不幸は、皆がそれぞれに自分は蔑ろにされていると思っているところだなぁと思いました。
そこから唯一外れているのがジュリエットなのかな。
ロミオ追放後の傷心に追い打ちをかけるように無理やりパリス伯爵と結婚されそうになって、きっと生まれて初めて真っ向から親に逆らった「私の親ではない! あなたも! あなたも!」
あの場面で両親にそう言い放てるのはすくなくとも愛されていることを疑いながら育ってきた娘ではないからだと思います。

キャピュレット卿も心を許すことができない人間たちの中にあって娘のことだけは全力で守っているのかもと思いました。
ひどい父でありひどい夫だけれど、娘を思う気持ちはすごく信用できる気がする岡幸二郎パパでした。

キャピュレット夫人にとってのジュリエットは自分自身の写し絵なのだなと思いました。
だからジュリエットを傷つけることは自傷行為とおなじだなぁって。
ジュリエットに愛のない結婚を強いることはもう一度自分自身を傷つけることにほかならないのに。それなのにあんなことを言っちゃう。
本当は愛されたかった人なんだと思いました。
愛する人に愛されるジュリエットを見つめることで傷ついた自身の傷を癒せる可能性もあるのに。闇の深い香寿ママでした。

闇の深い両親だけれども、それぞれに歪んだ愛だけれども、ジュリエットはまちがいなく愛されて育った娘なのだと思いました。
乳母さんというフィルターを通して両親の愛はエッセンスだけをジュリエットに注がれていたのだと。
ジュリエットの魅力は愛された娘の自己肯定感と生命力だなぁと思いました。
だからロミオは彼女に惹かれたのだなぁと思いました。

親友の話にも上の空だったロミオは、ジュリエットと出会ってはじめて現世に着地したよう。
このジュリエットの存在によってロミオは生命を得たんだと思えて胸の中に温かいものが溢れてきました。

近未来の廃墟のような街と荒んだ人びとの中でそれぞれにそれなりに大事に育てられてきた2人が出逢った瞬間に魅かれあうのは必然かもしれないなぁと思えました。
魅かれるべき魂に出逢って、天使の歌が聞こえてしまったんだからもう仕方がないよねぇと思えるロミオとジュリエットでした。

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2017/02/19

描きたかったのは。

2月16日に宝塚大劇場にて宙組公演「王妃の館」と「VIVA! FESTA!」を見ました。

ミュージカル・コメディ「王妃の館」。
原作は知らないのですが、傲慢で陳ねたように見えていた主人公が実はピュアな迷える子羊で・・・という田渕先生の定番的ともいえるお話で個人的にとても好きなテイストでした。

誰かを傷つけて後悔するところとか・・あらっと思うほどとても素直なんですよね(笑)。
朝夏まなとさん演じる北白川右京さんも実咲凜音さん演じる桜井玲子さんも。
真風涼帆さん演じる太陽王ルイ14世までも(笑)。

そのほかの個性的な登場人物たちもみんな好い人ばかり。
困っている人がいたら協力してあげて(自分たちがカモられている側なのに)、泣いている人がいたら慰め励ます言葉をかけてあげて(自分が迫られて困っていた側なのに)。
皆がやさしいからつい涙ぐんでしまう。そんなお話でした。
じっさいのパリ観光でこんなにお人よしばかり揃っていたら怖い目に遭ってすってんてんにされちゃうぞって感じなんですけどcoldsweats01
そこはやさしい虚構(うそ)といいますか(笑)。

寛容さの中で安心していられたら誰しも安心して自分もまた人に寛容でいることができるよねとそんなことを思ました。
でも現実は猜疑心でたくさん傷ついてしまうから。
誰もが癒されずに抱えている心の痛みや傷を癒すひとときが劇場全体にそっと訪れているようなそんな空間を共有している気がしました。

北白川右京役の朝夏さんはとにかくノリノリで一挙手一投足が可笑しかったです。持ち前の長い腕や脚と身体能力でちょっとした仕草でも笑いが起きてしまう。
笑いの間がとてもお上手で、客席が安心して笑うことができる雰囲気をつくってらっしゃいました。
そういうところも温かくてやさしい作品だなぁと思いました。

ルイ14世役の真風さんのビジュアルにはもう心撃ち抜かれる思いがしました。宝塚の真骨頂ですよね。
あの存在感と華、ビジュアルがあったればこそ、この作品が宝塚として大劇場公演として成立していると思いました。

そしてさいごはクレヨン役の蒼羽りくさんに攫われてしまった私の心(笑)。

メインキャストはすごくうまくハマっていると思うんですけど、ホテルの従業員や現地の人や観光客などはもっと意味のある使い方をしてほしいなぁと思いました。

ホテル従業員が皆同じ制服でしたが、シャトーホテルのロビーに15~6人のベルボーイとベルガールが固まってるってことがあるのかなと思いました。
フロント係にドアマンにベルガール(ボーイ)にメイドにと、制服を変えてちゃんとホテル業務をしててほしいなぁと思いました。業務が違えば個々に所作が変わったり性格付けができるし、そのうえでメインキャストの宿泊客と絡む様子があればメインキャスト其々の性格も見えたりして面白いのにと思います。

また観光地を通行する人びとも同色の服の同じ年格好にしないで、肌の色髪の色服装などさまざまに設定してほしいなぁと思いました。
現代のパリ観光ならいろんな国籍の人がいるはずなのに。奥行のない舞台になってしまっている気がしました。
ここもメインキャストの日本人観光客と彼らのちょっとしたやりとりで場所やどういう状況なのかとかの情景が見えると、名所の画像を映し出すよりよほど面白いのにと思いました。
メインキャスト以外の使い方次第でちょっとした見所をあといくつか増やすことができたんじゃないかなぁと。
場面の一瞬一瞬を大事にしてほしいと思いました。宝塚はその一瞬を見に来ているファンも多いのだから。

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2017/02/02

ファビュラス。

1月23日博多座にて「シスター・アクト~天使にラブソングを~」のソワレを見てきました。

蘭寿とむさんを目当てに気軽に見に行ったのですがとてもよかったです。
1幕は蘭寿さんさすがスタイルいいな。お胸ホンモノだわ。退団後もお歌凄いレッスンされてるんだなぁ。なんて冷静に見ていたのですが、2幕は引き込まれるように見てしまって。
わかっているストーリーなんですが、シスターたちがカーティス一味から命がけでデロリスをかばうあたりは思わず涙していました。
私はやっぱり舞台の皆の意気が一点に集中してトルネードみたいに盛り上がるかんじが好きだなぁと思います。
そんなシーンに感動しちゃうんですよね。

エディ役の石井一孝さんはいるよねアメリカ映画にこんなキャラ(笑)と思える暑苦しいいいやつでした。
こんな自分にも人生で一度はヒーローになる瞬間が訪れると夢見ているあたりもアメリカンだなぁと思いました。

オハラ神父役の今井清隆さん、さすがいい声~~♡ ギンギラの法衣でお説教をしたり客席(信者?)キャッチも凄くて面白さ全開でした。最後までソロ歌がなかったのには驚きでした。もったいない起用だなぁ。

修道院長の鳳蘭さんもさすが。間の取り方とか声色の変化とか。強弱オンオフの切り替え鮮やかだなぁと思いました。笑わせるところはしっかり笑わせるし。
彼女がデロリスをかばう言葉には温かさがこもっていてじんとしました。

修道女見習いのメアリー・ロバート役の宮澤エマさんも素直な歌声で素敵な女優さんだなぁと思いました。
家に帰ってプログラムを見たらシスター役の方たちはこれまでいろんな作品で見たことがある方たちばかり。
シスター・メアリー・ラザーラスが春風ひとみさんだったとは気づかなかったsweat02
大月さゆさんにも気づかなかったぁwobbly
・・・それくらい気軽に見てしまったのでした。

こんなに豪華な出演者揃いで脚本も音楽も素晴らしい作品を気軽に見られるのも地元に博多座という劇場があるからこそ。
ありがたやありがたや・・(-人-) ことしはなかなか観劇遠征ができないので切実にそう思います。

カーテンコールでは客席も一緒に踊れて平日の夜なのにこんなに盛り上がって大丈夫?ってくらい楽しかったです。
なかなか帰らない客席のコールに応えて登場してくれた蘭寿さん、輝いていたなぁ。
また博多座に出演していただけたらうれしいなぁと思います。

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2017/01/28

旨酒を飲もう。

1月16日に宝塚大劇場にて月組公演「グランドホテル」とショー「カルーセル輪舞曲」を、1月17日に「グランドホテル」の新人公演を見てきました。
月組新トップ珠城りょうさんの本拠地お披露目公演でした。


フェリックス・アマデウス・ベンヴェヌート・フォン・ガイゲルン男爵役の珠城さんは異例の研9でのトップ就任で学年のわりに地に足の着いた落ち着いた雰囲気を持つ男役さんでした。
大きな欠点もなく安心して見られるタイプだなぁと思いました。
いかにも貴族で上流風だけど、ちょっといわくありげな男爵といったかんじが良く出ているなぁと思いました。

エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役の愛希れいかさんはさすが!でした。
どこか現実とは乖離した感覚の女性。名高いバレリーナとして若い頃はロマノフ王家とも親交があり沢山の贈り物と栄誉を授かっていた人が革命と重ねた年月によって残酷にも多くのものを失ってしまって。
唯一残った彼女にとっての人生そのものであったはずの踊ることにさえも喜びを失いかけていた時に若い男爵と恋に落ちて生きる喜びを取り戻す。
そのもう若くはない女性のキャリアや人生を感じさせる役づくりで、心の動きの見せ方も素晴らしかったです。
珠城さんとのボレロの場面は最高でした。珠城さんの肩から降りるときの脚の流れの素晴らしいこと。
もう娘役の域を超えてしまってるかなぁとも思えました。女優さんだなと。
彼女見たさに劇場に行きたくなるジェンヌさんです。
実咲凜音さんが「双頭の鷲」に出演したみたいにさらにハイレベルな作品に出演する機会があるといいのになぁと思います。

オットー・クリンゲライン役の美弥るりかさんはしょぼしょぼの役でも華があるのが宝塚らしくていいなぁと思いました。宝塚スターが演じるオットーという感じでした。
「We'll Take A Glass Together」での男爵との掛け合い、とても愛嬌があって魅力的でした。あの場面とてもいいですねぇ♡

役替わりのフラムシェン(フリーダ・フラム)は海乃美月さんが演じていました。
歌、芝居、ダンスともにお上手で娘役として出来上がってる方だなぁと思いました。
上昇志向でチャンスのために自分自身の女性性を駆け引きに使ってしまうという宝塚の娘役さんが演じるには珍しいタイプの役ですがちゃんとそんな女の子に見えましたし、こういう女の子たちがいたのが1928年のベルリンなのだろうなと思えました。
その上で上品さも残っている娘役さんらしさが海乃さんの持ち味なのかなと思いました。
彼女に対してプライジングがとても酷い男に見えました(笑)。

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2017/01/21

兵の情は健やかなるを主とす。

1月17日宝塚バウホールにて星組公演「燃ゆる風-軍師・竹中半兵衛-」2公演を見てきました。
七海ひろきさんが主役の竹中半兵衛を演じていました。

これは時代物ではなく戦国ファンタジーなのだと思って見ました。なにもかもが半兵衛の手柄にされていて突っ込みだしたらキリがないので。
戦国BASARA同様にゲームのキャラクターだと思えばいいのかな。
このキャラにこの言葉を言わせたかったのねという感じ。そうよね、いまならあすなろ抱きさせたいよねとか。
ドラマにリアルはありません。リアルは役者の感情にありました。
で、まんまと泣かされましたcoldsweats01

バレバレのフラグを立てては回収を繰り返す脚本で、逆に言えば楽に回収できる以上のことはしていないので、もうちょっと意欲的でもいいのではという気持ちになりました。
知的な満足を求めるのではなく、気軽に見て泣いて笑って、あとで役者についてあーだこーだと話すのが楽しい作品かなと思います。

かいちゃん(七海ひろきさん)の竹中半兵衛は、竹中半兵衛の姿を借りたかいちゃんそのものでした。
主役なのに張りがないのはそのせいかな。せっかくコスチュームなのに中の人が素のままなので、大きさや華が足りないと思いました。
首から上と首から下の情報量の落差が気になりました。具足姿なのに重心所作が侍らしくなく手持無沙汰に見えました。
心はもの凄く入っているから客席も泣いちゃうけど。
でもその心はかいちゃん以上のものではなくて。かいちゃんがかいちゃんのまま具足や陣羽織を着てかいちゃんの感情のままに泣いている感じで、役としてはどうなの?と思います。
どういうスタンスで舞台に立っているのかな。最近のちょっと浮足立っている感じが私は苦手だな。
以前のようにもっとストイックに役作りをしてほしいと思うのですが。

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2017/01/05

ひとごろし。

12月9日キャナルシティ劇場にてミュージカル「貴婦人の訪問」を見てきました。
(感想を書きかけたまま時間がなくて年を越してしまい・・・新年早々こっそりアップですsweat01

2015年秋に見て今回は2回目の観劇でしたが、前回は山口さんのアルフレッドが全体から浮いていて違和感だったのですが、今回はいい具合の浮き方に感じました。
前回は若いクレアに同情してマチルデのことも可哀想に思って見ていた気がします。アルフレッドをどう描こうとされているのかクレアの真意はどこにあるのかを探るように見ていました。
今回は2015年に見たときよりもアルフレッドとクレアのあいだに愛が見えた気がしました。
それがほんとうに愛なのかを考えながら見ていました。贖罪なのか執着なのかそこにほんとうに愛はあるのか。
いまの2人それぞの互いに対する思いとはいかほどのものなのか。

2人みつめあえばいまも愛し合っていた頃の熱くせつない気持ちが甦るのか。でもそれは昔の気持ちが地層を超えていまに湧きあがるのであって、いまのお互いを愛しているのとはちがうのではないかとか。
それをいまの気持ちと錯覚してしまうアルフレッドの甘さと、シビアなクレアの別の気持ちが見えたような・・・。
いまに至るまでの2人の現実の過酷さの差が見えたような気がしました。

さらに今回はギュレルの人たちの怖さがつよく印象に残りました。
アルフレッドが殺された時にクレアが市民に向かって「人殺し!」と叫びますが、それはアルフレッドを殺したことを言っているのではなくて、「こんなふうにあなたたちは人殺しなのだ」と言っているのだと思いました。
アルフレッドがギュレル市民から糾弾をうける図は、数十年前のクレアがされたこととおなじ。
正義の名のもとに不公正に裁かれ、若い娘にとっては殺される以上の冷酷な扱いをうけた。
数十年前もそうだし、いまも正義を隠れ蓑にした利己主義によってあなたたちは平気で人殺しをする者たちなのだと言っている気がして、クレアの目的はこれだったのかもとも思いました。

アルフレッドを私刑にしたあとの彼らがとても怖かったです。正義の名のもとに己を欺瞞にかけ殺人を犯したことをまったく恥じていない彼らがうすら寒くかんじました。
私もいつアルフレッドや若いクレアにされるかわからない。いつギュレル市民になるかわからない。そんな怖さを感じました。

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2016/12/27

いつだって世界は誰にもやさしくない。

12月4日キャナルシティ劇場にてミュージカル「黒執事〜NOAH'S ARK CIRCUS〜」を見てきました。

お芝居もパフォーマンスも素晴らしくて脚本も演出もよかったです。2.5次元ミュージカル侮りがたしです。
なによりも舞台の上の皆さんの集中力と情熱にやられました。
その舞台を見上げる客席の雰囲気やリアクションも暖かくて、一体感を感じてそこにいることができましたし、こんなだったら奇跡も起きちゃうよねぇと納得でした。
舞台っていいなぁと見終わって幸せな気持ちになりました。

ストーリーも昨年の「地に燃えるリコリス」よりも私はこちらが好きだなと思いました。
動機や展開に唐突さがなかったし、原作の無機質さに巧く肉付けされて体温を感じられるものになっていたのが私の好みでした。
目の前で感情をさらけ出す登場人物を直に感じることで原作では頭で理解していたことが心でわかったり、ぼっちゃまの印象的なセリフにもさらに深みを感じることができました。

「いつだって世界は誰にもやさしくない」
「傲慢でない人間などいない」
小さな少年伯爵がこんな実感を持っている世界観が私は好きです。
そして、ないことにされてしまいそうな部分を言葉にして共有できる作品の懐深さも好きだなぁと思います。
闇と悲哀と笑いがぎゅっと詰まって大満足で、あっという間の3時間でした。

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«あくがれいでた二つの魂どこへ誘う。