2017/10/11

オルタナティブス。

9月12日の観劇に続いて、9月18日に宝塚大劇場宙組公演「神々の土地」と「クラシカル・ビジュー」を見てきました。

「神々の土地」は1週間のインターバルを置いてからの観劇で、自分なりに見どころや好きな箇所などを噛みしめて見ることができました。
それぞれの登場人物の目線から出来事や主人公たちを見るとどう見えるのかなと考えながら見るのが楽しかったです。

ドミトリーは悪く言えば、根回しもしないで独善的に物事をおしすすめた挙句に失敗した見込みの甘い男で、彼によって心をかき乱された女性2人は、最終的には彼ではなくて自分が置かれている立場を選び、非業の最期を迎え、皮肉にも彼だけが生き残るんだなぁ。
そんなドミトリーを主人公に物語を描く意味とはなんだったんだろうなと思います。

ドミトリーは観念的なことには饒舌になるのに、イリナとの核心的な部分になると寡黙になってしまう。
「お互い自分の信念に従って生きよう」と言うけれど具体的なことは言わない。
彼の信念ってなんだったのか、イリナの信念ってなんだったのか、3回見たけれど(その後ライブビューイングを入れると4回)私にはわからないままでした。

イリナを愛しているのに正面からは一度もアプローチせず、イリナの言わんとすることを先取りして独りよがりに自己完結して、誰の気持ちもはっきりと確かめもせずにオリガとの結婚を決めてしまう。
それでいてラスプーチン暗殺に至るくだりでは、まったくオリガのことを忘れ去っていますよね。
オリガのことはその程度ってことなんだなと。
「俺を信じろ」と言っておいて、信じたオリガの心を踏み躙っている。
オリガはイリナに負けたのではなく、ドミトリーの未熟さと身勝手さに負けたのですよね。

そんなドミトリーとともに生きる道よりも、自分の置かれた立場のまま運命を受け入れることを選んだ2人の女性。
こうして時間を置いて考えると、2人の女性の決断は至極納得がいく気がします。
軽々しく信念とか言う男性を信じちゃダメってことですよね。
劇場ではまぁ様の麗しい見た目と切なげな歌に騙されていました。

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2017/09/17

美しいものを見ることには価値がある。

9月12日に宝塚大劇場にて宙組公演「神々の土地」と「クラシカル・ビジュー」を見てきました。

「神々の土地」は上田久美子先生の大劇場作品でした。
ある時代のある場所で、生きて、愛して、永遠に訣かれた人びと。
その時そこにあったものに思いを馳せてしまう物語りでした。

主人公のドミトリーは宙組トップスター朝夏まなとがこれまでの経験と技量を注いで挑戦している役どころだなぁと思いました。
研16のトップさんをもってしてもこれは難役だなぁと。
主人公が感銘を受ける都度に鳴り物が入る訳ではないし、葛藤や陶酔をダンスで表現するのでもない。ひたすら芝居力が要求されるなぁと。
微妙な間の持たせ方一つで意味が伝わったり伝わらなかったりしそうだなと。
主人公ドミトリーはその曖昧なもののために彼自身が描いた未来からドロップアウトしてしまったように読めました。

開演アナウンスの挿入の仕方が通常とはちがうのも上田久美子先生のこだわりでしょうか。
冒頭の爆弾テロルでセルゲイ大公が倒れ次の場になる前の暗転中に開演アナウンスが挿入されていましたが、その朝夏さんの口調が妙に私のツボに入ってしまいました。
本来開演アナウンスにはお客様へのウェルカムな気持ちが込められているものですが、作品の世界観に合わせてかどこまでも陰鬱な空気を漂わせた口調で、冒頭から作りこんでいるなぁと。それが私のツボにハマってしまって笑ってしまいそうになるのを堪えるのが大変でした。
いやいや、こういう世界観にこれから入っていくのね、という心構えができました(笑)。

帝政ロシア末期の難しい時代背景、登場人物それぞれの立場の複雑さ、それぞれの価値観。
何世紀もかけてはまり込んだ迷宮の出口を探す人びとの立場や心情を読みながら見るのはとても面白かったです。
開演アナウンスに続く場の招待客のおしゃべりで作品に必要な設定情報はほとんど網羅されていたし、ジナイーダの冗談交じりの軽口「よけいなことをしてくれたものだわ」がただの軽口じゃあなかったんだということが後のちわかる展開だとか。
なんどもほぉぉ~ってなりました。

その立ち位置を読みつつ、彼らの発する言葉の意味を読みつつ、一つ一つのエピソードに居合わせた主人公がその時どう考え何を決したかを読みながら見るかんじでした。
そうして頭でも考えながら答え合わせをするように見ていると主人公たちの気持ちはだいたいわかったような気持にはなりましたが、見ているその時にカチッとはならないのが少々もどかしかったです。
読み物としてはとても面白いけれど舞台としてはどうなんだろう。こういうのもありなのかな。
というかんじです。
セリフの意味も微妙な間の意味も、幾とおりにも受け取れてその中から正解を探しながら見ていく感じで、いろんな解釈ができそうで。
そこは見た私が好きに考えていいのだろうか?

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2017/07/29

グリーンライト。

7月21日に博多座にてミュージカル「グレート・ギャツビー」を見てきました。

もっと少女趣味テイストでエモーショナルな作品を想像していたらちがっていました。
ここをピックアップするんだぁと思ったり。――アンダーグラウンドの描写に思いの外尺が割かれているなぁとか。
脚本演出の小池先生自身の男のロマンを投影したのかな?
ひたすらクールなギャツビーを描きたかったのかな。

ギャツビーが歌うナンバーはどれも難しくて見終わったらメロディも歌詞もあやふやで口ずさめるフレーズがありませんでした。
ストレートに心に届くナンバーがなかったなと思います。
歌えるキャスト向けの作品だなぁと思いましたが、さりとて井上芳雄さんにも合っていない印象も受けました。
もしかしたら井上さんは声の調子が悪い日だったのかも。あれっと思う箇所がありましたしガサガサしている印象だったので。
声質的にニック役の田代万里生さんのほうが合っていたかなと思います。
いずれにしても日本語に馴染みにくい印象でした。


井上芳雄さんのギャツビーは、軍隊に馴染みアンダーグラウンドで成功した、男の世界で成功し男の理論で生きている部分が印象づく人物になっていました。
脚本演出がそうなのだと思いますが、胡散臭さとか得体の知れなさがあまり感じられなくて、デリケートなところを掴まれる感じがしなかったなと思います。
哀しくなるような滑稽さとか困惑、イノセントなところが強調される瞬間を垣間見たかった気がします。
ピックアップされる場面からしても、そもそも小池先生が描きたかったギャツビーと私が見たいギャツビーが違ったってことかなと思います。

とてつもなく身の程知らずで有能な空想家で、その類まれな能力とはアンバランスな素朴さや迷惑なくらいな自信と小心さとかを私はギャツビーに見たかった気がします。
そんな彼が手に入れようとしたものは何なのか。

彼はデイジーが夢のような上流階級のお嬢さんだから恋をして、彼女に相応しい富を得たいま、彼女と結ばれることだけを考えている。
再会のシチュエーションにこだわったり。
デイジーという夢と一緒に夢の中に住まうことが彼の望みなのかな。―― そこにある幸福の本質とかはあまり考えていなくて。
彼女の立場とか気持ちとかは深く考えていなくて、彼女に嫌われたくないとは思って思慮深くはしているけど、自分と結ばれれば彼女は幸せになるはずということを疑いもなく信じている。
その夢の帰するところ―― を私は見たかったのだけど、夢の実現のために払った犠牲の部分を強調する脚本だったなぁと思います。

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2017/07/20

売れるものなら亭主でも。

7月10日博多座にて、「売らいでか!」を見てきました。

花登筐さんの脚本はよくできているなぁと思いますが、やはり背景や価値観が古くてうーんと思うところが多々ありました。
井上順さんがチャーミングだから見ていられたけれど山内杉雄はなかなか腹立たしい男性の典型だなぁと思います。
キャストの皆さんが達者で魅力的で、セリフの掛け合いが可笑しくて引き込まれて見ましたけど。

身勝手な亭主を売って胸がすくかな?
亭主を買った名家の奥様よりも成功して、お金の無心に来られて溜飲が下がるかな?
あんな旦那さんとまたよりを戻したいかな?
私ならないなぁと思いました。


舞台は昭和31年。まだテレビも普及していない時代。
娯楽は年に1度のお祭りと、噂話。そんな町。
女は夫や夫の親にものも言えない。
弟よりも兄が優遇され、名士は名士の顔を保つことがなによりも大切。
それがあたりまえの町。

山内杉雄(井上順)は現実から逃げている無責任な男の人。
「高嶺の花」である地元の名家の奥様に憧れているのでこの町を離れたくない。
妻と娘と母親との家族4人の生活を営むには給金が少ないけれど、いまの仕事は辞めたくはない。憧れの奥様とのつながりがなくなるから。
家計が苦しくて妻が窮状を訴えると逆上して怒鳴る。
母に甘やかされ妻に甘やかされ、5歳くらいの娘にまで甘やかされている人。
いるよね、こんなふうにありとあらゆる女性から甘やかされるタイプの男性・・。
井上順さんのなんだか憎めないチャーミングさはそれを納得させるなぁと思いました。

浜木綿子さん演じる山内なつ枝は無責任な夫に泣かされ、キツイおしゅうとめさんにイビられる女の人。
結婚6年目らしい。
身寄りのない香具師の娘だとかで、夫もその母親もどこにも行くところのない女だと見下しているんだなぁと思いました。
彼女自身はここで一生懸命に生きて行こうとぐっと我慢して、何年も前の夫のやさしかった記憶を大切に夫の愛情を信じて家計の助けにと組紐の内職に精を出している健気な女性で。
なんだかなぁって。こういうの見るとイライラしちゃうよねって夫婦のありさまです。

こんな町にずっと暮らして、これから先もこれよりほかに選択肢がないと思っている町の人びと。
そんな閉鎖的な町の空気に抗い上昇志向なのが、地元の名家が営む会社の支配人の弟の弘(小野寺丈)とその恋人のきく子(大和悠河)の2人。
2人の画策によって急展開を強いられる杉雄となつ枝夫婦の物語でした。

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2017/05/22

帰ろうよ。

5月11日と18日に博多座にて宝塚月組公演「長崎しぐれ坂」と「カルーセル輪舞曲」を見てきました。

「長崎しぐれ坂」上演が発表になった時点で、なぜこの演目なんだろうという思いが拭えませんでした。
年に一度のこの時期だけは地元で数週間、好きな時に宝塚を見に行けることを楽しみにしている身としては。
でも生で見たら気持ちは変わるんじゃないかと期待して1回目の観劇をしましたが、やはり気持ちは盛り上がりませんでした。

博多座には盆もセリもあるのに一切使わず、書き割りとカーテン前の芝居の繰り返し。
まるで大衆演劇を見ているようで宝塚を見た時に感じる高揚を感じることができませんでした。
脳内麻薬に支配されるあの感じを楽しみにしていたのに。

昔のバスガイドのような轟悠さんのセリフ回しがもともと苦手ではあるのですが、今回の伊佐次はとくにそのクセが強烈なのもダメでした。
こざっぱりとした江戸言葉が聞きたかったのに。
どすを利かせればいいというものではないと思うのです。

轟さんもトップの珠城さんももの凄く熱演されているのは伝わってくるので、そんなふうに思う自分が嫌になって客席にいるのがいたたまれなくなってきます。
なんでこんな思いをしながらここにいるのだろうと。

とはいえ1週間前よりも格段に芝居が上達している暁さんに感動したり、愛希さんの和物のお化粧もきれいになっているのに気づいて嬉しくなったり。
有限の日々の中で精いっぱいに努力し成長されていく生徒さんを見るのは宝塚を見る喜びであり愉しみであることをあらためて思いました。
私がもとめる宝塚は、瑞々しい夢を見せてくれる世界であることです。
技術は及ばないところがあっても輝くものを持っている宝石たちを演出や舞台効果で手厚くフォローし輝かせて見せてくれる世界が好きなのです。
もちろんその手厚いフォローに甘んじず惜しまず自分を発する姿がそこにあってこそですが。

私としてはもっと宝塚らしく華のある舞台を期待していたのでがっかりではあるのですが、こんなに地味なお芝居でも、客席が集中しているのは、轟さん珠城さんをはじめとする出演者の芝居力が高いからだと思います。
皆セリフがクリアで聴きやすいです。

「カルーセル輪舞曲」は大劇場で見たとき以上に楽しくて、このショーを見るため、そしてお芝居で成長していく生徒さんたちを見るためにリピートするか、それともショーだけの幕見をするか、愛を試されている気がしています。

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2017/04/25

誰も教えてくれない。

4月19日の夜、福岡市民会館にて柚希礼音さんのコンサート「REON JACK2」を見てきました。

チケットが取れたら見に行こうかなという軽い気持ちで柚希さんファンの知人にチケットをお願いしていたのですが、素晴らしいパフォーマンスの数々に魅入られてきました。

宝塚では他組のファンなので、星組だったちえちゃん(柚希さん)の舞台はこの十数年の間に年に1度見るか見ないかの頻度でしたが、その頻度だけに見るたびに目を見張る成長を見せられて凄いひとだなぁと思っていました。
宝塚退団後に初めて見た今回のパフォーマンスでも、共演するトップパフォーマーの皆さんと切磋琢磨してさらに自身を高めている姿に感動しました。

幕開きから数曲はダンサーズを従えた柚希さんヴォーカルのグルーヴなナンバーがつづき、普通にアーティストのコンサートみたいだなぁと思いましたが、客席がきちんと着席しているのが宝塚ファンらしくてお行儀がいいなぁと思いました。私はもうスタンディングのコンサートはしんどいなぁと思っているのでよかったです(笑)。

大貫勇輔さん、SHUNさん、ロペスさん、YOSHIEさんとのダンスパフォーマンスはさすがちえちゃん!凄い!の連続で、まさにこんなちえちゃんが見たかった!と思うパフォーマンスをつづけざまに見られて興奮しました。

大貫さんは梅芸「ロミオ&ジュリエット」で拝見したばかりでしたが、この公演ではより自由に高い跳躍を見せつけていらっしゃいました。跳躍して滞空中に向きを変えるという猫のような筋力にはただただ呆然としてしまいました。

つなぎ服のマニッシュな柚希さんと同じつなぎ服のSHUNさんと大貫さんが目まぐるしく相手を替えながらスピーディに踊る場面はひたすら呆気にとられるばかりでした。足さばきもリフトも凄すぎて。
ロペスさんと真紅のスリットドレスの柚希さんがペアで踊ったタンゴも圧巻でした。言葉が出ない。感動を拍手で表すしかありませんでした。

福岡だけの出演のストリートダンサーのYOSHIEさんのキレには私の緩い動体視力では動きを捉えきれなくて、こちらも呆気にとられるしかありませんでした。
そしてそのYOSHIEさんとペアで踊る柚希さん。世界一のストリートダンサーについていく彼女の気概、気力そして能力がブラーヴァでした。

どんなジャンルでもその道のトップパフォーマーに負けじとついていこうとするところ。
ありがちな、自身は元宝塚っぽくしてて、その道の素晴らしい方々のパフォーマンスに拍手~!ってスタンスじゃなく食らいついていくところがちえちゃんだなぁと思いました。
それでいて元宝塚らしいスッとした品の良いところは自分の持ち味にしているところが素敵で、だからこそ私のようなライトな宝塚ファンも楽しめるなぁと思いました。

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2017/03/30

うっとりします。

3月25日、福岡市民会館にて宝塚歌劇花組公演「仮面のロマネスク」とショー「Exciter!! 2017」を見てきました。

みりおちゃん(明日海りおさん)、頼もしいトップさんになったなぁと思いました。
すごく充実している感じが伝わってきました。

新トップ娘役の仙名彩世さんは明日海さんと並ぶと『絵柄』がちがう印象でした。
(仙名さんは花郁悠紀子さんが描く女性っぽいなぁと思いました)
ヒロイン芝居を封印してきた弊害なのかもしれないけれど、芝居が固い印象でした。
作品のヒロインとして心が閃く一瞬が見えるように、見せる芝居を期待したいです。

「仮面のロマネスク」はあらためて復古王政時代の描き方に惚れ惚れしました。
貴族たち、ブルジョワたち、庶民たち。自然に語られるそれぞれの立場からのセリフが時代を表現してて。
貴族階級の中にも異なる立ち位置がさりげなく描かれていて。
それが物語の主題ではないのだけど、確実に登場人物たちの心に影を落としているから物語が運ばれていくのだなぁとわかる。凄いなぁと思います。

そして、やはり柴田先生の作品は娘役を選ぶなぁと思いました。
なぜだかはわかりませんが、メルトゥイユは人間不信なところがありますよね。
だから人を試してしまう。
ヴァルモンの態度に本当は傷ついているし嫉妬もしているけれど、世間や男性を見下して自分はさも打算で生きているように見せかけることで自分の弱いところ、自分の本心を押し隠そうとする彼女独特の矜持がある。
そんな強がりが魅力的で愛しくて、宝塚にはまりたての頃にCS放送で見た初演のメルトゥイユに私は心を掴まれました。
そのちょっとした可愛らしさが今回のメルトゥイユには感じられなかったな。

ヴァルモンが感じているはずの彼女の仮面に隠された魅力を私も感じたかったなぁと思いました。
そこが感じられないとヴァルモンがただの美貌だけの浮気おとこに見えてしまうから。
ヴァルモンの動機になりうるメルトゥイユかどうかが大事だと思います。

また今回はどういうわけか零落した子爵家を持ち直したヴァルモンの影の苦労や仮面に隠したメルトゥイユへの愛が印象づかなくて、結果的に女誑しぶりだけが強調されてしまったような気がします。
メルトゥイユにもヴァルモンにも仮面に押し隠している真の部分がある。
それが仄見えた一瞬にはっとさせられるから、その仮面を今生の別れとなるかもしれないギリギリのところで外すラストシーンが感動的なのになぁ。
2人の「あなたがいたから」という繊細で久しい想いが優美なロマネスクになった瞬間のなんともいわれぬ感動を味わいたかったな。

と思ってしまうのも、“初演信者”ゆえかもしれません。(しかも映像の)
ハードルが高くなってしまってる自覚が大いにあります。
いろいろ言いながらも見たいんですよねcoldsweats01
見たくもない作品や出演者ならはなから見ないですもん(笑)

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2017/03/13

天使の歌が聞こえた。

3月1日と2日梅田芸術劇場メインホールにてミュージカル「ロミオ&ジュリエット」を見てきました。

1回目の観劇では設定などに気をとられてしまうところもあったのですが、2回目の観劇では1幕バルコニーの場面から涙がとまらず自分でもびっくりしました。

古川雄大さんのロミオは見目麗しいオタクってかんじだなぁとさいしょは思って見ていました。
親友たちの話も上の空。
まだ見ぬ恋人を想って心そこにあらず。
家同士の憎悪や確執とも一歩も二歩も退いたところにいて。
「この地上のヒーローはここにいる俺たちさ♪」と煽っておいて現実をあんまり見ていない理想主義者だなぁって。
それでも仲間に好かれて夢を見せることができる魅力がある人なんだなぁ。

こんなに荒んだ街に育ちながらお坊ちゃまでいられるのはやっぱり過保護なママのおかげかしらとか。
モンタギューの若者たちはちょっとダサくて単純な不良ってかんじ。
大人たちの闇もそんなに深そうではない。
一族の若者たちの成長を見守っている大きくて強くてそれなりに弱みも見せちゃうパパとママに見えました。

それにひきかえキャピュレットの闇の深さは。
父も母も従兄も――。
こんな闇の中でよくもこんなに純粋な娘が育ったものだと思う生田絵梨花ちゃんのジュリエット。
乳母さんの愛情のおかげかなぁ。

キャピュレット家の不幸は、皆がそれぞれに自分は蔑ろにされていると思っているところだなぁと思いました。
そこから唯一外れているのがジュリエットなのかな。
ロミオ追放後の傷心に追い打ちをかけるように無理やりパリス伯爵と結婚されそうになって、きっと生まれて初めて真っ向から親に逆らった「私の親ではない! あなたも! あなたも!」
あの場面で両親にそう言い放てるのはすくなくとも愛されていることを疑いながら育ってきた娘ではないからだと思います。

キャピュレット卿も心を許すことができない人間たちの中にあって娘のことだけは全力で守っているのかもと思いました。
ひどい父でありひどい夫だけれど、娘を思う気持ちはすごく信用できる気がする岡幸二郎パパでした。

キャピュレット夫人にとってのジュリエットは自分自身の写し絵なのだなと思いました。
だからジュリエットを傷つけることは自傷行為とおなじだなぁって。
ジュリエットに愛のない結婚を強いることはもう一度自分自身を傷つけることにほかならないのに。それなのにあんなことを言っちゃう。
本当は愛されたかった人なんだと思いました。
愛する人に愛されるジュリエットを見つめることで傷ついた自身の傷を癒せる可能性もあるのに。闇の深い香寿ママでした。

闇の深い両親だけれども、それぞれに歪んだ愛だけれども、ジュリエットはまちがいなく愛されて育った娘なのだと思いました。
乳母さんというフィルターを通して両親の愛はエッセンスだけをジュリエットに注がれていたのだと。
ジュリエットの魅力は愛された娘の自己肯定感と生命力だなぁと思いました。
だからロミオは彼女に惹かれたのだなぁと思いました。

親友の話にも上の空だったロミオは、ジュリエットと出会ってはじめて現世に着地したよう。
このジュリエットの存在によってロミオは生命を得たんだと思えて胸の中に温かいものが溢れてきました。

近未来の廃墟のような街と荒んだ人びとの中でそれぞれにそれなりに大事に育てられてきた2人が出逢った瞬間に魅かれあうのは必然かもしれないなぁと思えました。
魅かれるべき魂に出逢って、天使の歌が聞こえてしまったんだからもう仕方がないよねぇと思えるロミオとジュリエットでした。

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2017/02/19

描きたかったのは。

2月16日に宝塚大劇場にて宙組公演「王妃の館」と「VIVA! FESTA!」を見ました。

ミュージカル・コメディ「王妃の館」。
原作は知らないのですが、傲慢で陳ねたように見えていた主人公が実はピュアな迷える子羊で・・・という田渕先生の定番的ともいえるお話で個人的にとても好きなテイストでした。

誰かを傷つけて後悔するところとか・・あらっと思うほどとても素直なんですよね(笑)。
朝夏まなとさん演じる北白川右京さんも実咲凜音さん演じる桜井玲子さんも。
真風涼帆さん演じる太陽王ルイ14世までも(笑)。

そのほかの個性的な登場人物たちもみんな好い人ばかり。
困っている人がいたら協力してあげて(自分たちがカモられている側なのに)、泣いている人がいたら慰め励ます言葉をかけてあげて(自分が迫られて困っていた側なのに)。
皆がやさしいからつい涙ぐんでしまう。そんなお話でした。
じっさいのパリ観光でこんなにお人よしばかり揃っていたら怖い目に遭ってすってんてんにされちゃうぞって感じなんですけどcoldsweats01
そこはやさしい虚構(うそ)といいますか(笑)。

寛容さの中で安心していられたら誰しも安心して自分もまた人に寛容でいることができるよねとそんなことを思ました。
でも現実は猜疑心でたくさん傷ついてしまうから。
誰もが癒されずに抱えている心の痛みや傷を癒すひとときが劇場全体にそっと訪れているようなそんな空間を共有している気がしました。

北白川右京役の朝夏さんはとにかくノリノリで一挙手一投足が可笑しかったです。持ち前の長い腕や脚と身体能力でちょっとした仕草でも笑いが起きてしまう。
笑いの間がとてもお上手で、客席が安心して笑うことができる雰囲気をつくってらっしゃいました。
そういうところも温かくてやさしい作品だなぁと思いました。

ルイ14世役の真風さんのビジュアルにはもう心撃ち抜かれる思いがしました。宝塚の真骨頂ですよね。
あの存在感と華、ビジュアルがあったればこそ、この作品が宝塚として大劇場公演として成立していると思いました。

そしてさいごはクレヨン役の蒼羽りくさんに攫われてしまった私の心(笑)。

メインキャストはすごくうまくハマっていると思うんですけど、ホテルの従業員や現地の人や観光客などはもっと意味のある使い方をしてほしいなぁと思いました。

ホテル従業員が皆同じ制服でしたが、シャトーホテルのロビーに15~6人のベルボーイとベルガールが固まってるってことがあるのかなと思いました。
フロント係にドアマンにベルガール(ボーイ)にメイドにと、制服を変えてちゃんとホテル業務をしててほしいなぁと思いました。業務が違えば個々に所作が変わったり性格付けができるし、そのうえでメインキャストの宿泊客と絡む様子があればメインキャスト其々の性格も見えたりして面白いのにと思います。

また観光地を通行する人びとも同色の服の同じ年格好にしないで、肌の色髪の色服装などさまざまに設定してほしいなぁと思いました。
現代のパリ観光ならいろんな国籍の人がいるはずなのに。奥行のない舞台になってしまっている気がしました。
ここもメインキャストの日本人観光客と彼らのちょっとしたやりとりで場所やどういう状況なのかとかの情景が見えると、名所の画像を映し出すよりよほど面白いのにと思いました。
メインキャスト以外の使い方次第でちょっとした見所をあといくつか増やすことができたんじゃないかなぁと。
場面の一瞬一瞬を大事にしてほしいと思いました。宝塚はその一瞬を見に来ているファンも多いのだから。

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2017/02/02

ファビュラス。

1月23日博多座にて「シスター・アクト~天使にラブソングを~」のソワレを見てきました。

蘭寿とむさんを目当てに気軽に見に行ったのですがとてもよかったです。
1幕は蘭寿さんさすがスタイルいいな。お胸ホンモノだわ。退団後もお歌凄いレッスンされてるんだなぁ。なんて冷静に見ていたのですが、2幕は引き込まれるように見てしまって。
わかっているストーリーなんですが、シスターたちがカーティス一味から命がけでデロリスをかばうあたりは思わず涙していました。
私はやっぱり舞台の皆の意気が一点に集中してトルネードみたいに盛り上がるかんじが好きだなぁと思います。
そんなシーンに感動しちゃうんですよね。

エディ役の石井一孝さんはいるよねアメリカ映画にこんなキャラ(笑)と思える暑苦しいいいやつでした。
こんな自分にも人生で一度はヒーローになる瞬間が訪れると夢見ているあたりもアメリカンだなぁと思いました。

オハラ神父役の今井清隆さん、さすがいい声~~♡ ギンギラの法衣でお説教をしたり客席(信者?)キャッチも凄くて面白さ全開でした。最後までソロ歌がなかったのには驚きでした。もったいない起用だなぁ。

修道院長の鳳蘭さんもさすが。間の取り方とか声色の変化とか。強弱オンオフの切り替え鮮やかだなぁと思いました。笑わせるところはしっかり笑わせるし。
彼女がデロリスをかばう言葉には温かさがこもっていてじんとしました。

修道女見習いのメアリー・ロバート役の宮澤エマさんも素直な歌声で素敵な女優さんだなぁと思いました。
家に帰ってプログラムを見たらシスター役の方たちはこれまでいろんな作品で見たことがある方たちばかり。
シスター・メアリー・ラザーラスが春風ひとみさんだったとは気づかなかったsweat02
大月さゆさんにも気づかなかったぁwobbly
・・・それくらい気軽に見てしまったのでした。

こんなに豪華な出演者揃いで脚本も音楽も素晴らしい作品を気軽に見られるのも地元に博多座という劇場があるからこそ。
ありがたやありがたや・・(-人-) ことしはなかなか観劇遠征ができないので切実にそう思います。

カーテンコールでは客席も一緒に踊れて平日の夜なのにこんなに盛り上がって大丈夫?ってくらい楽しかったです。
なかなか帰らない客席のコールに応えて登場してくれた蘭寿さん、輝いていたなぁ。
また博多座に出演していただけたらうれしいなぁと思います。

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2017/01/28

旨酒を飲もう。

1月16日に宝塚大劇場にて月組公演「グランドホテル」とショー「カルーセル輪舞曲」を、1月17日に「グランドホテル」の新人公演を見てきました。
月組新トップ珠城りょうさんの本拠地お披露目公演でした。


フェリックス・アマデウス・ベンヴェヌート・フォン・ガイゲルン男爵役の珠城さんは異例の研9でのトップ就任で学年のわりに地に足の着いた落ち着いた雰囲気を持つ男役さんでした。
大きな欠点もなく安心して見られるタイプだなぁと思いました。
いかにも貴族で上流風だけど、ちょっといわくありげな男爵といったかんじが良く出ているなぁと思いました。

エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役の愛希れいかさんはさすが!でした。
どこか現実とは乖離した感覚の女性。名高いバレリーナとして若い頃はロマノフ王家とも親交があり沢山の贈り物と栄誉を授かっていた人が革命と重ねた年月によって残酷にも多くのものを失ってしまって。
唯一残った彼女にとっての人生そのものであったはずの踊ることにさえも喜びを失いかけていた時に若い男爵と恋に落ちて生きる喜びを取り戻す。
そのもう若くはない女性のキャリアや人生を感じさせる役づくりで、心の動きの見せ方も素晴らしかったです。
珠城さんとのボレロの場面は最高でした。珠城さんの肩から降りるときの脚の流れの素晴らしいこと。
もう娘役の域を超えてしまってるかなぁとも思えました。女優さんだなと。
彼女見たさに劇場に行きたくなるジェンヌさんです。
実咲凜音さんが「双頭の鷲」に出演したみたいにさらにハイレベルな作品に出演する機会があるといいのになぁと思います。

オットー・クリンゲライン役の美弥るりかさんはしょぼしょぼの役でも華があるのが宝塚らしくていいなぁと思いました。宝塚スターが演じるオットーという感じでした。
「We'll Take A Glass Together」での男爵との掛け合い、とても愛嬌があって魅力的でした。あの場面とてもいいですねぇ♡

役替わりのフラムシェン(フリーダ・フラム)は海乃美月さんが演じていました。
歌、芝居、ダンスともにお上手で娘役として出来上がってる方だなぁと思いました。
上昇志向でチャンスのために自分自身の女性性を駆け引きに使ってしまうという宝塚の娘役さんが演じるには珍しいタイプの役ですがちゃんとそんな女の子に見えましたし、こういう女の子たちがいたのが1928年のベルリンなのだろうなと思えました。
その上で上品さも残っている娘役さんらしさが海乃さんの持ち味なのかなと思いました。
彼女に対してプライジングがとても酷い男に見えました(笑)。

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2017/01/21

兵の情は健やかなるを主とす。

1月17日宝塚バウホールにて星組公演「燃ゆる風-軍師・竹中半兵衛-」2公演を見てきました。
七海ひろきさんが主役の竹中半兵衛を演じていました。

これは時代物ではなく戦国ファンタジーなのだと思って見ました。なにもかもが半兵衛の手柄にされていて突っ込みだしたらキリがないので。
戦国BASARA同様にゲームのキャラクターだと思えばいいのかな。
このキャラにこの言葉を言わせたかったのねという感じ。そうよね、いまならあすなろ抱きさせたいよねとか。
ドラマにリアルはありません。リアルは役者の感情にありました。
で、まんまと泣かされましたcoldsweats01

バレバレのフラグを立てては回収を繰り返す脚本で、逆に言えば楽に回収できる以上のことはしていないので、もうちょっと意欲的でもいいのではという気持ちになりました。
知的な満足を求めるのではなく、気軽に見て泣いて笑って、あとで役者についてあーだこーだと話すのが楽しい作品かなと思います。

かいちゃん(七海ひろきさん)の竹中半兵衛は、竹中半兵衛の姿を借りたかいちゃんそのものでした。
主役なのに張りがないのはそのせいかな。せっかくコスチュームなのに中の人が素のままなので、大きさや華が足りないと思いました。
首から上と首から下の情報量の落差が気になりました。具足姿なのに重心所作が侍らしくなく手持無沙汰に見えました。
心はもの凄く入っているから客席も泣いちゃうけど。
でもその心はかいちゃん以上のものではなくて。かいちゃんがかいちゃんのまま具足や陣羽織を着てかいちゃんの感情のままに泣いている感じで、役としてはどうなの?と思います。
どういうスタンスで舞台に立っているのかな。最近のちょっと浮足立っている感じが私は苦手だな。
以前のようにもっとストイックに役作りをしてほしいと思うのですが。

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2017/01/05

ひとごろし。

12月9日キャナルシティ劇場にてミュージカル「貴婦人の訪問」を見てきました。
(感想を書きかけたまま時間がなくて年を越してしまい・・・新年早々こっそりアップですsweat01

2015年秋に見て今回は2回目の観劇でしたが、前回は山口さんのアルフレッドが全体から浮いていて違和感だったのですが、今回はいい具合の浮き方に感じました。
前回は若いクレアに同情してマチルデのことも可哀想に思って見ていた気がします。アルフレッドをどう描こうとされているのかクレアの真意はどこにあるのかを探るように見ていました。
今回は2015年に見たときよりもアルフレッドとクレアのあいだに愛が見えた気がしました。
それがほんとうに愛なのかを考えながら見ていました。贖罪なのか執着なのかそこにほんとうに愛はあるのか。
いまの2人それぞの互いに対する思いとはいかほどのものなのか。

2人みつめあえばいまも愛し合っていた頃の熱くせつない気持ちが甦るのか。でもそれは昔の気持ちが地層を超えていまに湧きあがるのであって、いまのお互いを愛しているのとはちがうのではないかとか。
それをいまの気持ちと錯覚してしまうアルフレッドの甘さと、シビアなクレアの別の気持ちが見えたような・・・。
いまに至るまでの2人の現実の過酷さの差が見えたような気がしました。

さらに今回はギュレルの人たちの怖さがつよく印象に残りました。
アルフレッドが殺された時にクレアが市民に向かって「人殺し!」と叫びますが、それはアルフレッドを殺したことを言っているのではなくて、「こんなふうにあなたたちは人殺しなのだ」と言っているのだと思いました。
アルフレッドがギュレル市民から糾弾をうける図は、数十年前のクレアがされたこととおなじ。
正義の名のもとに不公正に裁かれ、若い娘にとっては殺される以上の冷酷な扱いをうけた。
数十年前もそうだし、いまも正義を隠れ蓑にした利己主義によってあなたたちは平気で人殺しをする者たちなのだと言っている気がして、クレアの目的はこれだったのかもとも思いました。

アルフレッドを私刑にしたあとの彼らがとても怖かったです。正義の名のもとに己を欺瞞にかけ殺人を犯したことをまったく恥じていない彼らがうすら寒くかんじました。
私もいつアルフレッドや若いクレアにされるかわからない。いつギュレル市民になるかわからない。そんな怖さを感じました。

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2016/12/27

いつだって世界は誰にもやさしくない。

12月4日キャナルシティ劇場にてミュージカル「黒執事〜NOAH'S ARK CIRCUS〜」を見てきました。

お芝居もパフォーマンスも素晴らしくて脚本も演出もよかったです。2.5次元ミュージカル侮りがたしです。
なによりも舞台の上の皆さんの集中力と情熱にやられました。
その舞台を見上げる客席の雰囲気やリアクションも暖かくて、一体感を感じてそこにいることができましたし、こんなだったら奇跡も起きちゃうよねぇと納得でした。
舞台っていいなぁと見終わって幸せな気持ちになりました。

ストーリーも昨年の「地に燃えるリコリス」よりも私はこちらが好きだなと思いました。
動機や展開に唐突さがなかったし、原作の無機質さに巧く肉付けされて体温を感じられるものになっていたのが私の好みでした。
目の前で感情をさらけ出す登場人物を直に感じることで原作では頭で理解していたことが心でわかったり、ぼっちゃまの印象的なセリフにもさらに深みを感じることができました。

「いつだって世界は誰にもやさしくない」
「傲慢でない人間などいない」
小さな少年伯爵がこんな実感を持っている世界観が私は好きです。
そして、ないことにされてしまいそうな部分を言葉にして共有できる作品の懐深さも好きだなぁと思います。
闇と悲哀と笑いがぎゅっと詰まって大満足で、あっという間の3時間でした。

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2016/12/14

あくがれいでた二つの魂どこへ誘う。

11月28日(月)宝塚大劇場にて花組公演「雪華抄」「金色の砂漠」を見てきました。

お芝居「金色の砂漠」、私これすごく好きだぁと思いました。
号泣したりカタルシスがあるかんじではないのですが、心にひたひたと何かが溜まる物語でした。見終わって水槽から溢れそうなものをギリギリのところで堪えている感覚に陥りました。

ストーリーは「私これ知ってる」という既視感があり、とくにひねった感じではないのですが(昔の少女漫画やパラレル系二次創作でよく見た懐かしい設定(笑))、関係性がすごくよくできていているなぁと思いました。
織り込まれたエピソードが効いていてそこに息づく登場人物たちの性格性や役割がよくわかりました。
登場人物1人ひとりに物語を考えたくなるほどどの役もしっかりと造形されていて、その心模様もわかりやすかったです。
ライトな宝塚ファン目線からも、役が多くてタカラジェンヌ個人をを楽しむのにもってこいな上に、それぞれ役どころが明確なのでストーリーがちゃっちゃと進むのもいいなと(笑)。
少々合理的すぎるきらいもありましたが1時間半で完結させるためには致し方ないと思いました。
設定や人物像が緻密で確かなものであれば総てを言ってしまう必要はないのだなぁと思いました。

設定にツッコミどころがあるとしたら、王女に男の奴隷をつけて身の回り一切の世話をさせておいて間違いが起きたら罰されるというのは、あまりにも非現実的で夢夢しすぎるしきたりだなぁと(^^;
むしろ何かあっても気にもされない大らかさというかいっそ暗黙の不妊対策、後継者対策でもあるくらいじゃないと理解不能だなぁと浮世に穢れた私は思います(笑)。(それも母系主義じゃないと成り立たないですけど)
まぁそれも「宝塚だから」で世間が納得してしまうのが宝塚のすごいところかな。

なによりも、そんなことはどうだってよくなるくらいに矜り高い主人公2人の愛憎の物語りが美しい“みりかの”によく合っていました。
みりおちゃん(明日海りおさん)は矜り高く才能溢れる青年が破滅していく物語がよく似合うなぁ。
というかもはや破滅じゃないのだよなぁ。このラストまでが一つの“美”なんだなぁって思えてしまう青年ギィでした。
永遠に紡がれる叙事詩の主人公がここにいるのだなぁと納得してしまうかんじ。
それはかのちゃん(花乃まりあさん)のタルハーミネもおなじ。

なんど生まれてもタルハーミネは金の砂漠へと走り出し彼女を追いかけ追いついたギィは彼女を抱いて砂塵の中で無垢に還っていくのだろうなぁ。
お互いに「愛している」を認め合うのにこれだけのシチュエーションが必要で。それこそが似つかわしい美しい2人。
美しいものたちはこうして永遠になるのだ。そうして至高の終焉を繰り返す。
(いやぁ美しいってたいへんですねぇ、、、)

そしてその物語りを浮き彫りにしていくエピソードと2人をとりまく人びと。

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2016/12/10

あなたこそ待ち焦がれた愛しい死-“Azrael ”。

11月29日、宝塚バウホールにて宙組公演「双頭の鷲」を見てきました。

有名なジャン・コクトーの戯曲をミュージカルにした作品。面白くないはずがない。引き込まれて見てしまいました。
どうして彼はそう言うのだろう。あのときどうして彼女はああ言ったのだろう。たくさんの何故?を抱きながら見る作品の面白さ。そのわけは見終わった後にゆっくりと考えたい。
11時と14時半公演を続けて見てしまって、しまったと思いました。もっとゆっくりとインターバルを持ちたかった。そうでないなら1回だけ見てじっくりと浸っていたかった。
あのときの顔はそういうことだったのか。あのときあの言葉を選んだのは―― 考えれば考えるほどなるほどと思う、そんな作品でした。

それだけにパパラッチが憶測をごちゃごちゃと語るのが邪魔だなぁと感じてしまいました。
主役たちが心情を歌うのもいらないくらいだなぁと思いました。余白を埋めすぎな感が否めませんでした。見ている私に想像の余地を残してほしかったな。
歌詞が聞き取りにくい部分もあったりして、言葉の裏にあるものを覗くのが面白いのだからセリフで明瞭に聴きたかったと残念と思えるところもありました。
作品が良いのでこちらもより高いところを求めてしまいます。

舞台美術は脚本演出の植田景子先生の美意識そのものって感じ。ちょっと過多にも私には感じられました。(景子先生はまだ足りないわと思っているかも(^-^;)
2幕で、お互いを愛し愛されることを知った2人がこれまで受け入れられなかったものを受け入れると、それまで色のなかった世界(部屋)に色が加わる演出がわかりやすく素敵だなぁと思いました。

齋藤恒芳先生の音楽は作品にぴったりで盛り上げてくれましたが、彼の音楽にはあんまり言葉をいっぱい載せないほうがいいのになぁと思いました。気の利いた少量の美しい日本語が合うのにな。
音楽自体に魅力があるのだから、ちょっと情報が過剰だなぁと思いました。愉しむ余地がほしいなと。
それにしても、みりおん(実咲凜音さん)もずんちゃん(桜木みなとさん)もあの曲をよく歌いこなせるなぁと思いました。歌っているうちに迷子になりそうな曲ですよね。

作品はどう見ても王妃が主役だなぁと思いました。
王妃役のみりおんが相手役の轟さんに遠慮なく相対しているなぁと思いました。思いきりが素晴らしい。
そして王妃姿が彼女史上でもっとも美しくて感銘的でした。景子先生の美意識と相手役の轟さん、そして彼女のキャリアとこの作品に挑む緊張感等々のなせる仕業でしょうか。
ワンショルダーのブラックドレスの後ろ姿やヘアスタイルが彼女の魅力を引き立てていました。
ハープアップに乗馬服も魅力的でした。
(もしかすると高身長揃いの宙組が彼女には気の毒だったのかもしれないなという気もしてきました)

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2016/12/09

悲しみが追いかけて深い海に落ちた。

12月3日と4日、福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「バレンシアの熱い花」と「HOT EYES!!」を見てきました。

ショー「HOT EYES!!」の感想は先に書きましたので「バレンシアの熱い花」について書きたいのですが、当然のことながら私の脳裏には2007年の同作品の記憶が鮮やかにありますので、それとからめた感想になると思います。


今回の「バレンシアの熱い花」を見終わっていちばんに思ったことは、この9年で宙娘の芝居が変わったなぁということでした。情感を上手に出せるようになってるなぁと思いました。
そのうえで、主要3人の女性役のキャスティングがいい。3人のコントラストがはっきりしてるのが効いているなぁと思いました。

伶美うららちゃんのイサベラが大人っぽくていかにも酒場で生きている女に見え、フェルナンドが他人の目を欺くための「遊び相手」に彼女を選んだことがわかりました。
イサベラも男心をくすぐるのは商売。身なりもよく羽振りもよくてお店にお金をたくさん使ってくれる上得意のフェルナンドと好い仲にならない手はない。
そこまでの関係だったら辛い思いをしなくてもよかったのに。

好きになってはいけない相手を好きになってしまうことはいつの世もあることだし、そのせつない気持ちを責めることはできないけれど。
けれどもやっぱりどうしてフェルナンドはイサベラに愛を告白したその口で待たせている婚約者がいるなんて言うのかな~と思ってしまいます。
そこを受け入れられるかどうかがこの作品の肝なのだよなぁと思います。

その婚約者とフェルナンドが住む世界は自分が住む世界とはちがうのだという残酷な事実を、愛の告白と同時に突きつけられたイサベラ。
あんな予防線を張られて。

もちろんフェルナンドとイサベラが結婚して幸せに暮らせるなどとは思わない。
そのくらいの現実は知っているけれども。
それでも私はフェルナンドを擁護する気になれない。

彼の中では女性には2種類あって、傷つけてもいい女性と傷つけてはいけない女性がいるのだなぁ。
大切にしなければいけない人間と、ぞんざいに扱っても良い人間がいて、それは生まれや育ちで決まるという考えの下で理解される物語なんだなぁ。そこが私は受け入れられないなぁ。
なのでフェルナンドは嫌いです。

一つ気づいたのですが、2人の別れの場面で今回の全国ツアー公演ではイサベラの「私の宝物の時間だった」というセリフがなくなっていました。
9年前は「あなたと過ごした時間はほんとうに楽しかったわ・・・私の宝物の時間だった・・・・・・さようなら」でしたが
今回は「あなたと過ごした時間はほんとうに楽しかったわ・・・さようなら」でイサベラは踵を返していました。

9年前のイサベラはこの夢夢しい台詞を言うことで、彼女の中の純情な乙女心が強調されて(演じていた陽月華ちゃんの個性とあいまって)いったいこの健気な娘とマルガリータとどこが違うの?と見ていてよけいに悲しくなったのだなぁと思いました。
「楽しかったわ」で終わらせることで、退き際をわきまえなければいけない世界に生きるイサベラという女性の立場が際立ったように思います。

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2016/12/07

愛と夢いっぱいに思いきり振りまきたいよね。

12月3日と4日、福岡市民会館にて宝塚宙組公演「バレンシアの熱い花」「HOT EYES!!」を見てきました。

ほんとうは3日の2公演だけのつもりだったのですが、ショーがあまりにも楽しくて4日はキャナルシティ劇場で「黒執事」12時公演を見終わったあとタクシーで15時公演に駆けつけてしまいましたcoldsweats01
全国ツアーならではの熱い客席。
舞台の上も客席も幸せな興奮がビシバシッ!! 思わぬ奇跡も起こっちゃいますよね。

このホールは古いけれど1階から3階最後列までワンスロープなので、全国ツアー恒例の客席降りで2階3階がおいてけぼりにならないのが好き。
さらにまぁ様は2階前の通路で投げキス連発で客席を煽るしで、盛り上がった客席は皆で手ぶりを合わせてまぁ様の指さし「最高!」戴きました。

真風さんにいたっては3階の客席まで来てくれて、指さし+ウィンク+投げキス+目線とすごくて。まさか2番手さんが3階まで来てくれると思っていなかった客席は沸きに沸きました。
福岡市民会館は通路が多くて複雑なのですが、3日マチネでは通路を1本まちがってしまった真風さんが3列目と4列目の間(通路ではないけど感覚が広め)を通って本来の通路へ戻ったりするものだからもうheart024列目の人羨ましすぎる。
ロケットがはじまる前には舞台に戻れてギリギリセーフ(笑) そこで終わらず袖に入る時には悪戯な照れウィンクまで残していくものだからその残像でクラクラしちゃいましたheart04 ほんとうにステキ。
(真風さんに落ちそうで真剣にヤバかったです。ひ孫ちゃんの顔を思い浮かべて耐えましたcoldsweats01

その後はずっとテンションがあがっていたせいか、真風さんの「エキゾチックアァァァィイズ」では思わず笑いがこみあげてしまいました。それも私だけではなかったようで周りの人たちも(笑)。あの一体感と興奮は忘れられません。
3日のマチネでそれだったものですから、その日のソワレも翌日の公演も私は真風さんばかり見ていたようで、こうして感想を書こうにも細部を思い出せないのです・・sweat01
ほんとうに人生なにが起きるかわからないものです・・・(神様ありがとう)

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2016/11/03

月の光に導かれ・・

10月30日キャナルシティ劇場にてミュージカル「セーラームーン」を見てきました。

タキシード仮面役の悠河さんはやっぱり表情豊かで魅力的な人だなぁと思いました。目線の使い方などはさすがです。この個性や技量はいまの宝塚では見られないなぁとも思いました。
あの瞳と一瞬でも目が合ったらたまりません。笑顔も最高。いいなぁ。やっぱり好きだなぁと思いました。
けれども10代の女の子の恋人役として絡んでいる絵は私はこれを見たいわけではないなぁと実感もしました。

とはいえ苦悶しもがくブラックナンチャラの人(役名覚えられず)を鎮めようと情熱的に抱きしめる所作などはさすがだなぁと懐かしくもあり抱きしめられる役の人はヒロインのうさぎちゃんより役得だなぁと思いました。
この視点がファンですよね・・(笑)

がんばっている女の子たちには無条件に心打たれるし、名乗りのナンバーや決め技のシーンはやっぱり愉快でテーマソングも一緒にくちずさみましが、この物語世界はどうにも私には無理だなぁとも思いました。
多くのファンがいる作品だし、現に客席には外国からのファンも見受けられました。
悠河さんがこうした作品のファンの方たちに受け入れてもらえているのならば作品ファンの方々にお任せして、私は別の作品でお会いしたいなと思いました。

私は美しくてカッコよくてちょっと天然で浮世離れした悠河さんが好きだなぁ。
退団してからの役だとカッサンドラ(薔薇降る雨に・・)が好きだったなぁ。罪の意識なく罪を重ねて美しく微笑んでいる美女。
桜姫も好きだったなぁ。荻田作品の中の悠河さんが好きなのかな。行間を勝手に想像できるのがいい。素材は抜群だから。
でもそういうお役や作品はなかなか商業ベースに乗せることは困難だし、まず福岡では上演されないですね・・coldsweats01

今回は地元で悠河さんに会えたことがいちばん悦しかったです。
ぼちぼちの観劇ペースですがまた来年も悠河さんに会えるといいなと思います。

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2016/10/08

子どもに子どもは育てられない。

9月21日東京宝塚劇場にて宙組公演「エリザベート」を見てきました。
前後の祝日の影響か平日なのに11時と15時半公演の日だったので運よく2公演見ることができました。

博多座で東宝版「エリザベート」を見たあとだったのでどうしてもシシィにもの足りなさを感じてしまいました。宝塚版はトートが主役であちらはシシィが主役ですから仕方のないことですが。
とはいえ、みりおん(実咲凜音さん)は歌唱力も芝居も安定しているので安心して耳をゆだねることができるのは有難いなと思いました。

みりおんシシィは人を巻き込み国を巻き込むようなダイナミックなエゴイストではなくて比較的こぢんまりとしたエゴイスト。自分1人で抱えているかんじ。
15歳のときに抱いた自意識をそのままに60代まで生きたらそりゃあ生きづらいよねという感じでした。

結婚式翌日のゾフィーたちとの場面がとても好きでした。
「馬に乗ります」「ダメよ!」で一瞬ぽっかーんな間が可愛くて(笑)。ダメって言われるなんて思ってもいなかった感じが。
リヒテンシュタインに口を開けられるところもとても可愛いくてみりおんシシィのあの場面を見るのがムラの時から毎回楽しみでした。

ゾフィーもリヒテンシュタインもとても正しい。この田舎から来た娘をいかに皇后らしく教育しようかと初日の早朝から気負っているのに対して、なにもわかってなさそうなみりおんシシィ(笑)。
ここはみりおんが元来もっているチャーミングさがすごく出ているなぁと思いました。
その、世のおしゅうとめさん気質の人たちをイラッとさせちゃう性質がシシィにとてもマッチしていて見ていて小気味良かったです。
シシィとゾフィーの絡みをもっと見たいなぁと思いました。じっさいには2人が絡むのはこの場面だけなのですよね。

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