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2005/09/24

炎にくちづけを~キャスト別#3

昨夜は博多座観劇で舞い上がってて書くことができませんでしたが…、キャスト語りの3回目でございます。(ネタバレしますー&敬称略でございます)

アズチューナ(一樹千尋)
 一樹千尋さんのアズチューナは圧巻でした。
 彼女の中に渦巻いている愛情と憎悪、いろんな背反する情念に操られている狂気が客席まで迫ってきました。
 財産に執着しない彼らジプシーが唯一強い思いをもって大事にしているのが、家族・仲間なんでしょうね。
 愛する母親が理由もなく誤解の末に、惨たらしく火炙りにされてしまうその姿を目の当たりしてしまった時に、彼女の心は引き裂かれてしまったんだろうなぁ。
 その事件が起きた時というのが、ジプシーたちが餓えに苦しみ、乳飲み子を抱えていた彼女も乳が出なくなった…という極限状態の時。このままでは赤ん坊を死なせてしまうかも…と母親として精神的に追い込まれている時に、追い討ちをかけるような惨い打撃・・・。気もおかしくなってしまうよなぁ。。。
 憎しみの果てに、母親を処刑した伯爵の赤子をさらって火に投げ込んでしまう。この時点でもじゅうぶん狂気の沙汰だけど、錯乱していたせいなのか自分の子と伯爵家の赤子を取り違えていた・・・もうドロドロ。
 炎の中で「復讐してくれ!」と言い遺して絶命した母の惨たらしい姿を目に焼き付けたまま、目の前の赤子に乳をやり育てたんだろうなぁ・・・。
 マンリーコに無茶苦茶矛盾したことを言いながらすがっていく身勝手さ、哀れさ、可愛らしさ…見ていてもとても複雑な気持ちになりました。(でも多かれ少なかれ、母親ってわが子に対してそんなところがあるかなぁ… そうならないように理性を働かせる訳ですが、アズチューナは情念のまんま生きてるもんなぁ)
 そんな母を愛しげに見つめるマンリーコ…。
 この母子の心の中は、2人だけにしかうかがい知れない。誰にも入り込めない世界ですよね・・・。(マンリーコのお嫁さんは苦労するゾ)
 理性で考えれば非難されるべきこと満載の彼女だけど、息子の名を呼びながら戦場を彷徨う姿など、涙を誘うのも事実。母ってかなしい。――血のつながりはなくても、母は母だなぁ。
 「なんとやすなすと破滅の道を人はえらぶことか…」と、鋭い考察を閃かせたかと思うと、「マンリーコ、お前だけは守ってみせる」と、矛盾を極めたことを呟く。この人の心の闇は本当に深い。深すぎて怖すぎて・・・でも誰の心の底にもあるものかとも思う…。
 憎き伯爵の息子たちは、兄弟で殺し合い・・・母親の復讐は遂げられたけれど、彼女は一番大切なものを失ってしまった。
 「母さん、復讐を遂げました!」という最後の絶叫が虚しい――――。

パリア(大和悠河)
 正直いってカッコよかった・・・タニちゃんの成長に目を瞠りました。
 ・・・・でも、一番理解できなかったのも彼でした。理由のほとんどは、ルーナ伯爵の項に書きましたが。
 彼の行動が、仲間を破滅に導いていると思うんですよね。
 レオノーラを修道院からさらってこようとする時も、ルーナ伯爵が彼女を連れ去ろうとしたからって、「状況が変わった」と大勢の前で伯爵に剣を突きつけるのって・・・バカじゃないの?と思いました。死んだと思われていたマンリーコまで呼び出して。
 大勢の前で取り戻さなくなって、後でいいじゃない? マンリーコが生きていることは、こっそりレオノーラにだけ告げたらいいことじゃない?
 彼の見せ場になっている処刑前の場面での主張も、的外れだと思いました。あれでは誰も救えないばかりか、かえって状況を悪化させるばかり。
 ルーナ伯爵の家臣たちは、ジプシーを「人間ではない」と恐れ蔑んでいるけど、それを理由に皆殺しにしようとしているのではないし。
 彼らは、敵方の騎士の仲間として捕らえられたんですよね。
 ぼんやりとしか描かれていないけど、実は舞台であるアラゴンは内乱状態にあって、マンリーコはルーナ伯爵と敵対するウルゲル伯側の騎士なんですよね。ルーナ伯爵側にあったカステルロール砦を陥落したのはマンリーコの働き。ルーナ伯爵側にとっては、恋敵である以上に砦を奪った憎き敵なんですよね、マンリーコは。そのマンリーコの味方をしているのがパリアたちだから、捕らえられたら殺されるのは当然かと…。
 そもそも幼馴染みだからって、出世のために仲間を離れて主君(ウルゲル伯)に仕えているマンリーコの味方になるっていうのが、一族のリーダー的存在としては迂闊よね~。上手に距離を置くのが、彼らのような者たちの処世術だと思うんですが…。
 自ら死に赴く場面も…自分は殺されたとしても、他の仲間を生かす道を算段するのが彼の責任ではないの? 自分の主張のために、仲間を利用しているような後味の悪さ。残忍な記憶を残すためだけにあのシーンがあったとしか思えなくて納得できません。
 カッコイイのに残念でした。

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