青年から大人へ・・@バレンシアの熱い花
22日から24日まで、観劇遠征して6公演見てきました。
劇場から遠いところに住んでいるので、遠征したらついつい観劇を詰め込んでしまって…
それも始発で立つことになるので(しかも前日は遅くまでゴソゴソやってるし)
記憶が定かじゃない部分も・・・(>_<)。
劇場が近かったら、1日1公演でじっくり味わうのになぁ…と思った遠征でもありました。
(とはいえ、観劇以外の予定も盛り込んで、たのしくせわしい時を過ごしてしまった自分の責任も・・・)
6公演の記憶もごちゃごちゃになってしまって、何日の何時公演の時の…というのが
はっきりしないのですが・・・
こんな感想でよろしければ、おつきあいくださいませ。
以上、言い訳の先回りでございました。<(_ _)>
(しかも長いです・・・(^^ゞ)
・
今回、ムラから2ヶ月ぶりに観劇してみて、
セレスティーナとの会話のなかでレオン将軍が語る言葉がとても重要に思えたんです。
“男には生涯に何度か人に言えない試練の時があるものです。”
“激しい念いの中で、それを通り抜けた男が大きくなって行くのです。”
もしかして、テーマはそこ?と。
前領主の子息で、若き青年侯爵の身分。
公正で品位正しく理解のある賢い母。
心優しく可憐な婚約者。
人望厚く、同性としても青年のよき理解者である婚約者の祖父。
ロドリーゴ、マルコス、レアンドロといった好ましき友人たち。
文句のつけようのない人々に囲まれて育ち、
何不自由なく前途洋洋と思いのままに暮らしているフェルナンドの
たった一つの深い心の傷が、父を暗殺されたこと。
そのやりようのない念いを払拭することができずに、彼は生まれ育ったバレンシアの
裕福な屋敷での生活を後にして、自らマジョルカ島への赴任を志願する・・・
これって、まさにモラトリアム。
領主で侯爵という父の大きな羽根の下でぬくぬくと育ったヒヨッコは、
父が亡くなったことを機に、すぐさま現実に立ち向かう訳ではないのですよね。
やりきれない念いだけを胸に、現実逃避している訳ですよね。
(軍隊に入っても、もちろん最初から少尉さま、くらいですよね。マジョルカ島でも官舎に立派なお部屋をあてがわれて、とくに苦労もなく暮らしていますよね)
レオン将軍は、そんなフェルナンドの心もよくわかっていて、
時がくれば、きちんと立ち向かわせなくてはいけないことも、わかっている気がします。
そして、それが「今」なんだなと。
義勇軍を組織したり、ドンファン・カルデロたちの力を借りたり、
着々とバレンシア奪還の手はずを整えながら、フェルナンドのこともちゃーんと
考えてくれているんですね。
彼を一人前の男にするために。
自らの手でルカノールを倒し、バレンシアを取り戻す行為は、
フェルナンドの「通過儀礼」として、レオン将軍から用意されているように
私には見えたんですよね・・・。
そのなかには、もちろん、
誰とはいわないけれど燃え上がるような熱い恋愛も含まれているのだと。
だから、最初からレオン将軍にとってみたらイサベラのような女性との恋は計算済みで
だから、その恋も、彼の通過儀礼として、大人になったと同時に終わってしまうもので、
すべてを終えて大人になったフェルナンドと、自分の可愛い孫娘を結婚させる…
うわぉ~なんて老獪な・・・・!と勝手に決めつけて驚きました。(^_^;)
でも、最初から最後まで、何もかもがレオン将軍の手の内みたいなんですもん。
一緒に観劇したエレナさんが、ある日の公演で
すべてをやり終えたフェルナンドが、結局知ったのは復讐をやり遂げた後の虚しさ
だった…みたいな虚無感を漂わせていて、それがとても良かったと言われてました。
それこそ、「大人になったフェルナンド」ではなかろうかと、私は思いました。
プロローグから、ルカノールを倒すまでは、まるで冒険活劇で
ストーリーも場面展開も大変わかりやすいのに対して、
最後のシーンだけがとても難解・・・というか毎回、今日は、この回は
どんなフェルナンドの表情が見られるのか、ドキドキでした。
その表情に、いろんな念いを読み取るのが楽しみで、
このシーンのためにも毎回オペラは必需品でした。
(今回は、上手花道のイサベラを見るのは諦めることにしたのです・・・)
どうアプローチを変えたって、二股男は二股男ジャン!なんて言いながらも、
「そんなフェルナンドがいいのよ~」とフラスキータ口調で申しておりました(笑)。
しょせん、つける薬ナシな大和ファンですから~(^^ゞ
「男って、都合が悪い時に、あんな顔をするのよね~!」
「たにちゃんってば、どこで覚えるのかしらね~?」
「無意識で演っているとしたら、天才・・・」
・・・などと、終演後、エレナさんと盛り上がっておりました。
それにしても、柴田先生の作品って見れば見るほど、いろいろなことを思います。
私が学校で受けた底の浅い平等教育や表面だけの倫理観なんて捨て去って、
人間の心のうちを見なければ、読み解けない、おさめきれないものがありますね~
私はまだまだですが…。
いつも、必ず主人公は2人の恋人との狭間で自分を探している…というか、
いつも、一方は、傷つけてはいけない可憐な人、
もう一方は、ともに現世の汚濁にまみれる人、
ってかんじですね。
前者は、「青い小さな花」に喩えられるマリーや瑪瑙やフランソワーズ、そしてマルガリータ。
後者は、マリンカ、皇極天皇、シャロン、そしてイサベラ。
傷つけてはいけない人っていっても、結局傷つけるわけですけどね。
前者には、主人公は、自分の仕事には一切口出しさせなくて、ひたすら内向きのことをして
世間知らずに過ごしていてほしいみたい。
自分が行っている仕事上での「黒いこと」(復讐とか政治とか?)を知られたくないみたい。
後者とは、「共犯関係」。
仕事が佳境に入ると、情熱も燃え上がる・・・。
イサベラとマルガリータについて、
彼女たちは生身の女性というよりは、ある“メタファー”なのではないかと
「ながいながい夢見人のはなし」のJulieさんが書いていらっしゃったのを読んで
そうかもしれない!と私はとても感銘を受けました。
頷きながらもサプライズのある、とても面白い感想ですので、ご一読をおすすめします♪
Julieさんの「ながいながい夢見人のはなし」 「MUSICAL」のところに感想が掲載されています。
沢山の女性の方々の感想が、「え~?」「納得がいかない」というものが多いのに対して
女性と比べたらサンプル数は少ないのですが、「面白かった」「良かった」とおっしゃる
男性が多い気がする、「バレンシアの熱い花」。
そのナゾも知りたいなぁ。と思う今日この頃です。
(柴田先生が、「念い」(おもい)と脚本に書かれていたのであえて私も揃えてみました…(^^ゞ)
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コメント
いつもながら深い読みですなぁ。。。
レオン将軍『私に考えがあるのだが。。。』
フェルナンド『承ります!』
で始まるこの物語。
知人で宝塚ファンの男性は『最後の一言にかかってる』
そこをがんばりなはれ。。。たにさん。と申しておりました。
彼が観たのは初日の翌日。
あー、もういっぺん観てもらいたいなぁ。
投稿: ichiyo | 2007/09/26 00:38
theoさま、
2泊3日の観劇遠征、お疲れ様です。
いろいろとお疲れのご様子ですが、
満喫されたようでなによりです。
「バレンシアの熱い花」やっぱりいい作品ですね。
P.S.先日はお疲れのところ、メールの御回答ありがとうございました。
投稿: いけ | 2007/09/26 02:42
レオン将軍の「男には生涯に何度か・・」は私もムラでの初見から好きでした。
違う意味でフェルナンドではなく「大和悠河」にピッタリだと思ったんです。
今、まさに1つくぐり抜けようとしている最中なのでは。
投稿: yugani_takarazu | 2007/09/26 13:26
◇ichiyoさん、
本当に、私もあのラストの一言にかかっているお芝居だと思います。
あれで、お芝居の重みや意味までもが変わりますよね。
悠河フェルナンドに最も相応しい一言をさぐり続けてほしいなぁ。
あそこで、フェルナンドは大人になるのだと思うから。
(型芝居にしてはダメだと思うんです)
◇いけさん、
後から気づきのある作品で、面白いなぁと
観劇後も、いろいろと噛み締めてたのしんでいます。
こういうのもいいかも…。
全ツ楽の最終形フェルナンドがたのしみになってきました。
お芝居とショーが真反対な感じだったのも、良かったですね。
◇yugani_takarazuさん、
そうですね~ そう思うとくぐり抜けた後の王子がたのしみですね。
同時に、研1から抜擢された王子にモラトリアムはあったのだろうかと
考えたりもしてしまいます。
私たちには夢の世界の宝塚も、ひとたび路線にのった生徒さんには、
常に結果を求められる厳しい現実そのものの世界でもあるんですよね…。
投稿: theo | 2007/09/26 21:12