百万本の蝋燭の人。
ひさしぶりに、読み終わるのが寂しくなる本に出会いました。
「オーランドー」(ヴァージニア・ウルフ著/ちくま文庫)なんですけど。
(って、まだ読み終わってないんかい!と突っ込まれそう…(^^ゞ)
“「百万本の蝋燭」が、自らは一本も灯さずして彼の中で輝いているのだ”――(引用p110)
と形容される主人公オーランドー。
これって・・・似たようなことを聞いたことがあるぞ(笑)。
私はどうも、こういうタイプ(自家発光型?)に弱いらしいです。
さて、30歳まで美青年で過ごしたオーランドーですが、
30歳のある日を境に、女性になりました。
ええ。女性になったんです。(つっこまないでくださいね)
女性になっても、容姿は変らず。現実をすんなり受け入れている主人公。
(というか、一を見て十を知るタイプではないので、よくわかっていない?)
(あ、でもオーランドーの名誉のためにフォローしておきますが、彼は―彼女は、熟考するタイプなのです)
もともと美形なので、服装が変る程度です。見た目は。
ただ、性格が、男性のときとはだいぶ変りました。
・
いきなり変ったわけではなくて、女性として扱われ、生活しているうちに変っていったかんじ。
男性のときより、大胆というか自由になった気がします。
ちやほやされて、いい気持ちになったりもするし、女性は面倒だと不満に思うこともあるし。
(このへんはウルフ女史の正直な気持ちが投影されているのかも?)
女性になった最初は、ロマの人たちと一緒に生活して、それまでの価値観を一転させられます。
女性になる直前の彼は、イギリスの青年伯爵で、トルコ駐在大使としての功績が王様に認められて、公爵位を授かったところでした。
その彼が、彼女になったとたんにロマの生活。(つっこみはなしで)
ロマの一族の誰かと結婚して、一生山羊の乳を搾る生活もいいなぁなんて憧れています。
でも、「自然は美しい」と思う彼女に対して、「自然は残酷だ」ということを身をもって知っているロマの人たちとのあいだには齟齬が生じ、「自分が信じることを他人にも信じさせたい」という誰人にもある欲望によって生じた不和を埋められないまま、彼女はロマの生活に決別します。
#描かれているロマ(ジプシー)の生活、考え方は、女史の空想上のもので、寓話的です。
母国イギリスに戻りしばらくは、女性として社交界でちやほやされる生活を愉しんでいましたが、それにも厭きて、今は女装と男装を気ままに使い分けています。
ドレスの時はちょっと歩幅が大きすぎるらしいのですが、そこは美貌で取り繕って・・・。
エリザベス女王に寵愛された美少年時代の身のこなしも身につけたままなので、こちらも問題なし。
――物語は、19世紀になりました。(つっこみはなしで!)
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コメント
なんだか面白そうな本ですね。
悠河さんのブックマーク入手したし読んでみようかなぁ。
投稿: ichiyo | 2007/09/01 18:48
◇ichiyoさん、
男性、女性を問わず美しい人が大好きで、
ちょっとばかり英文学がお好きな方にはオススメです。
(聞き覚えのある著述家たちの名前がいくつも出てきます)
私は、ヴァージニア・ウルフって、もっととっつきにくいかと誤解していました。
皮肉は効いているけど、そんなに嫌なかんじじゃありません。
解説等を除くと290pあまりの小説なので、ichiyoさんならあっという間に読んでしまうかも。
私は、きわめて主観的なあらすじっぽい紹介をしていますが、
じっさいは短いながらも実が詰まったかんじです。
時にくすっと笑いながら、ゆっくり味わいながら読むのも面白い小説ですよ。(^^)
投稿: theo | 2007/09/01 20:41