薔薇と十字の祝福を。
文庫版『姑獲鳥の夏』を読みました。
十数年前、めちゃくちゃハマったシリーズの1作目。
新書版ではなく、文庫版で再読しようと思って購入したのに、読まないまま9年放っていました。
失踪した男の日記から、ページ数で全体の半分に届く前におおよその謎はわかる。
わからない主人公関口にいらいらしたりする。
というか読者をイライラさせるために存在しているような関口です。この人がちゃんとしていたら、このシリーズはすすみません…(^_^;)
ありえないような一見猟奇的な事件なのに、「不思議なことはなにもない」。
「脳みそが、如何にして自分の心を騙すか」というところが主題かな。
「自由・平等・民主主義の仮面を被った陰湿な差別主義」が至るところで人間の尊厳を傷つけている。
「呪」の連鎖。心の連鎖。
それが起こした事件ともいえる。
かなしいなぁ。なんど読んでも。
民俗学や錬金術、医学や中世文学、猟奇的な事件に惹かれる浅ましい心理と因習や差別に対する(手前勝手な)義憤、といった、私が惹かれる様々なものを満たしてくれるから、このシリーズが好きなんだなぁ。と思います。
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登場人物の中で、私の一番のお気に入りは榎木津です。
ビスクドールのように美形です。
美形でヘンな男です。
『薔薇十字探偵社』などというふざけた探偵事務所を開いています。
でも、本人ふざけてません。いつも至って本気です。
その日着るものを決めるのに、2時間くらい平気で悩みます。
悩む理由もヘンです。
選んだ服もヘン(奇抜)です。でも彼だから着こなします。
なにからなにまで、私の好み。
なにより惹かれるのは、彼の欠落ゆえの能力。
(個人的に次女のことがあるので、すごく頷いてしまいます)
人の脳って本当にすごい。
人を人とも思っていないかのようにマイペースなくせに
すっごい正論で義憤を語るところ。
矛盾だらけのくせに、筋が通っているところ。
びくびくしないところ。
大胆不敵なところ。
よくもわるくも「育ち」がいいところ。
弱いんだな~こういうタイプに…)^o^(
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