魍魎の匣。
ああ、猫が――箱にみつしりと入つてゐる。
「まるで仕事を終えた陰陽師みたいよ」
上は、肥満猫の飼主の懊悩で、
下は、リクルートスーツを着て自転車で坂道を上り、よれよれで額に前髪を貼りつかせて塾講師のバイトから帰ってきた娘を見てひと言。
影響されすぎかなぁ。
文庫版『魍魎の匣』を読みました。
相変わらず、榎木津に惚れています。
いろんな面白さがてんこ盛りで、こんなに満ち足りる小説は稀だと思います。私にとってですが。
思考を刺激する要素満載で、いろんな読み方ができますが、何年間かを宝塚ファンとして過ごした私としては、このたびは自己愛と同一性の部分にとりわけ思い馳せられました。
・
私の娘に対する感情は、自己愛の一種――自分が母からそうされたかったという不足の埋め合わせのようなところがあると常々自覚しています。
娘には自分の母のようには接したくないと思っているのですが、どう接したら良いのかという雛形はないので、迷いながら育ててきました。
本当はもっと溺愛、偏愛したい気持ちがあるのですが(そのへんが歪んだ自己愛だなぁと思うゆえんでもあります)、さすがに理性が「それはだめ」と止めるので、まあまあ行過ぎることなく母をしていると思います。
が、その「行き過ぎ」の部分を、「宝塚」という世界は表出できる世界なんだなぁとしみじみと思いました。
表出しようと思えば、ですが。
歪んだ自己愛を満たすには、かっこうの場所だなぁと。
かんたんに理性を失える世界。それが宝塚だなぁと。
自分を止めることは、もちろんできるのだけど、「止めなくてもいいんじゃないかな」と思わせられる世界。
かんたんに京極堂言うところの「あちら側」にいける世界かも。
魍魎の世界だなぁ。
夢の世界のきらめきと同じだけ、闇の部分も見せてくれた世界でした。
憑物落しの友人はいないので、私についた魍魎は、自分で落とすしかない。
生きていたら、いろんな魍魎に取り憑かれるのだなぁ。
←肥満猫の箱。
それにしても、1000pを超える文庫本は重かった…。
以降さらに、ページ数が増すこのシリーズ。
持ち歩くなら、やはり分册版を買ふべきだらうか。
| 固定リンク | 0
コメント
そうそう・・・
といちいち納得(苦笑)
自分なりのペースで溺れることの出来る世界
溺れたところからどう這い出すかも自分で決めないとダメ
大抵の場合(ずーっといらっしゃる方もおられますが…苦笑)
期間限定ゆえにおちるところまで落ちてもいいし。。。
そして私の場合はあーされたくなかったことはしないので
時折もっと厳しくした方がいいのでは?と思ったりします。
でもまだ若いのから失敗もすればいいし本当に困った時や
本当に叱るべきときにだけ口を出そうと決めています。
あ、、、子育てのほうね。これは。
我が家でもねこはこういう感じですね。
そこに箱があればネコはは入りますよね。
投稿: 一陽 | 2009/07/31 02:39
まさにその通りだと納得しました。

私は、子供もいないし、ペットもいない状態で、今まさに自己愛ゆえに、今のご贔屓溺愛状態に陥っています
大和さんの時は、どちらかと言うと、自分が溺愛偏愛の対象になりたかったから、それを体現している人へのある意味憧れ的な代償行為でのファン活動。
今は、自分の偏愛の対象を見つけたって気がします。
まあ、相手にとっては全く迷惑な話です。
まだ理性が働いているので(なんやかんや言っても自分が大事と思っているので)表出しは少々のつもりですが。
大和さんの時出来なかった、しなかった事を今にもしそうな自分
でも、不思議と苦痛も感じず、当然よねっとやっている。多分、今のご贔屓を溺愛している自分が一番好きなんですね。これも自己愛(爆)
「あちら側」に行くのか止めるのか。
「あちら側」でやっていた方々(私的に分類)を、
今改めてすごいなと思う日々です。
投稿: エレナ | 2009/07/31 17:42
◇一陽ちゃん、
一度あの愉しさを知ってしまうと、
外の女優さんの応援では物足りなく感じてしまうのもわかるような気がします。
やればやるだけ確かなナニカを手にしたような気になるもの。それが錯覚でも。
それが何になるの?と言われたら、何にもならないけど(笑)。
ヅカファンの世界以外では、何の意味もないモノ。
だから、意味を認められる場所、価値を認められる場所から出たくなくなるのかも。
私の人生に、あんな「狂騒の季節」が訪れるとは思っていませんでした。
「私ってばかー)^o^(」と思うのも愉悦でした。
闇も今思えば愉快です。
さて女優の悠河さん、
つぎはどんなダンジョンやドラゴンが待つ世界に連れて行ってくれるのかしら~(笑)
お手柔らかに~と思いつつ、わくわくしています。
投稿: theo | 2009/07/31 22:02
◇エレナさん、
タカラジェンヌとは本当に何にでも化ける存在ですよね。
仮想恋愛の対象であったり、なりたい偶像であったり、
成長する姿を自己実現の代償にしてしまうっていうこともありますよね~
それゆえに、深い闇も見てしまう…。
そのうちでは、誰に遠慮する必要もない偏愛の対象は気楽かもしれません。
あ、でも気をつけないと、これは散財しがちなパターンでもありますね(笑)。
言うことを聞かない子ほど可愛かったりするのよ…
玉手箱、パンドラの匣、開けては拙いと思う箱ほど
開けて覗いてみたくなるものなのです(笑)。
スリルとリスクと魔があるからこそ、人生は愉しいのだと思います。
思い切り愉しんでくださいませ。(^^)
ただエレナさんの俊足には誰もついていけなかったりするので…
気がついたら独走態勢かも(笑)。
投稿: theo | 2009/07/31 22:27