ラプソディ(狂詩曲)。
「さあ迷える牧師を羊の方が救いに来たぞ!」
「救われないのは、救われたくないからに決まっている」
愈愈(いよいよ)華麗に榎木津登場。
「心の暗闇だか何だか知らないが、心に光度(カンデラ)や照度(ルクス)があるか。明るい暗いで善し悪しが決まるのは、電灯くらいだ」
――というわけで、文庫版『狂骨の夢』を読み終わりました。
このシリーズ、辛気臭いのやら理屈っぽいのやら四角いのやら…いろんなキャラが登場しますが、私は超探偵(関口いうところの最悪の探偵)榎木津礼二郎が誰より好きです。
誰の言葉より、私の憑物を落としてくれるから。
10年くらい前に一度読んではいるのですが、話のほうはすっかり忘れていました。
が、物語のいちばんのトリックは、けっこう最初のほうにわかりました。
というのも、交叉する2人の女性の記憶のうちの一方が明らかに、
視覚的LDの一種(相貌失認)じゃないかなぁと思ったからです。
だから、そうじゃないほうと、そうであるほうがすぐ区別がついてしまったというか。
描き分けている作者が凄いのだと思いますが。
そういった人への周囲の侮蔑、本人の劣等感なども含めて、リアリティがありました。
タイプは違うけど、そういう欠落を抱えてずっと頑張っている次女とともに生きてきたので。
・
本人もなかなか気づかないし、周囲はなおさら気づかない。
他人が、なんの造作も無くできてしまうことが出来ない劣等感。
そこから受ける揶揄や叱咤。侮蔑。
そういうことと生涯つきあっていかなくてはならないゆえに、
自分の理想とする誰かを慕い、妬み、仮想世界で同一化することは容易にあると思います。
うちの次女の場合は、理想は自分の姉みたい。
姉のようになりたいし、姉に褒められるとなによりもうれしい。
母である私のアドバイスは聞かなくても、姉のアドバイスは受け入れる。
姉である長女も、妹のそういう気持ちをそれとなく感じているからか
2人の結びつきは、私が思う以上に深いみたい。
なんとか、いまの良い関係がつづいてほしいと思います。
こんな次女なので、まぁいろいろと大変です。
だからこそ、学歴くらいは持っていてほしいと親は思っているので
今日も6科目分の再試験料を・・・(涙)
親心こそあはれなるかな。
プロテスタントに古代神道に真言密教、神代に後南朝に民俗史にフロイトにユング、
あと何が出てきたっけ・・・(^_^;)ってくらい多種多様なものが絡み合い
そりゃないだろうというくらい相互に影響しあって、とんでもない事件が次々と。
うまく出来すぎている話を破綻無くおさめる筆こそが、なによりも驚きに値します。
面白すぎ。
榎木津のほかには、今回新登場の釣り堀屋のいさま屋さんも好きです。
関口は好きじゃないけど(同属嫌悪か親近憎悪の類い?)、今回は好きでした。
さらにこのシリーズ、キーパーソンとなる女性のタイプの好き好きによって
作品自体の好き嫌いも左右されるところがあるのですが、
婀娜できっぷのいい朱美さんがステキなせいもあって、かなり好きな1冊です。
(「魍魎の匣」の陽子さんは、ちょっとダメだったなぁ私には)
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