キレイゴト。
分冊文庫版『陰摩羅鬼の瑕(上、中、下)』を読みました。
シリーズ8作目になるこの作品、以前さわりの部分を読みさしたまま何年もほうっていました。
よって今回が初読になります。
感想は、うむむむ。
良い意味でペダンチックな部分は相変わらず面白いのですが、
「なぞ」となる部分がストレートすぎだなぁ。
重要人物に「裏」がなさすぎるというか。
もしかして?と思ったとおりで、あっさりしすぎている気がしました。
さらに「その裏」がなくて。
そして、なによりこの事件の核となる人物、由良伯爵を私は好きになれませんでした。
その花嫁になる女性のことも。
キレイゴトすぎます。
・
キレイゴトは良いのです。
内にさまざまな瑕や傷や闇を抱えている自覚をもちながら
それでもキレイゴトを通すのは、私はむしろ好ましく思います。
でも、この人たちはそうじゃないから。
同情する気になれませんでした。
観念的すぎ、清廉すぎます。
どう言い訳しようと「いい大人」が、この世の穢れをまったく「知らないこと」は
責められてよいと思います。
責任がないとは言えないと思います。
こんな人間にこんな理由で殺められたなど、
被害者やその家族は忿恚にたえないと思います。
それを聡明とか公明正大とか評するなんて、莫迦かと。
そういう点で、良い評価はできない作品でした。
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