にゃんこだぞ。
文庫版『百器徒然袋―風』を読みました。
面白かったです。
『百器徒然袋―雨』同様に、薔薇十字探偵、榎木津礼二郎の活躍?を描いた3篇が収録されています。
榎木津と関わってしまい、榎木津の「下僕」とされてしまった語り部の『僕』。
『雨』では、さいごのさいごに正しい名字が判明しましたが、こんどは下の名前を覚えてもらえず無茶苦茶言われています。
権太郎だの牛五郎だの五十三次だのゴンザレスだの。
こうして並べると、なにやら「五」のつく名前と思われそうですが・・・榎木津のいい加減さは、そんな生やましいものではない。
名字だけでも覚えてもらっているのは、恵まれているほうではなかろうかと。
サルとかマスカマオロカとかよりはマトモ。
1篇め「五徳猫 薔薇十字探偵の慨然」は、招き猫が巻き起こす騒動。
道端で「にゃんこだ、にゃんこだぞ」「にゃんこが欲しい」と喚く30半ばの眉目秀麗の男。
榎木津は猫が好きなんです。
・
前の3つの事件で榎木津と関わって散々な目に遭ってしまった『僕』は、もう二度と榎木津とは関わらないと心に決めた矢先に、自分の失言によりまたも榎木津の許へ赴くことになる。
――色街で下女(本人談)として奉公している女性が20年ぶりに実の母に逢いに行ったら、「妾の娘はちゃんといる」と追い返されてしまったという。
色街に店を構える2つの店の因縁。昔の殺人事件。
にゃんこは悪禍を招くか、それとも―――?なお話。
中禅寺による招き猫の由来、花街の女性との関連に関する薀蓄も拝聴できます。
2篇め「雲外鏡 薔薇十字探偵の然疑」では、榎木津に挑戦状を叩きつける「霊感探偵」が登場。
しかし榎木津は留守である。
『僕』は拉致監禁されたうえに、あわや容疑者に。
榎木津に挑戦する霊感探偵、神無月のイメージはどこかで既視感。
そうだ。西一(にしはじめ)だ。これは。
1篇めが、にゃんこの話だったからかしら。。。。(^_^;)
(アンダーフォーティにはワカンナイって・・・)
榎木津をライバル視して1人で空回りした挙句、神無月など眼中に無い榎木津に、あっさりと息の根を止められてしまう。
3篇め「面霊気 薔薇十字探偵の疑惑」では、さらに窮地に立たされる『僕』。
ハンチングにマスクで登場し、警察官らを相手に大立ち回りを演じて楽勝。招き猫を見せびらかして「にゃんこ」と叫ぶ怪盗の正体は――?(丸分かり)
そしてこの篇で、初めて御前様こと榎木津幹麿元子爵――キリギリスを愛する財閥の長。つまり榎木津のご尊父様登場。
さすが榎木津の父です。この父にしてこの子あり。
前作『雨』と比べると、『僕』の懊悩というか言い訳というか釈明の部分が長くなっていて、榎木津が登場する部分は少なくなっているかな。それがちょっと残念かな。
榎木津と関わってしまうことを、そんなに釈明しなくていいのに(笑)。
惹かれている。惚れている。でいいじゃん。
そういう磁場を作るヤツなのだから。榎木津という人は。
関わるとロクなことはないけど(笑)。
で、ナゼ『風』なのか――。
やはり、にゃんこ先生に西一が登場すれば、残るは「風大左衛門」だからか…?!
(だから、アンダー40には通じない・・・)
そういえば、榎木津は『僕』のことを、「○左衛門」とかも間違えていたような…。
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