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2009/11/11

大切なのは個人の感動。

高村薫さんの『リヴィエラを撃て』上下巻を読みました。

久しぶりに読み終わるのが惜しい本でした。
というか、すこし読むといろいろ思うことがあり、思いに耽って・・・
の繰り返しでした。

物語の進行を読むのではなく、登場人物の思いに思いを馳せる。
そんな読書でした。

≪リヴィエラ≫というコードネームの人間をめぐって
IRA、CIA、MI6、MI5といった男たちが、組織を裏切っても、
個人の思いと命を懸ける。

組織と使命のためには、簡単に人を殺めることができる世界に住む彼ら。
ほんのすこしの被疑が、自らが所属する組織からも命を狙われることになるのに。
じっさいにそうして、幾人もの男たちが命を落していく。

そのなかに核となる男たちがいる。
1人は、MI6でピアニストの男。
もう1人は、元IRAの殺し屋の若者。

元IRAの若者のために命を張る男たちがいる。
その若者は、冒頭にあっさりと殺されていて、物語は過去からはじまる。
だからこそ、男たちの思いや目線、行動が遣る瀬無い。
しかし、彼らはそのことを悔いたりはしないだろう。

どうして、若い殺し屋のために命を張るのか。
若者は、かつての成り得なかった彼らであり、さいごの良心なのだろうと思う。
殺し屋でありながら若者は、ナイーヴで正直だ。
偶々アルスター(北アイルランド)で生まれ、父親がIRAの狙撃手で
彼にもテロリストの才能があったことが不幸だった。
嘘と裏切りの世界で傷つき汚れ果てた彼らだからこそ、
若者を生かしてやりたいのだと思う。
さいごに残った正義感で、所属する組織を裏切っても、彼らは若者を守り自らの命を落す。

ピアニストはどうも、や○○くさい。
くさいと思っていたら、そのまんまだった(笑)。
若い頃には、権力を握る大物たちを手玉にとるような男だった。

つまり、元IRAの若者が元雅であり、浜松中納言であり、
ピアニストが、元重であり、式部卿宮なのね。。。
(大野拓史脚本『更に狂はじ』『睡れる月』にあてはめると)

私が好きだったのは、後半のキム・パーキン。MI5職員。
容姿の描写にこだわる作者による美形キャラ。
というだけじゃなくて。(^_^;)
個人の苦しみを胸に閉じ込めて、信じられる相手と認めた男に
万一の場合のことを託して、愛する女性のことでは頬を赤らめて、
真実の究明に命を懸けるのがいいです。
「チップスにはヴィネガーを忘れるな。気をつけて」

人を動かすのは人。
個人の感動が大切なんだなぁ。

冒頭の手紙の、「小さなぼうや」には察しがついたけど、
あそこに住んでいるとは・・・やられました。

読み終わったあと、また最初を読むとたまりませんねぇ。うるる。

それにしても、IRAという言葉を久しぶりに見ました。
私が小さい頃、70年代にはよくニュースで聞いていたものです。
どういう組織かを学んだのは、80年代にロックが好きになってから。
そのとき、北アイルランドの歴史を知りました。
ボブ・ゲルドフさんとかアイリッシュの血が流れていたのよね。
ビートルズもそうでしたっけ。
彼らの偉大なところは、彼らの手法で世界に訴えかけ、人々の心を動かしたことでしょう。

いまは、そうしたこともすっかり忘れて過ごしていました。

文化大革命というと、『さらば、我が愛(覇王別記)』と『ブリキの太鼓(TIN DRUM)』
くらいしか浮かばないし…。
ダメですね。
もっと視野を広げないと。

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