儚くてやさしい。
波津彬子さんの『幻想綺帖 一』を読みました。
波津さんの描く幽霊や妖しのものたちは、
おどろおどろしいのとはちょっとちがって、なんだかやさしい。
じつは、波津さんの作品を読むのは7~8年ぶりだと思うのだけど
不思議なやさしさ健在でうれしかったです。
この作品は、古今東西の幻想奇想譚を漫画化した原作ありものなのですが、そのチョイスが、波津さんらしいなぁ。と思いました。
怪談雑誌からの依頼で「耳袋」から選んで執筆したのが
「幽霊、恩を謝する事」。
亡くなった人の幽霊が、恨みに出てくるんじゃなくて
感謝の言葉を伝えに出てくるというもの。
芥川龍之介をネタに依頼されたときに選んで描いたのが
「夜半の膳」。
亡くなった前妻といまの奥さんが、夜な夜な台所で仲良くご飯を食べる話(笑)。
いまの奥さんは、自分が夜中にそうしていることに気づいていないのね。
仲がいいからいいのかな(笑)。
目撃した旦那様はフクザツですよね。
そのなんともいえないほのぼのさ?が波津さんらしいタッチで描かれていて
大好きです。
・
中島敦の「山月記」も漫画化されています。
昔、教科書で読んだときは、理屈っぽくて、わざとのように難解な文章で
あまり登場人物が活き活き描かれていないカンジがしてて、
なんだかよくわからない・・・と思っていましたが、
わかりやすく漫画化されているので、こういう葛藤だったか、
こういう切なさだったか、と心に落ちてきました。
サキ原作の「開いた窓」もいいですね~。
サキの小説は読んだことがありませんでしたが、興味がわきました。
やはり「耳袋」からチョイスの「藤の森のおぢい」も大好き。
物事は、こんなふうに理解していたい。
御行の又市(巷説百物語)の心境もこんなふうかしらと思ったりします。
続編も読みたいです。
収録作品は以下のとおり。
・山月記 (原作・中島敦)
・嵐の夜に (原作・L.M.モンゴメリ「スモーキー島のハウス・パーティー」)
・藤の森のおぢい (原作・根岸鎮衛「耳袋―人間に交わる狐の事」)
・雪訪い (原作・泉鏡花「第二蒟蒻本」)
・中国奇談 (原作・「小人」「陳宝祠」中国古典)
・夜半の膳 (原作・芥川龍之介「椒図志異」)
・開いた窓 (原作・サキ)
・幽霊、恩を謝する事 (原作・根岸鎮衛「耳袋―幽霊恩謝する事」)
・化鳥 (原作・泉鏡花)
| 固定リンク | 0
« すご。 | トップページ | うつろふものは。 »
コメント