やさしい嘘を。
もうすぐ十五夜。中秋の名月です。
それにちなんで・・・というわけではありませんが、
波津彬子さんの『月の出をまって』という短編集を読みました。
「うるわしの英国シリーズ」という副題があらわすように
ヴィクトリア朝の貴族たちが登場します。
中国や日本の骨董品の精が
語りかけてきたりお茶を入れてくれたり。
そそっかしい幽霊が人ちがいをしたり。
ふてぶてしくも愛すべき猫に翻弄されたり。
不思議なことに驚きながらも、それに巻き込まれることを厭わず
受け入れている人たちがステキ。
優雅ってこういうことかも。
―― うそだとわかってもいい
もちろん信じたままでもかまわない
ただ この家族がしあわせそうだと思ってくれて
この絵を大切にしてくれる人にこの館を譲りたい ――
ある老紳士のねがい。
・
だれかの思いを大切にうけついでいくこと。
自分の思いをしなやかに通しながらも、相手を尊重すること。
それが紳士であり淑女であり、大人ってことかな。
幾組かのカップルが誕生しますが、
主人公のエヴァディーン卿(表紙の紳士)の淡い恋はいつもあえなく・・・(^_^;)
まるでフーテンの寅さんのように(笑)。
猫のヴィルヘルムが最高。猫好きにはたまりません。
波津先生らしい、リリシズムに溢れた珠玉の作品集でした。
シリーズはまだ続刊があるようなので、大切にたのしみに読みたいです。
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コメント
未読です
バジル氏と似てるのかしらん?
それともエマ寄り??
投稿: うみの | 2010/09/21 22:21
◇うみのさん、
私は、「エマ」が未読…
雰囲気としては、バジル氏に雨柳堂のエッセンスが入ったかんじかな?
思い出の品や香りや、肖像画や妖精が語りかけ
異空間に誘う世界。
ミーマイのご先祖さまたちが出てくるみたいな。
現実にもどった人間の背中をちょっとだけ押してくれるような。
洒落ていて、やさしいです。
シリーズで4冊出ているようです。
おすすめです!
投稿: theo | 2010/09/21 22:51
◇うみのさん、
シリーズで4冊はまちがいで、
5冊で完結でした!
3冊目まで読みましたが、面白いです~
投稿: theo | 2010/09/21 23:44