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2011/02/20

恋は曲者、白桃の花。

博多座に坂東玉三郎特別公演を見に行きました。

今日見たのは、泉鏡花作「高野聖」と
常磐津の「将門(忍夜恋曲者)」。

獅童さんのお坊さんは、原作よりもうんと清らかな印象でした。
ああでも、原作ではお年を召してからの回想として
人に聞かせる一人称の語りだったから
謙遜が入って俗っぽく偽悪的になったのかも。
本当は、これほどに清らかで純粋な青年僧であったかも。

そう思わせるほど獅童さんの若いお坊様は好ましかったです。
声の感じから所作から。

玉三郎さんはもう美しくて。
その美しさゆえに、お話に説得力がありました。

「あれ、嬢様ですつて、」
「何にしても貴僧(あなた)には叔母さん位の年紀(とし)ですよ」
声が笑って、ぽっと桃の花が咲いたようでした。

その姿が、どこから見ても隙がないほどに見惚れてしまいそうで。
「お嬢様と仰有つて下さいましたお禮に、叔母さんが世話を焼くんでござんす、お人の悪い、」
年増女の卑下ににじむ含羞。
うわん。お見事。

(岩波文庫に倣って旧かな旧漢字にしてみました)

そして半裸の2人の官能的なうつくしさ。
おもわずオペラをあげてしまった超俗物なわたくしでした
玉三郎さんの二の腕の柔らかそうなことったら、あなた。
もしかしたらわたくし玉三郎さんの○○を見てしまったかも(煩悩)。

しばし夢見心地でありました。

愛嬌をもちながらも、場を支配する女神のようなきっぱりとした威厳もあり、
でもやっぱり、どこか崩れた部分も持ち合わせて。
この妙。この不思議。
それに呑まれてしまう舞台。客席。
姿が美しいだけじゃなくて。

不自由のある身内の世話を焼く慈母のようなやさしいまなざし、しぐさ。
おもわずうるうるしました。
「貴僧は眞個(ほんたう)にお優しい。」
やさしいのはどちらともでは。
邪険に蟇や猿を払った人とおなじなことが、私にはなんとも色っぽく思えました。

小川の流れに白桃の花が散るのを見たら私だと思って下さいと告げて
去り行く後ろ姿は艶かしくも神々しく。
本当にこれを生で見られたことを仕合わせに思いました。

そして・・・いつか悠河さんがこの役を演じられたらいいのになぁと。
艶かしさと浮世離れした神々しさ、聖俗具有のさまをまざまざしく見せられる稀有な人だから。
その天性に、年経るものがにじませる説得力が加味されたら・・・と
そんな夢のようなことも思いました。

「将門」はめちゃくちゃ楽しかったです。

すっぽんからセリ上がってきた傾城姿。
恋は曲者~ 色に手だれの傾城も~
知ってる、これこれ。

でも生で見るのは初めて

瀧夜叉姫、カッコイイ!
見得を切る。立ち回る。妖術を遣って男たちをバッタバッタなぎ倒す。
大蝦蟇が可愛かったです。
蝦蟇に乗る瀧夜叉姫の顔がちょう~可愛い!

大向こうカッコイイ!
獅童さんは萬屋さんだったんですね。初めて知りました。
(玉三郎さんが大和屋さんなのはもちろん存じておりましたよ♪)

こういうのを見るとまた歌舞伎を見に行きたくなりますです

めちゃテンションあがって帰りは隣の福岡アジア美術館にて
「萩尾望都原画展」を見てきました。

それについてはまた後日に。

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コメント

いいなあいいなあいいなああーーーー
お行儀悪いと思いつつ盛大に羨ましがってしまいます。
歌舞伎初心者の私にとっては羨ましいことこの上なしです。

最近、玉三郎様を拝見すると大和さんが頭に浮かぶのです。なんでだろう…なんでも大和さんに結びつける大和煮え故?または華?と思っていたのですが、今日のこの記事を拝見して膝を打ちました。
「艶かしさと浮世離れした神々しさ、聖俗具有のさまをまざまざしく見せられる」これかーーーと。

ほんとに、大和さんによる泉鏡花の世界も堪能してみたいですね
宝塚時代はこういうことは感じませんでしたし、そう考えると、新しい世界がこの先に広がっているんだなーと感じて嬉しい私です!

投稿: rue | 2011/02/20 21:15

◇rueさん、
私も歌舞伎初心者もいいとこなんです。
博多座、できてくれてありがとう♪と思ってます。
(地元で歌舞伎が見られる日がくるとは・・・)

私も、前回「海神別荘」を見て、あ!っと思ったんです。
似通うところがあるとすれば、どちらも、こちらの人ではないような。
どんなに汚れたとしても神々しくも見えるところでしょうか。
それに、なんでしょう。発声も似ているような。

泉鏡花の世界、見てみたいですよね。
歌舞伎の奇想天外なお姫様も似合いそうです。
本当に、予想しなかった楽しみが広がってきた気がしますね~

投稿: theo | 2011/02/21 00:36

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