絡みつく闇の中 追いすがる声がある
生れ落ちる前の罪を暴いている・・・
(“ドルチェ・ヴィータ”より/詞 荻田浩一)
御園座公演「綺譚桜姫」の清玄さま(合田雅吏さん)は
アンドレ(@ベルばら)並みに凄かったです。
あの思い込み!
そしてなによりも、
青蜥蜴の毒を含ませられてからが・・・
もう息絶えるのかと思ったら立ち上がったよ・・・!\(◎o◎)/!
まだしゃべるよ。
アンドレ・グランディエ@バスティーユの戦闘よりすごいかも・・・!
恋する男の執念なの???
この作品上で、生身の人間として登場するのは
桜姫、釣鐘権助、そしてこの清玄さんの3人だけ。
皆、それぞれに強烈というか、わが道を行く人たちというか
それぞれがそれぞれの人生を精一杯。
というかんじ。
その中でもいちばん突き抜けていたのが清玄さんじゃないでしょうか。
(ねたばれです)
・
寺を訪れた美しい姫君が若い身空で出家したいという。
聞いてみれば憐れな身の上、しかも生まれつき左の手が固く結ばれて開かないとや。
高僧である清玄がお経を唱えると、あら不思議、姫君の左手が自ずと開き
手の内から、小さな香箱が。
香箱の蓋には清玄と白菊丸の名前が刻まれて・・・
その香箱こそ、かつてともに海に身を投げ心中を図った稚児の白菊丸が
その手のうちに持っていたもの。
自分は生きながらえ白菊丸だけが命を落としてしまったのだ。
あれから17年。
目の前の姫君も御年17歳だという。
この符号。
前世で結ばれなかった白菊丸が、女に生まれ変わって
今生では自分と添い遂げようとしているのだ ―― ああ、なんていじらしい(はぁと)――
な清玄さま。
愛らしくもいじらしい白菊丸の気持ちを無下にしてはならない。
しかも、こんな美人に生まれ変わって・・・
坊主なんか廃業して、祝言じゃ。
ってことで、さっさと1人で身の振り方を決めてしまって破戒してしまった清玄様。
でも、姫君はたったいま、ひととせあまり思い続けていた男と再会して
夫婦の契りの約束をしたばかり。
なんて間の悪い。
というか、なんて迷惑な清玄様。
自分には夫もいるし子どももいます。
と清玄様を諦めさせようとする桜姫。
でも、定められた運命に背けば仏罰が下るぞと聞き入れない清玄様。
そりゃむちゃですがな。清玄様・・・
もう何を言っても聞き入れない妄執の一念に凝り固まりストーカーと化した清玄に
恐れをなして慌ておののき逃げ惑う桜姫。
混乱のなか赤子も手放してしまった。
その赤子を抱き彷徨う清玄。
煌びやかな貴い法衣から、くすんだ着流し姿に。
(踊りながら法衣を脱がせていく男性コロスが素敵でした)
憎い恋敵の子ではあるけれど、恋しい姫の子と思うと愛しいと。
清玄様もまた、親を知らず、愛を知らず育った人でした。
だれかを、愛したい人なのだなぁ。
幼かった自分をそうするように、人を慈しみ愛でたい人なのだなぁ。
白菊丸のことも。
桜姫のことも。
そしてたぶん、赤子のことも。
いままで築いてきた地位を捨てても惜しくないくらいに。
だれかを、命がけで愛したかったんだなぁ。
自分を殺そうとする弟をも許し
その行く末を心配しながら亡くなって。
実の弟と実の妹が夫婦になっていることが心配で
あの世にも行けずに、現世を彷徨ってしまうほどに。
ああ、お兄ちゃん(長子)気質だなぁ・・・
昔むかしの忌まわしい出来事さえなかったら
公卿吉田家の嫡男として、可愛い弟妹を愛でる慈愛深いお兄さんであったでしょうに。
勉強家で秘かに妹萌えな(笑)。
弟はやんちゃで。そんな弟がちょっとうらやましくて。
彼には、来世という希望が必要だったのだと思います。
3人のなかでは一番救いのあった人だった気がします。
清玄を演じた合田雅吏さんは、着流しの似合う長身のイケメンさんでした。
落ちぶれても品のある雰囲気。
裾が乱れるところがほのかに色っぽいんです。
まちがいはただ一つ許されぬ恋をした
運命の女神の気まぐれな悪戯
残酷に弄び 憐れんであざ笑う・・・
(“ドルチェ・ヴィータ”より)
桜姫のアリアとドルチェ・ヴィータの歌詞が重なり、
ぐるぐる頭のなかを廻っています。
やるせない物語でしたが、なぜかクセになります。
荻田ワールドの真骨頂だったなぁと思います。
やっぱり荻田先生の世界が好きだぁ
と思った舞台でした。
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