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2011/05/11

居ないから居るんです。

京極夏彦著「文庫版 豆腐小僧双六道中」を読みました。

妖怪とはなんぞやがぎゅっと詰まった1冊です。

人は見えないもの、概念や人の心のありさまを
自分なりに補完する。
おのれの知識や経験、願望に基づいて。

どうせなら、人が嫌な気持ちになるものよりも
笑顔になれる方向で補完できたらいいですよね。

誰かの見えない心を思い計る時も。
悪意ととらずに、良かれという思いを汲み取りたいものです。

ちなみに手前が所有いたしまする本は、
↑こんなに可愛い表紙ではございません。
いつもの如く、荒井良さんによるフィギュア?の写真の表紙です。
買ったときは、アニメ映画化されるとは知らなかったのです~

深くて可笑しくて理屈っぽいけど、すごくわかりやすい本です。
語り口が、とっても好きです。
こんな風に語れたらいいなぁと思います。

語り(地の文)からもとことん落とされまくり馬鹿にされまくるお豆腐ちゃんですが、
こんな展開でも、ラストはうるうるしちゃった私です。

著者のシリーズを読んでいる人なら、
著者がこれまでの著書で込めて来た思いが
この本にぎゅうっと詰まっているのがよくわかると思います。

巻末には、市川染五郎さんのお豆腐小僧愛に溢れた解説も入っています。
こんなに多くの人に愛されている妖怪もいないのではないでしょうか。

著者のファンの方にはもちろん
そうでない方にも、オススメしたい1冊です。

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コメント

深くて可笑しくて理屈っぽいけど、すごくわかりやすい

その他を読んでいる最中ですが、語り口が私も好きです

実は京極さんお名前は存じ上げていたものの初めて手に

しました。大好きな《イキウメ》の舞台に通じるものが

ある感じですねぇ。あれもないものをあるがごとく、

ないものをあるがことく。。。な舞台ですから。

投稿: 一陽 | 2011/05/12 20:41

◇一陽ちゃん、
双六道中おすすめです!
地の文が「語り」になっているんですが
その飄々とした語り口が、
ともすれば難解に感じられそうな説明もするっと読ませます。
軽くて面白くて笑わせるのに中身が深いあたりが、
私もイキウメさんに通じる気がします。

京極ワールドの核にあるのは、
「意味のあることに意味などない」ということだと思います。
自分の価値とか生きる意味とか存在理由とか、
どこの誰が決めてどこの誰が測って(点数化して)
評価するのか知れないような、
そんなものはどうだっていい。
ここにいることが愛おしいということだと思うのです。

もし京極ワールドに興味をもたれましたら
「嗤う伊右衛門」という小説もオススメします。
あの四谷怪談のお話ですが、
お岩さんと伊右衛門の愛がなんともせつないです。
世間の見方と本人たちの気持ちは大違いってやつです。
角川文庫から出ています~

投稿: theo | 2011/05/12 21:58

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