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2011/06/22

と思います。

18日は友人とシアタークリエ公演「風を結んで」ソワレを見て
食事してホテルに戻って、とりとめのない話をしました。
最近見た舞台やDVDや本の話。
いつもよりのんびりと。

 

翌朝はなにげなく点けたテレビを見て。

 

原発事故関連のまるで不安を煽るような報道の仕方や政府の批判ばかりの内容に
「いまマスコミがすべきことは、政府批判じゃなくて
 どうすれば身を守れるのか、何を判断基準にすればいいのかを
 人々にアナウンスすることじゃないの?!」とテレビに向かって憤ってみたり。

 

気心知れた相手と同じテレビを見て、あれやこれやと好き勝手なことを言えるのは
至福の時間だなぁと感じながら。
このなんともいえない信頼感と安心感は宝です。

 

元プロ野球選手の方が、昔の栄光時代を語っているのを見て
「この人って凄い人だったのよねー」
「でも王さんや長島さんみたいなカリスマにはならなくて商売人なのよね」
「平吾じゃないけど、知恵があるから」

 

商売も才能、カリスマになって人々の夢を背負うのもまた才能という話になって。
「教育って大事よねー」という話になる。

 

教育って大事から、「風を結んで」の話になり、
ラストの静江さんが平吾に言うあのセリフは
いまの感覚だと当たり前のセリフに聴こえるけど
ここで彼女がこれを言うのは凄いことなんだよーってこと伝わったかなぁという話になりました。

 

伝わってほしいよねー。見ている人に。
静江さんがそう言えるようになったのは由紀子さんとの出会いがあったからだもんねと。
(ねたばれします)

 

静江さん(菊地美香さん)は、直参旗本八千騎の武門の家に生まれたお嬢さんです。
お兄さんの橘右近さん(大澄賢也さん)は、廃刀令も出たご時勢だというのに
まだ家宝の名刀を帯びて、
「武士とは如何に死ぬかということだ」とかおっしゃっている堅物なお人です。

 

そんなお家に生まれた静江さんも、武家の女性の鑑のような控えめな人です。
お家のために苦界に売られようとする日でさえ、自分が主人公にはならないで
来客があれば身を引くような。

 

  悲しみ色の空と別れて・・・

 

せつなく淡く自分の悲しみや苦しみも胸に秘めて生きようとする女性です。
自分の意見や考えなんて、一生人前では言わないであろう人です。

 

兄と同じ道場に通う平吾(中川晃教さん)とは必要以上の言葉は交わさないまでも
おたがいに見知っているようです。

 

兄から「下がっていい」と言われて素直に従いつつも、立ち去りがたそうにしているのは
ほのかに平吾を想っているからかもしれません。

 

平吾も大事な用件を忘れて、静江さんに気を取られているようです。
忍ぶれど色にいでにけり・・・でしょうか。

 

なんとも可愛らしい2人です。

 

平吾が工面してくれた大金200円(いまだと600万円くらい?)のおかげで
身を売らずにすんだ静江さんは、平吾が働く一座にお礼に来ます。

 

そこで、一座の男たちを相手に自分の意見をまくし立てる
由紀子さん(大和悠河さん)に出会うのです。

 

自分が一度も逆らったことがない兄を相手に
「日本の男は勇気と命を粗末にすることをとりちがえている!」と言い放ち、
サムライの意地というものをわかって欲しいと訴えかける平吾に
「わかりません!」と断言する由紀子さんに、
彼女は驚いたようです。

 

そんな女性を初めて見ました、と。
でも畏まりはすれど、恐れるでもなく奇異なものを見るような態度はまったくなく
澄んだ瞳で由紀子さんを見つめる静江さんは、素直な聡明な女性のようです。

 

でも身についた武家の娘としての素養は抜けません。
素直で聡明なだけに教えられたことは教えられたとおりにやれてしまうのでしょうね。

 

謝ることではないのに、すぐに「申し訳ありません」と頭を下げてしまう静江さんを
由紀子さんは、「そうやって謝って取り繕ってもなんの解決にもならないでしょう」とたしなめます。

 

由紀子さんは、つねづね日本の女性は言いたいことも言わず
男性の犠牲になってばかりで、外国の女性にくらべて不幸せだと感じているようで
もっと日本の女性に幸せになってほしい、と考えているようです。
(身近に幸せになってほしかった人がいたのでしょうか?)

 

花は愛でられてこそ花、星は仰がれてこそ星よ。
もっと自分を大事に、自分が主役になって、もっと自分本位に生きなくちゃと。

 

初めて言われるような言葉に、さいしょはぽかんとしているっぽい静江さんですが、
自分の気持ちを人前で軽やかに紡ぐ由紀子さんにつられてか、

 

自分のすべてを掛けられるような人に出会えて、その人のために生きられたら
それが私の幸せなのですと
花は愛でられずとも花、星は仰がれずとも星 ――― 命の輝きに変わりはないと思いますと
自分の意見を、たぶん、生まれて初めて相手の意見に反する自分の真の思いを口にします。
(すごくないですか?)

 

その姿を見てその言葉を聞いている由紀子さんが、とてもやさしい顔をします。
えっ?そんな考え方もあるの?
そんな思いがあるのねというような。

 

静江さんの考えを聞けて、うれしそうです。

 

彼女はちゃんと人の意見を聞ける人のようです。
いいなと思ったら、自分とちがう考えも受け入れられる人のようです。

 

心が寛くてフェアで素直な由紀子さんの人柄が感じられて
とっても好きな場面でした。

 

(どうやら彼女が頑固になるのは、男性相手のときに限られるようです)
(やっぱり何かかんじる・・・ 彼女のことがもっと知りたいな~)

 

願いや夢はちがう2人だけれど、
自分の足で一歩ずつ、幸せの種を握りしめて
前を向いて歩いていきましょうと心を通わせて歌う場面が好きでした。

 

人と人がたがいに影響をあたえ合い、つぎのステップにつながっていくのっていいですよね。

 

またこの2人が、正反対のタイプのようだけどどちらもほのぼのキラキラと輝いていて
男の人ばっかりのむさくるしい舞台に咲いた2輪の花を見るようで
心がほっこりする場面でした(笑)

 

時代はさらに急転換を迎えて、
一座のなかに思案橋事件(士族の反乱)に関わった人間がいたということで
由紀子さんの一座は解散を余儀なくされてしまいます。

 

すこし消沈気味な由紀子さんが静江さんのもとを訪れているとき
静江さんが「主人が・・・」と言って、それがどうやら平吾のことらしくて
そのシーンのたびに私は心のなかで「おめでとう!」と思いました。

 

身寄りを失くした静江さんに平吾がつけこんだのか(笑)
静江さんが自分の手で幸せの種を芽吹かせたのかは知りませんが。(^^)
(後者だったらすごいなと思います)

 

そんな静江さんの束の間のしあわせも、
平吾の九州の戦地に赴いた仲間を連れ戻しに行ってくる!
という決意で揺らぎそうになってしまいます。

 

幼馴染たちが自分に挨拶もしないまま旅立ってしまって
白虎隊にまつわる心痛む話をまざまざと聞かされて
いま自分に出来ることは!と心の昂ぶりのままに決意し
それを静江さんに告げる平吾に

 

静江さんは、必ず生きて私のもとへ帰ってくると
風を結んで約束してください ――― と。

 

自分の願いをはっきりと言葉にして、自分の大切な人にわかってもらう。

 

とてもステキなこと。とてもすごいことだと思います。
彼女をそう変えたのは、由紀子さんとの出会いがあったからこそだと思うのです。

 

人と人の出会いや
人と人の絆から生まれるステキなもの ――― それこそがチャンス=幸せの種だと思うのです。

 

(そういえば、何かのインタビューで悠河さんが、由紀子さんにこの作品の演出の
 謝珠栄先生を重ねているとおっしゃっていましたが、わかるような気がします。。。)

 

 

平吾もまた、静江さんの言葉を聞いて、ただ闇雲に思いに任せて九州へ赴くのではなく
自分がすべきことを確信できたと思います。

 

友を追い、見つけて必ず連れ戻す ―――
皆で生きて戻ってくる ―――
なにがあっても、生きて生きて生き抜いて、友と一緒に戻ってくる ―――

 

 

 風を結んで約束しよう・・・

 

 

 いつか花が咲き実を結ぶその日まで・・・

 

 

 

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