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2011/07/04

それでも生きてゆかねばならんでしょう。

大阪シアターBRAVA!公演「風を結んで」
6月29日、30日の公演を見に行きました。

 

公演は1日1公演の2公演でしたが、アフタートークありのFCイベントありの
大千穐楽カーテンコールありののとっても濃厚で濃密な2日間でした。
入り出の悠河さんも最高によかったし。

 

あまりにも濃い2日間だったので、どれがどの時のことなのか記憶が定かではなくて。
ただ、このうえなく幸せな時間を過ごしたのはまちがいないです。

 

公演自体もとても素晴らしかったです。
私は東京公演以上の感動でした。
涙が流れてしかたなかったです。
ただ記憶が・・・

 

まだ29日の公演の記憶のほうがはっきりしているので
そちらを中心に感想を。。。
(とろけ過ぎて人間のカタチを留めておくのがだんだん困難になる大阪滞在だったのです)

 

大阪は暑かったです。
でもそれ以上に熱い熱い舞台でした。

 

東京公演よりも皆さんの芝居が大きく感じられました。
劇場空間が大きくなったからあえてそうされているのか自然となのかはわかりませんけど。
クリエよりも席は後ろだったのですが、いっそうわかりやすくなった気がしました。
由紀子さんの表情も、よりはっきりしていたような。

 

私も5回目の観劇で、それぞれの人物の気持ちがわかって見ているので
ここはそういう気持ちでこの言葉を・・・なんて思うからか、
1幕から涙が。

 

3人が「風を結んで」を歌い上げるシーン。
捨吉さんの「風を結んで」。

 

平吾が由紀子さんに必死で懇願する場面。
それを見つめる捨吉さん。由紀子さんにYESと言ってほしそう…でも無言で俯いてる。
田島さんがはじめた必死の「オヤマカ節」。3人の捨て身の笑顔。
由紀子さんが「わかりました」と言ったときの捨吉さんの秘かに嬉しそうな様子。

 

武士の皆さんが一座への加入を決意するシーン。
栗山さん(俵和也さん)の「それでも生きてゆかねばならんでしょう」。
右近さん(大澄賢也さん)の無言の頷き。
写真撮影シーン。

 

どのシーンも涙がこらえきれませんでした。

 

 

 

 

武士道とは如何に死ぬかということだと言う右近さん。
「なりふりなんかかまってられないわ」と言う由紀子さん。
(この時代由紀子さんのような女性に対して陰口を言う人がどれだけ沢山いることか)

 

どちらも肚の据わった人で、私は好きでした。

 

迷わない強さ。
でも本当は心は傷だらけでしょ。
でも痛い顔をしない。
そんな彼らから微かな迷いや痛みが見えると・・・もう私はたまりません

 

白虎隊を語るシーンの捨吉さん(山崎銀之丞さん)、
声を詰まらせながら、涙が着物に落ちるのが客席からもわかるような気持ちの入り方でした。

 

大人の男の人が少年たちを思って落涙する。
その様に胸が詰まりました。

 

人生の娯しみも、生き抜く苦しみも、恋も、
知らないで死んでいった少年たち。
生きていたら平吾と同じくらいの年頃の。

 

それに応じる平吾(中川さん)も感極まっていたような。

 

 

 

3人組の中で誰がいちばん好き?と問われたら
皆好きだけど私は田島さん(藤岡さん)と答えるかなぁ。

 

年齢も2人よりも上であの性格・・・
たぶん世間や家族からの風当たりはそうとう強いと思います。
酔ったいきおいで自分たちサムライのことを「国家の居候」と言うけれど
たぶん常日頃から心の隅にあるんだろうなぁ。

 

変わっていくのが速すぎて時代についていけない焦燥を押し隠してお馬鹿をやって。
平吾や弥助の悲しい顔を見たくないんだろうな。
ああ見えて自分のことを後回しにしちゃう人なんだろうな。
友達のなかに「居てほしい人」だなぁと。

 

こんな人だから、従軍記者になる決意がせつなくて。
泣き顔は見せたくないから、会わずに行ってしまうのね。
弥助(小西さん)の旅立ちの歌のなかの「田島さんと~」のところは私の落涙ポイントでした。

 

 

 

東京で見たときは、いまこんな時なので自分の気持ちも影響を受けていて
平吾の「生き抜いていこう」がストレートに響く分、お芝居全体のバランス的に
「???」な感じも受けていました。

 

右近さんの家の、他の士族の例に洩れずの窮状を聞き
身売りされようとする静江さんの身代を明日までに用意すると請け負っての3人での帰り道、
「俺たち生き抜いていこうな」って。
なに唐突に???って感じもしないでもなかったんですけど。

 

右近さんの家も自分と同じ元旗本で今では困窮して体面など保てない。
体面を保つために妹を岡場所に売る。
それでいいのか??!
という思いは、
彰義隊に加わってたった1日の上野の戦いで死んでいった父の
「武士の面目」に対する平吾の懐疑につながったのでしょう。

 

彰義=義を彰かにするために、負ける戦に加わり簡単に死ぬことが武士なのか。
武家の体面のために、可愛い妹を売りやせ我慢をするのが武士なのか。
それが武士なら、武士など捨ててやる、と平吾は思うわけですよね。

 

だから、恥も外聞も捨てて武士の誇りも捨てて
「大道芸人になります!」
だし。
武士の面目などかなぐり捨てて、家宝なんか売っ払って
「俺たち生き抜いていこうな!」
なんですね。

 

文脈をすっ飛ばして湧きあがる熱い思いのままに
「結論」を唐突に口にするのが
どうやら平吾のクセらしいです(笑)。

 

「それじゃなにもわからんぞ」(by田島さん)

 

大きな震災後の今だからこそ、感じる部分は大きいけれど、
けっして震災後だからというだけじゃなくて、
どんな時代にも、
世の中に取り残され、厄介者、居候、冷や飯食い、不良債権などと呼ばれて
自分でも生きている価値があるのかと思い悩む人々は存在すること。

 

人に必要とされてこそ生きる意味もある、ということを平吾は言うけれど
自分は誰にも必要とされていないと思い、
需要がない自分は生きている価値はないと、生きる希望を失っている人たちは
いつの時代にもいます。

 

右近さんや由紀子さんや栗山さんたちのように、課せられたミッションのために
あるいは自らにミッションを課して生きることができる人たちもいれば
それを見失って途方にくれる平吾や弥助や田島さんみたいな人たちもいる。

 

そんな3人が「俺たち生き抜いていこうな」と誓い合い、
「自らを助け独り立とう」と夢を語る。

 

そのときはまだ具体的じゃないのだけど、
人の生き方に刺激を受けながら、迷いながら、もがきながら、
他の誰かの心に(たとえば辛い過去を背負った男たちの心に)影響をあたえながら、
夢を叶え、夢を失い、
また新たな旅立ちを決意する姿は、
人間って捨てたものじゃないかもという希望を見せてくれたんじゃないかな。

 

いまは何もないと思っていても、きっと何かみつかる時がくる。
だから生きていくんだよと。

 

たとえば家族の笑顔が何よりも大事で確かな生き甲斐だと思ったり。

 

私は、静江さんみたいな人が笑って暮らせる世の中が理想だなぁと。

 

 

 

感動ポイントが山ほどあった作品でしたが、おなじくらいかそれ以上に
笑いポイントも沢山あった作品でした。

 

捨吉さんはいつもツボをおさえてくれてましたし、
右近さんもなにげに可笑しかったり(笑)。
弥助の針仕事はいつもたのしみでした。

 

巡査さん(小原和彦さん)も可笑しかったなぁ。
あんな走り方は少年ジャンプか少年チャンピオンでしか見たことがなかったです(笑)。
じっさいにできる人が実在するとは。
伝四郎さん、低音の魅力の21歳でした。

 

小弥太さん(加藤貴彦さん)の宙返りにはいつも驚かされました。
もう5回目なんだから、と自分を叱咤しましたが6回目(大楽)もやっぱり驚いてしまった。

 

密偵の佐々木さん(照井裕隆さん)の笑顔に癒されてました。
密偵としてはどうなんだろう(笑) 有能なの? あっさり身を明かしちゃうとか。
「新橋のステーションです」が好きでした~

 

場面転換で舞われていた力強いダンスは何を示していたのでしょうか。
時代の重苦しさ?
あの連獅子のような被り物は、赤熊(しゃぐま)と黒熊(こぐま)?
赤熊は官軍、黒熊は薩摩(反政府)という感じで双方の対立を暗示していたのかな。
赤はケンヤさんで、黒はお2人いらしたようですが・・・。

 

 

 

この感想を書く前に
思い出しついでにとお稽古や舞台ダイジェストの動画を見直したりしたのですが
公演が終わってしまったいま見ても新鮮に感じました。
いつかまた再演があるといいのにな~と思います。

 

 

 

(余談をひとつ)
今日7月4日は平吾のお父さんの命日=上野で彰義隊が全滅した日だそうです。

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コメント

私は大阪初日を観劇しました。3度目の観劇だったのですが、前半の一生懸命な三人組が愛おしくて涙が出そうになりました。あとゆうがさんのパフォーマンスは2階席からもすごく素敵で、惚れ惚れでした☆
そして静江さんの生きて帰ってきてという最後のセリフも感慨深かったです。
ほんとに素敵な作品でしたね。

ところでアフタートークは如何でしたか?仲良し三人組にゆうがさんは入っていけたのかしらと少し心配してました。

投稿: とっこ | 2011/07/04 20:26

◇とっこさん、
アフタートークとにかく可笑しかったです。

司会の方から話をふられたのだと思いますが
アフタートークがはじまる前の3人の自由人っぷりに
3人のうちの誰が一番自由人かと質問されて、
3人がそれぞれに自由だと。
ただ自由になるタイミングがそれぞれちがうのだと。
中川さんが自由人のときは藤岡さんは大人しく
藤岡さんが自由人のときは中川さんは大人しく
小西さんはいつも大人しいのかなと思いきや、そうでもなくて…という話をなさってました。

とにかくアフタートークのあいだも自由な3人に司会者受難(笑)ってかんじでした(^_^;)

楽屋話もたのしそうで、3者3様に悠河さんにちょっかいを出してくるみたい(笑)。
まず藤岡さんが先頭をきってちょっかいをかけて
次は自分か小西さんの番だとタイミングをはかっていると
あっさりと小西さんに先を越されて悔しいと中川さん。

お化粧中にちょっかいを出されて、とうとう悠河さんは
顔の前で髪で×(バッテン)を作って3人をシャットアウトしたそうです。
それを中川さんがうれしそうに?話してらっしゃいました。

話の内容そのものよりも、仲良し悪ガキ3人組と彼らにちょっかいを出されつつも
見守っている(観察している?)お姉さんの悠河さん。
という図が可笑しいアフタートークでした。

投稿: theo | 2011/07/04 20:58

ただでさえ暑いのにトロケテしまいましたか・・・

心を揺す振られる経験があるのとないのと生き方に
違いが生じるような気がします。お芝居は現実じゃ
ないのだけどそこにあるのは真実だったりするし。

投稿: 一陽 | 2011/07/06 10:41

◇一陽ちゃん、
あはは。しあわせ過ぎるとからだに悪いですね(^_^;)
(脳みそにも悪い?)

どんな趣味ジャンルや文化でもそうだけど
創作の中にある現実からの高濃度のエッセンスに
痺れたり心動かされたりする瞬間がたまりませんね。
自分の中でいろんなものが見えてくる瞬間でもありますよね。
かんちがいも含めて。
そうやってまた前に進めるのがシアワセです。

投稿: theo | 2011/07/06 17:56

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