恋しくば。
昨日は、錦秋博多座大歌舞伎夜の部を見てきました。
演目は、
「芦屋道満大内鑑 葛の葉」、「勧進帳」、大佛次郎作「楊貴妃」でした。
「葛の葉」は、
葛の葉が芝雀さん、安倍保名が歌六さん、信田庄司が市蔵さん、妻の柵が右之助さん。
安倍晴明のお母さんは実は信田の森の狐だったという伝説(異類婚姻譚)が元ネタです。
葛の葉が数えで5つの息子(晴明)を慈しむさまが尋常より深いというか甘いというか。
それがすでに訳ありそうに思えました。愛する夫と子どもとの生活の1日1日を
かけがえなく思っているような。
保名さんも仕事帰りに息子に風車を買って帰ってくるような子煩悩な父親。
絵に描いたような幸せな家族なのに・・・。
芝雀さんの、狐の葛の葉と人間の葛の葉姫との早替わりが面白かったです。
狐の本性を出すところも、手が可愛かった。
ドロドロドロ(効果音)で庭の切り戸が閉じたり開いたり、幼子の枕もとの
二枚折の屏風が回転するのが、わくわくしました。
「恋しくば尋ね来てみよ和泉なる信田の森の恨み葛の葉」の曲書きのシーン、
コレ見たかったのー)^o^( 見れてうれしかったです。
愛しいわが子や夫と別れる決意の葛の葉がいじらしくも可愛そうでした。
歓迎されない婚姻。追い払われる妻の悲しみ。
残された保名が、たとえ狐であっても5年も夫婦として暮らした葛の葉を
思い切れずに後を追っていこうとするところも、せつなかったです。
・
「勧進帳」は、弁慶が團十郎さん、富樫が海老蔵さん、義経を福助さんでした。
えっ弁慶って頭いいんだー。弁慶って脳みそ筋肉のイメージだったのですが、
この弁慶さんはちがう! 他の人を諌めたり、難しいことをつらつらとおっしゃってる。
頭が良さそうなことを言っているところは正直眠くなりましたが・・(^_^;)
(だって何を言っているかわからないし、抑揚が心地よいんですもん~)
でも後半は見栄を切ったり、大向こうが掛かったり、見せ場!っていうのがわかって
あのなんともいえないリズム感が心地よくて面白かったです。
ことばはよくわからなくても、動きで、あ、申し訳なく思ってるんだ、とか。
お酒を飲むところはユーモラスで、これがあの難しいことをつらつら述べていた人と同じ
というのがなんだか面白かったです。
弁慶は、頭がよくて主人思いで、人間味溢れる魅力のある人でした。
義経はほとんど後ろ向きに座っているんだけど、やっぱり品があるというか。
弁慶にすすっと手を差し伸べるところは、なんだか見ていて有難い気がしました。
それだけなのに、高貴なお方は得ですね(笑)
富樫は一見堅物そうだけど、じつはピュアな心の持ち主みたい。
大げさなことはしない人みたいだけど、自分の基準で行動する人。
すっとしたいい男でした。
家来を従えて登場すると、やっぱり一目も二目もおかれそうな気品。
ほんとうに1場面が1枚の絵画のようで眼福な舞台でした。
見てすごく得をした気分になれました。
| 固定リンク | 0
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
私も観れて すごく得をしました。帰り道とっても幸せな気分でした!
子役ちゃんが可愛くて! 美しい舞台で。割と解りやすい演目で助かりましたが (まだまだ 奥が深いところは解らないですけど)
狐の化身であっても、あの母の情愛は 今の世の中では 見習うべき人間もたくさんいますし…悲しく切ない場面の曲書きなるものを初めてみれたし 面白かったです。宝塚で 女が男役 歌舞伎で その逆…ほんに 面白きかな人生は…ですね!
投稿: コスモ | 2011/11/14 13:35
◇コスモさん、
ほんとうにとつぜんすみませんでした~
でも快諾いただいてうれしかったです
子役ちゃん可愛かったですよね~
この可愛い子が、世に畏れられる陰陽師になるとは…です(笑)
熟練の役者さんが醸し出す情感や、
宝塚とはまた趣きのちがう派手さや客席との一体感、
若手や女形さんの華やかさとかいろんなものが楽しめて
よかったですね~
(同時に、つくづく宝塚はお安いわ・・・と思うのでした…)
投稿: theo | 2011/11/15 11:41