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2012/01/27

you have been loved.

青山円形劇場にて「GULF -ガルフ-」を見ました。

 

劇場の中に入ると円形の舞台を取り巻くよう客席が設けられていて
役者さんは360°全方向から見られてしまうという按配。

 

円形の舞台にはベッドが2台、パソコンが置かれたデスクが2台、
ルームランナーが1台、数個のダンボールが乱雑に置かれています。
ルームランナーを除くとそれらはすべて基本色が白。
床やハシゴやドアなどのセットが、赤青黄色などビビットカラーのマーブルに
ペイントされているので、白が浮き出すように感じます。

 

この作品、
脚本と演出が少年社中の毛利亘宏さん。
密室劇で大和悠河さんと敦士さんによる二人芝居。
悠河さんは、宝塚退団後はじめてのストレートプレイ。
場所は円形劇場。
上演が発表になってから、いろんな意味でたのしみでした。

 

客席はA~Hの8つのブロックに分けられていましたが、
私は観劇した5公演すべて違うブロックで見ることができました。
見えるものが違うと感じるものが違う。
そんな体験もできたように思います。

 

いろんな意味での期待――
ひとつには脚本への期待がありました。

 

私は、見終わって「ヤラレたーーー!!!」と思うような
小気味良さをもとめて初見に臨んだのですが、
じっさいに見た作品はそんな“上から目線”で楽しむようなタイプのものではなく、
作品の“場所”まで気持ちを引きずられて、
もうずっと考えていなかったこと、考えていては自分が立ち行かなくて
意識的に考えるのをやめたことを、再び考えさせられるような
そんな作品でした。

 

だから初見の感想を訊かれると「うーん、うーん(ーー;)」と言っていました。
快哉!ではなくて、うーんうーん。
一緒に見た友人は「2人の精神年齢が幼くてイラつく」(要約)と。
いつまで「自分探し」をやっているのという苛立ちかなぁ。
真澄さんが誠に言う「社会じゃ通用しないでしょ」という言葉に
「アナタもね」とそのまま返したくなるような。

 

「トモダチ」とか「居場所」とか、そんなの作ろうとしてできるものじゃなくて
おのずとできるものなんだよ。
まず自分がそれを愛さなくては(受け容れなくては)できないものだし、
愛せないなら、そんなものはアナタはいらないんだよ。

 

真澄さんの過去の恋バナを聞くと、真澄さんは相手が自分を好きだから
その男性に価値があったんだなと思う。
自分を愛せない、自分を肯定できないから、自分に熱烈に迫ってくる人に惹かれた。
相手が自分を好きってとこに自分の価値を確認できていたのに
その人が心変わりをしたから、やっと持てた自己を肯定する自信が揺らいじゃった。

 

生来、同性のオトモダチとガールズトークなんてできないタイプだから
経験不足を情報交換で補完するなんてこともできない。
(雑談力って大事なのよー)
経験値が低くて負けず嫌いでコンプレックスを強がりで隠してる。
異性に興味はないと肩肘を張って男っぽいスーツを愛用して
でも1人の時にはあーーーーんなベアトップを着ちゃったりしている
それがまた筆舌尽くしがたく似合っちゃったりして、あるものがありすぎる。
それで「恥ずかしいんだよ」って乱暴に喚いて羞じらっちゃったりなんかして ・ ・ ・
あの~めちゃくちゃ萌えなんですけど

 

でもそんなことは一生知らなくていいよ。
気がついたら最後、全同性の敵になっちゃうから(笑)。

 

あの世間知らずで居場所がないと漠然とした不安に苛まれている
脱いだら凄いんですな隠れセクシー美女を欲しいままにできたら・・・なんて
凶暴な支配欲に駆られる人がいっぱい出てきそうで危ない危ない。

 

スミマセン。夢の妄想超特急が暴走してしまいました
(脱線事故寸前

 

えーとなんだっけ。

 

真澄さんにとって、相手が自分を好きだからこそ、その男性に価値があったんだなという話。
彼の心変わりで、元来希薄な自分を肯定する自信もいっそう失くしちゃったんじゃないかなと。
それもまた「砂上の楼閣よ」。
永遠をみつけられない。
漠然とした不安。
恋人ではだめ。
同性の友達ではだめ。
異性の友達にしか求められないもの。
と真澄さんが思っているもの。
でもそうじゃないよね。

 

相手に価値を求めるから、自分にも価値がないといけなくなっちゃう。
誰かを理由なく愛おしいと思うことができたら(異性でも同性でも人間じゃなくても)
そう思う自分を愛せるようになる。
そこに居場所ができるんだよね。

 

佐藤誠という、世間から見るとどうしようもない34歳のニート男。
34歳とは思えないくらい、幼稚な屁理屈を言っちゃう男。
でも、彼の言うこと(うどんのくだりや社会って絶対なんですか、とか)って
本当は皆心の中に持ってるんじゃないかな。
大人のふりして、そんな間違った考えは持ってませんって顔してるけど。

 

彼のどうしようもない本音に向き合うことで
真澄さんも封印された自分と出逢えたのかもしれない。
そしてこれからもっと出逢えるのかもしれない。
そうしたら、彼女も他人や自分を受け容れることができるようになるかもしれない。
そうしたら、彼女にも居場所ができるのかもしれない。

 

そんな一筋の光が見えたような気がしはじめたところで物語が終わる。

 

これからどうなるんだろう。
あの出来事を経験して。

 

たぶん、けっこう見た目には何も変わらないのかもしれない。
食事は割り勘で、
真澄さんはまこっちゃんの無責任さにイラっとして
誠は真澄さんの高慢さにムッとして。

 

その格差も性格の違いも受け容れて、べったりでもなく
なんとなく好きなことを言い合える関係になってたらいいなぁ。
なんて思います。

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コメント

円形劇場 ストレートプレイ かなり 良いものを見せていただきました。

やっぱり 悠河さんの舞台は、遠い東京まで通う価値がありますね

敦士さんも 存在感がありました

がっつり 芝居をする悠河さんは 観る角度 観る日にち 全てが 違って見えました。いろんな解釈が 出来る舞台だったのかなぁ。悠河さんだったのか 真澄さんだったのか? 数日過ぎたら 幻みたいな…でも 現実だったみたいな…

風船おじさんみたいな 出来事だったかな と思ったりしている舞台でした。

ただ 真澄さんが 一場面 ルールランナーで走り続け 息を切らし セリフが息絶え絶えでの場面…あれは、元ジェンには…無理

あれしきで 息絶え絶えになるわけがないって 思うのは…(笑)

投稿: コスモ | 2012/01/29 22:39

◇コスモさん、
息切れてませんでしたよね~(笑)
汗も出てなかったし…^^; だって「女優だから」(笑)。
まぁ、あの後のことを考えたらちょっとブレイクタイムも
あったほうがいいのかもですが。

ストレートプレイもいいですね。
やっぱり主演はいいわ~と思いました。
ずっと悠河さんを見ていられて♪
またやっていただきたいです。

投稿: theo | 2012/01/30 00:20

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