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2012年2月の6件の記事

2012/02/26

牡丹芳。

夢枕獏著「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を2巻まで読みました。

空海さんとか橘逸勢さんとか白楽天さんとか恵果和尚さんとか
教科書や博物館でしか知らなかった人たちが
会話したり遊郭に行ったりお墓を掘り起こしたり
活き活きと活動していておもしろいです。

ストーリーは、楊貴妃の死にまつわる謎に迫ってまいりました。

空海や逸勢や白楽天たちが、
彼らが活動している物語の「今」より
50年以上前に生きていた楊貴妃にまつわる謎を
李白や阿倍仲麻呂の文や詩などを手がかりに
解いていっています。
玄宗皇帝、高力士、安禄山、楊国忠とか出てきます。

どこか浮世離れしていて時空もなにも超えて行ってしまいそうな空海と
とっても俗物で憎めない逸勢の関係が好き。

逸勢にとって空海は友でありスターなんだな(笑)。

そんな逸勢に人間らしさとか単純な疑問とかを気づかされる空海。

密教や道教、ゾロアスター教や異国の古い宗教。
吐蕃や波斯や天竺の人々。
異国の酒や神や絨毯や妓生や道士や僧や詩人や
国際色豊かな人や物が溢れる長安の都。
猫の物怪や兵馬俑の化物。

何億という牡丹の花びらを蒼天に吹き散らす…とか
幻想的な情景を想像するだけでため息。

つぎつぎに面白いことが起きて、どうつながっていくのか…の1巻。
楊貴妃の死の謎に関係が…?の2巻。
つづきが気になります。

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2012/02/19

悲しみだけが夢をみる。

一昨日は、「悲しみだけが夢をみる」というTVドラマをぶっ通しで見てしまいました。
1988年のNHKの銀河テレビ小説です。

オープニングの宝塚の空撮や、旧音楽学校、花の道、宝塚大劇場などの
風景に惹かれて第1話を見て、ついついつづきを…。
主役は富田靖子さん。宝塚温泉街の旅館の一人娘さんの役。
彼女のお母さん役が、淡島千景さん!
ご本人同様に元宝塚の娘役スターで今は大劇場対岸の旅館の女将という設定。
映像に昔の淡島さんご本人のブロマイドが何枚も出てくるんですけど、
そりゃ~そりゃ~麗しくて美しくて。

主人公の親友で音校生役が有森也実さん。音校の制服が可愛い♪
じっさいの旧音楽学校で撮影されているみたい。
音校教師役で、但馬先生、故寺田先生ほか、劇団関係者の名前も。
音校生役はじっさいの生徒さんたちかな?

私が知らない宝塚の町が興味深くて。
宝塚ファミリーランドや、旧宝塚大劇場。
舞台になっている旅館は、本物の建物を使用しているみたい。
大劇場から見えていたあの建物は、やはり旅館だったのよね。
でももう私が通っていた頃は、営業してなかった気がする。
ソリオもセルカもワシントンホテルもない宝塚。
街灯には、「宝塚第一ホテル」の文字も見える。
旅館やホテルがもっといろいろあったんだ。
宝塚ワシントンホテルにある島家さんは、もともとあの場所にあったのかとか。

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2012/02/16

仮寝の夢。

バレンタインの夜は、博多座に二月花形歌舞伎を見に行きました。

はじめに紋付で亀治郎さんが挨拶をされました。
亀治郎さん、博多座10回目なんだそうです。
歌舞伎の役者さんの中でも最多出演だそうです。

お話の内容は、歌舞伎は畏まって観賞する高尚なものではなくて
客席も一緒に参加するものなので、周囲を気にせず自分が感動した、
綺麗だ凄い面白いと思うところで、思い思いに拍手を入れてください。
お客様の熱い拍手で10回の毛振りが20回30回になるかもしれません(笑)
なんてかんじで。
花道から舞台を移動しながら熱く語られてました。
で、1階から3階までの客席を、下手上手に二分して、拍手の練習というか
拍手合戦?やりました。
コンサートのMCみたいで面白かったです。

九州のお客さんは、熱くなるのに時間がかかるけど
いったん熱くなるとなかなか冷めない…なんてこともおっしゃてたかな。
それ、よくわかります。
歌舞伎だけじゃなくて、ミュージカルや宝塚でも一緒で
最初はノリ方が分からなくて戸惑うけど、わかってくると皆やっちゃえー的になるから(笑)
で、演者の方がノってくるのがわかると凄くうれしいの。
お祭気質だからかな(笑) 皆で盛り上がるのが大好きな人が多いですよね。

ということで、そこまでいわれちゃー遠慮はしねぇ!ってことで(笑)
この夜も盛り上がりました。

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2012/02/11

美しく残酷な。

坂田靖子さんの「ベル デアボリカ 2」を読みました。

去年の3月に発行されていたようです。
知らなかった!!
1巻を読んだのが1年以上前で、
どうなってどんな展開で次号へ続く…だったのか
まったく忘れてしまって、1巻を家中探したけどみつからない…

どうしてもみつからないので諦めて読み始めましたが、
読んでいるうちにおぼろげに思い出しました。

縛られることを嫌い
他人の寸法で生きることを厭う
それが魔法使い。

そんな魔法使いヴァルカナルに
失いたくない人間が出来た時。
彼は狼狽し葛藤し苦悩し
やがてそれを受け容れる。

矜持と弱さ。
無邪気さと冷酷さ。
信頼と策略。
振り子のように揺れる心。

同人臭い設定ですが、そこは坂田靖子さん、
品があって機智に溢れて深いです。

そしてまたまた、こんなところで続くなぁ
ってところで2巻が終わりました。

巻末に描き下ろしの「魔法使いとそのくらし」が収録されています。
坂田さんのこの世界観、いいなぁ。

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鬼ぞ愛(かな)しき。

夢枕獏著『陰陽師 鉄輪(かなわ)』と
『陰陽師 生成り姫』を読みました。
再読です。
なぜって、今年5月に悠河さんが能『鉄輪』を題材にした舞台を勤められるからです。

悠河さんが演じるのは、たぶん鉄輪の女でしょうかね。
安倍晴明ってことはないですよね^^;
(それでもいいけれども)

「身には赤き衣を裁ち着、顔には丹を塗り、髪には鉄輪を戴き、三つの脚に火を灯し…」
自分を捨てた男を呪い殺そうと丑の刻参りをする女。
女の嫉妬と恨みは恐ろしい・・・というよりは、
この2作品は、なんとも悲しく愛おしい物語なのです。

『鉄輪』のほうはもともと絵本なので、絵物語としてさらっと読めます。
といってもエッセンスがギュッと詰まっているので
ラストは泣けます。
なんど読んでも、博雅の言葉に泣いちゃいます。
『鉄輪』という物語のアウトラインを知るためにはちょうどいいかもしれません。

『生成り姫』は、絵物語の『鉄輪』を長編にリライトされたものです。

「生成り(なまなり)」とは、“能面の一種で、角を少し生やし、髪を乱した女面。般若の前段階で、女性の中の魔性がまだ十分に熟さない状態を表す。「鉄輪」の後ジテに用いる。”と辞書にあります。(「デジタル大辞泉」)

彼女がどうして鬼にならざるを得なかったのか。
その部分がよく理解できるように書かれています。
とても悲しいです。

心に鬼あればこその人。
人の心に鬼が棲むからこそ、人は歌を詠み、琵琶も弾き、笛も吹く。
そう晴明は言う。

人の心は深く、単純でもあり複雑でもあり。
なんだかなぁ。
でもだからこそ愛おしくなるんだなぁ。

陰陽師というもの。
安倍晴明といういう男。
源博雅という男。
について詳しく説明されているので、シリーズものではありますが、
この作品は、この1冊だけ読んでも大丈夫です。

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2012/02/09

風花の如く。

夢枕獏著『陰陽師 瀧夜叉姫』上下巻を読みました。
このシリーズは通巻ナンバーがないので
どれを読んだか読んでいないかわからなくなりまする…。

とりあえずこの作品の前に『陰陽師 太極ノ巻』を読んだのですが、
既読感はあるものの、途中で読むのをやめたのか
最後まで読んだのかわからなくて…
読み終わってやっぱり最後まで読んでいたのがわかりました(笑)

で、こちらもどうだったかわからなかったのですが、
どうやら読んでなかったみたいです。

私はやっぱり博雅が好きです。
彼の流す涙に救われる気がします。

「この都などどうなってもいい」と腹の底では思っているであろう晴明が、
この世にとどまる寄る辺となっているのが博雅の存在なのだなぁと思います。
博雅とのなんでもない会話のために晴明は生かされているような気がします。

「お前はこの都が好きか」
晴明に訊ねられた博雅は、わからないとしながらも、この都にはありがたいことがひとつはある、と答えます。
「都には、お前がいるということさ、晴明――」
直截すぎる博雅の返答に、困る晴明。
今回も、ごちそうさまでした(笑)。

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