風花の如く。
夢枕獏著『陰陽師 瀧夜叉姫』上下巻を読みました。
このシリーズは通巻ナンバーがないので
どれを読んだか読んでいないかわからなくなりまする…。
とりあえずこの作品の前に『陰陽師 太極ノ巻』を読んだのですが、
既読感はあるものの、途中で読むのをやめたのか
最後まで読んだのかわからなくて…
読み終わってやっぱり最後まで読んでいたのがわかりました(笑)
で、こちらもどうだったかわからなかったのですが、
どうやら読んでなかったみたいです。
私はやっぱり博雅が好きです。
彼の流す涙に救われる気がします。
「この都などどうなってもいい」と腹の底では思っているであろう晴明が、
この世にとどまる寄る辺となっているのが博雅の存在なのだなぁと思います。
博雅とのなんでもない会話のために晴明は生かされているような気がします。
「お前はこの都が好きか」
晴明に訊ねられた博雅は、わからないとしながらも、この都にはありがたいことがひとつはある、と答えます。
「都には、お前がいるということさ、晴明――」
直截すぎる博雅の返答に、困る晴明。
今回も、ごちそうさまでした(笑)。
・
本のタイトルは「瀧夜叉姫」ですが、彼女の場面がそれほどあるわけではありませんでした。
幼くして父平将門が逆賊として殺され、母も殺され一人になった女童が、20年願ってきたことは
ほんとうにささやかな夢でした。
その願いのために何もかもを犠牲にしてきた彼女は、淡い恋心しか知りません。
これから恋をして、愛され、愛し、女としての秘密をもち、いい女になっていくのだろうと。
そんな希望を感じたラストでした。
この物語は、20年前の将門討伐を絡めていろんな人物が登場します。
かっこいいオッサン(爺さん)たちの活躍にわくわくします。
人の嘆き怒り恨み、弱さを増幅し煽動するもの。
今の世にもいますねぇ。
うようよと。
「ぬしは何のためにこの世に生を受けた」
「何のために生きている」と問う者。
博雅は答える。
「花に、そなたは何故そこに咲くのかと問うおつもりですか。風に、何故吹くのかと問うおつもりですか」
「花は、そこに、在り、咲き、花であるだけで、充分に、満ち、足りています」と。
大きな夢に駆り立てられるもよし。
人を自然を愛ずるもよし。
かっこいいオッサンたちの生き様とか費えた夢とか未来への希望とか
風雅や闇のおどろおどろしさとかいろんなものが見えて面白かったです。
猫又遣いの賀茂保憲さん(新キャラだっけ?)が気になります。
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