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2012年3月の5件の記事

2012/03/22

無常を愛する人。

夢枕獏の陰陽師シリーズ(文庫版)を最初から読み直しています。

2冊目の「飛天ノ巻」まで読みました。
十何年も本棚に入っているので紙が茶色く変色しています。
私が持っている1冊目の「陰陽師」は
←これと表紙絵がちがいます。

散る花を想い、
咲き残った花を想う
源博雅が好きです。
彼の純粋さに涙が溢れてしまうことがあります。

音楽の天才で
鬼をも哀れと思い
この世に生じるすべてのものを愛することができる
類稀なる才のある人です。

でも安倍晴明にいつも思うがままにされているように見えます。
それをすねてみたりするけど、
根っこでは晴明を信頼している。

自分をからかったり手玉にとったりしている相手のことを
幸せな気持ちにしてしまい
こいつには敵わないと思わせてしまう
そんな人間の大きさがあります。

そんな人だから、移ろいゆく時の流れに
自然と感じ入り
移ろう時の流れに抗い
鬼となってしまった人をも
憐れと思い涙する。

自然の摂理、宇宙の営み
誰の身の上にも時は平等に過ぎていくということ
生き物にも非生物にも
自らはそれらを受け入れ
しみじみと感じ入り
受け容れられぬ人の心にもまた寄り添える。

好い漢だなぁ。

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2012/03/13

かなしみとおかしみと愛おしさと。

夢枕獏著『陰陽師 夜光杯ノ巻』と
『陰陽師 瘤取り晴明』と『陰陽師 首』を読みました。

『陰陽師 夜光杯ノ巻』は例によって短編が9つ収められています。

琵琶が、博雅に弾いてほしくて、他の誰が鳴らしても鳴らないなんて
なんていじらしいんでしょ(笑)。

愛しい人を待ちわびて正気を失ってしまった人。

神泉苑の池が天竺の善女龍王殿が棲む池につながって
諸仏が博雅の笛に感応し光の中に宇宙が生まれる。

稚きものたちを慮って我が身はぼろぼろになって
家主に松の木を伐らないでほしいと頼みに来るもの。

亡くした子を思う気持ちと呼応するもの。
天空を彩るいにしえの不思議の鏡。
愛嬌のある地獄の獄卒たち。
素直でかなしい小坊主さん。
法力稀なる浄蔵法師の深く激しい恋の安穏な結末。

どれもこの世に生じるものたちを愛しく思えるお話ばかりでした。


『瘤取り晴明』と『首』は村上豊さんの絵による絵物語。

恐ろしいはずの百鬼夜行の鬼たちがなんともユーモラス。
人は約束を違えても鬼は約束を違えません(笑)。

これは「こぶとりじいさん」の元ネタなのかな。(『瘤取り晴明』)

面倒くさがりの賀茂保憲。
猫又を式神にするこの晴明の兄弟子が私はかなり好きです。
指を黒猫(猫又)に舐めさせてるシーンとか。
これからももっと登場するとうれしいな。(『首』)

さて、これでいま文庫で出ている陰陽師シリーズは
ぜんぶ読んだみたい。
ということで、また1巻目から読み直そう。
現在の私にはハードカバーに手を出す余裕はないので^^;

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2012/03/06

闇の君。

夢枕獏著『秘帖・源氏物語 翁-OKINA』を読みました。

葵上と六条御息所との車争いから端を発する「葵」が元ネタのお話。
光の君と蘆屋道満がコンビを組んで、葵上に憑いた「物の怪」の正体を探ります。

物の怪の正体が、六条御息所の生霊だけで終わらないのが夢枕さんらしい。
源氏物語の中には異国の占師や陰陽師や阿闍梨の加持祈祷など
著者氏が好きそうなものがいっぱいですもんね。
そこにスポットを当てたところが面白いなーと。
(翁って、能の式三番に出てくる翁かなぁ)
(秦氏と太秦の謎はやりすぎ~)

光の君が私の抱くイメージと少々違いました。
たしかに、光の君の孤独は誰にも理解されない深い暗いものなのかも。
華やかな面ばかりイメージされるけど、
じつは六条御息所とソウルメイトかもなー。

葵上の扱いがちょっと気になった。
妊婦をモノ扱いみたいな。
そんなことばかりしてたら早産するぞ。
他に手はないからしょうがない? えー? うーむ。。。(ーー;)

たまに…夢枕さんが書く物語は私をドン引きさせてくれて…
そうなるとあまり作品にハマれなくなっちゃうんですが、
この物語もそっちの気がありました。
(葵上関連で)

公明正大清廉潔白、北の方(雲居の雁)一筋、地味で上等の夕霧はこうして出来たのか。
うーむ。

光が強ければ闇もまた濃いのよね。

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2012/03/05

はらいそはらいそ。

2月25日は博多座二月花形歌舞伎の昼の部を見てきました。
1週間以上前になるので記憶もあいまいですが、
思いつくままに。

演目は「天竺徳兵衛新噺」通しで3幕でした。

2幕が、本筋と関係なさそうなんだけど…(笑)
でもすごーーーーーく面白かったです。

小幡小平次って幽霊役者の「小平次」と同じ人?
だから沼に沈められたのか~!
沈めても沈めても上がってくるところが凄かったです。
アンドレなんて目じゃない(笑)。

殺された小平次と、彼を殺めた女房のおとわの二役の亀治郎さんが凄かったです。
殺害場面も凄かったけど、幽霊と悪婆の早替わりがスペクタクル~
あのしつこいくらいの、くるぞくるぞ!感がとってもすごくってクセになりまする~
こういうのを見ると、「また見たい!!!」って思います。
見たのは、楽前日の土曜日だから2度目は見れなかったけど…残念。

春猿さんのおまき(小平次の妹)が可愛かったです。
びびびびびーって言ってた(笑)。
兄の死よりも一目惚れの相手のことで頭がいっぱいとか(笑)。

続きを読む "はらいそはらいそ。"

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2012/03/04

花宴の夢。

夢枕獏著『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』全4巻読了しました。
ひっさびさにドキドキする物語を読んだような気がしました~。

まさにグローバルな都市のグローバルな知識の物語だ~。

空海の「密」の考え方が好き。
だけど空海のように生きられる人はほんの一握りだなぁ。
空海は憧れ。
橘逸勢にとっても共感です。

楊貴妃の死の秘密は、楊貴妃の出生の秘密だった。

おどろおどろしいことをやっている人の動機が
なんだかとっても可愛らしいものだった。

といったら語弊があるかもしれないけど、
もっと大それた動機かと思ったら、とっても個人的な思いからだったの。
それが、なんというか、人間って愛おしい生きものだよなぁって思えて
なんだか不思議な温もりを感じてしまった。
めちゃくちゃおどろおどろしくて気味の悪いことしてるのにねぇ。
へんなの。

この世に悪い花、良い花がないように。
この世に良い人、悪い人という区別はない。
良い人悪い人の区別は、誰にとって悪いか良いかの区別なんだな。
基準が誰なのかということ。

空海はあまりにも絶対的な宇宙に近くなりすぎて
「私」もまた宇宙的になりすぎるきらいがある。
それを、「今のこの世」に引き寄せる存在が逸勢という「友」なんだなと思う。

逸勢がいないと、空海は「私」がなくなってしまいそうであぶなっかしい。
それでも空海は寂しくなんかないのかもしれないけど、
見ている私が寂しいから、逸勢がいてくれて私はほっとする(笑)。

楊貴妃もあれでよかったんだと思えてほっとする。
どちらかが弟じゃないかと思ってたけど、あっちだったか…。
長い長い時を経て、たくさんの人の命が奪われて、
なにが良かったんだか悪かったんだか、大きな視野で見たら答えは難しいけれど
荒ぶる魂が宇宙に融けていくような調和と和合のラストは心にしみました。
これが「密」なのかなぁ。

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