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2012/05/17

華の園まで遊ばせん。

渋谷区文化総合センターさくらホールにて「土御門大路」を見た感想#4です。

 

 *しつこくホールの名前を連呼中。やっと覚えたから連呼中(笑)

 

怒涛の勢いで東京5公演を見ましたが
時間を置いていままた見たいなぁと思っています。
とくに2幕の場面を幾度も記憶のなかで反芻しています。

 

「いかに殿御よ めづらしや」のあたりのあの色気と狂気
悠河さんの表情が忘れられません。
名古屋に行けないのがとても残念。

 

とまあPCに向かえば悠河さんのことばかり書いてますが、
もちろんそのほかにもいろいろ思ったのですよ…^^;
それを書いておこうと思います。

 

 

月乃助さんは明るい安倍晴明さんでした。
善良で人付き合いが上手で人の好さそうな
そして白拍子の舞が大好きな(笑)
総髪(ロン毛)なのも衝撃ですが、むしろ私はこちらのほうが衝撃^^;

 

頭が良すぎたり怪しい式神を使うと殿上人に疎まれたり、
狐の子と言われて育った屈折・・・とかはないみたいですね(笑)

 

仕事もできて皆から尊敬もされてた。
謙虚だし、お茶目だし。こりゃ人から好かれるよね的な。
これまで私が持っていた晴明のイメージ一掃。

 

そんな人の好さそうな大きい小父さんですが、
ひとたび陰陽師の仕事にはいると気迫がちがう。
どこから響くのかと思うような重低音の真言。

 

そのへんは、さすが月乃助さん。
かたちが綺麗。
ことばが明瞭。
「フッ」が好きでした。
あの声(呪文)は体力使いそう。
しっかり丹田に気が満ちてそう。
頼もしいかんじでした。

 

源頼光さんとは遊び友達みたいでした。
白拍子の舞を見にと誘われたらうれしそうに。

 

あまり世情に明るくない頼光さんをからかうのも好きみたいで
「女には気をつけられよ」「まことに気をつけられよ」と念を押してた。

 

また白拍子の舞を見に参りましょうと言い残して去っていこうとする頼光さんに
「まだ懲りておらぬな」とかも言ってた。
もう^^; うけるからって~。
たいへんお茶目で破綻のないおおらかなキャラでした。
(それって月乃助さん、まんま?)

 

1幕冒頭と2幕冒頭に登場の貴船の宮の社人の市川猿琉さんも声がよかったなぁ。
お能のセリフそのままなのだけど、聞き取りやすくて、音楽的で。
沙月さんに霊夢の内容を告げる真面目な顔が
急に沙月さんが怖くなって怯え顔になっていったりとコミカルな変化もさすがでした。

 

この歌舞伎的な日本物のお芝居を引き締めていたのは
月乃助さんと猿琉さんだと思います。

 

 

刀鍛治の匠、四条宗晴さん(黒田アーサーさん)は、
美人で貞女の鑑みたいな奥さんが窮屈だといって可愛らしい白拍子に走ってしまう人。
気持ちはちょっとだけわかるけど^^;
女性の観客には反感をもたれちゃう役ですね。

 

1人の女性に、望むものすべてを求めるのはムリ。
妻にないものを他の女性に・・・ってことでしょうけど。
でも、その他の女性だって彼が望む100%じゃないから
けっきょくいつも1人だけではすまなくなっちゃう。
はやくそれに気づいて仕事に打ち込めば、悲劇も起きないのにねー。
そしたら物語にならないか^^;

 

息抜きならほどほどに。
妻を鬼にしないことが賢い男のやり方でしょう。
宗晴さんは夫として下手すぎる。

 

沙月さんも、どうしてこんな男にあそこまで本気になっちゃったかな。
真面目すぎかな。
こんなに思っているのに。こんなに尽くしているのに。か。
夫のねぎらいのやさしい言葉でおちつくものを
宗晴さんって、「私をこれほど思ってくれるのは亡くなった母とお前だけだ」
とか言いながら、そこで「ありがとう。これからもよろしく」にしときゃいいのに
期待させて逆効果なんだもん。
ものを創る人特有の常に現状に不満な心理かな。

 

こんな人を夫にするのは覚悟がいりますね。
ようはほっときゃいいんですけど。沙月さん、夫をかまいすぎ。
ほっときゃあちらから寄ってくるものを。
基本は寂しがりやさんだもん。宗晴さん。

 

 

白拍子の若菜さん(愛原実花さん)はお花みたいに愛らしかった。
表情が愛らしくて、にっこり笑うと、そりゃあ男性は癒されるわ(笑)。

 

単調な展開になりがちなところに、白拍子の舞が入ると目に鮮やかでほっこりしました。
彼女に会って憂さを晴らしたい男性の気持ちがわかります。

 

でも商売柄男性のご機嫌をとるのは上手でも
彼女も1人の女性なんですよね。
ほかの誰かのものである男性を恋うるのは苦しいでしょう。
そのへんの女性の気持ちを男性はわかってないわと思いました^^;

 

 

春宮亮(舘形比呂一さん)は、役職名だけでなぜか名前がない!
沙月さんたちがとても偉い人だというから春宮大夫かと思っていたら
春宮亮だし。
いや、下々の者から見たら、偉い人ですね。
刀鍛治とも直かにつきあって、若い頼光さんの上司でってことで
ちょうどいいところではありますよね。考えられてるなー。

 

ちなみに、偉い順に、
春宮大夫(従四位下)、春宮亮(従五位下)、春宮大進(従六位上)、以下・・・とつづきます。
頼光さんは、春宮大進になったところみたいなのでまだ本当に若い時みたい。

 

で、この春宮亮さんにいささかゲイ疑惑。
いや嫉妬に男も女もないってことかな。

 

嫌味で独占欲が強くて妖剣にとり憑かれ悪鬼に操られる役を
舘形さんはやらし~く演じられてました。
沙月さんに嫌味をいうところなんて、毒があってよかったー。

 

2幕では鬼の眷属となって晴明(と彼の術による三十番神)と対決する場面は本当に
素晴らしかったの一言に尽きます。
いいもの見たなぁ。
あんな筋肉、仁王像の塑像以外で初めてリアルで見た気がします。

 

 

のちの鬼退治の四天王の1人、源頼光を演じたのは塩谷瞬さん。
知り合いの刀鍛治の匠の身体の不調を思いやって、陰陽師安倍晴明に相談に来る
気のやさしい若武者です。困っている人をほっておけないかんじ。

 

パワハラの嫌味な上司春宮亮さんが嫌いで、
不思議な力をもつ晴明には親しみを感じているみたい。
知らないことには純粋に好奇心を抱く素直な人。
猛けき人というにはちょっとユルい気もしますが
晴明さんはそこが好ましく付き合いやすそうで、ついかまってしまうみたい(笑)

 

という訳で2人は気を許した遊び友達かな。
男の人って対女性のことになると妙にタッグを組みたがる^^;
おっと、そっちの鬼退治もご一緒ですか(笑)

 

塩谷さんは時代ものは初めてとのことですが
狩衣姿似あってらして、セリフも聴きやすい声でした。
調子にのった月乃助さん@晴明のアドリブにも
いっぱいいっぱいながら応えてらっしゃいました。
千穐楽のスタンディングオベーションに1人うるうる涙ぐまれてて
(ほかの出演者さんはニコニコなのに)
感動しいなんだなぁって思いました。

 

 

赤い鬼紅葉役の遼河はるひさんは、おひさしぶり~~~でした。
退団されて生で見るのは初かな。
式神や白拍子の中に混じるとやっぱり大きい~
宙組にいらっしゃるとき以上に大きく感じました。
青い鬼の水町レイコさんが小さく見えるけど
水町さんがふつうなんですよね^^;

 

白拍子の踊りの時の目線や手の先が綺麗でした。
声も張りがあって男役っぽかったです。
ついアギラールが思い起こされました。

 

 

晴明の式神、青龍と朱雀は津川兄弟さん。
桜姫のときよりも大人っぽくなったなぁ大きくなったなぁ(とくに弟さん)
と思っていたら、隣に遼河さんが並んで、あらら(笑)
誰かが遼河さんの半分だなぁって言ってました^^;
遼河さんが大きいんだい!

 

お若いならが舞台を知っている頼もしさがありました。
舘形さんと舞踊的に対決する場面がいつも見応えがありました。

 

 

2人ずつ白拍子が踊るとき、春宮亮さんの部下の方たちは
どちらがいい? ××のほう とか言ったりして
やんやと楽しそうでした。
でも毎夜のごとく春宮亮さんにつきあって
いまも昔も宮仕えは大変ですねぇ。

 

沙月さんの雑仕女の3人娘はキャラがはっきりしてて面白かったです。
ユーモアは生きる知恵。
多面的に物事を見るのは生きるために大切な脳の働き。

 

沙月さんもあんなかんじだったら鬼にはならなかったでしょうに。
鬼にもなれない者は、しっかりと今を生き抜くしかないという言葉、
同感です。

 

沙月さんは身分の高い女ではないけれど
1人の女性として心根が気高すぎた。
脇目もふらずに一つのことに全力すぎた。
真面目で頑固で研究者や芸術家向きの性格かも。
女性が職業をもてない時代には生き難いタイプかも。

 

彼女のように誇り高く一途に生きられる人は、そう多くはない。
鬼になるほど、何かに自分を懸ける生き様は、羨ましくもあります。

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