« もはや涙は乾いてしまったけれど。 | トップページ | 恋したらどうなるの。 »

2012/11/28

誰しも浮き世ですよ。

11月22日は和文リテラシーが終わって
リバレインに新しくできたイングリッシュパブでランチをして
お隣りの博多座で新派特別公演「麥秋」と「滝の白糸」を見てきました。

「麥秋」は小津安二郎監督の名画で、やっぱり同じく小津作品の
「東京物語」みたいなかんじの作品を舞台化したもの。。。。

ていどの知識しかなく劇場に行ったので、1幕が終わったところで終演したと
思い込んでしまいました(笑)。

だって、あのあとお隣さんと結婚するんだよねってわかったし。
しあわせってなんだろうなぁって、しみじみ考えさせてもらったし
いい作品だったなぁって思って・・・(^^ゞ

だって、はじまりから事件という事件は起きないし、
それでも、日常そのものが、そこにいる人たちの思いが、
ただそれだけで、じーんときたんですもの。

いまここにいない、戦死した青年(登場人物たちの息子であり兄であり弟であり親友である)
を思って平和をかみしめるせつないシーンとか
妙齢のお嬢さん方と兄嫁との会話とか
なにげない言葉のやりとりが心にしみてきてうるうるして。

あーいいお話だったわーと思ったら、つづき(2幕)がありました(笑)。
でも、あれもお隣の奥さんの突拍子もないおしゃべりがなかったら
あの展開はなかったですよね?
それ以外はなるべくしてなったかんじ。
どの登場人物も、そうするだろうな、そう言うだろうなと納得ができた。
なんか安心して見ていられる、そんな作品でした。

兄嫁役の波野久里子さんがさすがだなぁと思いました。
すごく微妙な立ち位置の役なのに、すごくいい感じの兄嫁さんで
この人が実質家族をまとめているよねーっていうのがすごく感じられました。
ちょっとできすぎのお嫁さんですが、それがちっとも嫌味にならず過剰にならず
素敵でした。
昭和20~30年代の品の良い家族の雰囲気もよかったなぁ。


「滝の白糸」は、春猿さんが美人さんでした。
あの女芸人の心意気、そしてあの純情さ、いいなぁ。
どこから見ても姿が良いのは、ほんとうにもう流石だなぁ。

1人で海岸近くを歩くときの独り言。お月様に見られて恥ずかしいというあたりの、
なんともいえない可愛さ、色っぽさ。――― もうむちゃくちゃたまらんかったです。
島田の髷を結いなおすしぐさとか・・・ずっきゅーーーーん!ときました。

欣弥さんの夢を叶えるために仕送りをするというのも
欣弥さんが夢を叶えてくれたらそれが望みというのも
突拍子もないようでいて、でもなんだかわかる気がしました。

女芸人として名をはせて、一座を背負って稼いでいる人だけど
それとは別に、浮世を離れたなんとも言いがたい綺麗な夢を見たい
そんな気持ち。
誰かを好きと言っても、どろどろしたものじゃなくて、
憧れのまま好きでいたい気持ち。
そんな気持ちが彼女の中に見えた気がしました。

誰かを綺麗なまま立てていたいから、自分は多少の屈辱はがまんできる。
人に頭を下げることも厭わずできる。
その気持ちに共感できました。
そんな彼女の潔さが綺麗だなぁと思いました。

それから彼女のまわりにいる一座の女の子たちが可愛かったぁ(*^。^*)
可愛い女の子たちは本当に世の宝でございます。
彼女たちの前での姐さんぶりも好きだったなぁ。

南京一座の撫子ちゃんは可哀想だったなぁ。
さいしょから、滝の白糸の一座のほうをちらちらと気にしているなぁと思ったら。
一座の女の子たちが可愛くてぷくぷくきゃぴきゃぴしているから
よけいに不憫でした。

月乃助さんの寅吉さんは悪そうだったー\(^o^)/
これみよがしに悪者ぶりを醸し出してた。同情の余地なし(笑)
で、容疑者として法廷にいるときの着流し姿がかっこよかったです。
背が高いから腰の位置も高くて、着流しほんと似合いますねー。
ってそんなことでニヤニヤしちゃいました。
5月に土御門大路に出演されていた頃よりもお痩せになったかも。

お話のラストはほんとうに遣る瀬無いですね。
ほんとうに。
あとひと月、いえ半月、早く欣弥さんが赴任してくれば。知らせだけでも。

法廷のシーンでわかったけれど、彼女も士族の娘だったのですね。
なんかもう、いろいろせつなくなっちゃいました。

「そりゃあもう誰しも浮き世ですよ」
欣弥さんが身の上を語ったとき、彼女はそう言ったけれど。
思えば思うほどせつないなぁ。

しあわせになってほしかったなぁ。


新派の舞台を生で見るのは初めてだったけれど、よかったです。
世の中には私が知らない素敵なものがいっぱいいっぱいあるのだなぁ。

| |

« もはや涙は乾いてしまったけれど。 | トップページ | 恋したらどうなるの。 »

コメント

素敵な舞台が伝わってきます。観たいなぁ‥と思いつつ あっちの方にお金がかかり(笑)地元の公演に手が出ませんが CS放送で東京物語などの映画を割と見ています。淡々とした中に 凜とした日本の家族の物語は大好きです。春猿さんも 観たかった~~新派にも お出になるんですね。

投稿: コスモ | 2012/12/05 04:15

◇コスモさん、
私ももっぱら、あちら以外の公演は3階席の住人です(笑)
春猿さんが演じられた役は、玉三郎さんもおやりになったことがあるお役です~
さすが女方!という色気と迫力でした。
(あの方でも見てみたい役でした(*´▽`))

投稿: theo | 2012/12/05 23:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« もはや涙は乾いてしまったけれど。 | トップページ | 恋したらどうなるの。 »