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2012/12/29

あなたはあなた。

先日、新国立劇場で見た「プロミセス・プロミセス」の感想です。

 

素敵な作品でした。
チャックもフランも2人ともよかったね(^ ^)とやさしい気持ちになれるそんな幸せな結末。

 

笑いとやさしさとせつなさ。
このどうしようもない世界のどうしようもない人々を愛しむ気持ちに溢れていて。
でも、おしつけるのではなくて淡々と描かれていて。
見る者に任される心地よさがあって。

 

人は自分に関わる出来事を自分の都合のよいように解釈しちゃう。
チャックは、フランがなかなか約束の場所に現れないのを
しつこいデートの相手を振り切るのに手間取っているんだなって思うし
フランは、あんなことがあってもまだ、彼は本当は私を愛しているのかもと思う。
んなワケないやん!と思いつつも、せつなくなる。

 

2回の延長の末に128対129でニックスの勝利。
ニックスファンなら絶対に見逃したら後悔したくなる試合でしょ。
「TVで結果だけ見ればいい試合だ」なんてそんなこと絶対にない。
そんなやせ我慢を自分に言い聞かせて、でも、フランを責めないチャック。
それどころか、彼女も努力してくれたんだしってポジティヴシンキング。
いいやつだよねぇ。
いいやつすぎてせつないなぁ。

 

職場の上司と不倫して、他人の部屋で自殺未遂。
こう書くとフランってば、とんでもないイタすぎる迷惑女なんだけど。
じっさいに目の前にいるフランは可愛くってせつない。
愛する人を信じたくて、でも不安でいっぱいで、いろいろ混乱してる。
こんなヒロインなのに、けっしてウェットじゃなくて、ドロドロしてなくて、純粋に見えるのは
悠河さんの持ち味が活きているからだと思う。

 

彼女が「彼は本当は私のことを愛しているのかも」って言うと
おもわずあははー(^ ^; と笑ってしまう。
この期に及んでまだそんなこと言っちゃって。でも可愛い。
けどせつない。
人はどうしてこんなに愛おしいのかしらと思う。

 

愚かだけど愛おしい。
愚かだから愛おしい。
こんな悠河さんを見れたことが本当にしあわせでした。

 

一緒に観劇した友人が、ゆうがちゃんはドラマチックに男性を翻弄する役ばかりじゃなくて
翻弄される役も似合うんだ、と軽い驚きを示して言ってたけど。
私も、こんな役が似合うなんて知らなかった。

 

いや知ってたんだ。宝塚ではそうだったもの。
シドやスチュアートはそうだったもの。
フランは、シドやスチュアートの側の彼女なんだなぁ。
こんな役が似合う人だったのだ。
それにあらためて気づけたことが、私にはとても新鮮でとてもうれしかったです。

 

チャックも、フラン側の人なんだなぁ。
シドやスチュアート側の人なんだ。
だから私は彼が大好きだったんだなぁと思います。
せつないくらい前向きな人が、私は大好きで憧れだから。

 

中川晃教さんのチャックは、本当に子供っぽいくらい純粋に見えた。
まわりが目に入っていない?(笑)って思うくらい一直線だった。
フランへの思いも一直線なチャックだった(笑)。

 

サービス精神も旺盛で、お客さんを楽しませたいという気持ちが全開だった。
私は初見だったこともあり、彼の早口と大量のおしゃべりに脳みその情報処理が
大変だったけど(^^ゞ

 

そんな彼が、どうして出世しようなんて思いついたんだろう?とは思うけど、
たぶんあれは、なんか変な「思い込み」があるんだと思う(笑)
ヤングエグゼクティヴ向けの雑誌の受け売りとか、ハウツー本とかの(^^;
もしくは、子供の頃からの「思い込み」。
とにかく、上に上らなくちゃ!的な。
そしたらなんか妙に巧くコトが運んじゃって。
(意外と運命の女神に愛される体質かも)
(けっこうこの後の人生もラッキーに運ぶタイプかも)
なんかそんなチャックでした。

 

でも、魂やプライドまでは売れないことに気づいて
本来の自分を取り戻せて、ほんと良かったってストーリを感じました。

 

 

藤岡正明さんのチャックは、現実的なかんじがしました。
しがらみの中で生きている会社員ってかんじで。
人生や他人や自分の弱さに流されてしまってる。
それじゃダメだってわかってて客観的に自分を見ている自分も持ってて。
これじゃいけないって。でも流される自分。

 

そんな彼が、フランとの恋によって、自分の誇りを取り戻して
自分がなりたい自分への第一歩を踏み出した、そんなストーリーになっていた気がします。

 

で、中川さんほどアドリブがなかったからか、わかりやすいチャックだった気がします(笑)。
(でもこのまま上演回を重ねたら、負けずにアドリブ満載になったのかも(^^;)
タイプ的に、もしかして、もともとの脚本のイメージに近いチャックだったのかな。

 

フランの愛し方も、相手を笑わせながらさりげなくそっと支えてくれそうな。
女性からすると、かなり心強いかんじがして、「あ、大人だ」って思いました(笑)。
(マージとのシーンも、「大人だ」と思いました ^ ^ )

 

 

2人とも愛すべきチャックで、チャックが変わることでフランの印象も変わった気がします。
中川チャックのときは、フワフワっとしたピュアな面が強いフランだった気がしますし
藤岡チャックのときは、リアルな面が強まっていた気がします。

 

私がいちばん好きだったシーンは、
「もう恋なんてしない」のリプリーズで、チャックが「ぜんぶ知ってるよ」と
フランに歌いかけるところ。

 

2人のあいだに生まれた共感。共鳴。
「何を?」と問いかけなくても、フランはあの瞬間理解できてるんだと思う。
言葉じゃなくて、気持ちが通じ合えた瞬間を感じられて。
それが、胸にずん、っと届いてきて。

 

「もう恋なんてしないわ」と見つめあいながら、新しい恋に落ちはじめている。
そんなフランの心の動きがとても自然にとてもリアルにつたわってきて、
この舞台を見れた幸福感に浸っていました。
舞台を見て、登場人物の心が動いた瞬間を感じることができるなんて
いちばんの醍醐味だと思うから。

 

あのシーンの、あの共感と共鳴があったから、
きっとフランはシェルドレイク部長のプロポーズを受けたときに
「ちがう。この人じゃない」って
人生を共感と共に分かち合える相手は別の人だと気づけたのだと思うんです。

 

あのシーンの心の動きが見えたから、私もラストに彼女が
バスケが好きじゃない人とは結婚できないと言う意味が、心から納得できました。
(なんて脚本なんだ!と鳥肌)

 

睡眠導入剤、コンパクトミラー、そしてバスケ。
さりげなく出てきた小道具や言葉が、あとで大きな意味をもってくる。
そういうところも、いちいち、巧いわーと小気味よくて
本当に最高の作品でした。
この作品を見れて本当にしあわせ。再演を願わずにいられません。

 

そしてだからこそ、大和悠河さんには自己陶冶とさらなる向上をと願います。
こんな作品にまた出会いたい。
切なる願いです。

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