意味がある。
4月6日から9日まで、宝塚大劇場にて
宙組公演「モンテ・クリスト伯」「Amour de 99!!」6公演を見てきました。
「モンテ・クリスト伯」、2週間でさらにこんなに深まっているとは!
そんなうれしい驚きの観劇となりました。
滞在中にもどんどん深化していたように思います。
--以下ねたばれします--
牢獄の場面のエドモン、メルセデスとエドモンの対決シーンは
最初の観劇のときから胸に迫るものがあったのですが、
いっそう深くいっそうせつなかったです。
ことにあの対決シーンは究極のラブシーンですよね。
メルセデスに殺されようとするエドモンの心には
封印していた彼女への愛の鼓動がふたたび脈打ちはじめている。
エドモンを殺そうとして果たせなかったメルセデスの心にも
押し殺していた恋心がひたひたとあふれている。
けれども2人はかつて終わらせたこの恋を、またここで終わらせなくてはならない。
そんなせつなさが、きゅうきゅうとつたわって来ました。
「さよなら、メルセデス」
彼女から離れて言い放つエドモンの内面にあるのは、
もはや憎しみでも怨みでもなく、なにかが落ちたような、なにかしらが購われたような
…そんな表情に私には見えました。
彼が決意していることは、彼がこれからしようとしていることは
自分のための復讐ではなく、自分以外の人のためにすべてを終わらせること。
無に帰すること。
それができるということは、
あの底知れない憎しみという感情から、彼は解き放たれたのだなぁと。
とてもとてもせつない決意だけど・・・。
・
主人公2人も深まっていたけれど、ほかの登場人物たちも深化していました。
すごく感じたのが、新公学年の若手が演じる若者たちの場面が、
期待以上にぐっと良くなっているということでした。
決闘場面の前のボーシャンとアルベールのやりとり、
ものすごく気持ちが入っていておもわず涙しました。
初見では、アルベールの言う「意味がある」の意味がよくわからなかったのですが、
今回、すごくそれがわかりました。
アルベールは、メルセデスからすべてを聞いた。
つまり、エドモンが自分の父親であることも知っているのですね。
そして、いままで19年間父と思っていたフェルナンのやってきたことも。
彼は、エドモン(実父)に対して犯したフェルナン(養父)の罪を
自分の命で購おうとしているのですね。
自分がこの世からいなくなることで、2人の父を生かそうとしているのだと。
そう感じました。
だから自分がエドモンに撃たれて死ぬことに意味がある。
だから、「十死にゼロ生だからこそ意味がある」と。
この時点で、やはり彼の心の中ではフェルナンが父親なんだと思います。
父親の罪を自分の命で購って、母とエドモンが幸せになることを願っているのだと。
なんて良い青年なんだ、アルベールつД`)・゚・。・゚゚・*:.。
自分の命で購おうとするところなんて、エドモンと思考回路がおなじ。
ああDNAだなぁつД`)・゚・。・゚゚・*:.。
拳銃を掲げて同じ方向を向いた瞬間なんて、
背格好スタイルも似ているし、その角度もおなじで
うわぁぁ親子だ!と思ったり。
だけど、エドモンにハグされて「お父さん」と声をかけても
エドモンのもとへ行くことを躊躇する母の背中を押しても、
アルベールの心はやっぱりフェルナンにあるんだ(涙)。
自分たちに銃を向けたフェルナンが銃殺されるのを目の当たりにするその背中。
右肩が落ち、膝はいまにも崩折れそう・・・。
フェルナンが人を陥れ卑劣な行為を重ねてきたことを知らなかったアルベールは
それなりに19年間、この享楽主義的で女好きの洒落者の父を慕っていたみたいなの。
モンテ・クリスト伯の大温室でのパーティーでも、仲良さげに歓談しているもの。
彼はずっと、父が母を殴らないで、母が父にやさしく微笑みかける
そんな家庭を夢見てきたと思うの。。。(u_u。)
そして自分の力の足りなさを口惜しくおもって生きてきた、
そんな子どもだとおもうの。。。
落ちていたメルセデスのガウンを手にとって、その屍に掛けるために
フェルナンが横たわる場所に走り寄ろうとする、
そのときだけが、
いつも不仲な両親の狭間で周囲に気を配って生きてきた彼が、
周りの目を省みずに心のままに行動している瞬間、のように思えました。
アルベールを思うと胸がきゅ~っと。。。
(この性格も、原作の豪胆で愉快できっぱりと理を通すアルベールとはちがうかな)
アルベールは良い役だけど、それをちゃんと良い役と成してさらに深めている愛ちゃんに
感動しました。
若手といわれる人たちががんばっている組っていいですよね(; ;)
フェルナンもね、アルベールが生まれたとき、紗幕の向こうでとても喜んでた。
卑劣な手をつかってメルセデスを自分のものにして、こうして結婚して子どもも生まれて
彼は幸せの絶頂だったと思うの。
(そもそもエドモンを陥れたのも、メルセデスを自分のものにするためだもの。浅はかだけど)
意外とこんなタイプの男性は、愛する女性の愛によって更正したりもするものよね。
だけど、メルセデスは、自分の息子の父親としてのフェルナンは必要でも
彼を男性としては愛さなかった。
だから、フェルナンの幸福もこの時を境に、どんどん下降してしまったのね。
もともと逆境にはとことん弱くて、我慢ができない性格のフェルナンは
人生に八つ当たりするかのように浮気に走って、愛するメルセデスに暴力をふるう。
あーコドモだ。
なんて浅はかで、なんて愚かな男だろう。
だけど、憎みきれないなぁ。。。
この人はもっと大人で包容力のある女性に可愛がられるほうが似合うのに~
と、まぁくんのフェルナンを見ながらきゅんきゅんしたのでした。
ダングラールも可哀想でした。
目端は利くけど意外と抜けてて、フェルナンに弱みを握られてみたり、
妻のことはすごーく愛しているみたいで、姑(自分の母)にいびられる妻を気遣ってますよね。
まあ、それでも母親に押し切られているのが、奥さんにしたら許せないのかもしれないけど。
けど、あんな窮地に立たされているときに、さらにあんなことを奥さんに言われるなんて。。。
ダングラールにしてみたら、最大のダメージで、「復讐」という観点からすると
これ以上の復讐はないのだろうけど、それはエドモンも知りえないことで。
むしろ神に罰されているような気さえする。
がしかしいずれにしても、私は、エルミーヌの気持ちがわからない~~~~!
事業を成功させてお金の勘定をして生活を裕福にしてくれるより、
あの母親と決別して、自分だけを選んでほしかったってことなのかな?
それをしてくれなかった夫に怒っているの???
でも、すこしでも夫に愛があるなら、あれは言えないなー。
(急に柄も悪くなるし、キャラ変わりますよねー)
むしろ、ほんとうに夫婦愛が深まるのは、こんなときこそじゃんか。
あんな奥さんを信じていた、ダングラールの不幸、天罰っていう話なのかな。(´・_・`)
この人はフェルナンにかかずらってなければ、成功してそのままけっこう幸せに
暮らせたような気がするの。
悩みは、子どもができないことと妻と母の不仲くらいで。
当時よくいた目端の利くブルジョワの旦那で居られたと。
彼の最期は私たち観客にとっても、エドモンにとっても後味の悪いものですよね。
そういう役回りということなのかな。
居方が難しい役ですよね。
ともさん、演じきってるなぁ。
1人ひとりについて語りだしたらきりがないくらい、私はこの作品を見ていると
いろんなことを思います。
おなじ脚本でも、演じ方でこんなにも深まるんだなぁ。
よく、スタイルとコーラスの宙組と言われるけれども、
プラス、芝居の宙組、と言われるようになるといいなぁ。
そんなことを思ったムラ滞在の4日間でした。
こんごの宙組がますます楽しみになりました!
\ 宙組バンザーーーイ!!! /
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コメント
ども予言者一陽です。
>拳銃を掲げて同じ方向を向いた瞬間なんて、
>背格好スタイルも似ているし、その角度もおなじで
>うわぁぁ親子だ!と思ったり。
その後ダンテスが前に一歩出て、慌ててアルベールも出て
ダンテスが歩みだす直前方向転換したあとでアルベールは
ダンテスの顔を見ます。この人が本当のお父さんなんだな
見納めだと思って見るんだそーです。
私も本当にこのお芝居が好き。多くの場合お芝居が終わって
ショーが楽しみなんだけど。今回はお芝居>ショーかな。
投稿: 一陽 | 2013/04/16 16:01
◇預言者一陽様、
見てますよね、アルベール。
なんか辛そうな、意を決するような面持ちで。
だって、これまでお父さんだと思って見たことなんてなかっただろうし、
これで最後だと思ってるんですもんね(;_;)
あそこの愛ちゃんほんといいわー。
フェルナンが撃たれたあとなんて、
かなめさんしか見えない私がアルベールを見てますもんねー
東京さらに楽しみですねー
新公も(^^)
投稿: theo | 2013/04/16 16:07