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2013/05/06

そのひとは薔薇の花のようだった。

4月25日、26日、27日、宝塚大劇場にて「ベルサイユのばら-フェルゼン編-」
星組トップスター柚希礼音、宙組トップスター凰稀かなめ特別出演公演を見ました。

宝塚ファンになってこのかた私は、ベルばらだけはイヤ~><と言い続けてまいりました。
昔リアルタイムで漫画を読んでいて、それこそオスカルのセリフは諳んじて言えるくらい
ベルばらファンでした。
はまると一直線なのは昔からで、寝ても覚めてもベルばら漬けの子どもでした。
ですが、だんだんと歳を経るにつれ、オスカルが厭わしくなっていきました。

自己評価高くて、なんでも自分ひとりで出来たと思っているところとか。
侮辱を受けたら倍返しでやり返さないと気がすまない好戦的なところとか。
人の心を傷つけていても気づかない無神経なところとか。
歴史の歯車に比べたら無にも等しいとか言っちゃう不遜で尊大なところとか。
はぁ?ナニ様~~~?(゚Д゚) って。

ようするに世間知らずで独りよがりな典型的お嬢様なところが。

でも、最近になってオスカルのそんなところも可愛いなぁと思えてきたのです。
如何なる心境の変化か。
あの不遜さも、鈍感さも、彼女の魅力だなぁと。
思うに、博多座でかなめさんのラインハルト様の魅力に目覚めてからの
この心境の変化ではないかと思うのですが。

不遜で鈍感だけれど、自分の非に気づいたときの彼女ときたら、
それまでが雲を突き抜けるような塔の上にいたとしたら、
地面に埋もれるくらい凹んぢゃう。
とても臆病になっちゃう。
そこがとっても素直で、純粋で、いいなぁと。

そんな心境になってきたところで見た、このかなめさんのオスカル。
ぎゃっ、ナニコレ?!!!
ど、ど真ん中なんですけど。。。。⊂⌒~⊃。Д。)⊃

なんだか、もとめていたまんまの。
いえ、それいじょうの。

絶妙なバランスのオスカルが、そこにいました。

凛々しいのに、人としてこのうえなく可愛い♡
無理に女らしくしなくても、女性らしいせつない恋心が匂うオスカル。

1幕ラスト、王宮の国王夫妻の御前にフェルゼンが帰国の挨拶に伺候し
宮廷貴族たちから彼が責められ揶揄されるあいだじゅう
オスカルの瞳は、フェルゼンへの愛をこれ以上はないほど表していました。

フェルゼンを誹る者への視線、揶揄する者への視線、
思いがけなく彼の帰国を思いとどまらせようとするルイ16世への驚き、
(客席から視線は見えなかったけれど、それを想像させる反応)

そして、フェルゼンがアントワネットの名を伏せながらも命を懸けた恋を語りはじめたときの
愛おしげな、と同時にせつなさを宿した、自分が心から愛した人へ向ける瞳には
心に秘めた愛が透明なしずくとなって煌めいていました。

「どこまでも耐える愛・・・」と彼女に視線を向けたフェルゼンと目が合ったときの
あの思わず、魂ごと彼女のすべてがフェルゼンに向かって迸る刹那の表情。
せつない恋心と、彼を誰よりも理解している友愛の念と、誇らしさと諦めと…
一瞬に、いろんなものが閉じ込められた深い深い表情に
私はいまだかつてないほどオスカルというひとが愛おしくなりました

頬を涙で濡らし、去っていくフェルゼンをひたすら見つめる美しいかんばせ。
ほんとうにほんとうに、密かに郁る白ばらのようなひとでした。

この瞳を見ても揺らがないフェルゼンって、どんだけアントワネット様への愛に
盲目になんでしょうか(u_u。) もうしんじられなーーーいと私は思います。

 

場面はもどりますが、柚希さんのアンドレがこれまた私の好みだったのでした。

私はいままでアンドレの思いつめたストーカーみたいな暗さがとても苦手だったのですが、
柚希さんのアンドレは、まず1幕では、漫画で言うと黒い騎士の登場くらいまでの
茶目っ気のある、オスカルに遠慮のない、まさにきょうだいのようなアンドレでした。

そうそう! アンドレってこうなのよ! 不用意発言でプライドの高いオスカルを
怒らせてしまうキャラだったのよ、さいしょは。

オスカルも、平民であり使用人であるアンドレにそれをゆるしているの。
子犬がじゃれあうような関係なんですよね。ほんとうに心をゆるした関係なの。
ふたご座のカストルとポルックスのようにってそういうことなんですよね。
だから、オスカルはアンドレのことを異性として意識せずにいたんですもん。

ちえちゃんのアンドレはオスカルに遠慮がなくって、ちょっと年上風を吹かせてて
『近衛隊の隊長風情が思い上がるな』なんて、わざとオスカルがグサリとくるような
ことを言って、あんのじょうオスカルがプンスカして行ってしまうと、
それを愛おしそうに見て、
『見た目は氷のように冷たいくせに、心はいつまでたっても火の玉のようだ』なんて
『それがあいつのいいところだ』なんて、なんともうれしそーに言うの(笑) 
俺はそんなお前ににどこまでもついていくぞって。
エラそうなんだけど、とってもとっても愛に満ちているの♡

いつもオスカルをやさしい目でみつめているくせに、言葉遣いや態度はエラそうなのがツボ♡

っていうか、くちびるを尖らせてプンスカするかなめオスカルがまた、
もうこのうえなく可愛いもんだから
怒らせてもみたくなりますわよねー
その気持ち、よーーーくわかります。
なんかもう、アンドレにめちゃめちゃ共感してました。
アンドレ、グッジョーーーーーーブ
あんなオスカルを見せてくれて、心からありがとう!!!

で、オスカルもまた、そんなアンドレに甘えているんだなぁって
あのプンスカを見て思いました。

 

1幕のオスカルはでもまだ、自分がアンドレに甘えていることにも
アンドレのおかげでいろんな無茶なことが出来ていることにも、
気づいていないんですよね。

アンドレの気持ちにまったく気づかず、フェルゼンをひたすら想い、
アントワネット様と彼の逢瀬に心を痛め、叶わぬ恋に涙する、
まだ自分しか見えていない少女のようなひとなんですよね。

だから、2幕の毒殺未遂のシーンで、アンドレに抱きつかれて
まるで世界がひっくり返ったかのような顔をするのでしょうね。
あの、まだよくわかっていない顔が可愛くてぇー

アンドレが部屋を出て行ったあとの
『そんなに思いつめていたのか』
も、いまいち、なんかちがう気がするんですよね(^^;

なんか、ひとつ感情が飛んでますよね。
いまだ状況が飲み込めていないのではないかなというようなつぶやき。
どうしよう、じゃなくて、自分のキモチは置いといて、
アンドレを思いやっているというか。

というか、このひと、まだ自分とアンドレのキモチが未分化というか。
なんか、とても幼い部分があるひとなんじゃないかなー。
と、そのいとけなくてあやういかなめオスカルの表情にきゅん、、、♡

ブイエ将軍にあんなに激しく啖呵を切ったり、市民に対して熱く弁舌をふるうひとが
この場面ではこんなに可愛いんだからなぁ。

 

で、こんなことがあったにもかかわらず、やっぱり普段どおりにアンドレを部屋に呼んで
アンドレも普段どおりにオスカルの部屋に入ってきて。
なんか、このかんじがきゅんきゅんしました。
しらじらしいようなくすぐったいような

で、ここもアンドレのほうがうわてで、普段どおりにオスカルの肩に手をかける
その手から身体をすべらせるように逃れるオスカルがちょう初々しくて
内心あせっているのでしょうに、なんでもなさげに振舞おうとしているらしくて。
あの一連の流れが大好きでした。
ほんと、アンドレ、グッジョーーーーーーブ

なんというか、ほんとうに、感情の流れがリアルな2人で。
ほんとうに、動きのひとつひとつ、表情のひとつひとつから目が離せなくて。

でまあ、場面は佳境の今宵一夜に突入するわけですが。。。。

オスカルがアンドレに「私を好きか?」「愛しているか?」と訊くところ。
アンドレの顔を見れないけど、すごく気にしているかんじとか。
思わず抱きしめたくなるあのかんじはなんなんでしょうね。
声のトーンでオスカルの怯えや不安がつたわってくるというか。
とても真剣に言っていることがつたわってくるというか。

それに対するアンドレがもう、ちょう包容力があるの。
あの『一生そばにいてやるよ』は有罪。
どんな女性もいちころだぁ。

『命を懸けた言葉をもう一度言えというのか、、愛しているとも、、』のところも
けっして自分の気持ちを押し付けるかんじじゃなくて、
オスカルの不安をぬぐってあげるように言うのです。
ちょっとこれ、たまらんですよ。
もーーーーほんと、ちえちゃんたら天性のタラシだわ~~~

そして、リアルで自然でせつないかなめオスカルの『私を抱け』。
これはもう、どう表現したらいいのかわかりません。

昔からずっと気恥ずかしい気持ちで聴いていたこのせりふ(ごめんなさい)が、
こんなにも自然にせつなく耳に響く日がこようとは思ってもいませんでした。
これって、たんに私がかなめさんファンだからってだけじゃないと思うんですけど。
どうでしょう。

『あなたの妻に』も真摯さと自然なたおやかさが声からかんじられてリアルでした。
羞じらいもあるけれど、オスカルは本気なんだなぁ。その本気さに心打たれる気が。
だから見ているこちらも恥ずかしがってはいられない。
オスカルの本気を受け止めてあげたいと思うのです。

ちえちゃんアンドレは、そのオスカルの本気を包み込むように全身で受け止めてあげるから
見ていてほっとするんです。
そして、その喜びが全身から立ち上るのが見えるから。
『俺は今日まで生きていて良かった』とぽたり、ぽたりと落ちる涙とともに

今宵一夜は型芝居ではあるけれど、
決まったポーズがありセリフがあり段取りがあるけれど、
そこに自然な感情の流れが入ることで、こんなにもリアルに感じることができるんだと
目から鱗が何枚も剥がれ落ちるような気持ちになりました。

私は今宵一夜で、はじめて涙しました。

あの女性が男性の脚にすがる構図に、かつてはすごーーーく嫌悪感があったのに。
そんなものは過ぎりもしませんでした。ふしぎ。

アンドレと魂深く結ばれた安心感と充足感があればこそ、
オスカルはブイエ将軍とまっこうから対決でき、女伯爵の称号も
彼女が持てるすべてを捨て、民衆側に立って戦うことができたのだと思います。

アンドレとの愛があればこそ。
彼との未来があればこそ。

そのアンドレが橋の上で撃たれる姿を目の当たりにするオスカルの痛ましさ。
止めるジェローデルを必死で振りほどこうともがく姿。
もうなにも考えていない。アンドレのこと以外は。
そんなオスカルでした。
アンドレが被弾するたびに瞠れる瞳。喉の奥で声にならない悲鳴。
かなめさんはオスカルそのものでした。

アンドレは被弾した橋の上で「心のひとオスカル」、それより前のカーテン前の銀橋で
「白ばらのひと」を歌うのですが、そのどちらも、オスカルへの想いがこもっているのが
つたわって、この曲で涙が出たのも今回がはじめてでした。

こんなにオスカルを思っているアンドレをかんじたのははじめてかも。

絶命したアンドレへのオスカルの絶叫もまた、涙なくして聞けませんでした。

それから、涙で頬を濡らしての「シトワイヤン、彼の死を無にしてはならない」の弁舌。
魂が迸り出るような「シトワイヤン、行こう!」の迫力。
ほんとうに鬼気迫るオスカルでした。
これこそオスカル!!!
そう思いました。

女性であること、軍人であること、隣人を愛し世を憂う市民であることの
どれもがすこしも矛盾しない、気高いオスカルでした。

彼女もまた被弾して、先に逝ったアンドレのことを想い、自分を励まし、
フランスの未来を信じて絶命する。
その流れに、かつてないくらい心が揺さぶられました。

一個の人間のなかにある弱さと強さが、自然にリアルに感じられるオスカルでした。

ほんとうにいいものを見せてもらったなぁ。
あんなに、ベルばらは厭だと言っていた自分の来し方を根本から覆されたみたいな気分。

 

そして恒例のフィナーレの「小雨降る径」。
アンドレ役の柚希さんが男役、オスカル役のかなめさんが女役で踊るデュエットダンス。
いやはやもう、いまだかつでこんなに大人な「小雨~」があったかと。

柚希さんが男役の色気全開で包容力溢れんばかりに踊れば、
かなめさんは、息を呑むくらいの艶めいた流し目で応える。

かなめさんは、差し出された手に対してほんとうにもう、なんともいえない
勝ち気なというかツンとした反応をするんですよね。それがもうなんともたまらない。
たまらなく気位が高くて可愛い女♡(≧≦)
おもわず人をひれ伏せさせてしまうような。

でも柚希さんだってひれ伏したりはしない。
さらに大きく包み込んで受け止める。
それが、このコンビの絶妙なバランス。

これが、「小雨~」の醍醐味ですよね。
男役同士の男女のペアダンスの面白さ。

かなめさんの顔の傾け方、身体のひねり方って
ほんと、色っぽいですよね。
奈落に消える寸前のあの目、バフン!!!(≧∇≦)でした。

いいもの見たわ~~~

 

ほんとうに、このタイミングでかなめさんのファンでいられた奇跡に感謝。
こんなすてきなアンドレとオスカルを見せてくれたちえちゃんとかなめさんに感謝。
雪組さんに感謝。

神様、ありがとう。
かなめさんありがとう。
柚希さん、雪組さん、ありがとうございます!!!

忘れじのかなめさんオスカル ――― 白ばらの君。
この偉業は永遠に語り継がれよう(ρ_;)

 

プログラムを見て思い違いに気づいたので訂正しました。
橋の上で歌っていたのは「心のひとオスカル」。
銀橋で歌っていたのは「白ばらのひと」(朝風に揺れる後れ毛~)で合ってます?

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コメント

theoさんこんにちは。
拝見致しました(^^)
ベルばら特出のtheoさんの感想、お待ちしておりました〜♪
深いです!私はベルばらの漫画自体を敬遠していて、読んでいなかったので、こんなに深い世界なのかと感心しました。と同時に心の中にあったものを表現して下さった気がしてスッキリさせて頂きました。ありがとうございます。あのお二人の深く繋がった友情、人としての愛情がお芝居に現れていたのでしょうか。本当に美しいお二人でした。それにしても素晴らしいものを観せていただけて寿命が伸びました(^^)ムラまで行って本当に良かったです♡theoさんにもお会いできましたし(*^o^*)またお邪魔致します(^^)

投稿: mi-mie | 2013/05/07 00:06

こんばんは。
theoさんのベルばらの感想、私も楽しみにしておりました。
実は私もブログをやっているのですが…かなめさんのオスカルを観て感じたことを書きたいのに、なかなか言葉にできずにもやもやした気分でいましが…。
theoさんの感想を拝見して、そうなの、うん、うん、と何度も頷いてしまいました。
theoさんが感じたこと全てが、私も同じだったりします。こんなに素敵に文章にできるtheoさん、素晴らしいですね。
かなめオスカルについて一緒に語りたいって思ってしまいました(笑)
私は宝塚のベルばらはやはりあまり好きではありませんが、観劇してから1週間も経つのに、まだ心に残っているのは、やはりオスカルとアンドレの素晴らしいコンビがあったからだと思います。
アンドレに対してプンプンするオスカルは、私もかなりのツボでした。
やはり、アンドレがちえちゃんであっての、かなめオスカルだったと思うところもあります(^^)

こんな素晴らしい特出が観られたことを、本当に幸せに思いました。
(長文、失礼しました)

投稿: ポポリン | 2013/05/07 22:07

◇mi-mieさん、
原作は・・・どうなんでしょう(^^;
もうずうーーーーっと読んでいないので、もう私には何も言えないのですが
まぁ機会があれば読んでみてくださいな、ということでお茶を濁しておきます(笑)

とにかくすてきな2人でしたよね。
このタイミングでファンでいられて、ほんとうに幸せでしたね、私たち(∩´∀`∩)
大劇場ではありがとうございました! またきっとどこかでお会いできますね(笑)


◇ポポリンさん、
あのプンプン、ほんとうによかったですよね~(〃▽〃)
またアンドレがうれしそうなんだ、これが(笑)
ほんとうに、このコンビでオスカルアンドレを見せてくださって、
ほんとうにほんとうに、ありがとう!!!でしたね。

文章にしてしまうと、文章にした範囲で終わってしまうのがなんとも口惜しいです。
ほんとうは、もっともっともっとステキだったんだよーーーー!と言いたくなります。
ただ、あとでこの幸福な思いを思い出したくて、記憶を引き出すきっかけのために、
いま書いておこうと思って書いています。いつも。
これをきっかけに、この何倍もすてきだったオスカルを思い出していただけたら、
本望です(笑)

投稿: theo | 2013/05/09 02:16

theoさんこんにちは。はじめまして。
かなめオスカルのレポを読ませていただきました。

本当に素晴らしいオスカルとアンドレでした。
ちえちゃんとのお芝居はこの先もうないかもしれない…
そんな感情もお二人にはあったのでしょうか。
のちのベルばらトークでも何度もおけいこをしたと
話していましたね。
すねる表情はかなめさん自身がよくされているので、ちえちゃんもわかっていらっしゃるのでしょうね…
微笑ましい…でもいつのまにかたくましくなった
おふたりだからこそ、心に響くベルばらとなったのだと
思います。
最近は舞台写真も買わないように戒めておりましが(笑)
今回ばかりはごっそりと買い込みました。

また遊びにこさせてください。
お邪魔いたしました。

投稿: kirakomako | 2013/05/29 10:01

◇kirakomakoさん、
はじめまして。コメントありがとうございます。
ほんとうに、それぞれに組を背負って立つ
トップスター同士のオスカルとアンドレだったなぁと思います。
小雨にもそれが顕著に現れていたなぁと。
そして、かつて一緒の組で、ともにがっつりお芝居をした者同士だからこその
あうんのお芝居でもありましたよね。
こんなステキなものを見られる機会をいただけて、
ほんとうに私はしあわせ者だなぁ~と思います。

これからのかなめさん、そして宙組にますます期待です♡

投稿: theo | 2013/05/29 20:39

この記事へのコメントは終了しました。

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