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2013/08/02

おまえを清らかなままでおこうとした誓いを、自分で破ろう。

宙組全国ツアー公演「うたかたの恋/Amour de 99!!」
7/26の北九州ソレイユホールと7/27、7/28の福岡市民会館での
6公演を見ました。

約半年振りに“地元で”かなめさんに会えて、とっても興奮して
いまは燃えかすの状態です(^^;

かなめさんのルドルフのあまりのはまりっぷり、
あまりの美しさに気が動転しました。

そしてこれは、『宝塚歌劇のルドルフ』なんだなぁって思いました。
柴田侑宏先生の世界のルドルフだと。

大人で、艶っぽい遊びもたくさん経験している。
そのくせ、すべてを捨ててもいいと思えるような女性に出会うことを
待ち望んでいるロマンティストでもある。

また政治的には、保守派でもなく急進派でもなく、理想主義者。

数々の浮名を流している様子のルドルフですが、
上手に遊ぶ、というよりは、その高すぎる理想ゆえに、
うまくいかない現実からの逃げ場としてだったり、
八つ当たり的な遊び方、のような気もします。

(エリザベートは旅に逃げ、ルドルフはラヴアフェアに逃げている?)

大人びた見た目にくらべ、心はうんと純粋、子どもなのかもしれません。
自分の苦しみで精一杯で、相手の気持ちに思い至っていない。

だから奥さんも苦しめているし、関係した女性から恨みをもたれたりしてしまう。

そこらへんが巧くないというか、不器用というか。
自分自身が狡猾さを持ち合わせていないために、他人の狡猾さに気づかないというか。
そこが、彼の悲劇性を増しているように思いました。

理想と現実の狭間で、自身が身動きがとれなくなっているところに、
さらに、怨恨や陰謀によって陥れられてしまう。

いちばん好きだったシーンは、皇帝の書斎で、父ヨゼフ皇帝と対峙するところでした。
あの追い詰められ感がたまりませんでした。
(全国の追い詰められるかなめさんマニアには必見!!

悠未皇帝が大きかった。
絶対的権威と威圧感で、頑として息子ルドルフの理想主義的な意見を撥ねつける。
厳しい現実を体現して、ルドルフの前に立ちはだかる厳格な父でした。

現実の厳しさ、ハプスブルクの置かれている厳しさを知っているからこそ、
簡単にルドルフの意見に肯けないのだろうなぁと思うのだけれど、
その心のうちを、腹を割って息子に語って聞かせることができない人なんだなぁ。

そういう育ち方をした人だろうし、やっぱり生真面目で不器用な人なんだなぁ。
そこらへんはルドルフもおんなじかなぁ。
・・・なんて思ってつらい場面でもありました。

誰もが自分を大きく見せないと、たちまち潰されてしまう
国家間の争いが絶えない時代なのだ。
支配と被支配の時代。
民族意識も高まり、
睨みをきかせていないと、たちまち被支配者が支配者に噛み付く時代でもある。
その時代に、国父として大いなる責任を担って立っているのがヨゼフ大帝なのだ。
ダメ父の姿は見せられないのだ。

でもそんな父の姿は、理想主義に傾倒するルドルフにとっては旧弊の象徴にしか
映らないだろうなぁ。

教養ある階層の中においても、ジェネレーションギャップが著しい時代でもあるのよね。

そしてこの、巌のように頑なで、すこしも自分の話に耳を貸そうとしない父に
絶望したルドルフは、覚悟を決めたのだなぁ(´;ω;`)

母には、だいじょうぶ心配しないでと強がりを言う姿に、男の子だなぁと思いました。
ルドルフはこの母から、ロマンティストの血とボヘミアンの血を受け継いでいるんだよねぇ、
と思いながら見ていました(u_u。)

互いに相容れない親子3人(涙)。

それから、ルドルフが出逢ったばかりのマリーに思いを馳せて
「ああ、マリー・ヴェッツェラ」と歌う場面。

ここは、初見ではあんまりピンとこなかったのですが、
重ねて見れば見るほど、ルドルフの気持ちが思いやられて泣きそうになりました。
こんなにも、救いを求めているのだなぁと。

まだ知り初めたばかりの少女の面影を恋うる心に。
彼の理想とする人生、手に入れられない幸せを求める気持ちが
せつないくらいに感じられる場面でした。

なんでもないような場面に、意味を持たせることができるのが柴田先生の作風だなぁ。
これに意味を感じさせることが、役者の本懐だなぁ。
なんて思いました。
意味が感じられないと、たんに退屈な場面になってしまうのに。

 

おなじように、ホッフブルクのレセプションで、
ボヘミアの踊りを見つめるルドルフの笑顔にも泣きそうになりました。

放埓で情熱的なボヘミアのダンスに、うれしそうに手拍子をとる姿。
踊り子たちを夢中で見つめる眼差し。
この人はこんなにも自由に憧れ、恋焦がれているのかと
せつなくなりました。

何かそんなセリフを言うわけではないのに、それを表現する柴田先生のセンス。
そして風情でもってそれを見せるのがタカラジェンヌだと、心から思うのです。

(たとえ心では『やきそば♡』と思っていようとも高貴な心を見せるのがタカラジェンヌ!)

その意味で、かなめさんは素晴らしきタカラジェンヌだと思うのです。
風情が素晴らしい。
私はこういうタイプにヤラれるようです。
ただ、立っているだけで孤独の影が見えるような。

「うたかたの恋」はけっこう単純なストーリーだし、
壮大な楽曲があるわけではない。
ただ小意気なセリフと、
あとはとっても『行間』が広い作品だと思うのです。

その『行間』をいかに埋めるか。
風情や、ニュアンスや雰囲気で。
セリフの余韻や、表情で。

その『行間』こそが、かなめさんの得意とするところのように思いました。

じつをいうと、私は宝塚ファンになってから、月、星、宙の各バージョンを
ビデオやCSで見ていましたが、どうしても苦手な鬼門のセリフがありました。
それが、

『おまえを清らかなままでおこうとした誓いを、自分で破ろう』

―― い゛ゃぁぁぁぁぁぁぁぁ((((((((*´Д`*)))))

だったのです。いままでは。
今回も、覚悟して望みました。

それなのに、あれ?

すごく自然に受け容れてしまっている自分がいました。
そのあとのお姫様だっこも。

なんなんでしょうか。
同じことが、かなめさんオスカルの今宵一夜(ベルばら)でもありました。

そこにもっていくまでの、感情の流れの見せ方がうまいの?
雰囲気?
後ろめたさや生々しさを感じさせない。
見ていて恥ずかしいという気持ちはぜんぜん起こらない。
ただそこには、茶化すことの出来ない神聖さが
とても自然にあるのです。

なんじゃらほい。これは。
わからないけど、わからないけど…。

このなんともわからない風情に、私は毎回蹴り落とされるように
穴を転がり落ちるみたいです。

今回もかなめさんホールに落ちてしまって、たいへん幸せ。
はぁぁぁぁぁぁ゜.+:。(*´v`*)゜.+:。(ため息しかでない)

言葉では言い表せない感覚です。

いいです、かなめさん。

 

このままだとどんどんわけのわからない方向へ行ってしまうので
(かなめさんホールからかなめさんダンジョンへ)

気を取り直して。
かなめさん以外の感想を。

 

マリーのりおんちゃんは巧い。
歌声もきれいだし、かなめさんの芝居を受けての芝居の匙加減もいい。

北九州で見たときは、ちょっとお母さんっぽいな~と心配したんですが。
ルドルフの孤独を労わるかんじが、なんか上からっぽくて。落ち着きすぎてて。

北九州のときは、かなめさんはじめ、皆がなんとなく
段取り芝居になっていたようでメリハリなく感じた回だったんで、そのせいもあるかも。
その前まで、メルセデスやってたしな~~と心配したんですが、
翌日福岡で見たときは、とても可憐な雰囲気になっていました。

お化粧もがんばって可愛くしているし、声もお芝居も一生懸命さがつたわってきます。
歌えるトップ娘役は、やっぱいいなぁ~とか、
ちょっと間違うと、やり過ぎてこそばゆくなってしまうところも、上手に加減できてるし、
本当に巧い子なんだなぁと思います。

けど、全体のレベルはとても高いと思うんだけど、どうしても私はしっくりこない(´・_・`)
なんだろう?と思うんだけど、巧さが、マリーというキャラに合わないのかなぁ。

マリーってほんとうに難しい役ですよね。
ちょっとでも、テクニックが見えると興が削がれてしまうという。
なんにもできない子が、一生懸命ルドルフ(相手役さん)について行こうとするのが
いちばん似合う役なんだろうなぁと思います。
それを、できる子がやってるから、ちょっとでも巧くやると、ちがう~~~!って
思うのです。
こんな難しいことってないですよね。

でも、1人でテンション高く弾けられてもつらいし。
きゃぴきゃぴとぶりっ子されても同性として引いてしまうし。
もたもたされると、イラッとすると思うし。

宝塚の作品の中でも、もっとも難しい役の一つではないかしら。

(バレンシアのマルガリータでも似たような気持ちになった気がします)
(あのときも、たっちんマルガリータより、あまちゃきマルガリータに好感をもったし)

元の舞踏会のラストで、ステファニー皇太子妃と対峙する場面は
どうしても、ステファニーのほうに肩入れしたくなります。

あそこは、見ている女性すべてが、同性として「負けた」と思えるくらいの
輝きがほしい。
りおんちゃん、がんばっているんだけど、足りないんですよねー(´・_・`)

愛する人と一緒に死ぬ決意をした乙女の強さと輝き。
それに対して、正式な妻であるステファニーが思わず目を逸らしてしまう。
その緊迫感と場面の昂ぶりが見どころだと思うのですが。
私の中では、ステファニー(のせつなさ)が勝ってしまってました。

私の個人的な好みの問題が大きいのだとは思いますが。

 

うららちゃんのステファニー皇太子妃は、その硬質な美貌と役どころが相俟って
ルドルフに受け容れてもらえないことを、ありのままに嘆くこともできない
感情に不器用な雰囲気が見えて、すごく好きだったんです。

この人、ほんとうはルドルフを好きだよね~って思って。

最初のルドルフとのダンスでも、にこりともしないところが、また悲しくていいの。
せつないつД`)・゚・。・゚゚・*:.。

なんて感じで、どうしてもステファニーに肩入れして見てしまっていました。

ジャン・サルヴァドル大公に行く手を阻まれて踊るシーンでは、涙が出てきちゃいました。
だからこそ、その次のシーンは、もっと盛り上がりたかったな。
私の勝手なわがままですが。
(わたくし的にはステファニーが勝っていたから)

 

こんなステファニー皇太子妃のことを、いつも気遣わしげに見つめている御仁が居て。
フェルディナンド大公(愛月ひかる)なんですけど。
いっそ2人が結ばれちゃえば?と思ってました(^^ゞ
見目麗しいカップルになりそうでしょ。

ただ、このフェルディナンド大公って、もしかして、サラエヴォで暗殺された
オーストリア皇太子?(第一次世界大戦の発端となった)
だとしたら、やっぱ結ばれちゃだめ、とも思ったり、、、(^^;

 

ほかに好きだった役は、ラリッシュ伯爵夫人(花里まな)とブラッドフィッシュ(松風輝)。
どちらも私好みのお芝居でした。

フリードリヒ役の緒月さんの芝居も好きでした。
悪巧みにちょっと顔を逸らすところとか、動きが洗練されていて。
福岡の38列最後列で見たときには、もうちょっとハッキリ見せてもいいかな~とも
思ったんですが、大仰さと洗練の狭間で、悩みどこかな。

 

えらく長々と書いてしまいましたが、これでもまだまだぜんぜん書き足りないくらい
つぎからつぎにいろいろ感想が沸いてくる作品でした。

 

私が見たのは、ツアー全体の前半の6公演なので、
これから、さらにさらに深化していくのでしょうね。
横浜の千穐楽ではどうなっているのか。
見届けられないのが、とても残念です。

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コメント

theoさんこんにちは。
早速拝見しました〜〜〜♫
深いですね!!同じ物を観たとは思えないぐらい(笑)
「ほほう」「そうなんだ」と感心することしきりです。
私もかなめさんのお芝居だからこそ古くさくもならず、ベタにもならず、
嫌らしいカンジにもならず、美しいお話になったのだと思っています。
ルドルフのやったことは私には絶対に許しがたいことなのですが、それを美しく深いお話にしてしまう力があるんだなと。。。毎回エピローグのはじめ、かなめさんの背中の美しさを見て涙腺が崩壊しておりました!美し過ぎて悲しさが倍増するのですね。外国映画でも良くありますが。
参考にさせていただいて心に留めつつ千秋楽を観てまいります(`・ω・´)ゞ

投稿: mi-mie | 2013/08/02 17:29

◇mi-mieさん
かなめさんはクラシックな作品を魅せるのがお上手ですよね。
昔の作品をいまやると、「???」ってなっちゃうことが多いのに。
別にかなめさん自身が古めかしいわけじゃないのに(笑)
不思議だ~~~~!

そして、美しさは説得力であり、正義です。
それをつくづく思った公演でもありました。

千穐楽、見届けてきてくださいね~!

投稿: theo | 2013/08/02 18:02

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