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2013/12/19

...be kind to him...he loves you so.

映画版『風と共に去りぬ』のDVDを見ました。

たぶん、ちゃんと見るのは初めてです。

原作小説の深みにはとうていかなわないけれど
でもとてもおもしろかったです。
映画のほうは登場人物の造形の魅力が勝っているかんじかな。

とにかく、ヴィヴィアン・リーのスカーレットが可愛い!

ワガママで自尊心が強くて、
相手の気持ちを思いやることを知らない
ほんとにひどい女性なんだけど、
こんなに可愛いくて魅力的なら、バトラーが夢中になるのも肯けます。
原作小説では、こんなひと、どこがいいのーーー!ふんとにもーーー!(ーー;)だったから。

いかに、見た目(目からの情報)が人の心に作用するものが大きいかを
痛感いたしました。身をもって。

スカーレットが強情だけど可愛く見える分、アシュレがひどい男に見えます。
映画はヒロインに同情的かな。
アシュレがどっちつかずの態度で彼女を縛りつけているような印象。

たしかに、原作でもそういう面はあり、それをバトラーが仄めかしたりもしてますが、
とにもかくにも、原作のスカーレットは強引すぎて、
それによってアシュレの自尊心を粉々にして、有無を言わさず彼女の思い通りに
してしまっているような部分も原作には描かれていたので
私はアシュレだけを責めることができない気がしたのです。

たしかにアシュレの『物事を両面から見る』性質は、
抜け目のない人間がのし上るような、すぐに決断を迫る荒々しい時代には向かないけれども、
彼には彼なりの誇りも、行動理由もある。
名誉を重んじ、勇敢にもなれる。
住む世界がちがえば。

彼もスカーレットとさえ縁が切れていれば、尊敬される人生が送れたはず。
その機会を奪ったのは、ほかでもないスカーレットとメラニーだよね。

けっきょくメラニーもスカーレットも、アシュレを何にもできない人間として
庇護している。死の間際に至っても。

彼には、こうじゃない人生もあったはずなんだけど。

自分の本心よりも、愛する人の気持ちを尊重しすぎてしまうのは
彼の美点でもあり、欠点でもあるんですよね。

アシュレの内的世界を理解せずに勝手に理想の王子様にしたてあげて
執着したあげくに、メラニーが亡くなったとたん、
「こんな人だったかしら」とか
「I never really loved Ashley(ほんとはぜんぜんアシュレを愛してなかった)」とか。
ちょっとちょっとーーー!
ほんと勝手なんだから、スカーレット。

彼女は、人の命を救い、お金を稼いで『家族』を養う。
それはほんとうに素晴らしいことだけど。
生き抜くことは、なによりも最優先だけれど。

だけど、それだけでは人は幸せにはなれないのだとつくづく思いました。
彼女の生き方を見てて。
人を生かすことと、幸せにすることは、また別の話なんだなぁ。

食べるもの、住むところ、着るものと同時に、
人は、いたわりや、慰めや、やさしい気遣い、
愛が必要なんだなぁ。

それをつたえる言葉や、物語や、感動が
人間には、とても大切なんだと
つくづくと思ったのでした。

アシュレも、バトラーも、スカーレットも
誰もがメラニーを支えにする理由も
そこにあるのかなぁと思いました。


バトラーとスカーレットの結婚生活のすれちがいはほんとうにせつないけど、
素直になれない者同士、自業自得だなぁ。これは。
どっちもどっち!

ラストのスカーレットを見て、
「あ、大丈夫だわ、この人」と思いました。
同情はしません。
(スカーレットも同情されるのは嫌いですもんね)

むしろバトラーが心配だわ^^;


原作小説に出てくる、老いたジョン・ウィルクス(アシュレの父)の出征のくだりや
それを語るヘンリー伯父さん(メラニーの伯父)の心意気、
(覚悟が据わったおじ様方の温かさかっこよさ!)
メリーウェザー老人(メリーウェザー夫人の舅)のユーモア、
そして辛辣なフォンティン家のお祖母さまの愛のある冷たい忠告、
など、原作で好きだった場面や登場人物が、映画には出てこなくてちょっと寂しかったです。
(仕方がないけれど)

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