ただひとつの愛の証です。
『彼が不幸になれば、あなたもまた不幸になる――
『わかりました。身を引きましょう。
『私もまた、あなたが不幸になるならこの世でもっとも不幸な人間になってしまうからです。
受け取ってください―― ただ一つの愛の証です。』
左膝を立てる騎士の礼とその礼を受けるレディの絵画のような美しさ ――
宝塚大劇場で宙組公演『ベルサイユのばら-オスカル編-』を見ました。
昨年の雪組『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』の特出バージョンの
『恋するオスカル』のせつなさが脳裏から離れないままに。
ですが、この宙組ベルばらは、恋するオスカルのせつなさよりも、
困窮する人びと、その苦しい生活の中にあっても
理想と自らが信じる正義に向かって情熱を燃やす人びとの姿に感銘を受け、
名もなき民として懸命に生きる人びとを愛し、
自分はどうあるべきかと思い悩み、決断し、行動するオスカルを描いた
『人間オスカル編』でした。
涙したシーンは多いのですが、民衆のなかにいる彼女の姿に、
私はもっとも泣いていたように思います。
国王も、マリー・アントワネットもフェルゼン伯爵も登場しないベルばら。
宮廷のシーンは描かれていないので、登場する貴族は
オスカルの一家と、敵役ブイエ将軍、衛兵隊の中間管理職のダグー大佐、
そして、かつてのオスカルの部下で現近衛隊隊長であり、
家柄といい身分といい美貌といい、申し分のない求婚者であるジェローデル大佐です。
マイルドで優しい細面の美貌が麗しい七海ひろきジェローデル。
ノーブルで硬質で貴族的な立ち姿物腰の朝夏まなとジェローデル。
どちらも大変好みで眼福で、ジェローデルのシーンはうっとりと時間が過ぎていました。
(ねたばれします)