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2014/08/24

孤独の中で人を疑い絶望するときもひとりじゃない。

8月20日(水)博多座にて「レディ・ベス」を見ました。

素晴らしかったです。
この作品の目線が好きだなぁと思いました。
作品に流れる精神性も。

レディ・ベス(のちのエリザベス1世)を演じた花總まりさん素晴らしかったです。
このヒロイン、好きだなぁと思いました。

見終わって、シシィが選ばなかった道を、ベスは自ら選んだんだなぁと思いました。

自尊心が高くて孤独な王女。
自尊心だけが頼りの孤独な少女。

亡き王の娘であることが彼女の自尊心を支えている唯一のもの。
その誇りを失ったら自分は泣き虫の少女以下の取るに足らない存在になってしまう。
そう心に言い聞かせて眠れぬ夜をやり過ごしている。

彼女の存在を快く思わない者たちは彼女に彼女の母の醜聞を吹き込んでいる。
偉大なる父王の妃でありながら、男たちと浮名を流し父王の怒りを買い、
ロンドン塔に幽閉され、父王がフランスから招いた首切り役人に処刑された淫売と。

孤独な王女は母を忌まわしく思い、
母が幽閉されたロンドン塔と首切り役人の影に怯えている。

でも彼女には、彼女の内面を深く思いやり成長を見守る存在がある。
涼風真世さん演じるキャット・アシュリー。ベスの教育係。
彼女が歌う歌に涙しました。

 大人になるまでになくす夢もある
 試練にぶつかり やっと自分を知る
 他の誰にもなれないと知って
 自分が 誰かがわかる ―― 「大人になるまでに」

ベスは孤独だけれど、けっして1人じゃない。
まだ無知で若くて、そのことに気づかないけれど。。

涼風さんの歌声がまた柔らかくてでも凜としてて心に浸みるんです。

もう1人、孤独な彼女を見守る者がいます。

幼い彼女を残して処刑された母アン・ブーリン。
たっちん(和音美桜さん)が演じています。

この世にはいない母親だけれど、その愛は彼女を見守っている。
どんなに疎んでいても忌まわしく思っていても、その心の中には母がいる。
彼女が、そのことに気づきさえすれば。

 ひとりじゃない 誰かが見てる
 何があろうとも ひとりじゃない
 孤独の中で 人を疑い
 絶望するときも ひとりじゃない―― 「あなたは一人じゃない」

たっちんの澄んだ歌声で歌われるこの歌に、落涙。

1幕は、登場人物がそれぞれのキャラを鮮やかに歌って見せるだけで
まだ大きくドラマが動くわけではないけれど、
それぞれが、そのキャラの内面までちゃんとわかる歌詞を歌うのがいい。

上記の2人の女性だけではなく、姉で女王であるメアリー・チューダー(未来優希さん)
姉の結婚相手で、ベスの運命を変えるスペインの王子フェリペ(古川雄大さん)
 ※のちにスペインを太陽の沈まぬ国にしたフェリペ2世、エリザベス1世の宿敵。
ベスと恋に落ちる自由人ロビン・ブレイク(山崎育三郎さん)
ラテン語の権威でベスに女王教育を施したロジャー・アスカム(山口祐一郎さん)
それぞれがキャラが立ってて面白かったです。

古川フェリペが好きでした♡ (おもうつぼ)


2幕では、ベスをめぐってドラマが動く。
女王メアリーの容赦のない迫害に絶えかねベスを支持するプロテスタント信者たち。
それをスペイン嫌いのワイアットが煽る。
メアリーとフェリペ王子との婚姻によりイギリスを思うままにしたいスペイン大使と
プロテスタントを信仰する王位継承者ベスが脅威のカトリックの大司教、
ともにベスが邪魔な2人による謀により、ベスは捕らえられロンドン塔に幽閉される。

スペイン大使シモン・ルナールの吉野圭吾さんと大司教ガーディナーの石川禅さんの
掛け合いが面白かった♡ ちょこちょこアドリブ入れてらっしゃいましたよね^^

母アン・ブーリンが収監されていた同じ部屋に投獄されたベスを脅かす死の恐怖。
無実の罪に陥れられ神にも見放されてしまったと感じたときにようやく
母の真実の思いに気づいたベス。

そんな彼女のもとに、危険を冒してしのびこんだロビンとの愛の一夜。
死さえ恐れない愛の悦びを得、1人の恋する少女としての幸せを知ったベス。
恋は麻薬だぁ。
そんなベスを母アン・ブーリンの祝福がつつむ。

1人の少女なら、これでめでたしめでたし。なのだけど。

初めての恋を知ったその一方で、
ベスはいままで自分を包み見守ってくれていた人たちの愛にも
ちゃんと気づいたんだよね。

愛には責任が伴うことも。

1人の女性としての幸せよりも責任を選ぶ花總ベスの姿に、
私はいろんなものが重なって――(まさしく現実にトップの責任を背負ってきた人たちの)
たまらなかったです。

とても美しいと思いました。

姉メアリー女王との和解の歌にも感動しました。
2人とも母親から引き離され、父に疎まれた孤独な娘で。
それぞれの信仰と自尊心だけを頼りに生きていた。
周りからいろんなことを吹き込まれなかったら、
手を取り合って生きていくこともできたかもしれない。
病に侵されて死んで行くメアリーがかなしくて。

恋よりも王冠(責任)を選んだベスの清々しい表情。
幾多のかなしみ、そして、気づきをその胸に秘めているんだなぁ。

彼女は愛されていた。

その愛にこたえるために重い十字架を背負う覚悟を決めた表情なんだなぁ。
逃げない勇気を選んだ人の。

苦難と深い内省の末に、だれにも侵されない信念を得た人なんだぁ。

このヒロインが私は好きでした。


20年前のシシィの孤独な闘いと求めつづけた魂の自由。
そしていま、このベスの気づき、愛される者の責任と心の不可侵と寛容。

時代時代にもとめているものが、ミュージカルに描かれているのがいいなぁ。


この物語は、これからもっともっと磨かれていく気がします。

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