私は私の命に代えても守らねばならぬものがある。
1月10日から12日まで東京宝塚劇場で見た
宙組公演「白夜の誓い」と「PHOENIX宝塚!!」の感想その2です。
前記事ではソフィアのことを長々と書いてしまったのですが
感動したところはほかにもたくさんありました。
お芝居「白夜の誓い」はもともと長いお話だったものを1時間半に
削って削ってできあがったと聞いています。
削ってしまったエピソードや設定の残滓がところどころにあったのが
宝塚大劇場公演でした。
たとえばムラでは帰国する前にイザベルに指輪を渡していましたが
東京ではそれはなくなっていました。
ヴァーサ王の剣を発見してからのせり下がりも、
その前後のシーンが削られても残っていたものだったそうですが
東京ではなくなっていました。
幽閉されていたグスタフがヴァーサ王の剣が収められていた部屋の鍵を開け
剣を発見して、その部屋から抜け道を探す様子が見えるいまの演出のほうが、
たしかに次のシーンにつながる気がします。
ムラでリピートして、ソフィアの心境の変化やアンカーストレムの気持ちは
わかる気がしていたのですが、リリホルンが敵のスパイをつづける動機は
やっぱり納得がいかないなぁと思っていました。
(そこは自分で勝手に設定を考えて納得したんですけど^^;)
ですが、12日の2公演ではリリホルンの場面で私はなぜか感極まって涙していました。
東京公演でもリリホルンの設定やシーンに関してはとくに変更はなかったはずなのに。
なぜかなぁ。
・
彼を脅すクランツがムラよりもより悪人に見えていたこと、
親ロシア派の貴族たちのあやしげな存在感が増していたことで
彼らに弱みを握られているリリホルンの苦しい心境が
自然にうけいれられたような気がします。
そしてなによりもリリホルン役の朝夏まなとさんのお芝居が変わった気がします。
芝居に感情が通ることによって矛盾を感じさせていたことにまで必然性を与えることが
できるんだなぁと思いました。
あの12日の2公演は銀橋でリリホルンが苦悩を歌うところから、なぜが引き込まれてしまい
見ていてうるうるしてしまいました。
どのシーンも気迫がすごかったです。
自殺をグスタフに止められる場面で彼が涙を流していたとあとで聞きました。
グスタフにオペラ座の舞踏会への臨席を思いとどまらせようとする場面のリリホルンを
見ていて、私は涙が出てしまいました。
グスタフの身を本気で心配しているその必死さがつたわって。
そのリリホルンの必死な思いを、グスタフもしかと受け取ってそれをかみ締め、
そのうえで彼に向かって諭し聞かせるように
「私は私の命に代えても守らねばならぬものがある。それはスウェーデン、そして私の国民だ」
と語りかける言葉が私の心に染み入ってきました。
スウェーデン国王グスタフが信頼する部下に国王としての信念を告げているこの言葉が
まるで宙組トップのかなめさんが次期トップの朝夏さんに
宙組と宙組生を守っていっていってほしいと告げているようにも私には聴こえました。
そしてその思いを受け取るリリホルン、そして朝夏さん。
そのときの2人の姿が教会の絵画のように美しかったです。
朝夏さんはほんとうに身のこなしが美しくて気品があるなぁと思います。
そこに潔さや誠実さや優しさといった精神も垣間見えるようで
ほんとうにナイト(騎士)のようだなぁと惚れ惚れします。
順番が前後しますが、ラウラとのシーンも東京では格段に良くなっていた気がします。
このシーンは、ムラで見たときはあんまり本筋とは関係がないような気がしていたのです。
娘役さんに役をつくるために挿入されたシーンなんだろうと思っていました。
瀬音リサさんのラウラも、初見の頃は自分の心配(結婚がどうなるのか)をしているだけ
のように私には見えていたのです。
ソフィアやイザベルがグスタフにとって都合の良い女性に見えていたように
ラウラもリリホルンにとって都合の良い女性に見え、あんまり好きじゃないかもと。
それがムラの楽の頃には、心からリリホルンのことを心配している女性に見えるように。
そして東京ではこの2人のシーンでもうるうるしちゃいました。
ムラの頃はラウラの声が回によって私にはちがう声質に聴こえていて
ときどき苦手な声だなぁと思うときもあったのも大きいかな。
私の好みの問題ですけど。
東京では私が見た5回とも、ばっちり私好みの声のトーンでした♡
自分のことよりも相手を思う声♡(どんな声だ~?^^;)
このシーンの2人の相手を思いやる気持ちがすごくつたわってきて、
リリホルンという人の誠実さと優しさを信じられる気がしたのも
その後の私のリリホルンの心証に影響大だった気がします。
そうか、そのためのシーンだったのかと。
それから、身体を逸らすラウラの両肩に手をかけてぐっと自分のほうに向ける
優しいけれど強引なリリホルンにときめいて、それを見るのもたのしみでした。
この女性のあつかいは、天性のものでしょうか
誠実で生真面目そうなのに意外なのがたいへんよろしかったです♡
瀕死のグスタフから「どうかこの美しい国を守ってくれ」と告げられるリリホルン。
そしてグスタフの魂が天に召されていくとき、近衛仕官長として、そして次の宙組トップとして
その意志をうけとめて、天を仰ぎ光をあびる姿に感動せずにいられませんでした。
そこから銀橋でグスタフへの敬愛を歌う場面は涙をこらえるのが難しかったです。
歌い終わったリリホルンの頬にも涙がつたっていました。
起承転結をまとめるのに苦心のあとが見える作品ではありますが
こうして思いを継承していく姿を舞台で日々演じられるというのは
かなめさんにも朝夏さんにもしあわせなことだなぁと思います。
私自身かなめさんのファンとして、志を継承し皆からの愛というギフトを受けとって
天に召されるこの作品で卒業していかれる姿を見るのはしあわせだと思えた観劇でした。
無理な設定だろうと矛盾があろうとご都合主義であろうと
その圧倒的な美しさと、演じるひとたちの純粋さが説得力を与えるのが宝塚なんだなと。
ここが宝塚の原点だなと。
その命がスパークする瞬間に魅せられるから
私は宝塚を見たいと思うのだなぁということもあらためて思いました。
まだまだあと1ヶ月、よりよい舞台をつくるために
かなめさんは苦しみ続けられるのだろうと思いますが、
私も、このかなめさん率いるいまの宙組の閃きを見られる限り見に行って
心に刻みたいと思います。
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