時代から時代へと誇らしく語れるように。
6月8日と9日、宝塚大劇場にて宙組公演「王家に捧ぐ歌」を見てきました。
宙組7代目トップスター朝夏まなとさんの大劇場お披露目公演です。
5日に初日が開けたばかりのまだ3日めでしたが、
想像以上の高いクオリティの舞台になっていて
今の宙組の力を感じて感動しました。
贅沢三昧のエジプトチームのはしゃぎっぷりや、
アムネリス様の豪華なコスチュームの数々に
初演当時の景気の良かった時代の香りが。
そして12年を経て甲斐先生のナンバーの素晴らしさを
あらためて感じた観劇でした。
耳になじんだ宙組コーラスがその名ナンバーを重厚に繊細に歌い上げる。
この宙組の歌声によって高められる感動。
これまでも宙組のコーラスは素晴らしいと思っていましたが、
ここまで力があるとは知りませんでした。
思わずもっといろいろな名作をこの宙組コーラスで聴いてみたい思いに駆られました。
エチオピアの女性の囚人たちが故郷を思ってうたう歌に感動でした。
勢いだけではないのが凄い。
あおいちゃんからはじまって、えっちゃん、きゃのん、さすがだなぁ~と思い、
つづく娘役さんたちもとてもよかったです。
(プログラムで桜音さん、真みやさん、美桜さん、小春乃さんと確認)
歌うまさんたちにこんなナンバーがあるのっていいなぁ~
あのハーモニーと揺らぎ。
エチオピアのプリミティブな何かが伝わってくる感じがしてよかったなぁ。
エジプトとはちがうんだなってことが、あれで理解できた気がします。
ウバルドをはじめとするエチオピア人たちに流れるもの。
上辺だけを見ても理解なんてできやしない。
土地や風や血や受け継がれた魂。
何代もに渡って命がけで守ってきたもの。
故郷を離れてエジプトに連れてこられて囚人となっても、
1人1人の心の中にしっかりと息づいているのだなぁと思わせる歌でした。
それこそ、観念的に平和を唱えられたくらいで捨てられはしないだろうと。
それを野蛮とか無教養とかいう視線で見るのはちがうぞ、と思いました。
・
まぁ様(朝夏まなとさん)のラダメスは、まっすぐな意思を持つ知略に長けた武人でした。
たたき上げの戦士というよりも、王宮にも居場所のある育ちの良い貴人。
エジプトの民にとっては憧れの王子様のような存在に見えました。
だからこそ、王女アムネリス様と対になる人だと、皆が思っているのかなと。
女官たちのアイーダへのあの行動にもつながるのだなと。
猛々しい武人とかカリスマという印象ではないので、はたして将軍に選ばれるかどうか
の場面はドキドキ感がありました。
絶対の自信のもとにお告げを待っているというのではなくて。
そして彼自身は将軍に選ばれることに、何かを賭けている。
どうしても将軍に選ばれたいと願っている。
そんなラダメスに見えました。
2回目の観劇でそう思えてから、このまぁ様のラダメスの物語が頭に入ってきた気がします。
エチオピア軍を挟み撃ちにする場面での、国民を失望させない勝ち方こそが大事という
ポピュラリティを意識する場面にも沈着冷静な彼の部分が見えました。
そんな理性も知性もあるラダメスが、愛する人を目の前にして判断をあやまる。
そこに流れと必然性を感じられたら、この物語は説得力を増すのだろうなぁと思いました。
まぁ様という人は、愛にすべてをかけ、相手を愛しぬく役がはまる男役さんだなぁと
惚れ惚れとしながら感じました。
まっすぐでキラキラした瞳と甘い声。
恋愛が不得手そうなアイーダの強い心も陥落させてしまう威力。
「どうしたらいいの?」という瞬間、アイーダの心はもうラダメスのもとにありました。
でも現実主義なアイーダには、理想主義のラダメスのすべてが怖いのだろうなぁ。
反戦主義者で「騙されはしない」と心に鎧を着ているアイーダと
平和主義者で「人皆等しく認め合ってお互いを許せるように」と説いちゃうラダメス。
このキャラ立ちでラブストーリーが1本悠々書けちゃうよね~
すごく美味しいキャラ設定だわ~
と思います。
オペラが原作の作品にありがちな、ドラマティックな展開だけど整合性はいまいちな
ところはありますが、まぁ様の丁寧なお芝居と聞き取りやすい優しい声で
1つ1つの言動が唐突に感じられないようにさらに役作りを深めていったら
さらに素晴らしい作品になっていくと思います。
なにしろ、まだまだ3日目でこの素晴らしい出来栄えでしたから。
1幕冒頭で「エジプトは領地を広げている」を歌っていた人が
1幕ラストに「世界に求む」を歌うわけや
戦いの途中に孤独を感じる人物であることが唐突にならないように
そういう人物であることが、そこにいたるまでに感じられたら良いなぁ。
ああ、だからアイーダを愛するのだ、
だから、そんな世界を求めるのだ、
ということが、しみじみと感じとれたらいいなぁ。
あまりにもナンバーが素晴らしく、組子の熱演の圧だけでも十分感動したけれど
その支えの上で、どれだけまぁ様のラダメスが大きくなっていくかが
これからの見どころではないかなぁと思いました。
その偉大な翼が語り継がれていきますように。
(感想はまだまだつづきます。・・・がまた後日に)
| 固定リンク | 0
コメント