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2015/06/21

私たちは愛し合ったのよ ―― それがすべてよ。

6月8日と9日、宝塚大劇場にて宙組公演「王家に捧ぐ歌」を見ました。
・・・と感想を書きはじめて早10日。

この作品はたくさん考えることがあって・・・なかなか感想を書き終えられません。
こうしているあいだにも、劇場ではどんどん皆が深化しているのだろうなぁ。

私が初見でまず思ったこと、それは『みりおんがカッコイイ』でした。
1幕のダークなカーリーヘアにアースカラーのアシメトリースカート。
立ち姿がまるで女戦士(アマゾネス)みたい。

「モンテ・クリスト伯」のメルセデスとか、私は戦うみりおんが好きなのかも。

 

アイーダ役がみりおん(実咲凜音さん)と発表された時に、
私には心配なことが1つありました。

戦勝国に囚われて奴隷となった敗戦国の王女で、
劇中では戦勝国エジプトの女官たちに虐められるシーンもある役なので
『何も悪くないのに妬まれ虐められる可哀想な私』感が前面に出てしまったら
私はアイーダに共感しづらいだろうなと。

初演では、私はだんぜんアムネリス派で、アイーダのことはかろうじて
男役の安蘭けいさんが演じたから受け容れられた気がしていたので、
娘役がウェットに演じたら、私はアイーダという人を受け容れらないんじゃないかと。

じっさいに見てみると、それはまったくの杞憂だったようで、すごくドライなヒロインでした。
それがとてもよかった。
怨んだり、卑屈になったり、そんなじめじめしたメンタルの王女様ではありませんでした。
とても理論的で知的な女性だなぁと思いました。

虐められても、けっして屈しない人だなぁと。
ラダメスが生きていることだけが大切で、その他のことはどうでもいい潔さ好きだなぁと。
本当に怯えるべきことは何か、区別ができているアイーダがかっこいいなぁと思いました。

父や兄たちが、風土や血や先祖からの精神に縛られているなかで、
理性的に、論理的に物事を考えてしまう彼女だからこそ、1人浮いてしまうんだろうな。
でも誰にもわかってもらえなくても、自分の意思を曲げない強さがあるんだなぁ。
父のことも兄のことも愛しているから、そこに苦悩はあるけれども。
基本的に、1人で立って生きていける女性なんだなと思いました。

その彼女が、ラダメスとの愛を選ぶにいたるまでが、アイーダにとっての物語だなと。
どちらかというと、そういうロマンスとはかけ離れたところにいた彼女が。

こんなアイーダをロマンスに巻き込む朝夏ラダメスの威力たるや・・・。
『私たちは愛し合ったのよ ―― それがすべてよ』と言わしめるんだもんなぁ。
まぁ様おそるべし・・・

アイーダが銀橋でラダメスに頭ぷるぷるするのが可愛くて好きでした。
この落差がねぇ ラダメスに陥落する前と後で。

(8日に見たときよりも9日のほうが可愛さアップでした。)
(いまはもっと可愛くなっているのかなぁ。。。)

みりおんのアイーダには、いつもの宝塚のヒロインに感じるのとはちがうときめきを
感じました。TVや映画に出てくるカッコイ女優さんみたいと。

アイーダの衣装は1幕はアースカラーだし、
2幕も劇中では綺麗めなものは着ていないという、
宝塚のトップ娘役ではふつうは考えられない状況ですよね。

そのかわりに、いつもならトップ娘役さんが担う華やかなポジションは、
アムネリス役のゆうりちゃん(伶美うららさん)が一身に引き受けていました。

アイーダの見せ場は力強いアリアと宝塚にしてはリアルめなラブシーンとかで。

こんなところに、アイーダが実力派の2番手男役さんで、
アムネリスが美貌のトップ娘役さんが演じた初演の配役事情を実感しました。

はっきり言って、宝塚のトップ娘役さんには守備範囲外の不利な条件なのに
まるで水を得た魚のようにイキイキと役を生きているみりおんは凄いなぁと思いました。

と同時に、彼女は宝塚の娘役さんの範疇じゃないのかなぁ。とも思いました。
まぁうすうすはかんじていましたけれども…。

それはどうであれ、この作品の配役は見事だなぁとしみじみと思った次第です。

 

コスチュームに関しては、ほんとに木村信司先生の作品にありがちな、
チームごとのユニフォーム状態で・・・^^;
2回の観劇では、メインキャスト以外の出演者の見分けが私には難しかったです…
そのぶん、場面ごとの舞台全体の色調の統一は見事なんですけどね。

エジプトの女官たちの『スゴツヨ』は本当に楽しかったです。
ありさちゃんもららちゃんも弾けててイイ~
8日にナンバーが終わって思わず拍手をしたのですが、周りは誰もしていなくて
どうもこの日は、団体のお客が多くて、初日から土日にかけて観劇されてた会の方が
いなくなっていた日のようで、フィナーレでも手拍子や拍手がほとんどなくて
舞台の上は熱演なのに、客席が盛り上がらずに寂しかったです。

『スゴツヨ』とか2幕冒頭のエジプトの民が浮かれ騒ぐナンバーとかは
木村先生のアイロニーなんでしょうけど、客席が醒めていると私はいたたまれなくて。
9日は、先代トップのかなめさんのファンがたくさんで、拍手も手拍子もたくさんで
宙組への愛がいっぱいでとてもうれしくて楽しかったです。
やっぱり宝塚は会席でファンの皆さんと一緒に盛り上がるのが私は好きだなと
しみじみと思いました。拍手や手拍子はファンの愛の証
ナンバーの後とかフィナーレには拍手や手拍子がたくさんあるのがいいな。

みりおん中心のフィナーレの娘役さんの群舞、好きでした。素敵でした。
みりおんも見たいし、となりのゆうりちゃんも見たいし、えっちゃんもかっこいいし
他の人たちも見たいのに、あ~~~目が足りない~~~と思いました。

 

宙組で初めて見る真風さん。素敵でした
さいきんの宙組にはなかった魅せ方をされますね。
黒塗りのお化粧の色も宙組では見たことがない色合いだなぁと思いました。
すごく良い風を吹かせてくれているなぁ。
真風さんに刺激を受けて、宙組がもっともっと素敵になるといいなぁ。
フィナーレの変わり黒燕尾でまぁ様との並びが新鮮でもっと見たいなぁと思いました。
来年1月の大劇場公演のショーがいまからとっても楽しみです

 

今回3番手ポジの愛ちゃん。
凱旋のダンス場面のセンターでとってもかっこよかったです。
グスタフの頃に比べたらひと回りもふた回りも大きくなった印象でした。
(『TOP HAT』のベディーニさんから凄くいい感じになってきてるなぁ)
フィナーレの5人組、真風さんに負けずにたくさんお客さんを釣っちゃってください

 

せーこちゃんはこの公演では目立つ場面がタオルでアイーダを打つところしかなくて
あとはエジプトの女官チームで皆といっしょにナンバーを歌うかんじ。
もったいない気がしますが、せーこちゃんレベルの人がコーラスするところが贅沢ですよね。

2回の観劇では見きれないところがいっぱいあったのですが、
大勢でお芝居をする場面、1幕ラストでラダメスがファラオにエチオピアの解放を願い出て
それが受け容れられる場面では、それを喜ぶ者、驚愕する者、不服な者、許容できない者、
いろんな人がいて、目が足りなかったけれども、それぞれいいお芝居するなぁと思いました。
2幕でファラオが暗殺されラダメスが裏切り者だとわかってからの、それぞれのお芝居も。
コーラスも素晴らしいけれども、台詞がない役でも緻密なお芝居ができる組になっているなぁ、
すごく力のある組になっているなぁと、感動しました。
やっぱり宙組が好き。としみじみと思いました。

 

まぁ様とみりおんの「月の満ちる頃」の曲で踊るフィナーレのデュエットダンス。
幸せそうな2人に涙が出ました。
ラダメスとアイーダへの祝福と、まぁ様とみりおんのお披露目への祝福とで
私の心まで幸せな気持ちになりました。

まぁ様、みりおん、おめでとう
新しい宙組に幸あれ!

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