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2015/08/28

生きるよすが。

Minaminosimani

8月25日(火)キャナルシティ劇場にて「南の島に雪が降る」を見ました。

前日より台風直撃の予報で、JRも西鉄の電車・バスともに始発から運行見合わせ。
私は16時公演を観劇予定だったので、12時過ぎにバスが動き出したのを確認してレインコートを着て出かけましたが、時刻表はないも同然でバスは遅れ放題。バスを待つ間にびしょ濡れ。
「ふつうの約束ならキャンセルする状況だよなぁ~」と思いつつ会場へ必死に向かう自分が可笑しかったです。
ここのところ不調でアドレナリンが出ない~~~bearingなんて言っていたのに見たい舞台のためなら出るよねアドレナリン(笑)。

そこまでして行った甲斐のある舞台でした。
丁々発止のセリフのやりとりに引き込まれました。派手な舞台ではありませんが、出演者の皆さんのちから、物語(本)のちから、言葉のちからに飲み込まれた3時間でした。

劇中劇の「瞼の母」で、別れのラストになるはずの忠太郎と母を「会わせてやってくれ」と希う兵士たちの故郷の母を重ねる気持ちに応えて、舞台上で急遽ラストを変えるエピソード、知ってはいましたが目の当たりにすると涙が溢れて止められませんでした。

そしてラストに舞台に舞う紙ふぶきの雪 ―― 二度と日本に帰れないかもしれない兵士たちにそれを見せようとするマノクワリ劇団の団員皆の思いがそのまま出演者の皆さんの思いとなっていることがつたわってきました。
あの時代のあの場所の兵隊さんたちに見せようとされているのじゃないかと思いました。
演じる皆さんの芝居のちからはもちろんなのですが、それ以上に演じている皆さんの思いがその情景を増幅させているようでした。
たぶん目を瞑っても、その状況と気持ちがつたわったのではないかと思います。
1人1人の役者さんのこの作品に向ける真摯で特別な気持ちが感じられた気がしました。

悠河さん演じるリリィの片言の日本語とジェスチャーがとても可愛らしくて好きでした。
ただあまりにもリリィのまわりだけ虚構の匂いが強くて、この作品にリリィが登場する必要はあるのだろうかと思ってしまいました。湿度100%とセリフでも言っていたジャングルの中であまりにも衣服もお顔もきれいに登場して、どういうわけか登場のたびに服装が違ってて。その違和感がぬぐえなくて。

それも、興行という意味では必要なのかなぁ。おかげで、上下セパレーツの腰蓑から素晴らしいウエストを360度から見ることができて眼福でありましたheart01
やっぱり感動プラス、お得感?ヒロインとかスターとかがあってこその舞台かなと。アドレナリンがうわぁ~upっと出てメンタルアップの要素があってこそのエンターテイメントなのかなと。
これを経験しているから足を運んでしまうんですけどね、台風もなんのその(笑)。

このジャングルとカーキの世界にリリィが虚構として存在していたから、実際のあの場所の悲壮さにぜんぶが流されないで、あの場にいた人たちの人としての温かさが表現できたのかもしれないなぁと思います。

ただ、一種のお遊びなのでしょうけど、男役の場面は私は不要な気がしました。
あまりに世界観を壊している気がして。
(宝塚ファンとして男役に一家言(^^;)ある者としてはなおさらあの男役像は受け容れ難いなぁ)

主人公の加藤徳之助を演じた柳家花緑さんは愛嬌があって人柄よさそうで、このお芝居の主人公にぴったりでした。セリフが聞きやすくて、ことば1つにたくさんの情報(気持ちや状況)を込められるのはさすが落語家さんだなぁと思いました。

元歌手の兵隊さんを演じられた川崎麻世さんは、私にとって出演者のなかで唯一見慣れた役者さん。(春の「細雪」以来かな?) 外国人の奥さんは大変だぞなんてワイドショーでもお馴染みの彼らしいアドリブも入れて客席を温めてらっしゃいました(笑)。

杉山大尉役の松村雄基さんは知的な二枚目な雰囲気を醸し出されてました。この方のセリフの言い方も好きだったなぁ。(基本キザな二枚目なセリフ回しをする方が好き^^;)

白塗りの女形に仕立て上げられた元舞踊家の二等兵の前川さん(室龍規さん)、本職ではないしひょろっとのっぽで所作も即席のごつごつとしたところも見受けられるのに、皆がその姿に笑顔になるところ、握手を求められたりお芋やバナナの差し入れが入ったりするところ、せつないやら微笑ましいやら…。こんな即席の女姿でも、故郷に残してきた誰かに面影を重ねたりしたのかなぁ。こんな戦地にあっても人は憧れの対象があると気持ちが上がるのかなぁと。

三味線が弾ける兵隊さん(門戸竜二さん)が、転属させられた前川さんの変わりに女形になるのですが、劇中劇『瞼の母』のおはまさんはさすがでした。年季がちがう?(^_^.) 思わず引き込まれて見てしまいました。涼しい色気のある方だなぁ。

個性的な仲間が階級も超えて芝居作りに熱中する姿に、ものを作り出すことがどんなに人を輝かせるかを教えてくれる気がしました。厳しい状況の中でもそうして没頭できる時間は幸せだろうなぁと。一生懸命なその姿を見ている私も頬が緩みました。

現実のあの場所はもっともっと悲惨で凄絶だったのだろうと思います。でも描こうとされているのはそのことではなくて、凄絶な場所でもお芝居が生きるよすがとなったこと(見る側にも作る側にも)、虚構の世界が死を覚悟した人たちをひとときの幸福な時間に誘い、それがきっとちからとなっただろうってことだろうな。そのことはまた、いまを生きている私たちにも希望となる気がするのです。
虚構とわかっていても生き別れた親子の再会を見ることで救われる気持ちがある。それを見せようとする役者の皆さんの気持ちがつよくつよくつたわってきた気がして胸がいっぱいになりました。舞台っていいなと。私にとって観劇は『生きるよすが』だなとあらためて感じました。


カーテンコールの時、博多にわかが得意な僧侶の篠原竜照役の佐藤正宏さんが、この福岡出身の篠原さんの実のお孫さんが客席にいらしていると紹介されました。紹介しながら涙を堪えきれない佐藤さん。その姿にこの役、この作品への思いがうかがえて、舞台の感動とも相俟って私もうるうると。
どういっていいのかわからないけれど、特別な感情がこみ上げてくる舞台でした。
ほんとうに見られてよかったなぁと思える舞台でした。
そして私にとってこの舞台を見るきっかけとなったのは悠河さんなんですよね。そこに意味がある気がします。


さて、猛烈な台風15号の接近にともない、劇場では11時公演16時公演どちらのチケットであっても入場できる対応をするとの告知がされていました。
この公演は若い方向けの当日券(U25チケット¥3,000)も販売されていたのですが、さすがに当日券で見ようという人も少なかったのではないでしょうか。
若い方に見ていただきたい作品だけに残念でした。

Minami_4

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