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2015/09/05

つづくをもて家とす。

河竹登志夫著『作者の家 ―黙阿弥以後の人びと―』(岩波現代文庫全2巻)を読みました。
著者の河竹登志夫さんは、黙阿弥の曾孫にあたります。
来年1月に三越劇場で上演予定の新派公演の演目『糸桜』の原作ということで、また、狂言作家の黙阿弥にゆかりの本ということで手にとりました。

偉父黙阿弥が残した劇作を生涯独身で守り抜く決意をした糸女の迷いのない厳しさ強さ。
信州から演劇の研究を志し早稲田大学で学び坪内逍遥の推薦で糸女の養子となり『江戸』を色濃く残す狂言作家の『家』に入った繁俊の忍耐強い孝行。
裕福だけど複雑な商家に育ち繁俊の妻となり幕末そのままのような質素な家で倹約家で気難しい姑に仕えたみつ。
まったく異なる環境で育った3人が1つの『家』で暮らす心意気、潔さ。
与えられた境遇で甘えることなく自律し災禍にも遭いながら『家』という価値観を守り生き抜いている。とても私にはできないなぁ。

そんな狂言作家の家を時代の変化は容赦なく飲み込んでいく。
あらためてつくづくと、関東大震災が江戸文化を焼き尽くしてしまったのだなぁと思いました。暮らしも書物も。残っていたらきっと『いま』もちがう相を見せていたのかもしれないなぁと。
黙阿弥から糸女、糸女から繁俊と、作家の『家』の変化が時代の変化そのものでもあるなぁと。
私の知らない江戸の暮らし。歌舞伎のなかでしか見ることができないもの。それらを知っていたら歌舞伎を見るときもいまよりもっとたくさんの情報を、舞台から知ることができ登場人物の思いもわかるんだろうなぁ。

さて、この資料(本人たちの手記や日記や直伝)に忠実な本がどう芝居になるのかな。
お正月の新派公演がたのしみです。


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