« いまに死にたいときがくる。 | トップページ | 自分を殺してすべて王家に捧げること。 »

2016/08/25

自分のためにしたの。

8月18日と23日、博多座にてミュージカル「エリザベート」を見てきました。

やはり、シシィの描かれ方は東宝版のほうが好きだなぁ。彼女の本質がわかりやすく丁寧に描かれていて。
そして、宝塚版はシシィを中途半端にしてもトートに重きが置かれてるのだなぁとあらためて思いました。

花總さんのシシィは私が頭で考えなくても見ているだけで、彼女が何を求めている人なのかわかる。この世でこれほどまでに切実に自由を求めているという稀有な人物像をこんなにも自然に気負わず演じて見せることができることが凄い。
こういってはなんだけども、周囲がどんなふうに演じようともエリザベートとして揺るがないのが凄いなぁ。相対じゃなく絶対なのだ。絶対エリザベート感。なんなのだろうこれは。
実在したエリザベートの肖像とはちがって見た目は華奢な女性なのになぁ。


この東宝版の花總シシィを見ていて、彼女がもとめる『自由』とは「おのれの命を懸ける自由」なのだということがふっと心に入ってきました。
木登りをしたり綱渡りをしたり曲馬師のような乗馬をしたり、シシィはつねに冒険とスリルをもとめている。
『死』と隣り合わせの勝負を。トートを引き寄せているのはほかならぬ彼女自身なのだと。

皇太后ゾフィーとの戦いもハンガリーも彼女にとっては綱渡りと同じ命を懸けた真剣勝負。アドレナリンバシバシ。
子どもの頃からいつも彼女は『死』を傍らに綱渡りを続けている。懸命に生きるということはいつ『死』が迎えに来てもおかしくないということ。けれども絶対に『死』の思い通りにはならないという強い魂に支えられているということ。

そしてその『死』が顔を持ったら、城田トートや井上トートになるんだと。
なんだか深く納得できてしまったのです。この博多座エリザベートを見て。

彼女の人生はトートとの戦いそのものなのだと。
誰もが畏れる相手に怯むことなく挑みつづけるエリザベートに私は惹かれたのかも。

さいしょは木登り。それが宮廷の古いしきたりへの挑戦、ゾフィーとの戦いとなり。ハンガリーの件で自分を認めなかった人々を認めさせて。やがて夫の裏切り、身内の不幸、老い、孤独と彼女が戦うものは人生そのものに移り変わっていく。昔のようにかんたんに勝ち負けがつくものではない。

思い一つでもっと楽にもなれるのに、それを選ばず人生の苦しみ、受け入れ難い不条理と戦いつづける。誰のためでもなく自分のために。

そんなシシィを傍らで見つめ続け、彼女と生と死の拮抗戦を続けてきたトート。
だからこそ彼は、シシィに誇りを失った死をゆるさなかったのではないかなと思いました。
手に入れるのは彼が愛した誇り高いシシィでなくては。


城田優さんと井上芳雄さんの2人のトートはまったくちがうトートで面白かったです。
実在の人物ではないから、というか人でさえないから、どんなふうに演じてもトートなんだなぁ。シシィへの愛も接し方もぜんぜんちがっていました。

城田トートは思い切り若くて傍若無人な俺様トート。表情もとっても豊かで(顔だち濃いのでお化粧薄い)シシィにどんどん絡んでくる印象。
シシィが思い通りにならないと、チッってかんじ。どんなに拒否られてもポジティブなところが怖い。ものすごく自己愛が強そう。なんだけども時々とっても暝い顔をしてて、もしかしたらそっちが本質かも?
もしかしたら強さは虚勢なのかも?と思ったりもしました。そんなトート閣下でした。

井上トートはシシィとの距離がなかなか縮まらないかんじ。(声量がありすぎて耳元で囁けないからかも?)
シシィを愛しすぎて畏怖の念すら抱いているように思えました。とても大事そうにシシィに触れていて。
慎重に計りながら距離を詰めていって、恋敵であるフランツを謀略で陥れ浮気の事実を作らせてシシィがフランツに絶望するのを待って、ここぞとばかりに意気揚々と手を差し伸べたのにあっさり拒否られてしまって・・・高揚から一気に消沈して表情を強ばらせる閣下。居丈高かと思ったらじつは拒絶されることに弱いコミュニケーション下手なトート閣下。
井上トートはとても緻密に謀をする黄泉の帝王のようでした。

愛し方も存在の仕方もちがう2人のトートでした。


2公演観劇して、ゾフィーの役替わりも見ることができましたが、それは別に書いてみたいと思います。
どの役もどのナンバーも見て聴いて快感の2時間半があっという間の今年の博多座エリザベートでした。


≪観劇した公演の役替わりキャストは以下のとおり≫
 【8月18日(昼)】 エリザベート/花總まり、トート/城田優、フランツ/田代万里生、ルドルフ/古川雄大、ゾフィー/香寿たつき、ルキーニ/成河、少年ルドルフ/大内天
 【8月23日(昼)】 エリザベート/花總まり、トート/井上芳雄、フランツ/田代万里生、ルドルフ/古川雄大、ゾフィー/涼風真世、ルキーニ/成河、少年ルドルフ/池田優斗

|

« いまに死にたいときがくる。 | トップページ | 自分を殺してすべて王家に捧げること。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« いまに死にたいときがくる。 | トップページ | 自分を殺してすべて王家に捧げること。 »