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2016/08/02

君の港はどこなんだい。

7月28日に日帰りで宙組宝塚大劇場公演『エリザベート』2公演を見てきました。

私にとっては見たこともないような不思議な印象の『エリザベート』でした。

シシィに死の影を感じない。
ゾフィーは厳しいけれど筋が通って公平。
フランツはマザコンではなく超愛妻家。
そこらへんの2世代同居よりもよほどうまくいきそうな雰囲気。

「いろいろあったけれど、最後にはお互いわかりあえました」という結末でもおかしくなさそう。

フランツとシシィの愛情物語が鮮やかなのでトートに付け入る隙がない。
イライラする闇の帝王。ハートが脆く繊細なのはトートのほうかも。
シシィに対してトートが弱い印象で、シシィがトートをもとめることがあるのだろか?と思っているうちに終幕を迎えてしまいました。

鏡同士なのはゾフィーとシシィで、ルドルフとシシィは似ている気がしない。
強い祖母、強い母親、母の言いなりの父親の中で自分の意思は誰にも伝わらずどこにも救いがないルドルフ。

そんなルドルフにはトートも本領発揮。やっと闇が広がる~~♡
私が知っている『エリザベート』に近いのはこのへんだなぁと思いました。

新しい『エリザベート』に挑戦しているのかもしれないけれど、私はエリザベートを見たぞという満足感のほうを得たかったなぁと思いました。

少女時代のシシィはとても可愛かったです。
けどトートがシシィに心を奪われた瞬間が見えませんでした。見落としてしまったのかな。
ここの「愛と死のロンド」が心に響かなかったのがその後の見え方に尾を引いてしまったのかもしれません。

バート・イシュルの場面がすごく好きでした。
フランツがシシィに惹かれていく様子がとても鮮やかで、まさに“ロマンチック♡”でした。この場面を目当てにまた見たいなぁと思うほど。

初夜の翌朝、ゾフィーと遣り合う場面。
シシィもゾフィーも双方が理性的に感じられました。
ゾフィーも語気こそ強いものの冷静に正論を述べている印象でしたし、シシィもあまり反抗的な感じがしませんでした。
どうして認めてもらえないのかわからなくて必死になっているようには見えない。どちらかというととんちきで可愛い印象でした。
ゾフィーもこのとんちきなシシィを嫌ってはいなかったなぁ。あまりにもとんちきだから指摘しているだけで。

あの場面のゾフィーは何をやってもやらなくても、シシィが気に入らなくて全否定する意地悪な義母のように見えたほうがいいなぁと思いました。
「シシィから見たゾフィー=最悪な皇太后=結婚後シシィが最初に直面した危機」で存在するから次へと場面がつながる気がします。
もちろんゾフィーにも理があるわけで。でもそれは後々物語がすすむにつれてわかってくればよくて、いつの間にか最初に見えていた印象とは異なった印象を彼女に抱いていることを自分の中に発見するのが私は面白いんだなぁ。
今回の観劇では私には最初からゾフィーが正しくまっとうに見えてしまったので、その後のドラマが平坦に感じられたのかなと思います。

ゾフィーがまっとうに見えたことで、フランツの「母の意見は君のためになるはずだ」も正論に聞こえて、温厚で公平なダンナサン素敵~♡ってなってしまいました。
あそこは、「ひどいオット!」「マザコン皇帝!」って思えたほうがシシィに同情できるんだと思うけど、残念ながらフランツが素敵すぎて私はシシィの気持ちに寄り添えませんでした。
こんなダンナサンは嫌だなぁという最初の印象があればこそ終盤の「夜のボート」のシシィへの優しい訴えかけがより感動を生むんだなぁ。ほんとうはもっと感動できたはずなんだけどなぁって、どうしても思ってしまうんですよね。

ということで、なぜシシィは「私だけに」を熱唱しているの?と彼女の気持ちが見えなくて、私は置いてけぼりになってしまった気がします。

もっと感動したいという期待が空回ってしまったのかな。私の中で。

次の観劇ではちがう『エリザベート』に見えるのか。見えたらいいなぁと期待をこめて楽しみにしています。

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