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2016/09/30

つづきは夢の中で。

9月25日に宝塚大劇場にて星組公演「桜華に舞え」と「ロマンス!!」を見てきました。

みっちゃんこと北翔海莉さんが星組トップスターとなっての大劇場公演3作目にしてやっと本拠地に公演を見に行けました。そしてそれがみっちゃんの退団公演・・・。間に合ってよかった。

思えばみっちゃんのトップが決まったと聞いたのが2014年の宙組ベルばら東京公演の頃でした。大和悠河さんのトップ時代を支えてくれていたみっちゃんがいつかトップになる日が来れば・・と思っていましたが、宙組の次期トップには凰稀かなめさんを支えてくれていた朝夏まなとさんになってほしいと思っていた時期でもあり、どうなっちゃうの?と複雑な気持ちになったことを覚えています。
おなじように当時の星組トップの柚希礼音さんのファンの方たちは柚希さんを支えている紅ゆずるさんに後を継いでほしいと思われているんじゃないかなぁと思い、心配したことも覚えています。

プレお披露目となった全国ツアー公演「大海賊」と「Amour...それは」は大和ファンの私にとっても思い入れ深い作品でもありますが、みっちゃん率いる星組のパフォーマンスの素晴らしさに自分の予想をはるかに超えて感動しました。
梅田芸術劇場で見た「LOVE & DREAM」でもそのエンターテイナーぶりに大いに楽しませてもらったこともついこの間のことのようです。
気がつくと知り合いの柚希さんファンの方や大和さんファンの方たちがみっちゃんのファンになっていて、心配は杞憂で終わり星組さんが盛り上がっている様子をよく耳にしました。
短い就任期間は覚悟の上だったと思いますが、それだけに短くも濃く熱い時を重ねて充実した表情のみっちゃんによかったねーと心から思いました。卒業のその日まで幸せな宝塚生活でありますように。

前置きが長くなりましたが、公演の感想を。

まずお芝居の「桜華に舞え」ですが、先に白状しておきますと「西南戦争」と聞くだけでなんだかうるうるしてしまう私。開演前に現れた別緞帳の錦絵ですでに胸が熱くなっておりました。
薩摩兵児が居並んでテーマを歌い見得を切るプロローグでもう涙・・・(笑)。齋藤先生たたみかけるように泣かせにかかってるわ

ストーリー自体はとくに意外性はなくて、泣けるエピソードの羅列といえばそのとおりなんだけども、理ではなくてひたすら情で見るのが正解なのだなと思いました。
感情を揺さぶられたら素直に泣けばよいのだなと。そういう作品なのだなと。とても歌舞伎的で、ある意味正しく宝塚な作品だと思いました。
華々しく散る西郷や桐野利秋がカッコよく、板挟みになる大久保や衣波隼太郎に分が悪いのもまぁしょうがないか。という感じ。

桐野を取り巻く友情と義がテーマであると同時に齋藤先生からみっちゃんへの友情もテーマなんだなぁと思いました。みっちゃんへの大いなる御祝儀公演だなぁと。
ファンにとっても、涙で浄化され透明な気持ちで見送れて幸せなことだと思いました。(←某グスタフを根に持ってる人・・笑)

これだけ泣かせにかかる脚本だと、一つ間違えば逆に白けてしまったりもするけれど、そこはみっちゃんの真に迫る演技と匙加減で客席を素直に泣かせててさすがだなぁと思いました。
決めるところを決められる技と力があるからですよね。
そんなところもとても歌舞伎的だなぁと思いました。

物語はとても駆け足で次から次に泣かされて、見終わって一番記憶に残っていたのが麻央侑希さんでした
冒頭で犬養毅スタイルいいな~と漠然と思っていたら振り向いた顔が麻央さんで、新聞売りの人やたら長身だなぁと思ったら麻央さんで、従軍記者で登場した麻央さんを見て「そうか!これも犬養だ!」と思って(そのときまで新聞売りと犬養の二役かと思ってました)、最後に下手花道で絶命寸前で「維新とはなんだったのか」のモノローグとか。
けっきょく誰も「維新とはなんだったのか」の答えは出さぬまま客席にふって終わるのだけども、とても印象的でした。問いかけられてずっと考えておりますから私(笑)。
もっと話を聞きたかったな犬養さん。

とにかく急がなければならなかったのですよね。列強と肩を並べるために。そのために取りこぼされてしまった士族たちが次々に反乱をおこした。その最大のものが西南の役。目に見えるかたちが必要だったのかなと思います。その是非はいまは置いておいて。

それから出番はあまりなかったけれどついつい目を引かれたのが川路さん。七海ひろきさんが演じてました。同じ薩摩兵児でありながら桐野とは袂を分かつ冷徹な大警視。
やっぱり美形に行くのです。目が勝手に(^^;

衣波隼太郎を演じる紅ゆずるさんはいつも泣きそうな顔をしていたなぁ。薩摩にいる頃は桐野の後をついて回る気の好い若者で、維新後は政府と桐野との板挟みでいつも困った顔をしてた。
二番手さんの役にしてはちょっと気の毒だなぁと思いました。板挟みで辛いのはわかるのだけど、もちょっとカッコよく造形してもよいのではないのかな。終始同じ困り顔じゃなくていろんな表情を見たかったな。メリハリがあってもよかったな。笑いもとるけれど美形にもなれる人なのでもったいないなと思いました。

みっちゃんの同期でおなじくこの公演で卒業する美城れんさんの懐深い西郷隆盛も印象深かったです。泣かされました。
可愛い可愛いとばかり思っていた綺咲愛里さんが大人っぽい声で芝居をしていたのに驚きました。ほんの数年で急成長するのがタカラジェンヌなのだということをあらためて思いました。日々真剣勝負で濃い時間を過ごしている。愛里ちゃんもそうなのだなぁと思いました。

ヒロインの妃波風ちゃんは本当に良い声で芝居を締めているなぁと思いました。桐野への敬愛と懺悔の心で博愛社(のちの日赤)に志願する女性の役。綺咲愛里さん演じる桐野の妻とのラストの短いやりとりが印象的でした。
大恋愛ではないけれども相手を尊び敬愛する誠の心をお互いにやりとりする桐野との関係を見せてくれて、それがこのトップコンビならではに思えて感動的でした。


ショー「ロマンス!!」は岡田敬二先生のひさびさのロマンチックレビューの新作。
LEDで岡田色のグラデーションに彩られた大階段が綺麗だなぁと思いました。いまの大階段はこうなんですね~

いかにもロマンチックレビューな華やかなプロローグの次の場面で登場した17世紀っぽい3人のお髭の貴族がとても好きでした(笑)。
くるりんぱな可笑しなお髭の紅さん、お髭をつけても美男なまるでアラミスな七海さん、似合わないお髭を頑張ってつけている感の礼真琴さん。三者三様。自分らしさで勝負なところ。さすがスターさんたちだなぁ。

赤と黒のお衣装の『裸足の伯爵夫人のボレロ』の場面がとても印象的でした。みっちゃんを中心に描く円がまるで薔薇のように美しかったです。
そしてみっちゃんと女役の礼真琴さんのペアのダンスに目を奪われました。いつまでもなんども見ていたかったです。

『友情』の場面もとても見ごたえがありました。ハードに踊りまくる星組の皆さんがキラキラ輝いて見えました。こういう宝塚を見たかったと思える場面でした。
そして黒燕尾。みっちゃんの黒燕尾のダンスはとても端正。退団公演にしては軽快な曲調がかえって胸に染みました。
そしてさらに、そこにまさこちゃん(十輝いりすさん)の姿がないことに気づき寂しさで胸がいっぱいになりました。星組の黒燕尾では必ずまさこちゃんにくぎ付けになっていたのに、その卒業公演を見られないままでした。

トップさんが変わっても、そのトップさんに合わせた趣きの舞台を総力をあげて見せてくれる。宝塚って素晴らしいなぁとしみじみと感じられるそんな星組のショーでした。

お芝居、ショーともに卒業していく生徒さんへの心遣いや優しさにあふれていると同時に、はじめて宝塚を見に来た人にもやさしい、ある意味正道の宝塚歌劇だったなぁと思います。
4日前に東京で宙組のエリザベートを見たあとだったので宝塚の懐の深さにしみじみと感じ入る観劇となりました。

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