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2016/10/08

子どもに子どもは育てられない。

9月21日東京宝塚劇場にて宙組公演「エリザベート」を見てきました。
前後の祝日の影響か平日なのに11時と15時半公演の日だったので運よく2公演見ることができました。

博多座で東宝版「エリザベート」を見たあとだったのでどうしてもシシィにもの足りなさを感じてしまいました。宝塚版はトートが主役であちらはシシィが主役ですから仕方のないことですが。
とはいえ、みりおん(実咲凜音さん)は歌唱力も芝居も安定しているので安心して耳をゆだねることができるのは有難いなと思いました。

みりおんシシィは人を巻き込み国を巻き込むようなダイナミックなエゴイストではなくて比較的こぢんまりとしたエゴイスト。自分1人で抱えているかんじ。
15歳のときに抱いた自意識をそのままに60代まで生きたらそりゃあ生きづらいよねという感じでした。

結婚式翌日のゾフィーたちとの場面がとても好きでした。
「馬に乗ります」「ダメよ!」で一瞬ぽっかーんな間が可愛くて(笑)。ダメって言われるなんて思ってもいなかった感じが。
リヒテンシュタインに口を開けられるところもとても可愛いくてみりおんシシィのあの場面を見るのがムラの時から毎回楽しみでした。

ゾフィーもリヒテンシュタインもとても正しい。この田舎から来た娘をいかに皇后らしく教育しようかと初日の早朝から気負っているのに対して、なにもわかってなさそうなみりおんシシィ(笑)。
ここはみりおんが元来もっているチャーミングさがすごく出ているなぁと思いました。
その、世のおしゅうとめさん気質の人たちをイラッとさせちゃう性質がシシィにとてもマッチしていて見ていて小気味良かったです。
シシィとゾフィーの絡みをもっと見たいなぁと思いました。じっさいには2人が絡むのはこの場面だけなのですよね。

せーこちゃん(純矢ちとせさん)は宝塚版らしいデフォルメされたゾフィーに作っているのがいいなぁと思いました。

そもそもゾフィーがなぜ自分の故郷バイエルンから姪を皇后に迎えようと画策したのかと考えると、ナポレオンによってオーストリーから独立して一国となったバイエルン王国がオーストリー帝国から離れてしまわないよう絆を強固にするため。そして自分の血縁の皇后を迎えることで宮廷内で自分の立場、ひいてはフランツ・ヨーゼフの立場を強固にするためじゃないかな。
だからバイエルンから輿入れしてきた血縁の若い皇后の教育は自分の責任だと彼女が考えるのは当然だと思う。皇后教育次第で息子と帝国の未来が左右される。彼女の厳しさは愛ゆえなのに。それなのにシシィときたら―――!

シシィにとっても宮廷で数少ない、かつ強大な味方となりうるゾフィーとうまくやっていくことこそが自分を守ることになるのに、いちばん対立すべきでない人と対立してしまう。
ほんとうに子どもなんだなぁ。
だからこそ、こういう物語が生まれるんだなぁと思いながらみりおんシシィを見ていました。

しーちゃん(彩花まりさん)のリヒテンシュタイン伯爵夫人は美人で大貴族の気品と威厳のある女官長として完璧でした。彼女を見るのも大好きでした。
彼女も彼女なりに心からエリザベートを思っているのだなぁと思いました。立派な皇后になっていただくことが彼女のためだと理解し、ゾフィーからの信頼と女官長としての職務に誇りと責任を感じ務めをまっとうしようとしている立ち位置がはっきりわかる役作りでした。
尊敬と称賛をあつめてしかるべき立派な高位な女性なのに、シシィの教育を任されてしまったばかりに困難の連続でお気の毒・・・。だけどその困難もまた受け入れて本当にこの職務にやりがいを感じている女性なのだなぁと思いました。そんなリヒテンシュタインという女性を私はほんとうに好きだなと思います。

リヒテンシュタイン伯爵夫人とは異なる立場でエリザベートに仕えているのが、エリザベートの侍女のスターレイ伯爵夫人。演じているのは愛白もあさんでした。
多動なエリザベートの側に誰よりも真っ先に駆けつけて本当に大変だなぁと見ていて思いました。
エリザベートのために涙し、彼女を人びとの目から身を挺して守る。彼女ほどエリザベートの孤独を理解している人はいないかも。
そして目の前でルキーニの凶器に倒れるエリザベートを見てしまう。必死で人を呼ぶ叫び声も痛ましい。思えばなんて気の毒な人なのかなぁと。その後の彼女が心配だぞ
エリザベートが亡くなったのは貴女のせいではないので。すべてはトート閣下のせいなのだからと、彼女に教えてあげたいなぁ。
エリザベートは自業自得だし、自分の選択に納得しながら黄泉の国へ逝ったのだから。それをスターレイが終生悔いていたりしたら、それこそ気の毒すぎる


エリザベートのような立場の人は、どこまで自分のために仕えてくれる人の思いを理解しているのかな。
すくなくともエリザベートは自分のことで手いっぱいでわかっていないよねぇ。
それでも、思ってくれる人がいること。ありがたいなぁ。それが人の世なんだなぁとそんな目線で観劇した「エリザベート」でした。

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