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2016/12/09

悲しみが追いかけて深い海に落ちた。

12月3日と4日、福岡市民会館にて宝塚歌劇宙組公演「バレンシアの熱い花」と「HOT EYES!!」を見てきました。

ショー「HOT EYES!!」の感想は先に書きましたので「バレンシアの熱い花」について書きたいのですが、当然のことながら私の脳裏には2007年の同作品の記憶が鮮やかにありますので、それとからめた感想になると思います。


今回の「バレンシアの熱い花」を見終わっていちばんに思ったことは、この9年で宙娘の芝居が変わったなぁということでした。情感を上手に出せるようになってるなぁと思いました。
そのうえで、主要3人の女性役のキャスティングがいい。3人のコントラストがはっきりしてるのが効いているなぁと思いました。

伶美うららちゃんのイサベラが大人っぽくていかにも酒場で生きている女に見え、フェルナンドが他人の目を欺くための「遊び相手」に彼女を選んだことがわかりました。
イサベラも男心をくすぐるのは商売。身なりもよく羽振りもよくてお店にお金をたくさん使ってくれる上得意のフェルナンドと好い仲にならない手はない。
そこまでの関係だったら辛い思いをしなくてもよかったのに。

好きになってはいけない相手を好きになってしまうことはいつの世もあることだし、そのせつない気持ちを責めることはできないけれど。
けれどもやっぱりどうしてフェルナンドはイサベラに愛を告白したその口で待たせている婚約者がいるなんて言うのかな~と思ってしまいます。
そこを受け入れられるかどうかがこの作品の肝なのだよなぁと思います。

その婚約者とフェルナンドが住む世界は自分が住む世界とはちがうのだという残酷な事実を、愛の告白と同時に突きつけられたイサベラ。
あんな予防線を張られて。

もちろんフェルナンドとイサベラが結婚して幸せに暮らせるなどとは思わない。
そのくらいの現実は知っているけれども。
それでも私はフェルナンドを擁護する気になれない。

彼の中では女性には2種類あって、傷つけてもいい女性と傷つけてはいけない女性がいるのだなぁ。
大切にしなければいけない人間と、ぞんざいに扱っても良い人間がいて、それは生まれや育ちで決まるという考えの下で理解される物語なんだなぁ。そこが私は受け入れられないなぁ。
なのでフェルナンドは嫌いです。

一つ気づいたのですが、2人の別れの場面で今回の全国ツアー公演ではイサベラの「私の宝物の時間だった」というセリフがなくなっていました。
9年前は「あなたと過ごした時間はほんとうに楽しかったわ・・・私の宝物の時間だった・・・・・・さようなら」でしたが
今回は「あなたと過ごした時間はほんとうに楽しかったわ・・・さようなら」でイサベラは踵を返していました。

9年前のイサベラはこの夢夢しい台詞を言うことで、彼女の中の純情な乙女心が強調されて(演じていた陽月華ちゃんの個性とあいまって)いったいこの健気な娘とマルガリータとどこが違うの?と見ていてよけいに悲しくなったのだなぁと思いました。
「楽しかったわ」で終わらせることで、退き際をわきまえなければいけない世界に生きるイサベラという女性の立場が際立ったように思います。

まぁ様(朝夏まなとさん)も、モラトリアムの終わりや復讐をやり遂げた代償に大切な宝物を喪失する虚無感よりも、おのれの恋心を弔う哀しみを表現する方を選んだんだなと思います。
いまの観客にはそのほうが受け入れられやすいと思いますし、素直に未練や別れの痛みを表現してもまぁ様フェルナンドは大人っぽく見えるから成立するのだとも思います。

全体的にまぁ様フェルナンドは大人っぽくて理性的な印象を受けました。
復讐を決意する場面もたぎるような狂気があまり感じられなかったなぁと思います。
そんな印象だったので愛を告白すると同時に愛する人を傷つけるという不合理で思慮を欠いた言動を仕方がないなぁと思えなかったのかもしれません。
フェルナンドは本当に難しい役で、ちょっとしたことで見え方が変わるのだなぁと思います。
すべてがハマるのは本当に難しいと思いますがまぁ様のことだから鹿児島の楽まで進化をつづけてゆくのだろうと思います。

フェルナンド、ラモン、ロドリーゴはとても息が合っているなぁと思いました。
ここでもいまの宙組の芝居の良さと、今回のキャスティングの良さが活きているなぁと思いました。

真風ラモンは熱すぎず臭すぎずなところがよかったです。
フェルナンドのお邸の場面もとても可愛かったです。
マルガリータとフェルナンドの「しばらく・・・」のところのリアクションは見るたびにちがって見るたびに面白かったです。いつもは優し気な目元をこの時ばかりはくりくりさせてみたり(笑)。ひと言で言うと可愛い。
それでいてイサベラにすがりつかれて泣かれている時の表情は一転して堪えきれない本気が溢れて切なくて色気がありました。ラモン役が美味しいっていうのはこういうことかと合点がいきました。

このラモンなら絶対にイサベラを幸せにしてくれそうだからラストもこれで良いやと思えたほど(笑)。
人柄がよさそうで影に日向に優しい愛でイサベラを包もうとしているなぁと。これならいまは傷心のイサベラも心からの笑顔を取り戻せそうでイサベラは幸せだよなぁって思いました。←このへんはただの真風さん好きの感想(笑)。

澄輝ロドリーゴも3人のバランスを崩さずかつ個性を発揮していてよかったです。
眉間の皺がノーブルでした(笑)。
ららシルヴィアとも息ぴったりで一つ間違えたら聞いていられなくなりそうな痴話げんか場面のセリフのやりとりも心情が見えてとてもよかったです。「この頭を岸壁にでもぶち当てて粉々にしてしまいたい」がギャグにならず上品な比喩に聞こえるのがすごい。

そして今回の収穫?はららちゃんのよろめき芝居の秀逸さかな。
幼いかんじの娘役さんだと思っていたのにいやはや。声が色っぽくて寄る辺ないかんじが、ああこのシルヴィアなら「私にどうしようがあって?」も納得だわと思いました。
こんな恋人を置いて遊学なんて行っちゃうロドリーゴが悪いと思います(笑)。

すっしぃルカノールがまたヤラシイかんじに役づくりしていたのが効果的だったなと。
どこをとってもキャスティングが合っていてまた個々の芝居が全体の中でよいバランスなんですよね。

星風まどかちゃん演じるマルガリータも難しい役だと思います。不安に耐えて恋人を信じて待っている婚約者役。許嫁の母親に手づくりの贈り物をしたり仲良く一緒にお出掛けしたりしても鼻につかないでよい性格のお嬢さんに見えないといけない。
フェルナンドがこの少女を裏切ることができないのが納得できなければいけない役。まどかちゃんも絶妙な塩梅で演じていたなぁと思います。

イサベラ、マルガリータ、シルヴィアというそれぞれに繊細で難しい役を3人が自分の役がどうあるべきか掴んで演じているのが素晴らしいなぁと思いました。
そしてこの作品はイサベラ、マルガリータ、シルヴィアそれぞれの役者が揃ってはじめてできる作品なのだなと思いました。

フェルナンドの母セレスティーナ役のせーこちゃんも凜として大人の風情で素敵でした。ルカノールに諫言にいく場面やルーカス大佐たちに邸に踏み込まれた時の堂々とした応対など胸がすく思いがして気持ちが良かったです。
こんな女主人いいわ~好きだわ~♡と思いました。

りくちゃんのルーカス大佐もかっこ良かった。身のこなしがいちいち綺麗でこの役がぴったり。剣さばきの切れも良くてなんでカルデロに斬られるのかちょっと信じられない(笑)。

剣さばきといえばすっしぃさんのルカノールもキレッキレでカッコよかったです。
やはり最後はだたのエロ公爵ではなかった。さすがは領主の座を奪い取るだけあるなぁと納得しました。2対1でかかるのも仕方がないなと思いました。

真ん中を見るのが精いっぱいで細部までは語れませんが、芝居ができるメンバーを集めたなぁという印象でした。
いや組全体がいま芝居力が高い気がします。
まぁ様トップの体制となって2年。お互いに呼吸も読めて芝居の調和もとれて、このタイミングで上演されたことが良かったなと思いました。
これからの宙組もますますたのしみだなぁと思いました。

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