旨酒を飲もう。
1月16日に宝塚大劇場にて月組公演「グランドホテル」とショー「カルーセル輪舞曲」を、1月17日に「グランドホテル」の新人公演を見てきました。
月組新トップ珠城りょうさんの本拠地お披露目公演でした。
フェリックス・アマデウス・ベンヴェヌート・フォン・ガイゲルン男爵役の珠城さんは異例の研9でのトップ就任で学年のわりに地に足の着いた落ち着いた雰囲気を持つ男役さんでした。
大きな欠点もなく安心して見られるタイプだなぁと思いました。
いかにも貴族で上流風だけど、ちょっといわくありげな男爵といったかんじが良く出ているなぁと思いました。
エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役の愛希れいかさんはさすが!でした。
どこか現実とは乖離した感覚の女性。名高いバレリーナとして若い頃はロマノフ王家とも親交があり沢山の贈り物と栄誉を授かっていた人が革命と重ねた年月によって残酷にも多くのものを失ってしまって。
唯一残った彼女にとっての人生そのものであったはずの踊ることにさえも喜びを失いかけていた時に若い男爵と恋に落ちて生きる喜びを取り戻す。
そのもう若くはない女性のキャリアや人生を感じさせる役づくりで、心の動きの見せ方も素晴らしかったです。
珠城さんとのボレロの場面は最高でした。珠城さんの肩から降りるときの脚の流れの素晴らしいこと。
もう娘役の域を超えてしまってるかなぁとも思えました。女優さんだなと。
彼女見たさに劇場に行きたくなるジェンヌさんです。
実咲凜音さんが「双頭の鷲」に出演したみたいにさらにハイレベルな作品に出演する機会があるといいのになぁと思います。
オットー・クリンゲライン役の美弥るりかさんはしょぼしょぼの役でも華があるのが宝塚らしくていいなぁと思いました。宝塚スターが演じるオットーという感じでした。
「We'll Take A Glass Together」での男爵との掛け合い、とても愛嬌があって魅力的でした。あの場面とてもいいですねぇ♡
役替わりのフラムシェン(フリーダ・フラム)は海乃美月さんが演じていました。
歌、芝居、ダンスともにお上手で娘役として出来上がってる方だなぁと思いました。
上昇志向でチャンスのために自分自身の女性性を駆け引きに使ってしまうという宝塚の娘役さんが演じるには珍しいタイプの役ですがちゃんとそんな女の子に見えましたし、こういう女の子たちがいたのが1928年のベルリンなのだろうなと思えました。
その上で上品さも残っている娘役さんらしさが海乃さんの持ち味なのかなと思いました。
彼女に対してプライジングがとても酷い男に見えました(笑)。
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グルーシンスカヤの付き人のラファエラ・オッタニオ役も役替わりで朝美絢さんが演じていました。
朝美さんはショーでの女役は見たことがありましたがお芝居で女性役は初めて見ました。
綺麗で翳りがあってくせのある女性役がハマっているなぁと思いました。
ホテルのフロント係エリック・リトナウアーは朝美さんとの役替わりで暁千星さんが演じていました。
人懐こさがあって男爵への尊敬の念などとても純粋な人なんだなぁと思いました。男爵の金のシガレットケースのエピソードはぐっときました。
リトル・エリックへの言葉には思わず泣いてしまいました。良い役ですね。
一度しか見られなかったのであまり細かいところまでは見ることができなかったのですが、ドアマンを演じている方が背が高くて目を惹かれました。
あとでお名前を確認すると礼華はるさんと一星慧さんとおっしゃるみたい。覚えておこうと思いました。
翌日の新人公演は、先に本公演を見ていて見どころなどもある程度わかった上で観劇したので幾分かは深いところまで感じることができたと思いますが、それでもいろんな登場人物が出てきてどんどん進行する作品なので目が足りなかったです
男爵役の夢奈瑠音さんは、新公とは思えないほど実力のある方でした。
すらりと細身なシルエットでキザで上品な貴族だけれど、どこかギリギリの危うさを秘めたタイプの若き男爵でした。
エリザヴェッタへの苦し紛れの嘘のはずが本気になっていくところのドキドキ感がすごく伝わってきて見ていて私もドキドキしました。
フラムシェンを口説くところも粋でスマート。
エリザヴェッタへの恋に落ちてから次にフラムシェンに会うところの変貌ぶりも瑞々しさが感じられて好きでした。
オットーに財布を返す場面、オットーから預かってもらっていたんでしたと言われる場面、担保にシガレットケースを渡す場面。私は男爵寄りで見ていてとてもせつなかったです。世慣れた風を装っていてもこんなに純粋な人なんだなぁと。
そして薔薇を抱えて待っている姿・・・ 男爵の過去を窺わせる演出と相まって胸がいっぱいになりました。
グルーシンスカヤ役の海乃美月さんも素晴らしかったです。
本公演の愛希さんは娘役離れした実力を発揮していましたが、海乃さんはとても娘役らしいグルーシンスカヤだと思いました。
夢夢しいお姫様のまま現実を見ずにロシア革命から10数年の月日を生きてきた人みたいなかんじでした。
彼女がそんなふうにいられたのは、ラファエラのおかげだと思えばなるほどと思えました。
男爵と恋に落ちるシーンもいくつになっても可愛らしい女性だなぁと思いました。
オットー役の風間柚乃さんは研3とは思えないくらいお芝居お歌がお上手でした。
セリフ回しなどはすごく本役の美弥さんを参考にされている感じがしたのですが、美弥さんがとても宝塚らしい印象だったのに対して映画や外の舞台のオットー寄りかなと思いました。
まだ宝塚のスターになりきっていない学年だからこそなのかもしれません。
男爵との「We'll Take A Glass Together」のシーンはあやうく涙が出そうになりました。オットーの人生、そして男爵の人生を思って。これは2度目の観劇だからこその気持ちかな。
フラムシェン役の結愛かれんさんがすごくフラムシェンで驚きました。研2?素晴らしくお上手。
ほんとうに映画を見ているような感覚で見入ってしまいました。まだ宝塚に染まっていないというのでしょうか。
今後どう成長されるのか興味深い生徒さんだなぁと思いました。
プライジングとの場面は宝塚的でないぶんある意味ハラハラはしなくてすみました。
逆にプライジング(春海ゆうさん)が若い女の子に慣れていないおじさんの感じを表現されていて、無茶しよるなと見ていて本公演よりもドキドキしました。
ラファエラ役の連つかささんがとても心に残りました。
ボブが似合っていてとてもミステリアスでした。グルーシンスカヤへの執着心がわかりやすいラファエラでした。
エリック役は本公演で気になっていた礼華はるさんが演じていました。とても素直に演じられていて、わかってはいてもリトルエリックへの父親としての思いには涙してしまいました。
そういえばドアマンを暁千星さんが演じていました。本公演でラファエラとエリックというメインキャストの役替わりをされていたので新公ではドアマンだったのだと思いますが、さすがに立っているだけでも目立つなぁと思いました。
新公も本公演もドアマンという役は長身の容姿端麗な方が演じる役という理解でいいのかな。
本公演と新公と1公演ずつ続けて見ましたが、この「グランドホテル」という作品は深くて素晴らしい作品なんだなぁと思います。
キャストが変わって見え方が変わっても心に入り込んでくるものがありました。
見れば見るほどそれはさらに深くなるんじゃないかなぁと思います。
もっと何度も見たかったけれども、この1回ずつでも見ることができて良かったなぁと思います。
また94期の珠城さんと96期の夢奈さんという主演の方が2期しか違わないという珍しい本公演と新公を見ることができたのも良かったなぁと思います。
お披露目公演といえどもやはりこれまでの真ん中の経験が活き持ち味も落ち着いて安心感がある珠城さん、そして初の新公主演の夢奈さんは宝塚らしい若い男爵を作り上げていて、それぞれに素晴らしかったです。
月組恐ろしいなと思いました。
2代続けて若いトップさんを輩出した組ならではの下からの支えが頼もしい雰囲気がある組だなぁと思います。
5月の博多座公演もとても楽しみになりました。
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