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2017/02/19

描きたかったのは。

2月16日に宝塚大劇場にて宙組公演「王妃の館」と「VIVA! FESTA!」を見ました。

ミュージカル・コメディ「王妃の館」。
原作は知らないのですが、傲慢で陳ねたように見えていた主人公が実はピュアな迷える子羊で・・・という田渕先生の定番的ともいえるお話で個人的にとても好きなテイストでした。

誰かを傷つけて後悔するところとか・・あらっと思うほどとても素直なんですよね(笑)。
朝夏まなとさん演じる北白川右京さんも実咲凜音さん演じる桜井玲子さんも。
真風涼帆さん演じる太陽王ルイ14世までも(笑)。

そのほかの個性的な登場人物たちもみんな好い人ばかり。
困っている人がいたら協力してあげて(自分たちがカモられている側なのに)、泣いている人がいたら慰め励ます言葉をかけてあげて(自分が迫られて困っていた側なのに)。
皆がやさしいからつい涙ぐんでしまう。そんなお話でした。
じっさいのパリ観光でこんなにお人よしばかり揃っていたら怖い目に遭ってすってんてんにされちゃうぞって感じなんですけど
そこはやさしい虚構(うそ)といいますか(笑)。

寛容さの中で安心していられたら誰しも安心して自分もまた人に寛容でいることができるよねとそんなことを思ました。
でも現実は猜疑心でたくさん傷ついてしまうから。
誰もが癒されずに抱えている心の痛みや傷を癒すひとときが劇場全体にそっと訪れているようなそんな空間を共有している気がしました。

北白川右京役の朝夏さんはとにかくノリノリで一挙手一投足が可笑しかったです。持ち前の長い腕や脚と身体能力でちょっとした仕草でも笑いが起きてしまう。
笑いの間がとてもお上手で、客席が安心して笑うことができる雰囲気をつくってらっしゃいました。
そういうところも温かくてやさしい作品だなぁと思いました。

ルイ14世役の真風さんのビジュアルにはもう心撃ち抜かれる思いがしました。宝塚の真骨頂ですよね。
あの存在感と華、ビジュアルがあったればこそ、この作品が宝塚として大劇場公演として成立していると思いました。

そしてさいごはクレヨン役の蒼羽りくさんに攫われてしまった私の心(笑)。

メインキャストはすごくうまくハマっていると思うんですけど、ホテルの従業員や現地の人や観光客などはもっと意味のある使い方をしてほしいなぁと思いました。

ホテル従業員が皆同じ制服でしたが、シャトーホテルのロビーに15~6人のベルボーイとベルガールが固まってるってことがあるのかなと思いました。
フロント係にドアマンにベルガール(ボーイ)にメイドにと、制服を変えてちゃんとホテル業務をしててほしいなぁと思いました。業務が違えば個々に所作が変わったり性格付けができるし、そのうえでメインキャストの宿泊客と絡む様子があればメインキャスト其々の性格も見えたりして面白いのにと思います。

また観光地を通行する人びとも同色の服の同じ年格好にしないで、肌の色髪の色服装などさまざまに設定してほしいなぁと思いました。
現代のパリ観光ならいろんな国籍の人がいるはずなのに。奥行のない舞台になってしまっている気がしました。
ここもメインキャストの日本人観光客と彼らのちょっとしたやりとりで場所やどういう状況なのかとかの情景が見えると、名所の画像を映し出すよりよほど面白いのにと思いました。
メインキャスト以外の使い方次第でちょっとした見所をあといくつか増やすことができたんじゃないかなぁと。
場面の一瞬一瞬を大事にしてほしいと思いました。宝塚はその一瞬を見に来ているファンも多いのだから。

ショーについては正直ピンときませんでした。

幕開きの娘役さんたちのダルマ衣装が・・まるで地元商店街のサンバ隊かと・・(ゆるしてでもこんな言い方しかできない・・
色もデザインも羽根も網タイツも趣味ではなかったです。
蝶を模しているものなのか、あの袖のような領巾のようなひらひらが邪魔くさかったです。
あのせいで着ているジェンヌさん自身の美スタイルが隠れてしまうし前後左右にいるジェンヌさんの顔も隠れてしまうしで良いことなかったです。

ヴァルプルギスの夜のイメージもピンときませんでした。
たくさん人がいてたくさん踊っていたのに盛り上がりに欠けストーリーが面白くないなぁと思いました。
みりおん(実咲さん)を救うために真風さんと魔女のラスボス寿組長の見応えのあるダンス対決が見られるのかな?と思ったらそうでもなく。
悪夢から覚めるような鮮やかな変化もなくて・・あれ?
と思っている間にずんちゃん(桜木みなとさん)の歌に誤魔化された気分。(思わず気をとられてしまう桜木さんのお顏と歌でした。桜木さん確変してました)

エン・シエロもかっこよく男役さんたちが出てきたときは期待したんですけど、見ているうちに娯しみのために牛を煽る人間VS命を玩ばれる牛という構図があんまり快いものではなくなってしまって(私は牛を演じている人たちのほうに肩入れして見ていた模様)。
さいごは朝夏さんが華麗なマタドールジャケットを着て剣を持ち、牛役の蒼羽りくちゃんと一対一で闘うパフォーマンスになっていたけど、興奮の末に牛を屠った朝夏さんが微笑んだのがとても残酷に見えました。
牛はなにも悪くないのに。りくちゃん・・

ソーランの場面はいかにもこれをやりたかったがために祭りをテーマにしたのかなというくらい力が入っていましたが私には長すぎにかんじられました。
ドッコイショ~ドッコイショと煽ってくる生徒さんを見るのは楽しかったけど。
娘役の総踊りはそっくりカットでいいのになぁ。そのぶん別に娘役さんたちが美しいドレスで踊る場面を作ってほしかったなぁと思います。けっきょくさいごまでそういう場面が一個もなかったので。

誇りと野心の大地の場はさっぱり意味がわかりませんでした。
なぜ誇りと野心が対立構造なのか。ふつうに両立できる概念なのに。どちらが是でも非でもないのに。
朝夏さんを中心とした「誇りを求める者」たちと真風さんと中心とした「野心に溢れる者」たちが争って、真風さんが朝夏さんと刺す。どうやら朝夏さんは亡くなって、わしゃわしゃしている人たちの前に大地の神様?となって現れる。
何を表現していたのでしょう。
意味がわからなくても演出が壮観でドラマティックだったら何か知らないけど感動したりするんだけどな。(←大介先生のショーってけっこうこれ

なんだろう。ただソーランをやりかたっただけ? ほかは後付け?
祭りといいつつ畏敬の念や命への敬意や大自然を相手に生きることへの賛歌や、大切なものはどこへ行ったのかな。
「祭り」と言えば良いところをなんでもかんでも「フェスタ」だし。
メリハリが足りないなー。
宝塚のショーに不可欠な甘くせつない場面がどこにもなかったし。
わたし的にキャッチ―なナンバーがなかったのもピンとこなかった要因かもしれません。

フィナーレはシンプルに端正な宝塚でホッとしました。(ソーランの娘役群舞をなくしてフィナーレに娘役さんたちが華やかで美しい場面を入れてほしい~
澄輝さやとさんと桜木みなとさんの銀橋の歌が素敵でした。こんな風に歌い聞かせる場面に私はうっとりしたかったのだと思います。「祭り」のしばりがどうも私に合わなかったかんじです。

つづくみりおん(実咲さん)と男役さんたちが踊り継ぐ場面は、さいしょはみりおんのドレスやヘアスタイルについてあまり可愛くないなぁなんて思っていたのに、見ているうちにだんだんと胸がいっぱいになってきました。
こうやってみりおんについていろいろ思ったりすることも最後なのか・・と。
ここだけなんですよね。退団するみりおんのための場面。みりおんにもっと似合うドレスを着せてほしかったなぁ。

ロケットは真ん中のゆうりちゃん(伶美うららさん)に目がいってしまって。今回の公演は娘役さんたちを愛でる場面があまりなかったのでゆうりちゃん以外も見たいのだけど、ゆうりちゃんを堪能する場面もほかになかったので、、
銀橋の脚上げはすごいけれど、銀橋に並ばれちゃうとますますいろんな娘役さんたちを見れないのですよね。
それよりも本舞台で娘役さんたちが可愛くて魅力的なほうがいいいなぁ。

黒燕尾の群舞はちょっと変わった振付だけどよかったです。大階段に並ぶ登場はやはり心拍数があがります。
綺麗にMの文字に並ぶの難しいだろうなぁ。
朝夏さんの前を1人ずつ男役さんたちが踊りながら駆け抜けていくところは見所だったけれどもちょっとひやっとするかんじもしました。(もう少し1人ずつがゆっくりだといいのにな~)
そしてトップコンビの正しいデュエットダンス。
トップハットのデイルが着ていたような裾にモフモフのファー(フェザー?)がついたシンプルな白いドレスのみりおんと黒燕尾の朝夏さんとの一対は宝塚~~~(涙)(私が何に飢えてたかという)

そしてさいごはまたあの衣装でパレード・・・。
なんだかなぁ。
いまからでも東京公演に向けてお衣装変えたほうが良いのではないかと。

文句をたくさん述べておりますがお芝居とショーとをトータルすれば楽しくて観劇遠征してよかったなと思える公演でした。
東京へは見に行けないのですがライブビューイングがあればやっぱりぜひ見たいと思います。
そのときにはさらに良い公演になっていますように。
最高に輝くみりおんを見られますように。
と願いをこめて。

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