« 誰も教えてくれない。 | トップページ | 売れるものなら亭主でも。 »

2017/05/22

帰ろうよ。

5月11日と18日に博多座にて宝塚月組公演「長崎しぐれ坂」と「カルーセル輪舞曲」を見てきました。

「長崎しぐれ坂」上演が発表になった時点で、なぜこの演目なんだろうという思いが拭えませんでした。
年に一度のこの時期だけは地元で数週間、好きな時に宝塚を見に行けることを楽しみにしている身としては。
でも生で見たら気持ちは変わるんじゃないかと期待して1回目の観劇をしましたが、やはり気持ちは盛り上がりませんでした。

博多座には盆もセリもあるのに一切使わず、書き割りとカーテン前の芝居の繰り返し。
まるで大衆演劇を見ているようで宝塚を見た時に感じる高揚を感じることができませんでした。
脳内麻薬に支配されるあの感じを楽しみにしていたのに。

昔のバスガイドのような轟悠さんのセリフ回しがもともと苦手ではあるのですが、今回の伊佐次はとくにそのクセが強烈なのもダメでした。
こざっぱりとした江戸言葉が聞きたかったのに。
どすを利かせればいいというものではないと思うのです。

轟さんもトップの珠城さんももの凄く熱演されているのは伝わってくるので、そんなふうに思う自分が嫌になって客席にいるのがいたたまれなくなってきます。
なんでこんな思いをしながらここにいるのだろうと。

とはいえ1週間前よりも格段に芝居が上達している暁さんに感動したり、愛希さんの和物のお化粧もきれいになっているのに気づいて嬉しくなったり。
有限の日々の中で精いっぱいに努力し成長されていく生徒さんを見るのは宝塚を見る喜びであり愉しみであることをあらためて思いました。
私がもとめる宝塚は、瑞々しい夢を見せてくれる世界であることです。
技術は及ばないところがあっても輝くものを持っている宝石たちを演出や舞台効果で手厚くフォローし輝かせて見せてくれる世界が好きなのです。
もちろんその手厚いフォローに甘んじず惜しまず自分を発する姿がそこにあってこそですが。

私としてはもっと宝塚らしく華のある舞台を期待していたのでがっかりではあるのですが、こんなに地味なお芝居でも、客席が集中しているのは、轟さん珠城さんをはじめとする出演者の芝居力が高いからだと思います。
皆セリフがクリアで聴きやすいです。

「カルーセル輪舞曲」は大劇場で見たとき以上に楽しくて、このショーを見るため、そしてお芝居で成長していく生徒さんたちを見るためにリピートするか、それともショーだけの幕見をするか、愛を試されている気がしています。

卯之助役の珠城りょうさんは、落ち着いた芝居をきちんとする人だなぁとあらためて思いました。
青天も潔くて素敵でした。
けれどもトップさんなのにずっと足を引き摺る役なのは割に合わないなぁと思ってしまいます。本当なら誰よりもかっこいい役ができる立場なのになぁと。

卯之助が足を引き摺っているのを初見の人は途中から気づくからか、2回の観劇ともに終演後に同伴した人からあの人(珠城さん)は足をどうしたのかと尋ねられました。
足が悪い役だから最初からずっと足を引き摺っていること。
足が悪くて虐められていたのをいつも伊佐次がかばってくれていた思い出があるから、大人になっても卯之助は伊佐次のことをなにより大事に思っていること。
だからいくつになっても卯之助には優しい伊佐次なんだということを話すと合点してもらえるのですが、大事なポイントなのに、伝わりにくかったのかな。
それに気づいて見るのとそうでないのでは物語の見え方がちがうんじゃないかなぁ。
伊佐次の気持ちをわかって見ていると本当にせつなくなる物語なんですよね。
伊佐次に土下座して告白するシーンが蛇足に思えるくらいに。

それから、出てくるたびに伊佐次から「ウド」って呼ばれて「ウドじゃねぇ卯之助だよ」って言うのが、初演の卯之助役の湖月さんは誰よりも背が高くてそれが共通認識だったし、持ち味が明朗で轟さんとも5学年も離れていなかったのでそこに2人だけに通ずる親密さが感じられて思わず笑えたけれど、轟さんと珠城さんでは笑いが起きないですね。
最初の「ウド」も同じ場にいる同心の旗野さんのほうが大きく見えるし、卯之助も賢しくて有能な雰囲気なので「ウドの大木」にピンと来ないから、一瞬何言ってるのってぽかんとしちゃう。
繰り返される「ウドじゃねぇ卯之助だよ」に込められる卯之助の気持ちの変遷も見どころだと思うんだけど、それがいまひとつ効いていないなぁと思いました。

卯之助がおしまちゃんの声色を真似るところも、あの湖月さんがあの檀れいちゃんの真似をするのが可笑しかったけれど、珠城さんの卯之助だと笑う場面じゃないのだなと思いました。
もちろん持ち味がちがうのだから無理に笑わせなくて正解だなと思います。
折り目正しく真面目で思いの深い卯之助になっていました。
雰囲気じゃなくて、きちんと芝居をするところが珠城さんの良いところなのだな。
たんたんと的確に演じていくうちに核心にせまり最後に心を揺さぶる芝居をする人なんだなと思いました。


おしま役の愛希れいかさんは、初見ではお化粧がぁ・・と思ってしまいました。
「星影の人」の玉勇役の咲妃みゆさんの時も思いましたが、経験値のない状態で芸者のお化粧は難しいですよね。
ですが、いまの公演で芸者おそめを演じている咲妃さんは見違えるようにお化粧が綺麗になっているので本当にタカラジェンヌは凄いなと思います。
斯くいう愛希さんもその1週間後にはかなりお化粧が上達されていてさすがだなぁと思いました。
長いうなじが武器の愛希さんなのでさらに色っぽい「いい女」おしまを目指してほしいなと思います。

そしてこのお芝居は、おしまちゃんの「帰ろうよ」が響いてこないと極まりが悪い作品なんだと思います。
宝塚のトップ娘役さんが演じるには夢夢しさの欠しい役だし出番も少なめなのが私には不満ではあるのですが、おしまちゃんが伊佐次に向ける「帰ろうよ」が心に響いてくるかどうかがこの作品を左右する大事な役だなと思います。
色芸者と自虐してしまうおしまちゃんもまた、どんなに「あの頃」に帰りたいか。
一度見た夢を捨てて身を引くことがどんなに辛いことか。
それも伊佐次と卯之助のためなんだなぁ。卯之助に憎まれ口を利きながら、卯之助が惚れているのは伊佐次だってこともわかっていますよね。
いちばん2人のことを理解しているから。そこがまたせつないおしまちゃんでした。

愛希さんはお芝居では出番が少なめだけど、ショーではいろんなシーンでビシバシ踊っているところを見られるから、それでバランスがとれているかなぁという感じです。
目が追い付かない激しいサンバステップから優雅なデュエットダンスまでとにかく愛希さんが踊るとくぎづけでした。
ダンスに華がある人だなぁ。


らしゃ役の暁千星さんは、この学年にしてダンスも歌も華があって成長著しい方だなぁと思いました。
あとはお芝居が上達すれば凄いパフォーマーになりそうです。
この博多座公演でも、初見のときはやっぱりお芝居はまだまだかなぁという印象を受けたのですが、1週間後には心の動きがよくわかるお芝居をされていて、若い人がどんどん吸収して成長する姿というのを見せてもらって、なんだかとても感動しました。

初演の安蘭さんは死に際の無念さ恨めしさに凄絶な華があったらしゃでしたが、暁さんは明るい健気さを出せる人なので、母を恋うるあまりに信じた人に裏切られて生国から遠く離れた長崎に散っていくこの理不尽ななりゆきが悲しくて遣る瀬無さを感じさせるらしゃでした。
やや平坦だけどポイントはおさえている芝居をする人なので、これからどんどん技術面が伴っていくにつれ素直で良い芝居をされそうで期待したいです。

この博多座公演を最後に月組から雪組に組替えになる朝美絢さんはお芝居では、江戸から来た同心の館岡役で竹を割ったような正義感に突き動かされる融通の利かないきっぱりとした感じが出ていてよかったです。
田舎侍たちの馴れ合いにイライラしている館岡さんでした。
ショーでは轟さんの愛馬の役がとても素晴らしくてとっても馬馬していてくぎづけになりました。
お顔立ちも身のこなしも綺麗で雪組に行かれても活躍が楽しみだなぁと思います。

月組は観劇回数が少ないので真ん中の方たち以外をあまり知らないのですが、この博多座ではぼら役の千海華蘭さんがとてもお上手で惹かれました。
お芝居もとてもお上手でしたが、ショーでも歌、ダンスととても達者な方だなぁと。
今後月組を見るときは注目したいです。

それから「グランドホテル」の新人公演でお上手だなぁと思っていた花結かれんさんも唐人の娘柳麗役としてセリフや歌があって活躍されてて目を引きました。
同じく「グランドホテル」新人公演で活躍されていた風間柚乃さんも伊佐次の子分あんぺとしてやくざな物言いや仕草で頑張っていらっしゃるなぁとうれしくなりました。
月組は下級生にも芝居ができる人が多いのだなぁと再認識でした。
これからも月組には芝居を見せてもらえる演目を期待したいなぁと思います。(でもあくまで宝塚らしい華やかな作品がいいです)


ショー「カルーセル輪舞曲」は博多座ならではの雰囲気で大劇場とは別の楽しさがありました。
紫門ゆりやさん、朝美絢さん、暁千星さんの3人が場面によってそれぞれフィーチャーされているのがとても良かったです。
端正、優美、温かい光とそれぞれ際立つところは違いますが、共通するのは上品さかなぁ。

お衣装もとても宝塚らしくて、男役さんたちの黒燕尾、そして黒燕尾の男役さんと白いドレスの娘役さんがペアダンスをするフィナーレナンバーは上品で華やかで心が高揚します。
珠城さんと愛希さんのデュエットダンスの優美さも。
「モン・パリ」90周年を記念するショーで、パリから宝塚へと回帰していく流れは、お芝居とも共通するなぁと思いました。
そして裏テーマは「馬」かな?
ショーだけでも見に行きたい宝塚らしい心浮きたつショーでした。


|

« 誰も教えてくれない。 | トップページ | 売れるものなら亭主でも。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 誰も教えてくれない。 | トップページ | 売れるものなら亭主でも。 »