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2018/02/18

その魂は滴るほどに美味だろう。

2月10日に久留米シティプラザ内ザ・グランドホールにてミュージカル「黒執事 - Tango on the Campania-」を見てきました。

古川雄大さん目当てに前々作から見続けて3本目。原作単行本も最新刊まで読了。と意外にはまっている自分に驚き(笑)。
まず初見の感想は、「めっちゃ児玉先生やん(笑)」「前作に比べ思っていたより殺風景?」「でも楽しい♪」でした。

演出が今作、児玉明子氏に代わったとは事前に知っていたのですが、こんなに児玉色になっているのがいとをかしでした。
パペットや布を使った演出も児玉先生らしいなと思いましたが、なによりも私が児玉作品に感じていた印象、ストレンジなものへの執着、定型のヒューマニズムとの親和性の稀薄さ、最終的な結論は自分で出す、といったものがそっくりこの「黒執事」の世界観と調和していることに瞠目でした。

それから観劇後に、今回の作品をずっとご覧になっている方から「拍手を入れるところがちゃんと在るでしょう」と言われたのですが、たしかに!と思いました。
メインキャラがソロを歌いきった時、キメを入れた時、ボケたりアドリブを入れた時、と拍手を入れやすくて、客席からキャラクターやキャストへの愛を表現できて楽しかったです。
ここはキャストの自由に任されている場面だなというのもわかりやすかったですし、総踊りの場で手拍子が出来たりするのも楽しかったです。
この辺りは宝塚的かな?

舞台が殺風景に感じたのはたぶん20名くらいのアンサンブルの方たちがビザールドールの扮装などでほぼ全員舞台に出る場面が多かったからではないかと思います。
場所を必要とするのでセットが開いて空間ができるから。
アンサンブルの動きで見せる場面が多かった印象。それがまた物凄い身体能力の人たちばかりでびっくりでした。
緻密ではないけれども、キャスト1人1人の力で魅せる演出になっているのだなと思いました。

脚本が粗いほど演出が雑なほどパフォーマーの魅力と技量でそれを埋めてかえって面白くなるというのは宝塚ではしばしば経験しますがそれに近いものがあるかな。
なによりもこのシリーズで私がいちばん見たいところである主人公2人の関係性の描かれ方や、そこに対する演者の熱量が半端でなかったので、すごく満足できました。

観劇後数日が経ちあの場面がよかったなぁと思い出すいちばんは、やっぱりハチミツミルクからの謁見服。跪くセバスチャンのあたりです。
偽物の伯爵と執事の描写は役者の自由度が高い箇所みたいで脚本以上演出以上のところを役者の2人が深めているように思いました。
私が知っているのとは全然ちがう、シエルと契約したてのセバスチャンの邪悪で醜陋な笑み。とても名門伯爵家の執事とは思えない様子。
そんな悪魔に対して主人が執事に要求すべきことは曲げずに言いとおすシエル。その精いっぱいの気概。
それに真っ向から応えていくセバスチャン。
表現は異なれど互いを認め信頼していく過程が描かれていること。
最終的には2人とも本当に頑張ったね(涙)と感動を覚える妙。
気づかされることがたくさんある場面でした。

強がるしかすべのないシエルがひととき見せるセバスチャンへの甘えがハチミツ。
喰らうために傅き育てているはずのセバスチャンにもシエルへの別の感情が生まれているのがわかる場面。
契約したての険悪な関係からここまで進捗したのだなぁと2人からそれが感じられて感慨深いものがありました。
まだまだ完璧な伯爵と執事にはなりきれていないからこその場面で、マチネではベッドに腰かけるシエルの隣にセバスチャンが馴れ馴れしく座っちゃったりするものだから、私の頭の中はええええぇ♡♡でした。
当然の如く冷たく払いのけるシエルがさらに見どころで、ふぇふぇふぇふぇふぇ♡♡♡となりました。
ソワレでも当然見られるものと思いいよいよそのシーンが近づいてきて生唾ごくり。・・・だがしかしあれ??? 日替わりかよちくしょうめ(涙)でした。

ついに女王陛下の謁見にまでたどり着き謁見服に身を包む威風堂々たる少年伯爵の完成。
彼の前に跪く執事さんのおみ足の完璧なフォルム。
狂気のように美しい絵画が目に焼き付いて前後の記憶が飛びました。
これを見るためにこの黒執事を見ていたんだわ私。ぐらいの感覚に陥りました。

ラストのシエルの「今日はよくやった」。ここまでの経過を目の当たりにしたからこそ言い尽くせない感動がありました。
おなじく「地獄の果てまでお供しましょう」というセバスチャンにも。その時の瞳が潤んでいることにさまざまな想いが一気に溢れてしまいました。
ほんとうに見ることができてよかったなぁと思います。

 

主演のセバスチャン(古川雄大さん)とシエル(内川蓮生さん)のことばかり書いてしまいましたが、今作を含めて3作見てきてキャスト、キャラクターも愛着がわいている自分がいました。

前々作ぶりに拝見したドルイット子爵様。
毎度大勢を巻き込んでのソング&ダンスが猛烈に楽しかったです。
あのテンションで存在できる佐々木喜英さん凄いなぁ。気がつくとセンターに立っている人(笑)。
あの圧で迫ってこられるシエルに同情です(^^;

今作はアンダーテイカーさんがストーリーにかなり関わってくるはずだけれどもどうなるのかな?と思っていたのですが、凄かった。
デスサイズがとってもクールでまじまじと見てしまいました。ゴシックでクラシカル。でも重そう。バランス難しそう。
それをめちゃめちゃカッコよく振り回す大立ち回りに唖然。アンダーテイカーさん実は筋力凄い??? 和泉宗平さん凄い。
総踊りも皆と一緒に踊ってるのもアンダーテイカーさん(笑)って思いました。

グレルさんもまたお会いできてうれしかったです。相変わらずでさらに驀進中(笑)。
彼も巻き込み型で楽しくて好き。生意気な後輩君に好き勝手言わせながらも仕事はまじめにちゃんとしてオリジナリティ溢れる自分を貫けるってすてき。
だから生意気言っても後輩君は彼に一目置いているんだなと思います。

アバーライン警部(髙木俊さん)とハンクス刑事(寺山武志さん)の毎度お馴染みの掛け合いも健在で面白かったです。すごいグルーヴ感(笑)。
パーティで女性をナンパする場面のアバーラインさんのあらぬ方向っぷり凄いなぁと思いました。毎回日替わりネタを考えてキメられるの。

豪華客船のお話はリジー(エリザベス)が大活躍する回になるけどリジー役はどんな人がやるのかな?と思っていましたが、岡崎百々子ちゃん、リジー味すごくありました。
ヒールを履かない乙女心の歌がよかったです。
14歳??末恐ろしい(笑)。

ミッドフォード侯爵夫人フランシス、めちゃめちゃ凛々しくて惚れました♡ 原作通りで秋園美緒さん凄いです。
エリザベートやロミジュリなど、たいてい私が見に行くミュージカルには出演されていてお綺麗で歌声が素敵な方だなぁと思っていたのですが、こんなにカッコよくキメられる方だとは。
キレキレのフェンシングの剣さばきに思わず見惚れていました。
お化粧の美しさは宝塚仕込みでしょうか。原作のフランシスにとても似せていらっしゃってさすがだなぁと思いました。

死神さんの後輩のロナルドさん(味方良介さん)が極めてチャラ男キャラでペラペラとよくしゃべって歌って草刈り機型のデスサイズを振り回して立ち回って何気に凄かったです。
スネーク役の原嶋元久さんはオスカー、エミリー、ワイルドでちゃんと声音を変えてセリフを言われるのが凄いな面白いなと思いました。とくにエミリーが可愛かったです(笑)。

こうして書きだすとほんとうに個性的なキャラクター揃いで。
個性的なキャラクターとそれを見事に演じるキャストで成り立つ舞台なのだなぁと思います。
私にとっては古川雄大さんが出演されなければ足を向けることもなかった作品だったと思いますが、こうして縁あって出逢うことができてよかったなと思います。
今回の久留米での公演は、私と原作本をシェアした中学生の姪っ子と観劇したのも良い思い出になりました。

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