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2018/02/05

望もうと望むまいと。

1月28日と29日に日本青年館ホールにて宝塚歌劇宙組公演「不滅の棘」を見てきました。

見応えのある舞台に満足でした。
愛ちゃん(愛月ひかるさん)と宙組出演メンバーがこの作品をここまで高めてくるとは。

2週間前にシアタードラマシティで観劇した時に、愛ちゃんがそうとう歌を鍛えてこの作品に臨んだことが覗え、大千秋楽まで歌いこめばさらによくなるだろなと思っていましたが、その予想を遙かに超える進化を遂げていました。
歌声に味わいが出てきたなぁというのが率直な感想です。細かいですが、愛ちゃんの「リラック↑ス↑↑↑」の『ス』が好きです。
ドラマシティでここがいま一つと思っていた女装場面も格段に良くなっていて、その場面を最高に楽しめました。

舞台を楽しむにあたって役者の声の良し悪しは重要ですが、そこに課題がある愛ちゃんはこのままそれを克服できなければその先へ進むのは難しいのではないか、と思ってしまうことも正直ありました。
が、それに真正面から挑み応えてきた姿を目の当たりにして、もうこれは報われるところまでちゃんと見届けなければいられないと思いました。
そうなることを願わずにはいられません。


ヒロインの遥羽ららちゃんは歌い方がドラマシティの時よりも初演のふづき美世さんに似ている気がしました。
そして私はやっぱりららちゃん演じるフリーダ・ムハが魅力的で好きだなぁと思いました。
アグレッシブではきはきとものを言い、スタイルが良くてショートボブとボディラインを意識した衣装がとってもお似合いで。
幼くして両親を失い愛されている実感のないままに育って(魅力的な娘だから周りから愛されているんだけど)、つねに前のめりに何かを求めていないといられない女性のようでした。
そこに現れたエロールの自分へのまなざしに愛を感じちゃったんだなと思いました。どういう種類の愛しみかもわからずに。
だけどそれこそが彼女がもとめていたものなんだなぁとも思えます。

フリーダと対照的なのが華妃まいあちゃん演じるクリスティーナ。
いい子にして待っていたらきっといつか神様からご褒美がもらえると信じているタイプの娘かな。
彼女の視線の先にあるものを母親が掠め取っていくのをいつも黙って見てきたそういう娘。
ほしいものに向かって直接的に行動する母タチアナ(純矢ちとせさん)と、自分の美徳をもって遠回しに存在を示すクリスティーナ。自分の美徳を譲らない人でもあるな。
親に逆らうことも美徳に反する行いと思っているような彼女が、エロールのために母に背いて行動に出るもまたしても・・・。
彼女にとってはそれが人生。自分から自分の生き方を変えられないから自死しか選べないのだなと思いました。
華妃まいあちゃんの歌声がさらに透明感を増していて聞惚れてしまいました。
酔っぱらったハンス役の留依蒔世さんとの掛け合いが、歌詞も歌い方もそれぞれまったく異なる世界観でクセになりそうでした。

コレナティ役の凛城きらさん、数か月前はロシアの美貌の皇后だったのに今回はお髭のコミカルなおじ様で役幅広いわーと感心しました(笑)。
たいていフリーダとアルベルトとトリオで登場でしたが、フリーダとアルベルトが言い争うのを尻目に話を次へすすめるタイミングが素晴らしかったです(笑)。エロールへのリアクションも。彼がいなかったら同じところをぐるぐるするばかりで話が進まないと思います。
この人だったら、忍び込んだプルス男爵邸で目的の封筒を見つけ、「あったぞ!」って言ってしまうのも頷けます。ああいう仕事に連れて行っちゃダメな人・・・。

アルベルト役の澄輝さやとさんは、作品の中で唯一エロールの存在に懐疑的な役どころ。
皆がエロールの存在や彼がもたらすものに食いついていくのに彼だけがそれを外側から見ている。
自己主張の強い人びとにいつも押し退けられていつも背後にまわってしまう人だけど、彼のおかげで登場人物たちが皆思い思いに前のめりに暴走していくこのストーリーに客席の私もついていける気がします。
彼以外の登場人物たちにちょっと落ち着いてと心の中で何回私は呟いたことか・・・。自分に都合の良い人が現れたからって疑わなさすぎでしょ(笑)。
1幕最後のエロールのショーの場面でボックス席でそれを眇め見ている姿が1枚の完璧な絵のようでした。
この席はエロールの招待席なんだろうな。彼がフリーダのために用意していたペアチケットは反古にされちゃったのかな。本当はフリーダと観劇デートのはずだったろうに。フリーダはエロールしか見えていないし。なにもかも気に入らないですよねこの状況・・・。あぁなんておざなりな拍手・・・(苦笑)。
フリーダとだからエロールのチケットを取ったりもしたけれど、本当はブラームスなどのほうがお好みなんだろうなと思いました。そしてにわかにリストはお嫌いですね(笑)。

1幕ラストのショーでは、冒頭で登場して歌って踊るサム役の朝央れんさんとハリイ役の七生眞希さんが美味しかったです。
七生さんの歌声をこんなに聴けたのはわたし的に博多座銀英伝以来かなぁ。こんな場面があるから別箱はうれしいですね。
彼女の笑顔は私にとってファンタスティックな夢。
このステージシーンの歌と踊りは深刻なテーマの中で心の陽だまりでした(笑)。

2幕開演アナウンス前のソニイ(星月梨旺さん)とロナルド(朝日奈蒼さん)そして掃除婦さん(里咲しぐれさん)の掛け合いも毎回楽しかったです。
毎回ネタを考えて連続シリーズでアドリブでされていたのかな? 楽日の11時公演には朝夏まなとさん鳳翔大さんそして雪組の方たちがご観劇でしたが、先代トップの朝夏さんに因んだネタが面白かったです。
「王家に捧ぐ歌」の「エジプトは領地を広げている」を鼻歌で歌いながら、この歌もエロールの歌も自己主張が強すぎるって(笑)。そしてプリンシパルのオーディションに受かったソニイさんは芸名を『モーニングサマー』にしようかななどと(笑)。
無茶ぶりの星月さんも面白かったですし、朝日奈さんの困った反応もいつも可愛かったです。お2人ともお上手すぎてびっくりでした。こういう才能がおありとは知りませんでした。
そして冷めたツッコミとときどき優しい気づかいの掃除婦の里咲さんも良い間で面白かったです。

カメリア(美風舞良さん)の歌と長い手足を活かした愛エロールのダンスシーンも大好きでした。
この場面は酔っぱらったダンサーたちの自堕落ぶりも面白くて目が足りなかったです。皆やりたい放題(笑)。

脚本の面白さはもちろんですが良い音楽とダンスと、そしてエロール役のスター性があってこそ成り立つこの作品で、それに応えた愛ちゃんと出演メンバーに心からの拍手を送りたくなった公演でした。
2018年が宙組と愛ちゃんにとって良い年になりますように。

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