力をつけながら、その力を使わぬ自制心をもてと。
4月22日と23日に宝塚大劇場にて宙組公演「天は赤い河のほとり」と「シトラスの風-Sunrise-」前楽と千秋楽を見てきました。
「天は赤い河のほとり」は私にとってひたすら宙組を愛でる作品になっていました(笑)。
お祭りとかオロンテス河の戦いとか帰還した兵士と家族の再会を見るのが特に好きでした。
3月に観劇した時には芝居の見どころがわからなくて宙組芝居が見られないと暴れたくなりましたが、いつのまにか皆がちゃんと役づくりして物語世界に生きてた。
それを見ているだけで楽しくて感動してうるうるしてました。
そうそうこれ。ベルばらや王家でも見ていた懐かしいこれ。宙組らしいこれ。
また観劇回数を重ねる毎にまどかちゃんの成長を凄く感じました。
真風さんに安心してついていってる仔犬みたいな可愛さとたしかな頼もしさ。
マッティワザの「将は兵の前で不安な顔を見せるな、お前ならできる~」からのユーリの「ザナンザ皇子、ティト、私に力を」からの全軍への号令でブワッと涙腺が緩みます。
凛々しいまどかちゃんが素敵です。
その頃真風さんとキキちゃんは銀橋でドカッボカッってやっていてそれも好き。
楽は超下手席だったから銀橋の真風さんの表情が見えました。なんだユーリのこと好きなんじゃん、って思いました。なかなかわかりにくいキャラだから。
ユーリはカイルの母の昔語りから1人の女性を生涯愛し抜こうと心に誓った話しを聞きながらカイルに惹かれているのがわかります。
生まれて初めて間近で見る本物の王子様が自分にだけ語りかけてくれている。そりゃあ惹かれないわけがない。
でも好きになっちゃいけないって思っているような表情もしててせつな可愛いなと。
んで、カイルはどう思ってんねんと気になってました。表情が読み取りにくくて。
「たとえば妃となって私を喜ばせるとか」というカイルに誠実さはないですよね、あの時点では。
健気な女の子の心を弄んでて私の中では好感度↷
そんなカイルに心を伝えることを説くユーリはまっとう過ぎるくらいまっとう。狡猾さも汚さも知らない女の子。
のちに「綺麗事でやってみようと思います」という彼女の性格に初めからブレがないのが凄い子だなと思います。
厄介なタイプを好きになってしまう子だなとヒヤヒヤもさせられますが(ラムセスのどこが不満なの??)、この子実は相手の生き方考え方を変えられるエナジーがとてつもなくある子なんですよね。
それは後々わかるんだけど。
たしかに原作ではそうなんだけど、この舞台のカイルがユーリによってどれだけ変わったのかが見えにくいのが残念だったなぁと思います。
どのタイミングでどれくらいずつ傾いていったのかとか見えたらなぁ。
・
王宮での宴の頃はまだユーリを愛してはいないかんじですよね。
ユーリをほうって積極的な姫様方の自己アピールに鼻の下を伸ばしているし!
美しく装ったユーリに見惚れちゃったザナンザはそんな自分に気づいて顔を背けちゃったりせつないんですけど。
そんな弟に気づいてもいないでしょ。(そういうシチュエーションです)
アナタのためにティトは自分の命を捧げてしまうんですよ。
ティトの気持ち、届きました?
嘆き悲しむ姉たちを見ました?
それでどう思ってるのアナタ?!と乗り込みたい気持ちになるんですけど。
あまりに無抵抗に捕らえられているので。
ゾラやシュバスだって心に闇を持っていたからウルヒに付け込まれたんだと思います。
三隊長ばっかり見て彼らに疎外感を与えてなかった?
だんだん言いがかりめいてきたのでこのへんにしておきますけど、でもこの主人公イラつくわぁ。
生まれ持っての力や容姿や何もかも恵まれているのに無頓着で・・・・・・・・ってもしかしてこれってヒロインタイプ?
ああそうか、じつはカイルこそがヒロイン(ポジション)だったのか!
本当に1人の身になってきっと様々な苦難の末に単独身を起こして赤い獅子の首領となって(その過程は一切描かれていない)のオロンテス河での決戦前夜、遠い天(そら)に思い描いたのがユーリの面影で。
ここで彼女への想いを詩情豊かに歌ったりなんかするのかなと思いきや。
あっさりとユーリ登場だもんなぁ。
もうちょっと甘くせつないカイルの見せ場がほしかったなぁと。
カイルの内面がわかる場面が作られていないせいもあるんだけど、カイルの心がわかりにくいのが物足りないところだったかなぁ。
再会後ユーリは銀橋で切々とカイルへ自分の気持ちを語るけれど、カイルはそれを聴くばかり。
だからユーリの言葉を聞いてどれだけうれしく思っているのかをずっと見たかったのです。
それが見えたのが超下手席に座った楽が初めてで最後でした。
もったいないなぁ。
ユーリの決意に対して「おまえが捨てたすべてのものの代わりにこの後は私がなろう」は大事にほんとうにユーリへの想いのすべてを込めて言ってほしいなぁと思います。それが見えにくかったです。
そもそもが嫌がっている女の子に「そんなに喜ぶな」と嬉々として言ったり、矢庭に小突く素振りをして怯ませたり、安心させることを言った端から不意打ちに強引に引き寄せて怯える様子を愉しんだり自分の体の大きさにものを言わせて小柄な女の子を弄るようなところが、その嗜虐的なところが私は苦手だなぁと思ったところからはじまっているので、そこからの好感度の劇的アップは難しいのですよね。よほどのことがないと。
お母さまから言われた自制心の中には力あるものが自分より小さいものを弄って喜ぶことに対する制御は入っていないんかいと思わずにいられない。
そういう方向じゃなくてカイルの真摯な想いをもっと力強く見せてもらえたらよかったなぁ。
本当のカッコよさを。
それがあればこそ戦場から逸脱してラムセスと素手で殴りあう場面がさらに引き立つかと。
カイルは主役として演じるには演じにくいキャラクターだとは思うのですが、そこをどうにかさらに東京では高めていってほしいなと思います。
そしてさらに進化した作品を東京公演千秋楽ライブビューイングで見られたらいいなと思います。
| 固定リンク | 0
コメント