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2018/05/24

射竦められていたというのもほんとうです。

5月17日、22日、23日に博多座にて宝塚歌劇花組公演「あかねさす紫の花」役替わりBパターンを見てきました。

主演の明日海りおさんの役が大海人皇子から中大兄に替わることで役の比重も変わり、セリフ、歌、場面もいろいろと変わっていました。

17日の初回の観劇時はまだAパターンの可哀想でたまらなかった明日海さんの大海人皇子の記憶が鮮やかに残っていて、中大兄の大海人への理不尽に気持ちがついていけなくて、また明らかにAパターンよりも額田が中大兄寄りで葛藤があまり見えないことに、心が混乱したまま観劇が終わってしまった気がします。
私のこの大海人皇子への気持ちのやり処は? Bパターンを好きになれるのかな。などと。

日を置いて22日の観劇時、私はガツンと衝撃をうけました。
どのあたりからかは定かではないのですが、気づいたら明日海さんの中大兄の目線に射すくめられていました。

有馬で中大兄が額田に心情を吐露する場面で、この人はとっても孤独な人なのだと思いました。
この華奢にも見える背中にどれだけ重荷を背負っているのだろうと。
有能さゆえに人の何十倍何百倍も責任を負い、決断し実行し、誹られもし反発もされ、その一本一本の矢を満身に受けてギリギリのところで踏みとどまっている誇り高い皇子がそこに見えました。
その皇子が、国を守り、治めていくために、自分の傍らにどうしても額田が必要だと言う。
その苦しい心のうちが伝わってきて、これはもう仕方のないことなのだと納得せざるを得ませんでした。

十代の頃には蘇我入鹿暗殺を実行し、みずからの手を汚して国政を担ってきた中大兄。
年齢の割には幼くて純粋で心優しい大海人皇子。
中大兄は早く大海人皇子に自分のところまで追いついて欲しいのだなと思いました。
綺麗事だけでは未だ混乱する国を治めきれないということを大海人が理解して共に国を治める日が来ることを望んでいるのだろうなと思いました。
「ばかものーーッ!!」と一喝した中大兄が一瞬泣きそうな顔になるのを堪えて目力を入れたのを見てしまいなんともせつない気持ちになりました。

柚香さんの大海人皇子は本当に心優しく純粋で、兄を思い額田を思いやって、けっきょく世迷うしかない弱さが際立っていて、明日海さんの中大兄との対比がよかったです。
明日海さんの中大兄が柚香さんの大海人のどこに「ばかもの」と言ったのか。
すうっと納得がいく感じがしました。
中大兄の大海人への気持ちがせつなかったです。

また中大兄は自分こそ額田王の才を理解して十分に発揮させることができると思っているのかもしれないなと思いました。
稚い大海人皇子には額田がほんとうに望むものを与えることができないことも中大兄はわかっていそうな、そんな明日海さんの中大兄だったように感じました。
Bパターンの中大兄と額田はすでに完璧な一対で、大海人に入り込む余地はないように思われました。


もう1人Bパターンでせつなかったのが華優希ちゃん演じる鸕野皇女でした。

「父中大兄が好きです」という鸕野は、たぶんいちばん身近で父の孤独を感じてきた娘なのではないかと思うのです。
だから額田に父のもとへ行ってほしいと言う。
だから父の命に従い大海人皇子に嫁ごうとしている。
そんな娘のように感じました。

その大好きな父の祝宴で酩酊し遅参した夫が舞に託けて父中大兄に槍を向ける一部始終を目撃するその胸の内を想うと胸が痛くなりました。
プロローグの蒲生野で大海人皇子の傍らで微笑み舞う鸕野皇女の姿が私の目にはしっかりと焼き付いていて。
心優しい大海人皇子は彼女を大切にしている様子が見えました。
それなのに夫大海人皇子は額田への想いを抑えきれずにこんな形で見せつけられて。
大海人皇子には額田王よりも鸕野讚良のほうがお似合いなのにな。
額田のことなど早く忘れて鸕野皇女としあわせにおなりなさいと思ってしまいました。

Bパターンの額田はとうぜんのように中大兄に寄り添い愛されている。
この人のことは中大兄がちゃんとやってくれる。
それよりも鸕野皇女が、大海人皇子との未来が気になりました。

Aパターン観劇後はあんなに額田のことばかり考えていたのに。
ほんとうにこうも見え方が変わることが面白いなと思います。

次は25日のライブビューイングで最後となります。
明日海さんの見応えのある役づくりにはまりそうです。

(大好きな斉明帝や有馬皇子や大友皇子や十市皇女やほかの人びとのことがまた書けませんでした)
(いつになったら書けるのだろう)

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