おまえのために必ず生きて帰る。
ミュージカル「1789-バスティーユの恋人たち-」博多座公演を、初日からマリー・アントワネット役の凰稀かなめさんの大千秋楽も含めて7公演見てきました。
台風の日、大雨特別警報が出た翌日、自身の体調不良(内耳性のめまい等)といろいろある中でしたが、メインキャストは全員見ることができました。
また7月14日のフランス革命記念日はスペシャルカーテンコールということで、客席全体でトリコロールに分けられたサイリウムを振ってお祭り気分を存分にたのしみました。
再演となった今年の「1789」。2016年の初演と楽曲は変わらないと思うのですが、格段に何かが変わったようでがっつりと心を掴まれてしまいました。
2回目の観劇を終えたところで我慢できずにリピーターズチケットで2公演増やしましたが、それでもまだまだ見たい気持ちがおさまりません。
初見では初演から出演のキャストの方々の進化に目を瞠りました。
渡辺大輔さんのデムーランはより理想を目指す人らしく端正で力強い人に。そしてこんなに声が良い人だったかしらと驚きました。
上原理生さんのダントンはより磊落に。隔てなく娼婦や無宿の人びとと付き合う懐の深さと人の好さが滲み出ていました。
初演の時はお2人ともイケメン3人組の1人という印象でしたが、今回は場面場面でナンバーの中で、役としての生き様が明確に見えて引き込まれました。
また再演から加わったキャストの方々も初演の方とは違う個性と魅力で惹きつけられました。
1公演1公演と見るたびに違う見どころに気づかされ、キャストの組み合わせが変わるごとに新たな発見がありました。
感想も感動もたくさんたくさん心に溢れかえっていますが、それをどう書いたら良いのか。メインキャストの3役はWキャストでもありましたし、ここは役名毎に書いていこうかと思います。
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まずは主役の【ロナン・マズリエ】。
初演の時は、小池徹平君のロナンしか見ていないので、加藤和樹君の長身でガタイのよろしいロナンがとても新鮮に映りました。
ダントンがロナンに「金なんかなくったって女の方がほっとかないだろう」と言う場面、小池ロナンにはそのお顏を指し示しながら言うのに対して、加藤ロナンにはそのカラダを指し示して言うのがなるほど~~と思いました。
長身で逞しいワイルドな魅力(笑)。『嵐が丘』のヒースクリフが似合いそうじゃない???なんて思ったり。
加藤ロナンには皆さん容赦なく手荒だなぁと思いました(笑)。
それくらいしないとダメージを与えたように見えないからかな。
それを受けて加藤ロナンも加速度的に熱くなっていく感じがしました。
バスティーユ脱出後にオランプとお互いを意識する場面でもロナンの方が先に熱くなっているようで。
そのときはまだオランプの神田沙也加ちゃんも夢咲ねねちゃんも混乱と戸惑いが強く感じられました。
いきなりのキスも、これまで何人の女性をこうやって直截に口説いてきたのかと身構えさせる男ぶりで、思わず女性の危険予知本能がオランプを反発させてしまうというか・・・。
だって自分のキスが「お礼」になるとわかっている人ですよ。彼のことしか考えられなくなるんですよ。危険極まりない(笑)。
でももう遅いみたい・・・。
3人の革命家と並んでいる時にはふと、この人(加藤ロナン)がもし裕福な家に育っていたら・・・デムーランやロベスピエールに見劣りすることない立派な美丈夫の弁護士や思想家になったんじゃないかなと思いました。
生まれや育ちが違うばかりにこんなにも隔たりのある境遇を生きなくてはいけない不条理さを思いました。
けれども彼はまたどんな世の中であっても自分の肉体と才覚で裏社会でもどこでものし上がって生きていけそうな印象も受けます。
生き方も恋も闘争もとてもリアルなところに根付いているように見える彼が、革命家の仲間に出逢い理想と哲学という夢を抱く。
故郷の村で暮らしていたら出逢いもしなかったような女性と恋に落ちる。
そして仲間への思い、オランプへの愛が、彼を彼にしかできない危険な任務に向かわせる。
きっとうまく行く ―――― 誰もがそれを信じていた。名もなき農夫でありながらそんな絶大な信頼感が彼にはありました。カリスマになりえる魅力が。
だから、本当ならこんなことで命を落とすような人ではないのに。
それが切なくて心に刺さるロナンでした。
まさに出逢ってしまった運命が彼を変えたのだなと思います。
小池徹平君のロナンは寓話のような夢物語の中に舞い降りたような印象を受けるロナンでした。
すこし世を拗ねたような斜めに構えている印象を受けるのは周囲からそんな扱いをされ続けてきたからかな。
一人前に扱ってほしい。認めてほしい。そんな思いが見えるようなまだ少年を残したようなロナンでした。
オランプにいきなりキスをする場面、「こ、この人ったら見かけによらず実は手練れ・・・?!!!////」と思えるときもあれば、人ならざるものが人間をマネてちょっとのその感触を試してみたみたいに見えた時もありました。
ああ、もしかしたら、このロナンはシャルロット側に近いのかも・・・?
シャルロットがパレ・ロワイヤルの申し子なら、もしかしたら彼は革命の申し子?みたいに思える瞬間がありました。
オランプが走り去り、「二度と消せない」を歌い出す前の自分の気持ちに気づいたような表情がとても印象的で好きでした。
ファーストラブ??? いや恋に落ちた天使??? 見ていてキュンとしました。
彼が何かをするたびに「がんばれ」と心で応援している自分に気づきます。
加藤ロナンに対する時との一番の私の目線のちがいがそこかもしれません。
加藤ロナンに呼び覚まされる私の男性恐怖心みたいなものが小池ロナンには感じられなくてひたすら愛おしい思いが湧きました。
革命の兄弟たちとも加藤ロナンは同質、同等に見えるけれども、彼らと小池ロナンは異質に思える。
どこから来たのだろうこの人はと思ってしまう。ボースからというのではなくて。
彼らの心に真実という棘を突き刺していくロナンだなぁと思いました。
加藤ロナンが出逢いによってその運命が変わったとしたら、小池ロナンは皆を変えていく側のようにも思われました。
一度は本当に彼らと同等の『兄弟』に見えていたからこそ現実を突きつけられて傷つく姿が見ていて辛かった加藤ロナンに対して、一度は信じたものが崩れていくことに傷つく小池ロナンがせつなく、また彼が見せる現実に傷つく彼ら(革命家たち)を見るのもまた辛かったです。
どうも私は加藤君のロナンには「きっとうまくやる」と全幅の信頼を懸けてしまうようで、だからどうして死んでしまうの?という衝撃に打ちのめされてしまうように思います。
遺されるソレーヌとオランプを思うとせつなくてたまらない。
勝利の日にオランプを抱くんじゃなかったの?(涙)と思って泣けてしまいます。
そしてどうやら私は小池ロナンには「絶対うまくやって!」と祈るような気持ちになるみたい。
だからかロナンがバスティーユへ向かう前の「お前のために必ず生きて帰る」が胸に刺さります。その先が怖くって。
でももしかしたらこれは、7公演見たうちの前半が主に加藤ロナン、後半がほとんど小池ロナンだったせいもあるかもしれません。
観劇できる日を選んでいたらたまたまそうなったんですけども ―――。
ということでもう一度加藤ロナンを見たくて、加藤君の千秋楽のチケットを追加してしまいました。
―― あと2回。
この作品を見られる希望をいまは噛みしめています。
その時自分が何を思っているかが楽しみでもありドキドキでもあります。
と、、、だらだらとロナンのことだけ書いてしまいました。
オランプのこともソレーヌのこともマリーのことも他の人びとのこともきっと書くつもりですが・・・。()
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・・これまでの観劇。
【7月3日(火)ソワレ/初日】ロナン/加藤和樹、オランプ/夢咲ねね、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
【7月5日(木)マチネ】ロナン/加藤和樹、オランプ/夢咲ねね、マリー・アントワネット/龍真咲
【7月7日(土)ソワレ】ロナン/加藤和樹、オランプ/神田沙也加、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
【7月9日(月)ソワレ】ロナン/小池徹平、オランプ/夢咲ねね、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
【7月14日(土)マチネ】ロナン/加藤和樹、オランプ/神田沙也加、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
【7月14日(土)ソワレ】ロナン/小池徹平、オランプ/夢咲ねね、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
【7月18日(水)マチネ/凰稀さん千秋楽】ロナン/小池徹平、オランプ/神田沙也加、マリー・アントワネット/凰稀かなめ
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